「反転授業の研究」物語 第5話 芝池宗克さんとの出会い

「反転授業の研究」の田原真人です。

このグループが始まってから今までのストーリーを連載していくことで、新しく入られた方とも物語を共有していきたいと思います。

メルマガに登録いただいた方に、第1話から順に配信していきます。

第5話 芝池宗克さんとの出会い

2013年の夏休みに小林昭文さんと繋がってから、動画配信を中心にやってきた人たちと、アクティブラーニングを実践してきた人たちとが、
結びついていきました。

そこで、お互いに知っていることを教えあうことで、反転授業についての理解が深まるのではないかと思いました。

それで、まずは、アクティブラーニングを実践している方に、オンラインで話をしてもらおうと思い、WizIQを使ったオンライン勉強会を企画しました。

その当時は、動画だけ、アクティブラーニングだけという人はいましたが、それを組み合わせて反転授業をやっている人は、とても少なく、
高校レベルでやっているところといえば、近大附属高校くらいしか思いつきませんでした。

そこで、全く面識のなかった近大附属高校の芝池宗克さんにメールを送り、オンライン勉強会でお話していただくことはできないかと打診しました。

突然のメールにも関わらず、芝池さんは、快く了承してくださり、接続テストを兼ねて、WizIQでインタビューさせていただきました。

反転授業オンライン勉強会:登壇者紹介~芝池宗克さん

当時、話題になっていたのは、

「反転授業で、生徒に予習させるにはどうしたらいいの?」

ということでした。

芝池さんの数学の授業では、予習していない生徒は、基本的にいないということだったので、どうやってそれを実現しているのかということにみんなの関心が向かっていました。

そして、その秘密を、オンライン勉強会の中で、教えてくれました。

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なんというか、コロンブスの卵というか・・・。

言われてみれば、あっそうか!という感じなんですが、意外と思いつかない方法かもしれないなと思いました。
小林昭文さん、横山北斗さん、芝池宗克さんの3人が登場した記念すべき第1回のオンライン勉強会の録画動画を、無料メルマガの中で公開しています。

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●編集後記

近大附属高校における反転授業は、その後、いろいろなところで取り上げられるようになりました。

芝池さんは、同僚の中西洋介さんとの共著で、

『反転授業が変える教育の未来』

という本を出版されました。

この本は、教育の問題を真正面から取り扱っていて、読んでいてとても爽快な本でした。

僕も、こちらに書評を書かせていただいています。

ドリカムプランの産みの親!和田美千代さんインタビュー

「反転授業の研究」の田原真人です。

「反転授業の研究」には、国内、国外から強者のみなさんが次々に集結しています。

みなさんが惜しみなく経験をシェアしてくださるので多くの知恵が場に溢れています。

受け取ってばかりじゃなく、自分も何か提供していこうと考えたみなさんが一歩踏み出すことで、さらに場が回転して温度が上がっていきます。

その中でもまれているうちに、自分自身の鎧をいつの間にか脱ぎ、自分の根っこと繋がって新たに強者へと変貌を遂げる人も現れ、その変化がさらに場を大きく動かしていきます。

オンラインで繋がった人たちが、リアルでも繋がり、ハートレベルでのつながりがお互いをエンパワーしていく・・・そんなことが、今、「反転授業の研究」では起こっています。

「反転授業の研究」を立ち上げてから、数多くの出会いがありましたが、その中でも、AL講座での和田美千代さんとの出会いは、衝撃的なものでした。

この出会いは、今後、グループの発展に大きな影響を及ぼしていくのではないかと感じています。

和田さんは、主体性の育成にずっとこだわってきた方です。

福岡県立城南高校時代には、我流で国語のアクティブラーニングの授業を行い、ドリカムプランというキャリア教育プログラムを立ち上げました。

現在は、福岡県教育センターでアクティブラーニングを推進されています。

和田さんが辿ってきた道筋は、自己組織化のプロセスがまさに回り始めたばかりの僕たちにとって、大きなヒントになります。

そして、今なお、貪欲に学び続けている和田さんの在り方(Being)は、周りに大きな影響を及ぼしています。

和田さんから詳しいお話をうかがいたいと思い、インタビューさせていただきました。

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和田さんが教師になったきっかけ

―― 和田さんが、教師になったきっかけは、どのようなものだったのですか?

私は、就職活動もしていないし、教師になる気持ちもなかったんです。

実は、専業主婦志願だったんです。笑

大学生のときに、将来はどうするのかを聞かれたら、「結婚して、専業主婦になる」って言っていました。

夏目漱石が卒業研究のテーマで、高等遊民に憧れていました。

だから、「現代の高等遊民としての専業主婦」になろうと思っていたんですよ。

小さい頃は、漠然と、学校の先生になってもいいかなぁーくらいに思っていましたね。

私の父が、当時としては珍しく、女性も働くのが当たり前の時代が来ると考えていたんです。それで、男性も、女性も関係なく活躍するのが当たり前の時代が来るからということで、手加減なしの教育を受けたんです。

「女の子だから」という妥協一切なし。卒業したら福岡に戻ってくるというのが東京の大学に行く条件でした。

就活もせず専業主婦になろうとたくらんでいた私に「東京にだしてやったお礼に教員採用試験だけは受けろ」って言われて受けたら、通ってしまったんです。

それで、働かなくちゃいけなくなって、働き始めたら、物事に熱中するタイプなので、やりはじめたら、ハマっていってしまったという感じでした。

―― 実際に和田さんのお父さんの考えていたような女性が働くのが当たり前の時代になりました。そのようにして育ってきた和田さんの中にも、教育というのは、今じゃなくて、未来を考えてしなくてはいけないという考えがあったのですか?

はい。私は、高校の進路指導に長年、携わってきて、ドリカムプランという生徒主体の進路学習を企画したんです。

それは、実は、父の考えから来ているんです。21世紀に通用する人間になれというのが父の口癖だったんです。

そういう未来が来るから、その未来で通用する力をつけるんだということを、小さい頃から言われ続けて来ました。

それで、常に先を見るということを意識するようになりました。

私が、学校の仕事の中でも特に進路指導部に入っていったのは、常に先を見るという父の考えを受け継いでいて、私の中にそれがあったからだと思います。

父は、会社を経営していました。

だから、ずっと先がどうなるか、日本の経済がどうなるか、ということを考えていて、食卓の話題は、常にそれでした。

なので、我が家の家庭教育をドリカムにしたという感じなんです。

「常に先を見る」という父親の教えが、生徒の将来について考える進路指導へと繋がっていったというお話は、とても興味深いです。僕は、和田さんのことをとても起業家精神に溢れる方だなと思っていたんですが、育ってきた過程をうかがって納得がいきました。

 

ドリカムプランの誕生秘話

―― 教師になってから、ドリカムプランをはじめるまでの間は、どんなことを考えて教師をやられていたんですか?

教師として一人前になって、いろんな役職を引き受けられるようになろうと思ってやっていました。

23歳で働き始めて、ドリカムプランが34歳のときなので、その間の10年間は、国語科の教師として一人前になることと、子ども二人を出産したんですが、二人目を出産して復帰したときに副担任で進路指導部に配属されたんです。それまでは、生徒指導部だったんです。

進路の手引きなどを作るようになって、進路実績の分析などをするようになって、はまっていったんです。

最初の10年というのは、ドリカムプランを生み出すために、進路指導へコミットしていったという時期だったんだなと、今から振り返ると思います。

―― ドリカムプランの構想は、いつごろ生まれたんですか?

平成6年に新しい教育課程が高校で始まって、そのときに「新しい学力観」という言葉が出てきて、「意欲や関心や態度」という言葉がキーワードだったんです。

ただ、新しい学力観に立った教科の授業とはどういうものか分からないまま新入生を迎えました。

学年の目標は「新課程 城南元年」。

新課程の教科教育法がわからなかったので、新しい学力観について自分たちで調べに行きました。

たくさんのことを自分たちで勉強していく中で、宮崎県立宮崎西高校というところに、宇田津校長先生という方がいらっしゃったんです。

その当時の宮崎西高校が創立20周年で、東大に合格を結構出されていたんですよ。その当時の城南高校は31年目で、そんなに東大が出ていなかったんです。いったい何をやっているんだろうと思って、宮崎西高校にお邪魔しました。

そのときに、宇田津校長先生に怒られたんですよ。

「進路実績がどうしてこんなに上がっているのか、模擬試験とか、課外補習とか、そういうことを聞きにきたろうが。だから、あんたたちの学校は、だめなんよ。」

と一喝されました。

大人4人、雁首そろえて怒られて、もっと先を見ろって言われました。

どこの大学に何人合格するかが問題じゃなくて、その子たちが、大学卒業して、社会に出て、どのくらい社会に貢献できる人材になっているか、そこが勝負なんだっておっしゃっていました。

教師が目の前の成績のことばかりを言っているような学校はだめだ、先を見なくてはだめだって言われて、そのときに一番ショックだったのは、

「大学卒業後こそ、人生の本番」

という言葉でした。

実際、当時の宮崎西高校は、一週間30単位でやっていて、土曜日をイベントとか活動に充てて、それで、進路実績を出してらっしゃったんですよ。

その話を聞いて、思い当たることがあったんです。

英検と模擬試験の日程がぶつかったときに生徒がどちらを受けたらいいか相談に来るんですけど、その当時の私は、模擬試験を優先しなさいという指導をしていたんですよ。

高3の模擬試験は今しか受けられないけど、英検は、これからも受けられるじゃないのというようなことを言っていました。

でも、それは、間違いだなって思いました。

将来、英文科に行こうと思っている生徒たちが英検を受けるって言っているんだから、それを私たちが止める権利はないって思いました。

将来の自分の進路に役立つようなことを、生徒が自分でやりたいって言っているのだから、それをどんどん奨励すべきじゃないかなって。

それで、自分の進路に関係した活動を、すべての生徒がするべきだと思ったんです。

宮崎西高校に行った4人で帰り道でずっとその話をしていて、帰りの飛行機の中では、もうその構想ができていて、出張報告のタイトルが、ドリカムプランだったんです。

自分の夢を実現するために高校生活ってあるんじゃないかと思ったんです。

宇田津校長先生と話をして、頭を殴られたような気がしました。

私たち、今まで何をやっていたんだろうって。

それまでは、合格させるためのテクニックを教えていたけど、そういう進路指導は間違いだ。

偏差値で振り分けるんじゃなくて、これをやりたいから、この大学へ行くんだという進路指導をすべきなんじゃないかといって、いろいろやりだしたわけです。

父親から「先を見ろ」と言われて育ってきた和田さんが、進路指導の新しい方向性を探っていたときに出会った言葉が、宇田津校長先生の「先を見ろ」という言葉だったというところに運命的なものを感じました。

和田さんの中で、この2つが強くシンクロしたからこそ、ドリカムプランが生まれたのではないかと思いました。

 

手作りで進めていったドリカムプラン

―― 宮崎西高校の視察から戻ってきてから、どのようにしてドリカムプランがスタートしたのですか?

学校訪問から帰ってきて最初にしたことは、進路希望調査を変えました。

それまでは、どこどこ大学希望とか、就職希望とかだったんです。

福岡の場合は、みんな九州大学って書くんですけどね。

そういう進路希望調査を止めて「10年後、20年後、あなたは何をしていたいでますか?」というアンケート調査にしたんです。

仕事とか、家族とか、自分が今の時点でこうありたいというのを書いてもらったんです。

それは、新しい学力観に興味、関心というものが含まれていたんですが、生徒の興味、関心はどこにあるんだろうかと思い、それを知るところから始めました。

10クラス440人に書かせたところ、様々な志望が出てきました。

それで、似たような将来像を持っている人たちを、一度、集めてみようということになったんです。

医療看護系のグループとか、工学に行きたい人とか、建築に行きたい人とか、16のグループにグループ分けしたんですよ。

そのグループにドリカムグループという名前をつけて、あなたたちの将来に役立ちそうだと思うような活動(ドリカム活動)があれば、どんどんやりなさい。もしそれが平日と重なっていたら、場合によっては学校を公欠にしてもいいというように奨励をしたんです。

各グループには、担任、副担任の先生をつけて、ドリカム顧問という名前をつけました。

各グループは、自分たちの夢を実現できそうな大学をシラバスで調べたりしました。

大学入試の説明会に各大学から来られて、大学の方が入試の話をしようとするんだけど、生徒が聞きたいのは、大学に入って何ができるのかということなんですよね。

生徒のニーズというのは、入試の情報じゃなくて、学問の情報なんだと思いました。

それで、大学の先生方に来てもらって、学問入門講座をやろうと思いました。

それでジョイントセミナーというのを始めました。

社会人を呼んできて、今の仕事について話をしてもらう職業人講話とかもやりました。

生徒がこういうものを欲しているから、それを一つ一つ形にしましょうという感じでずっと作っていったんですよね。答えは生徒の中にあったんです。

だから、本当に手作り感満載。

それが、次第にきれいにシステムになってきたのであって、やっている当時は、同時進行形の多面体だなと思っていました。

―― 軸になる部分を変えたから、そこに付随するものが次々に代わっていったという感じですよね。

そうですね。

高校生活というのは、将来の自己実現のために存在するんだという覚悟を決めたんですよね。

どうしてできたかというと、生徒がそれで、喜んで動き始めたからだと思います。

たとえば5月の始めに看護の日というのがあって、そのイベントを生徒に紹介したら、生徒は、「それ知っています。私たち自分で申し込みました」って言っていたりとか。

車椅子マラソンにボランティアで出かけたりとか。

いろんなことを生徒がしだして、それが、楽しそうなんですよね。

今でいうアクティブラーナーなんですよね。

生徒は、偏差値で大学を選ぶんじゃなくて、自分のやりたいことで大学を選ぶようになりました。

 

―― 和田さんのお話をうかがって、ドリカムプランは、今僕がやっているのと同じように試行錯誤をしながら進んでいったんだろうなとイメージが沸きました。

本当に手作りでしたね。

それが、全国的に注目を浴びて大騒ぎになってしまったんですよね。

だけど、私としては、きれいなシステムが計画的にできたものじゃなくて、泥臭い手作りだったんです。

ゼロから何かが立ち上がっていくときのプロセスというのは、コアになる人たちに大きな熱量があり、魅力的なビジョンが生まれて周りを巻き込めるようになり、目の前で起こっていることから学びながら試行錯誤を繰り返していくうちに、いつの間にか形ができていくというものなんじゃないかなと思います。

宮崎西高校から帰ってきた和田さんたちが、こうあるべきだという覚悟を決めて踏み出した一歩が、周りを動かしていき、大きな実りをもたらしたのだということがよく分かりました。

 

学校の枠組みを越えて社会へ出て行く

―― 未来へ向けて生きる力をつけるような教育をしたいと思ったときに、自分は、今まで狭い世界で生きてきたから、社会のことを知らないということに気づいたんです。それまでは、大学進学の指導だけしていたんで、そのことに気づきませんでした。

知識基盤方社会と言われても、自分は20世紀型のトップダウンの教育を受けていて、コラボレーションなんかもやったことなかったわけです。

自分たちが知らないことを伝えられないのではないかって「反転授業の研究」で問いかけて、組織の枠組みを超えて、オンラインでグループワークをやったり、コラボレーションで価値創造することを始めたんです。

ドリカムプランのときはいかがでしたか?

ドリカムをはじめたときに、生徒をもっと社会に出さなくちゃって思いましたね。

極端な話、郵便の書留さえ分からない。

受験票を出しに行くときに、書留にしなさいよっていっても、「何ですかそれ?」って言われたりするんです。

社会から隔離された学校じゃいけない。もっと社会に出ようよという考え方がありました。

どういう社会になるのかということは、予想はしつつ、でも、誰もわからない。

ドリカムは、偏差値で大学に行くのがおかしいよ、偏差値が合うからこの大学に行くという選択を止めて、自分のやりたいことをやろうよ、というメッセージだったんです。全国の高校の先生たちも内心そう思っていた、だから広がっていったと思います。

具体的には大学で何が学べるのかということを調べてみるところから始めました。

ドリカムを始めたころは、「ドリカムプランって何ですか?」と聞かれて、私たち自身が答えられなかったんです。

足で稼ぐ進路指導なんて言われたりしていました。笑

観念的な志望動機ではなく、具体的な志望動機を作るというような説明をしたりしていたんですが、これがドリカムの完成形だというものはずっと分からないまま、手作りし続けていたんです。

そういう意味では、未来から振り返ってああだこうだということは言えるんでしょうけど、そのときは、現在進行形しかない。

ちょっと先の未来がこうなっているかな?こうなればいいんじゃないかな?みたいなことを考えるんだけど、それは存在しないから、自分たちで創っていこうって。

それしかなかったですね。

ずっと創り続けていたから、ドリカムをやっているとき、自分のことを道路工事の現場監督みたいなものだと思っていました。

道がないところを切り開いて、道を作っていくようなことをやっているなと思っていたんです。

これは、僕がアクティブラーニングについて感じていることと強くシンクロしました。

これから知識基盤型社会が来ると予想されるから、そこへ適応するためにアクティブラーニングがあるのであれば、社会から期待されている形が変わっただけで、社会の期待通りにはまり込んでいくという構造自体は維持されているのではないかと思うのです。また、適切な授業の型があるという考えも生まれてくると思います。

でも、和田さんは、未来を予想はするけれど分からないのだから、現在進行形しかないということで、自分たちで創っていくわけです。そして、その試行錯誤を身近に見ている生徒たちも、その背中を見ながら、自分たちで未来を創っていくことを学んでいたのではないかと思います。

ドリカムプランの形ではなく、ドリカムプランというものが出来上がっていく発展途上のプロセス自体が、生徒の主体的な学びを促していったのではないかと思いました。

想いを言語化して、周りを巻き込んでいく

――ドリカムプランを立ち上げたときは、最初から4人チームだったんですね。それは、強みですね。

その4人のうちの二人が同じ学年、残りの二人が上の学年だったんですよね。

宮崎西高を訪問した夜、宮崎で、夜中まで4人でワーワー話したのが、一番の決め手になりましたね。

帰ってきてからは、周りの先生たちにも、ずっとその話をしていましたし、
授業に行っても、生徒に向かって1時間じゅうその話をしていました。

自分のマインドセットがものすごく変わったという興奮があって、
みなさんにそれを伝えたいという気持ちだったんです。

生徒たちにも、今からこういう教育をするからね!という学年集会を開いたりしていました。

一人でやるんじゃなくて、うなづいてくれる相棒がいるのが助かりました。

あとは、学年の10人の先生が、ドリカム開発チームになったんです。

一人ではできないので、一緒にやれるチームがあるというのは大事なことですね。

当時、「どうやって組織化したんですか?」「一人でやるんじゃなくて、学年全体とか、学校全体でやるのにはどうしたらいいですか?」という質問を、よく受けました。

―― 国語力が何のために必要になるのかが、大人になるまで分からなかったんですけど、和田さんを見て、腑に落ちたんです。反転授業の研究のオンライン講座は、発展途上なので、言語化されていない活動がいっぱいあって、モヤモヤの中で進んでいるんですが、それを、を和田さんがぐんぐん言語化してくれるので、その言葉を借りながら、自分も表現できるようになっていきました。

表現ができると、想いを伝えられるから、周りが動いてくれるようになりますよね。

私は、言葉は現実を創るという言い方をしています。

ドリカムという言葉を言って形にしたことで、生徒自身の夢を実現するんだ、そのために高校があるんだという考えが生まれました。

また、ドリカムプランという言葉が、生徒の進路学習という概念を登場させました。

だから、言葉が、いろんな混沌の中から一部を切り取って、意味を与えるんだと思います。

それをするのが、国語を仕事にしている人の役割かなと思います。

特に、新しい概念を生み出すときって、言葉によってしか生まれないし、言葉によってしか伝わらないと思っているんですよね。

―― それを、和田さんが体現しているのを見て、そういうことのために国語力があるんだなというのがよく分かったんですよ。

僕も、今の仕事は、ほとんどそこが中心になっているので、うまく自分の考えていることを表現できたときに、うまく伝わって、人が動いてくれたり、協力してくれたりするので、言葉で表現すると言うことの重要性を痛感しているんですよ。

考えていることを言語化することが、思考そのものだし、思考の整理になると思います。

だから、思考力、判断力、表現力は、本当に大事なセットだと思っています。

 

未来を創っていくフロンティアでは、まず最初に言葉にならない直感があって、そこから試行錯誤的な活動が始まり、やっているうちに何となく分かってきたことを言語化していくことで土台ができて、また先へ進めるようになるというプロセスが回っていると思います。

和田さんの言語化力が、未来を創っていくフロンティアにおいて大きな役割を果たしているのを目の当たりにして、表現することがなぜ大切なのかが、今までよりも一段と理解できたように思います。

生まれ育った環境が言語化力を育んだ

―― 和田さんは、言語化力や思考力を、どうやって鍛えてきたんですか?

これは、生活と動物的な勘みたいなものですね。

私の父が、吃音だったんです。父の男兄弟5人はみんな吃音で、女兄弟4人はものすごい早口。

私の実家に行くと、おばさんたちがすごい早口で話すので、夫が聞き取れないくらいなんです。

父が吃音だったため、私は子どものころから、父が思っていることを「お父さんこういうことよね」って代弁していたんです。

それと、父が9人兄弟で、男の中では末っ子なんだけど、祖父の会社の跡を継いだんです。だから、ものすごい大家族と、たくさんの会社の人に囲まれて暮らしていていたことも影響していると思います。

親子水入らずといったような空間を体験したことがなく、絶えず誰かがいるわけです。

そうすると、ものすごい複雑な人間関係や、口には出さない思いというものがあって、それを小さい頃から眺めて育ったんですね。

橋田寿賀子の『渡る世間は鬼ばかり』を地で行くような生活だったんですよ。

私がどうして国語の教師になったのかなと考えると、言葉にはならない人の心を読む、人間関係を読むということを、生活の中で無意識に鍛えてきたことが関係しているのかなと思います。

場をファシリテートするときに、そこで起こっていることに対する洞察力こそが、大事だなと思います。様々な小さな兆候があり、それらを注意深く観察し、フィードバックを送っていくことで次の展開が生まれてくるからです。

言葉にならない思いが複雑に絡み合う環境が、国語の教師としてだけでなく、場を創ってプロジェクトを立ち上げていくリーダーとしての資質を育んできたのかもしれないと思いました。

我流アクティブラーニングの国語の授業

―― 和田さんは、生徒が主体的に学ぶこと、主体的に生きることを大切にされていいらっしゃいますよね。我流でアクティブラーニング方授業をされていたということですが、どのような授業だったのですか?

私のAL型授業は、オール質問です。

国語・古文の場合、教科書本文でテスト問題を作り、解答、口語訳とともに配布します。

生徒は各自で解き(友達相談可、立ち歩き自由)、わからない箇所があれば挙手します。

私がそこへ行き、生徒に誘導質問をしながら、生徒が答を自分でgetするまで伴走し、生徒が言えれば一丁上がりです。

別のところから同じ箇所の質問挙手があれば、その一丁前の生徒(弟子)が行って説明します。

周りに集まってきている生徒もそれを聴いています。

その孫弟子がまた玉突きのように挙手している生徒のところへ出張説明、という具合でした。

進度は各自の責任で、メインの大問は4、5人で島を作ってグループで考えさせて発表というのが基本型でした。

現代文も漢文も基本型は同じでした。

―― 生徒が今までに受けてきた授業と全く違うものだったと思いますが、生徒は、どのようにしてそれを受け入れていったのですか?

4月のオリエンテーションで授業の型について、なぜこんな型の授業をするのかを説明しました。

それでも4月には「なぜ教えてくれないのか?」という生徒の質問が出てきますが、「だって、受験するのは私(教師)じゃなくてあなた(生徒)。試験本番の時誰も教えてくれないよ。社会に出たら先生いないよ。自分でやらなくちゃ。その訓練。教えてもらうのではなく、自分で考えてみよう」というようなことを繰り返していました。

かなり乱暴な導入ですが、これくらい荒療治でないと生徒は「先生から教えてもらう」というパラダイムからは脱却できません。

 

―― 授業をするときに、どんなことに気をつけていましたか?

学習するのは生徒自身であるということと、説明する人が一番理解するということ。つまり、表現と理解は一体ということです。

それを実現するために、先生は答えを言わずに、生徒が答えにたどりつくよう、誘導質問を、順を追いつつするようにしていました。

そして、生徒が答えにたどり着いたら「今、自力でわかったね」とほめまくる。

さらに、質問してくれたことにお礼言う。「あなたの質問はみんなの疑問。よくぞ質問してくれた」

生徒が間違っても「良い間違いしてくれた。皆もこの落とし穴に落ちるところだった。未然防止になった」などと言っていました。

「間違うのは恥ずかしいことではないよ。おもいきって自分の考え言ってみて」

「答えもらって喜ぶのはサル、答え書き写すのもサル。どうしてこうなるのか考えるのが人間」

などとも言っていました。

また、生徒が自学しやすいテスト問題プリントを工夫して作っていました。

和田さんのAL型授業には、主体的な学びを支援するためのエッセンスが溢れています。4月にマインドセットを変えるための話をするところから始まり、望ましい行動に対して丁寧にフィードバックを与えていくことで、道を示しているところが、とても参考になります。

「表現と理解は一体」という考えに基づき、どうやって教えることを授業内に取り入れるのかということから、弟子、孫弟子が生まれて学び合いをしていく仕組みが生まれたりするなど、この授業スタイルも、和田さんが、試行錯誤をしながら熟成していったものなのだなと感じました。

 

ドリカムプランとアクティブラーニングを繋げるもの

―― 今、アクティブラーニングや反転授業が注目されている状況って、ドリカムプランがやろうとしていたことを、らせんを描いてまためぐってきたような感じですよね。僕たちが、反転授業と出会って学び始めて、いろんな考え方と出会ったりしていて、そのなかで和田さんと出会って、今、僕たちが考え始めたことを20年前にやっていたということに驚いたんですよ。

私にとっては、既視感がありますね。20年前にそれをやっていましたというような感覚があります。

ドリカムとアクティブラーニングが繋がる芯は何かなと考えたら、結局、主体性の育成だと思います。

それが、ドリカムという形を取ったり、アクティブラーニングという形を取ったりしているんだけど、私がしたいのは、主体性の育成なんだなと思います。

それは、私が、人から何かやらされるのが、とても嫌いだから。笑

だから、自分のやりたいようにやりたいよって。

人生は、自分のやりたいようにやるために生きているんじゃないの。

だから、自己満足で十分よ。自分を満足させればいいじゃない。

自分の主体性を大事にしたいし、相手の主体性も大事にしたいというところが中心にあるのではないかとこのごろ考えています。

和田さんがおっしゃるように、自分の主体性を大事にし、相手の主体性も大事にすることを中心に据えて、アクティブラーニングや反転授業、キャリア教育などを展開していけば、それぞれが、それぞれのやり方で輝くことができるような社会の在り方が見えてくるのではないかと思いました。

未来を創るフロンティアは、常に現在進行形

―― ドリカムプランが立ち上がったときって、試行錯誤の連続といったプロセスだったと思います。反転授業の研究のオンライン講座も、まさにそういうプロセスをたどっています。

僕は、この発展途上のプロセスに、たくさんの人を巻き込みたいんですよ。
運営ボランティアという人たちが、実は、一番、アクティブに学べる状況にあるんですよ。

集客の苦しみとか、どういう言葉を発信すれば周りに伝わるかとか、Moodleをどのように設定したら分かりやすいかとか、いろんな試行錯誤をシェアしていくんですけど、講座を受講した皆さんには、こんどは、作る側に回ってもらいたいって思っているんです。

そうすると、受講者として経験した視点からアイディア出してくれたり、自分からやることを見つけて動いてくれたりするし、受講者と運営の垣根が低くなるので、受講者もアクティブに学びやすい状況になってくるんです。

受講者が、順に、運営ボランティアになって、広がっていくとおもしろいなぁと思っているんです。

そのプロセスこそが学びですよね。

きれいにできた結果よりも、その途中の産みの苦しみみたいなところこそが、面白いんじゃないかな。

ネットの講座が、出来上がった大企業みたいなものになってしまったら、もう大企業病になってしまう。

だから、私は、そういう意味で、完成せずに、ずっと成長し続けるほうがいいんじゃないかなって思います。

生命体って、そういうものですよね。

 

―― 一つ進むと、すごく先の未来までは見えないんですけど、ちょっと先が見えるんですよね。

そうそう。次の扉が開くんですよね。

―― 今回は、オンライン講座で生活できるような人を作ろうと思ったんですよ。

今、いろんな理由で体調を悪くしたりして、働くのが難しい状況になる人というのがいたりするんですよ。それを、一時的にでも、収入面で支えられたらいいなと思ったときに、「反転授業の研究」だけだと、年間6回が最大なので頭打ちになるなーと思い、ここのノウハウを持って、外とコラボしていくしかないなと思ったんです。そして、そのためには、僕が運営を手放す必要があると思ったんです。

運営を手放すことを決めて、コラボする相手を探そうと思って目を外へ向けたら、パタパタといろんな扉が開いていきました。

田原さんは、今、体調を崩した人が、ネット果樹園で収入を得られるようにっておっしゃってましたけど、私は、これを知ったときに、老後を考えたんですよ。

私が、今みたいに遠くまで行って活動できなくなっても、ここで先生をすればいいって。

私はあと5年で定年なんですけど、ネット上でベテランの学校の先生たちを集めたお助け講座のようなものを作るというのに可能性を感じましたね。

子育てしている女性とか、家を空けられませんというひとに、夜9時半からやるオンラインの相談室みたいなものを、ここでできたらいいなーと思いました。

和田さんとお話していると、「同じ絵を見て話している」という実感があります。僕が今、現在進行形で体験していることについて話をすると、同じ種類のことを体験した和田さんだからこそのレスポンスが返ってきて、どんどんシンクロしていきます。

和田さんが経験をシェアしてくださることで、僕たちが進みやすくなり、逆にオンライン講座の経験を和田さんに提供していくことで、和田さんの豊富な経験を広く役立てることができる状況を生み出していければ、win-winの関係を生み出せそうだと思いました。

身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ

私が田原さんに感心したのは、これをビジネスとして成り立たせるということを考えているところなんです。

私は学校の先生をしているけど、父が商売をしていたのと、一族がみんな商売人で、私が最初のサラリーマンなんです。

「生徒がこれだけ合格したよ。」と父に言うと、
「それでお前の給料はいくら上がるんだ?」と言われたりしていたんですよ。笑

だから、ここに新しいビジネスの形があるんだなって思ったんですよね。

でも、ビジネスを前面に出すとうまくいかないということを、これを見て思ったんですよ。

―― 本当に、そうなんですよね。

田原さんが書いていたけど、前回のファシリテーションの講座のときに、いったん、構えをリセットしてやったらうまくいき始めたというのを知って、そこで、一度、お金のこととかを取り下げたんじゃないかなって思ったんですね。

儲けることをいったん離れて、まずは、本当にやりたいことは何なのかということを形にしたら、後からそれにお金がついてくるという感じじゃないかと。

生徒に目先の合格を願っているうちは、まだまだよーみたいなのと似ているなと思いました。

合格、不合格を超えたところにあるものをつかんだときに、合格がおまけでついてくるって、私はよく言っていたんです。

―― お金を稼ぐことと似た構造を持っていますよね。

本当にそういう手放しがあったんですよ。「反転授業の研究」に大きな労力をかけるようになってきたこともあって、そこで収入を得られるようにならないと苦しいなと思って固執していたんですね。そこを手放したことで、はじめて、周りの人が共感して加わってくれるような動きになったんだなって思います。

お金のことが前面に出ているとギラギラして、寄ってくる人も寄ってこない感じになりますよね。

「身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ」ということわざがあるじゃないですか。一回、ぼーんと身を捨てなくちゃいけない。身を捨てると何かつかめるものがあるといつも思うんです。

前回のファシリテーション講座の後、U理論に出会い、手放しと、その後の結晶化のプロセスが非常によく説明されていると思いましたが、これは、きっと、過去に多くの人が繰り返し経験してきてことわざにもなっているような普遍的なプロセスなのですね。

身を捨てた経験がある人は、同じような状況になった時に、自分の理解の範疇に収まらないことに対して、世界を信頼して身を投げ出せるようになるのではないかと思います。

そして、それができると、殻を破りながら大きく成長できるチャンスが生まれるのではないでしょうか。

 

一斉に変化することを求めずに多様性を認める

―― 今、時代が大きく変化していることを実感しています。僕が、「反転授業の研究」でやっているようなことを始めたのは、たった2年前なんです。状況が変わって、マインドセットが変わると、いろんなものが次々に現れてくるんだなって驚いています。

絶えず変化していきますよね。

諸行無常という言葉を国語で教えてきましたけど、やっとこの頃、一瞬たりとも同じものはなくて、ずっと変わっていかなければいけないんだということを言っていたんだということに気がつきました。

―― 僕は、その流れをキャッチする人としない人は、どこが違うのだろうかって考えるんです。

自分と外側の接点に現実があると思うんですが、うまく流れに乗る人は、自分だけじゃなくて、外側だけじゃなくて、接点の部分で、その時々に出てくるものをうまくキャッチして流れに乗っていくように見えるんです。

私は、みんながみんな、その流れに乗れたりしなくてもいいんじゃないかと思います。

それは、その人の在り方なんじゃないでしょうか。

だから、こんなにいいことだから、どうしてみんな、分からないの?って言っても、たとえば、それが分かる人は3割とか4割いたら御の字で、7割の人は出来上がったものを享受するタイプなのかなって思います。

でも、それはそれで、そういう存在も必要だと思うんですよね。

ルーティンをがっちりやってくれている人がいるから、新しいものにチャレンジできるというか。

クリエイターとか、イノベーターとかいうタイプもいれば、そうじゃないタイプの人もいて、向き不向きがあるもんだなって思います。

――確かにそうですね。僕は、ついついみんなにやってほしいって思いがちなんですよ。

その人、その人のスピードというものがありますよね。生徒の進路指導していても、その子が気がつくというか、目覚めるというか、本気になるというか、そのタイミングがどこでやってくるかは、本当に人それぞれなんですよね。

教師としては、みんなに一斉に速く火をつけたいわけですが、やっぱり、来るべきタイミングというものがあって、待たなくちゃいけないなって思います。

意欲の大量生産みたいなものはできないなって感じています。

いろんな刺激を与えることはできたとしても、あとは、本人のスピードに任せなくちゃいけないかなって思っていますけどね。

――予備校で一斉講義型の授業をやっていたときには気がつかなかったんですけど、AL型の授業をやるようになって、はじめて生徒の個性とか多様性に気がつくようになったんです。

フィズヨビで学びあいの夏期講習をやったときに、学びあいに入らない生徒がいたんです。

どうして学びあいに入らないのか、入ればいいのに!と思ってメールしたりしていたんですが、一人で学びたいって言うんです。ハンドル名もよく見たら「一人で学ぶのが好き」でした。笑

こういうのも多様性として認めなくちゃいけなかったんだなって気づきました。

自分が「学び合い」という一つの形にこだわっていて、そこに押し込もうとしていたんだなって。

アクティブラーニングの研修会でも、その質問が多いですね。一人が好きな子をグループワークに参加させるべきかどうかって。

小林先生もよく話をされるけど、それはそれで、一人でいいんじゃないですかって言うんですよ。

少しずつソーシャルスキルトレーニングとして、周りと話ができるようになっていけばいいんじゃないですかねって。

いろんなタイプの人がいて、それぞれ、自分のやり方で、自分のやりたいようにやりたい。

―― 一斉講義をやっていたときは、そういうことに気づかないで済んでしまっていたんですね。

今日、職員研修会で話をしたのは、ヒドゥンカリキュラムのマインドセットにいかに私たち教師が強く捕らわれているかということでした。

学校で先生が一斉講義をして、生徒は黙ってそれを聞くものだという価値観の中だけで生きてきたので、多様性ということに気づかないんじゃないですかね。

それは、強者の論理というか、元気な人は、病気がちの人の気持ちが分からないのと同じで、自分が病気になってはじめて、こんな考え方や感じ方というのがあるんだなって思うじゃないですか。

だから、一斉講義をやっているなかで、多様性に気がつくというのは難しいと思います。

これは、前に出てきた和田さんの言葉「自分の主体性を大事にし、相手の主体性も大事にすることを中心に据える」ということと関係しています。

相手の主体性を大事にするということは、気づきが起こるタイミングや、進んでいく方向性もそれぞれなのだということを認めて、それを前提にして授業を進めていくということになります。これが、一斉講義からAL型授業へ転換するときに教師に起こる大きなマインドの変化かもしれません。

 

新しい共同体が生まれる瞬間に私たちはいる

―― ワールドカフェを作ったアニータ・ブラウンが、集合知の重要性を繰り返し述べているんですよ。いろんな複雑な問題を解決するために、ワールドカフェは、集合知にアクセスするための1つのメソッドなので、それを学んで、集合知によって問題解決して欲しいというメッセージを発していたんですね。

和田さんの中では、集合知は、どのような位置づけになっていますか?

私がアクティブラーニングの研修会とか、いろんなところで使っているキーワードは、互恵、共創、集合知なんです。

大学受験は、一人でやっているじゃないですか。生徒は一人で勉強して、自分さえ合格すればよいという側面が大学受験の中にあると思います。

アクティブラーニングが画期的だなと思うのは、みんなでよくなるという考え方があるところ。自分一人が幸せになるのではなくて、みんなで幸せになりましょう。そのために、協力しましょうということを目指しているところです。新しい共同体が生まれる瞬間に私たちはいるんだなというふうに思っているんですよね。

一人でやるより、みんなでやったほうがいい答が出る。
みんなで発表するほうが、発言しやすい。

世の中複雑化すれば、個人の頭の中だけでは無理だと思います。
これからは、集合知のほうに行くと思うんですが、そのスタートが、アクティブラーニングなんじゃないかなって思います。

生徒たちのリフレクションカードを見ると、みんなでやるとよく分かったとか、助けてもらってよかったとかという感想がどんどん出てきます。協働したり、協力したりすることの幸福感を感じられるんです。

一人でやっていると孤独で不安なんですけど、仲間がいると心強いんです。

集合知のよさを、アクティブラーニング型の授業の中で、一部の先生や生徒が少しずつ少しずつ分かり始めるんです。

そういう生徒が増えてくると、「何でも協力してやろうよ」というような「勉強の部活」みたいなものが生まれてくるんじゃないかなって期待しています。

――「勉強の部活」って分かりやすい表現ですね。

勉強に限らず、仕事のプロジェクトチームも協力してやろうよということなんですよね。
そして、それが、とても幸せなことなんですよね。

私は、このオンライン講座に参加して、何が幸せなのかというと、そういう仲間というか、友達にいっぱい出会えたということなんです。

無条件に信頼できるんですね。

たとえば、腹の探りあいとか、お互いの嫉妬のドロドロみたいなものがあるのがこれまでの世の中、そういうものを全然感じない仲間は、本当にありがたいことだなって思います。

―― どうやって、今の状況が生まれているのかはよく分からないんですが、志の部分で集まってきて、人が入れ替わっても、ちゃんとそんな感じになるんですよね。

みんながオープンマインドで、ものすごく受け入れてくれるし、親切にしてくれる。
集合知を作っていく仲間とか集団とかは、とても人類に幸福を与えると思います。
少なくとも一人じゃない、困ったときはここに頼ろう!その代わり、自分も人のお役に立とう!という互恵の考え方がどんどん増えていくんじゃないかなって思います。

僕は、40歳を超えるまで、「協働したり、協力したりすることの幸福感」ということを感じたことがありませんでした。でも、「反転授業の研究」のオンライン講座で、その幸福感を体験し、マインドセットが劇的に変わりました。

その結果、僕たちが感じているこの幸福感を広めていけばいいんじゃないかと思いました。

まず、教師が体験し、それを、生徒がAL型授業で感じることができるようにしていけば、生徒は、将来、その幸福感を求めていくようになるのではないかと思い、社会を大きく変えていく具体的なイメージが湧きました。

和田さんが、アクティブラーニングやドリカムプランを通してたどり着いた結論と、僕たちが感じていることとが一致していたことで、さらに確信が深まりました。

和田さんがおっしゃっているように、今は、まさに「新しい共同体が生まれる瞬間」に立ち会っているのだと思います。

新しい共同体が生まれるためには、マインドセットの変化が不可欠で、そのためには、今後、何度も、ぼーんと身を捨てなくちゃいけない状況が出てくると思います。

和田さんのようなパイオニアが、グループ内にいてくれることが、今後も大きな助けになると思います。

 

 

45名によるオンラインでの学び合いが未来への扉を開ける

「反転授業の研究」の田原真人です。

昨日(2015/11/19)から、反転授業の研究が主催するオンライン講座「ファシリテーション&コーチング講座」が始まりました。

僕は、過去7回の講座では、ずっと運営をやってきたのですが、今回からはプロデューサーに回り、運営をお任せすることにしました。

その理由は2つあります。

1つは、「反転授業の研究」のオンライン講座が、価値創造から価値提供のフェーズに入ったと感じたからです。

ビデオチャットなどのテクノロジーは、すでに世界を繋いでいるのに、人間の心は、まだ分断されたままです。

人間の心を繋げていくのはテクノロジーではなく、「人間らしい暖かい場」なのではないかと思います。

オンラインに「人間らしい暖かい場」が数多くできることで、遠く離れた人同士が信頼関係を結び、協力できるようになっていくのではないでしょうか。

僕達は、集合知によって「人間らしい暖かい場」をオンラインに創ることができるようになりました。そのノウハウを、多くの人に伝えていくことに、大きな価値があると感じています。

これからの僕の役割は、「反転授業の研究」のグループを、想いを同じくする他のグループや個人と繋ぎ、コ・クリエーションが起こる状況を作り出していくことなのではないかと思いました。

もう1つは、運営チームだけでも、十分に講座の運営ができるようになってきたと確信したからです。

特に、これまでのほとんどの講座に、受講者や運営チームとして関わってきている松嶋渉さんと倉本龍さんは、僕以上にオンライン講座のことを理解しています。僕が運営から抜けることで、更なる学びのチャンスを運営チームにもたらすことができると感じました。

実際に、昨日のセッションを見ていて、運営チームが大きな生き物のように有機的に動いてオンラインの場を創っているのを見て、その確信はさらに強まり、ただただ、感動していました。

fc01

これまでになかったインタラクティブなオンライン講座

現在行われているオンライン講座と、私たちのオンライン講座の違いは、どこにあるのでしょうか?

代表的なオンライン講座と比較してみましょう。

MOOCs

講師の講義ビデオを視聴し、課題を提出。講師と受講者との間の交流は無し。受講者同士は、ディスカッションフォーラムで交流

Schoo(スクー)

講師の講義をライブ配信し、受講者はチャットボックスに書き込む。講師と受講者との間にインタラクティブな関係がある。

反転授業の研究のオンライン講座

  • 受講者は、Moodleにログインし、自己紹介などをフォーラムに投稿し、相互にコメントし合う。
  • リアルタイムセッションの前半では、講師が講義を行い、受講者はチャットボックスにコメントを書きこむ。
  • リアルタイムセッションの後半では、受講者はグループに分かれ、ビデオチャットで演習を行う。
  • 振り返りや課題をMoodleのフォーラムに書き込んで共有し、相互にコメントし合う。
  • 雑談ルームで、運営チームや受講者同士で交流し合う。

今回は、31名の受講者が8グループに分かれて同時にグループビデオチャットを行い、14名の運営チームがそれを支えています。

大きなホールがあり、前に講師とファシリテーターがいて、ホールのあちこちに腕章をつけたスタッフがいて、ホールの中に8個のグループができていて、ファシリテーターの合図でグループワークが始まる・・・・。

そのような光景は、リアルのワークショップではよく見かけるものだと思いますが、それを、オンラインで実現しました。

online-hall

このようなオンライン講座ができるようになったことで、大きな可能性が目の前に広がったと感じています。

また、その興奮を受講者と運営チームの45名で共有できたことで、新しい可能性が、今後生まれてくるように感じています。

どのようにしてオンライン講座が生まれたのか?

これまで、オンライン講座を運営していく中で、たくさんのチャレンジをしてきました。

無料のオンライン勉強会では、失敗覚悟で大きなチャレンジをし、それを手掛かりにして、有料のオンライン講座を進化させてきました。

一緒にチャレンジしてくれた、「反転授業の研究」の皆さんのおかげで、一歩ずつ足元を踏み固めながら、道を作ってきました。

 

その中で、大きな転機になったのは、「運営ボランティア」という制度を取り入れたことです。

オンライン講座ももっとオープンに、もっとフラットにしたいと思い、思い切って運営ボランティアを取り入れました。

また、受講者全員に「オンラインワークショップ運営の手引き」をプレゼントするようになりました。

オンライン講座の受講者の中から運営ボランティアを募集し、毎回、10名前後の運営チームが結成されるようになりました。

2-3人ではできないことが、10名いるとできるようになります。

2-3人で考えるよりも、10名で考えたほうがアイディアもたくさん出てきます。

オープンにすることで、多くの人が協力してくれるようになり、運営チームの進化の速さが、一気に上がりました。

毎回、新しいことにチャレンジし続け、ノウハウを蓄積していき、集合知によってできることがどんどん増えてきました。

 

この講座が終わるころには、オンラインの場つくりを体験したファシリテーターが45人存在していることになります。

45人が、それぞれ、オンラインで場つくりをして、勉強会などを企画して行ったら、学び合いの渦がどんどん広がっていきます。

テクニカルサポートなどが必要なときは、仲間の誰かが手伝いに行きます。

解決したい課題があったら、オンラインで集まって対話して、集合知を発生させて、解決していきましょう。

可能性は無限大です。

その扉が、昨日、開きました。

わくわくが止まりません。

 

 

教室を外に繋いでいくことが簡単にできる時代がやってきた

「反転授業の研究」の田原真人です。

この1ヶ月間で、オンラインコミュニケーションについていくつかの新しい経験をしました。

その経験を通して、確実に自分の意識が変化してきているのを感じています。

オンラインの場創りの可能性は無限だということを、改めて感じています。

今年になって出会ったZoomというビデオチャットは、接続が簡単で、画像や音質もクリアなので、本当に簡単に繋ぐことができます。

Zoomの使い方はこちら

テクノロジーの発展により、遠隔地と簡単に繋ぐことができるようになると、ハードの問題は小さくなり、人脈とプロデュース力というソフトの部分が重要になってきますね。

僕の意識を変えたいくつかのチャレンジについて紹介したいと思います。

ホームルームでキャリアについて話しました

立命館守山高校の倉本龍さんから次のようなメッセージをいただきました。

田原さん、10/29(木)10:30-11:30頃って時間ありますか?うちの生徒とディスカッションorぼくらのディスカッションを見せるイベントをできないかと思っています。

学内の成績を上げることに気持ちが向きすぎていて、学ぶことを狭く感じている生徒たちに僕のキャリア形成を紹介することで、いろんな道があるのだということを教えたいということでした。

30分間くらい僕が話した後、福岡から和田美千代さん、大阪から平野貴美枝さんが加わり、倉本さんも加えた4人でディスカッションし、生徒からの質問も受け付けるというイベントでした。

倉本さんがZoomのルームを立て、3人が、オンラインで立命館守山高校の教室を訪問しました。

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このイベントの面白いところは、繋がっている4カ所のうちの1つが教室という「場」であるというところです。

個人の場合は、自分から繋がろうという意志がないとオンラインの場に繋がらないですが、「場」に繋いでしまうと、そこにいる人は、本人の意志と関係なく、いきなりオンラインの場に繋がってしまい、オンラインの場を体験してしまうのです。

倉本さんのクラスの生徒さんは、何の準備もなく、それを体験することになりました。

また、このような企画をすぐに実現できるのは、倉本さんがオンラインでアクティブに活動することで遠く離れた人たちと信頼関係を紡いでいるからですね。

この試みの詳しいレポートはこちら → 立命館守山高校でオンライン・キャリア教育

教室などのリアルの場と個人をオンラインで繋ぐ

という組み合わせには、これまでになかった大きな可能性を感じました。

ホーチミンと仙台のカフェ同士を繋いでみました

11月7日、8日でベトナムのホーチミンに行ってきました。

ホーチミン工業大学で反転授業についてのプレゼンをし、その翌日に、「反転授業の研究」でもおなじみの組織コンサルの鈴木利和さんに紹介してもらったコミュニティカフェKarappoを訪れました。

そこは、日本語教師の矢野周平さんと高橋遼が経営しているカフェで、お二人は、日本語を学習するベトナム人と、ベトナム在住の日本人とを繋ぐ場にしたいとおっしゃっていました。

矢野さんは、

教師が場をコントロールするのではなく、そこで交流する人が自然と繋がり、学び合えるような場にしたいから、お店の名前はKarappoなんです。

とおっしゃっていました。「反転授業の研究」で、コミュニティでの学びを経験している僕は、矢野さんの言葉に共感しました。

3人でオンラインの可能性について考えているときに、Karappoと日本のどこかを繋いだらどうだろうかという話になりました。

日本語を学んでいて、いつか日本に行ってみたいと思っているベトナム人にとって、PCの画面が日本に繋がっていて日本語ネイティブスピーカーに学んでいる日本語で話せるのはエキサイティングなことなんじゃないか!

そんなことを話しました。

一方、日本のカフェにとっても、PCの画面の向こう側がベトナムに繋がっているというのは不思議な感覚で、エキサイティングなことなんじゃないか!

そう思ったら、早速試してみたくなりました。

仙台にあるコミュニティカフェSawa’s Cafeの店主、佐藤さわさんに声をかけ、6日間連続でカフェとカフェを繋いでみました。

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これは、予想以上に、予想外のことがたくさん起こりました。

初日には、「なんだかSawa’s Cafeに行かなくちゃいけない気がする」と感じたお客さんがSawa’s Cafeにやってきたところ、ホーチミンに繋がっていてびっくり!そのお客さんの亡くなったお母さんはベトナム人で、お墓がホーチミンにあるのだとか。ベトナム語で画面の向こうのベトナムに話しかけていました。

Sawa’s Cafeでやっていたライアーという楽器の演奏を、ホーチミンのお客さんが聴いたり・・

日本語を勉強しているベトナム人のHaさんが、勉強したばかりの日本語でSawa’s Cafeのお客さんに話しかけたり・・

話を聞きつけたベトナム雑貨のお店も繋がってきて3ヶ所の場が繋がって話したり・・

育休中の人が繋がってきて、Sawa’s Cafeでやっている育児イベントに加わったり・・

いろんなことが起こりました。

入院中の妹を誘って、オンラインカフェに行きたい!という声もありました。

カフェに行けない人がオンラインカフェなら行けるという可能性もあるんだ!と視界が広がる思いでした。

僕も何回か繋げてみましたが、そのときは、Karappoにオーストラリア人のお客さんが来ていて、その方と英語で話しました。

歯の治療がオーストラリアは高いから、ホーチミンに来て治療しているんですよ。

骨折したりすると、痛みを我慢して、飛行機に乗って、ホーチミンに行く人もいるんですよ。

という話を聞いて、「へぇーー」と思いました。

そんな経験が、自宅からできてしまうってすごいことですよね。

ルームのURLは、Green Bird Cafeという国際交流のオンライングループで公開していたので、個人もあちこちから繋がってきました。

カフェを画面に大きく出しながら、オンラインで繋がっている友達と雑談していると、友だちを誘ってカフェに行って話しているような錯覚に陥りました。

今回は、

リアルの場×リアルの場×個人

を繋ぎました。

オンラインで個人同士をつなぐと、オンラインコミュニケーションに慣れている1%の人しか参加しないんですが、普通ならオンラインの場に参加しないような人がカフェを訪れると、そこに画面があり、異国に繋がっているということで、いきなりオンラインコミュニケーションに突入してしまうわけです。

普通の人をオンラインの場に誘うことが、リアルの場同士をオンラインで繋ぐと可能になるんですね。

この企画も、ホーチミンと仙台という離れた場所に住む店主を、共感ベースで繋ぐことができたところからスタートしました。

オンラインで遠く離れた人たちの心が繋がり、それぞれが持つリアルの場を繋げていくことで、場を訪れる人にエキサイティングな経験をもたらしていく、そしてその経験をもたらしてくれる場という価値をお互いが生み出していく。

ホーチミンではホーチミンであることは価値がないし、仙台では仙台であることは価値がないけれど、ホーチミンでは仙台は珍しいし、仙台ではホーチミンは珍しいから価値がある。

遠隔地を繋ぐことで、双方に価値が生まれ、違いが学び合いのエネルギーを生み出しています。

この試みの詳しいレポートはこちら→ シンクロしている遠隔地を繋ぐことで双方に価値を生み出す

教室を簡単に外に繋げる時代に教師は何を考える?

これらの試みを通して、

教室を簡単に外に繋げる時代がやってきた

ということを実感しました。

Zoomを使えば、本当に簡単に繋ぐことができます。

ですから、技術的な問題は、これから5年間のうちにほぼ消えていくことは確実だと思います。

だから、

・どこと繋ぐのか(教師のネットワーク力)

・何のために繋ぐのか(教師の企画力)

が重要になってくると思います。

教師自身が、オンラインで関係性を紡いでいくことによって、国内、国外の学びの友と繋がっていくことができ、その学びの友がオーガナイズしている場へ自分の教室を繋いでいくことが可能になります。

繋ぐことが可能になったとき、どのように場を創り、何を生み出すのでしょうか?

いよいよファシリテーションの力が問われる時代がやってきます。

まずは、オンラインのコミュニケーションを体験してみてください。

体験することで、様々なアイディアが湧いてくるようになると思います。

 

オンライン講座「ファシリテーション&コーチング講座」の申し込みは、11月17日まで。

・ファシリテーション&コーチングの基礎技術を学ぶことができ

・オンラインの場創りを体験することができ

・たくさんの学びの友を作ることができる

それができる唯一の講座です。

ファシリテーション&コーチング講座

 

 

受講者が語る!オンライン講座の魅力

「反転授業の研究」の田原真人です。

このグループを始めてから、住んでいる場所に関わらず参加できる学び場を創出することに取り組んできました。

オンラインであれば、参加したいという気持ちさえあれば、誰でも参加することができます。

だから、オンラインにこだわって運営してきました。

ある意味、リアルの場を使うことをあきらめて、オンラインでできることを徹底的に追及してきました。

はじめは、僕の中でも、

「やっぱり、少なくても1回は会って話さないと信頼関係は築けないんじゃないか」

という思いがありました。

でも、一方で、もし、そうじゃなくて、オンラインだけでも信頼関係を築いていくことができるのであれば、信頼関係をベースにしたコラボレーションや、コクリエーションのスピードが、一気に増すんじゃないかという気持ちもありました。

2年間、オンラインでの学びにこだわって、こだわって、こだわってきた結果、

オンラインだけでも信頼関係を築き、学び合える関係性を作ることができる

という確信を得ました。

これは、体験をしたことのない人には、信じられないことかもしれません。

ですので、前回実施した「アクティブラーニングスキルアップ講座」の参加者の声を紹介したいと思います。

川上政嗣さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

今までの既成観念が崩壊していく感覚を覚えました。今まで、お会いすることが難しい人たちとリアルタイムで会話することによって、自分のマインドセットが大きく変わった気がします。全国には自分の同志と言える先生方がいると確信できて、元気が出てきました。

●オンライン講座についての感想を教えてください

最初の予想より画面も見やすく、操作も容易でした。遠隔地からも同じ条件で参加できるのも魅力です。田原さんやその他の意識の高い方々と知り合う機会をいただいたことも嬉しいことです。

夏休みに京都の筒井先生にこの講座を紹介いただきました。リアルとオンラインが交差する面白さを感じました。

アクティブラーニングの経験も浅いですし、テクニカルな知識もありませんが、ボランテイアなど手伝わせてください。

山中貴美さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

人を信頼できるようになった。
人と一緒にに学ぶことを楽しいと感じられるようになった。
人と一緒に仕事ができるようになった。
もっといろいろな人と、いろいろな職業の人と仕事がしたいと思うようになった。
発信ができるようになった。
何十冊本を読んでも得られないアイデアや気づきがあった。
移動距離が伸びた。
新しいもの、異種なものを怖がらなくなった。
自分にもできることがあると思えるようになった。

● オンライン講座についての感想を教えてください

田原さん、オンライン講座を提供してくださって、ありがとうございました。前回の動画作成に引き続き、お世話になりました。

とても有意義で楽しかったです。

動画作成の時は、得られた変化がまだ自分にしっくりきていませんでした。しかし、今回、オンライン講座2回目、また知っているお名前がたくさんあり、ホームに戻ったような感じで始まりました。

今まで、ほぼ一人で学び、一人で仕事をしてきました。

否定されることを恐れて、意見をあまり言わずにきました。
しかし、この講座では、どんな意見を言っても、どんな質問をしても参加者全員が受け止め、共感し、答えてくれます。こんな場所は初めて経験しました。

安心、安全な場があり、自由に質問をし、意見を言うことができました。そのため、心がクローズになっているときの何倍も多く学ぶことができました。この幸せな感覚を自分の生徒に伝えたい、と強く思いました。

何十冊、何百冊の本を読んでも、自分のフィルターを通している限りは、新しいものを得ることはできないということに気づきました。
オンライン講座の可能性は無限です。多くの人の知恵が集まれば、さらにその可能性は大きく広がります。人の繋がりはオンラインを超えてリアルと同期します。ここには未来がある!と実感しました。

今村清寿さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

『学び』に対するとらえ方が変わりました。

1カ月4回限定のセッションでどれだけのものを得られるのか?と考え、参加前は、まるで食べ放題で料金の元が取れるのか?と同じような感覚で『学び』を与えてもらうことを期待していました。

しかし、参加してみて『学び』とは他者との対話を通して、自ら作り上げていくものだとわかりました。熱い思いと承認の心を持った人たちと触れ合う中で、自分の考えが磨き上げられていく感覚が気持ちよかったです。

おまけの変化
①チャットのおかげでタイプのスピードが向上しました。
②放課後居残りルームのおかげで夜に強くなりました。
③心強い仲間ができました。

●オンライン講座についての感想を教えてください

不安な気持ちを抱えながら飛び込んでみましたが、期待通りというか期待以上の学びがありました。たくさんの仲間ができ、いろいろなことに前向きになれた気がします。ALを実践するにあたり、うまくいかないことばかりで後ろ向きになりそうな時もありましたが、講座の皆さんから勇気と情熱をもらい、自分の気持ちを強く持てるようになりました。おかげさまで、周囲の人たちに還元したくなりました。

終わったばかりなのに、早く次の講座に参加したいと心待ちにしております。

井上 梢さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

経験豊富な方々と関わっていく中で、自分の浅さに向き合わされました。見たくない内面をえぐられるような(笑)ALをしていくとこれまでの自分の考えが正しいのかどうか揺さぶられる場面が多く、この講座でも揺さぶられることばかりでした。今は頭の中がシャッフルされていて、これから実践しながら整理していきたいと思っています。

●オンライン講座についての感想を教えてください

1年ほどALを続けてきて、行き詰まりを感じた頃の受講でした。受講するかどうかも相当悩み、講座が始まってからもついていくのに必死で、やっと慣れてきたかな…という頃に終わってしまいました。個人的な事情で開始時間に間に合わなかったり、まったく参加できなかった回もあったので、録画がとてもありがたかったです。回を重ねるにつれて、moodleやセッションを通して会ったことのない方たちとの関わりが深くなっていくのがおもしろかったです。みなさんの励ましにかなり助けられました。ありがとうございました。

小竹知紀さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

不安や怖れを受け入れつつ、アイディアを行動に起こしていく勇気が出た。実践における失敗も大きな流れの中のプロセスとして受容できるようになってきた。オープンマインドな自分の状態を思い出した。

自分自身がこういった体験をしていることで、(コントロールしたい教員にとって)好ましくないように見える生徒の言動も一つのプロセスの表れであると受け止められ、注意による指導ではなく、傾聴・質問・提案・力づけのアプローチをとるようになった。

自分自身が体験していることや思いを生徒にシェアすることで、お互いに尊重しつつよりフラットな関係になってきた。

●オンライン講座についての感想を教えてください

久しぶりに、安心安全の場に出会い幸せでした。
受け入れてくれる仲間がいることが、どれほど力づけになることか。

現職になってから、自分自身を割と出せるようになってきていたと思っていたのですが、実はかなり自分を抑えていたのだなあということに気づきました。講座は終わってしまいましたが、皆さんの存在を背後に感じています。それが今でも原動力です。

大隅紀子さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

自分自身の学びに対する姿勢を客観的に見ることができ、リフレクションできたことで、今後の自身の学びや、授業に対する考え方に変化が起きたと思う。
色々な人との交流を通して、勇気をもらえた。何か困ったら、みんなに聞ける、馬鹿な質問かなと思っても遠慮することないんだと思えるようになった。

●オンライン講座についての感想を教えてください

初めての経験だったので、最初はITの能力に不安を持って緊張して臨みましたが、丁寧にケアしていただいたので、安心して取り組むことができました。
こんなに簡単に色々な地域のいろいろな人とつながることができるなんて、驚きと感激でいっぱいです。また、参加したいです。

永島宏子さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

アクティブラーニングが学校で実際にどんな風に展開していくのか、先生がどんな点で、苦労しているのか、いろいろな実情を知ることができました。アクティブラーニングの可能性がどれだけ大きいのか実感できて、導入を迷っている先生方に、具体的なご紹介ができるようになっています。実例の数だけ参考例があるので、先生方を結び、交流して刺激を受けあうことも大切だと感じています。

●オンライン講座についての感想を教えてください

AL講座の前に初めて参加させて頂いたときには、要領が把握できずに参加したので、チャットでコメントするのが難しいと感じました。
今回も初めは先生ではない立場で参加していることもあり、最初はかなり緊張していました。
でもAL講座で小林先生はじめ皆さんの「丁寧な」対応に触れることで、勇気をもって発言、コメントすることができました。
教室でも同じですが、参加者がフラットに発言できる場があることで、創造的な学びが得られ、どんどんかかわる喜びを感じました。
この場での出会いは私にとってはとても貴重なものとなりました。
ある目的に集う人は、通じ合えるものがあり、オンラインのすごさを感じました。
田原さん、皆さん、本当にありがとうございました。

内橋朋子さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

講座を受ける前も今も毎日迷いだらけという点は変わっていませんが、小林先生に直接(?)お話を伺えたことで、ご著書に書かれていることの奥にある想いまで教えていただけ、自分の授業を考える際も奥まで考えるようになったというか、目の前のうまくいく、いかないに右往左往しないで取り組もうと覚悟がきまってきたように思います。

●オンライン講座についての感想を教えてください

日ごろの業務でなかなか遠方まで講演などを聞きにいくことができないですが、直接貴重なお話を伺うことができ、また今回はゲストで下町先生にいろいろ質問もさせていただけ、この講座に参加しなければ触れることができなかったことに触れさせていただけ、いろいろと刺激をいただきました。

また、それぞれの職場で悩みながら進んで行こうとしておられる多くの方々と思いを共有できたこと、試行錯誤の上、独自の取り組みをされている方の実践やその間の悩みなども聞かせていただき、非常に有意義な日々でした。あまりにも皆さんが意欲的で、いただいた情報をしっかり理解するのがたいへんでついていけていないなあと思いつつも、先を歩んでおられる方々の工夫や苦労を教えていただいて元気をいただきました。

子育ての手は離れたとはいえ、なかなかいろいろなところに出かけていかないことや、家族の都合に合わせないといけないことも多く、家庭で多くの知に出会えたこの講座、そしていろいろ教えてくださった方々に感謝しています。

小山真紀さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

アクティブラーニングを実際にやる場面のイメージが今ひとつつかめていなかったのですが,講座の中で具体的なイメージが出来てきました.実際にはまだやっていないので,そのイメージを具体化できる自信があるかと言われると心許ないところもありますが,やってみたいという気持ちが強くなりました.また,講座の中で受講生同士の気づきや思い,実践などを共有する事で,非常に心強く感じています.

●オンライン講座についての感想を教えてください

オンライン講座では,講師の経験,受講生同士の経験などを共有でき,それによって疑似的な追体験が出来る場であったと思います.
イメージできないものはなかなか手がつかないもので,追体験によってイメージができていくこと,とても前向き(というと語弊があるかもですが,やりたい気持ちがスパイラルアップするような雰囲気というか,相互作用というか...)な場(戻ってこれるところ)になっていたという所が大変良かったと思います.また,同窓会グループの立ち上げなど,関係性がつながっていく,広がっていくところがまたよいと思います.ちょっと圧倒されていてついて行き切れてないところもありますが,ゆっくりでもフォローしていきたいと思います.ありがとうございました.

和田美千代さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

1  snsの威力を体感
snsについて傍観者だった私が、snsの価値、偉大さに気づくことができました。

2 助けてということの価値
助けを求めることの価値に気づき、助けを求めるようになりました。助けてという質問は、活発なコミュニケーションのスタートですね。

3 仲間ができて勇気百倍
講座で知り合った皆さんの存在が私を勇気づけてくれています。

4 自分の使命の発見
自分がやろうとしていることの輪郭がはっきりしてきました。

5 穏やかさを手に入れました(笑)
上記1~4のおかげで、自分の「ぶれ」が少なくなりました。焦りもなくなりました。スモールステップで、でも着実に進んでいきます。

●オンライン講座についての感想を教えてください

講座内に掲載した文章ですが、整理して再掲します。
タイトルは 私には「ネット果樹園」の発見
初めてオンライン講座に参加して「ここにこんな新たな学びの場があったのか!」とパラダイム転換が起こりつつあります。1か月後の今も進行中。

受講者の井上梢さんがこんなコメントをしておられました。
わからないことがいっぱいあって、勇気を出して「自信がない」「わからない」って言ったら、強力な仲間が現れた、と。(本当は、現れたというよりは、存在に気付いた、が正しいのかも)

和田も同感です。

「助けて」「わからない」質問すると、たくさんの「輝く知見」が、ほとんど初対面の人から返ってくる。まさに強力な仲間。とても収穫(ハーベスト)が多くてうれしい。「お金持ち」ならぬ「知恵もち」になったようなうれしさで、その知恵は私の仕事や生活を助けてくれている。エネルギーもわいてくる。感謝とともに。

ちょうど、秋の果樹園で、エプロンの裾(風呂敷の四隅)を広げたら、そこにたくさんの美味しいブドウや梨や林檎や栗が投げ込まれる感じ。観光ブドウウ狩り農園で言えば食べ放題、もぎ放題。リアルのブドウはもぎ取れば無くなるけど、ネット農園の知見ブドウは無尽蔵、無料。果樹園入場料は払ったが、収穫にくらべれば安すぎる。たくさんの農夫(知見ブドウ育成人)にも出会えた。

物々交換の市場(いちば)のようでもある。交換したら自分がもっていた物はなくなるが、ここは交換ではなく共有なので、自分の財産(知恵)は増える一方。

こんなに美味しい話があっていいんだろうか!ネット果樹園に集う皆さんは惜しげもなく恵んでくれる!

武力を振りかざす人はいないから、安心してタダのような値段だけどメチャおいしい知恵ブドウをTTPS。

「みんな―、こんな場所があるのよー」と大声で教えたい。
桃源郷かここは(笑)

果樹園という「場を立てる」人の存在が大事なんだなと思った。主催者、管理人。たとえば田原さんがこの場を立ててくれ、松嶋さんが誘ってくれて、この果樹園に迷い込んできた和田。あまりの美味しさにびっくり。

自分も場をたてたいと思っているし、果樹園で自分の「知見ブドウ」をお裾分けし、みなさんの「知見ブドウ」もいただきたい。

「知見ブドウ」は自分が経験し考える限りなくならない。

貨幣でなくて知恵が流通?
知識基盤社会でアクティブラーナーが要請されてるのは、ここにこんなに美味しいものがあるから、自分から取りに行きなさい、自分も人に与えなさい、というメッセージなのではないかな?それが主体性協働性?

この果樹園は自分から動いて動いて食べに行かなきゃ、指示待ちではあじわえないから(笑)

なんと面白い世界!

以上が再掲分。

オンラインのワールドカフェは、何度も読める点、書くことで思考を整理できる点で、話す聞くだけよりも、自分には合っていると思いました。

福田美誉さん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

主に2つの変化があったように思います。

1.アクティブラーニングの理論を知るともに多くの実践例を知り、それを活かすことができた
アクティブラーニングは用語こそ知っているものの、明確なその意味を把握しきれていませんでした。小林先生の著書を読むことで頭の中で整理、解釈が進みました。
また、受講生、スタッフの皆さんから伺った実践例と、小林先生の著書の中の実践例から、いくつかのことを開催したワークショップの中で実行することができました。頂いた知恵が宝物となっています。
2.普段仕事では接する機会の少ないAL実践の高校教員の皆さんと交流が深まった
普段の仕事は大学教育や社会人教育がメインであり、かつ教員・講師業ではない仕事が主であるため、高校教員の先生方と協働する機会はありませんでした。受講生、スタッフの皆様には高校の現場で最前線のALを実践されている方が多数いらっしゃり、そのような方たちから頂いた現場の実情や課題感は、自分自身ではなかなか得られないものであり、大変参になりました。そして、皆さんとの交流がこれからも続くことをとてもうれしく思っております。

●オンライン講座についての感想を教えてください

前回の動画作成にチャレンジ講座では講師、今回のAL講座では運営ボランティアスタッフをさせていただき、大変密度の濃い経験をしました。反転授業の研究グループに参加した時点でも、自分の考え方やライフスタイルに変化が生まれましたが、オンライン講座に当事者として参加することで、これからの自分の取り組み目標に大きな変化が起こりました。
まだ、私の周りではオンラインでの学習や人付き合いに消極的、否定的な人がいらっしゃいますが(涙)、反転授業の研究が主宰するオンライン講座ではこれまでの常識では考えられない「学びの泉」が存在しています。学習仲間は全国区!いや世界区。年齢不問。北は北海道から南は九州までたくさんの教育関係者が勢ぞろい。少しでも興味のある方は、次のファシリテーション講座で一度その世界に飛び込んでほしいと願っています。

すみだ あいさん

●講座を受ける前に比べて、どのような変化が起こりましたか?

以前の動画作成オンライン講座は、受講生として参加させていただき、今回はじめて、運営ボランティアとして、学びの伴走者をさせていただきました。

「やりたいと思っていたら、形になり、できるようになるんだ。」

みんなのやりたい気持ちを、全員で応援して、たくさんの人が切り開いていくのをみていると、私も頑張ろう!私にもやればできる!と励まされ続けました。

みんなと一緒に無我夢中で学んだ1ヶ月経った後に残ったのは、かけがえのない仲間とある言葉の本当の意味でした。

かけがえのない仲間と、アクティブラーニングを通して、心の在り方を話しあいました。アクティブラーニングの授業を通して、「先生も学び続ける」という姿勢を生中継でみなさんに見せていただきました。

私が得たものの、もうひとつは、コミュニケーションという言葉の本当の意味です。

丁寧なコミュニケーションが大切と、小林先生が教えてくださいました。

「丁寧」って具体的にどういう意味なんでしょう。

拝啓→敬具で終わることなの?

過不足なく情報を伝えることなの?

残念ながら私の仮説は、どちらも間違いなことに気づきました。

いろんな種類の人がいて、その人それぞれを観察して、その人にわかる言葉で、ちょうどいいタイミングで伝わるように話すこと。

好きな時に、好きなことを言っている私にとって、衝撃的な小林先生の言葉でした。

これが私のコミュニケーションという言葉の新しい定義となりました。

●オンライン講座についての感想を教えてください

「オンライン講座で、できないことってあるのかな。」

逆にこんなことを考えるようになるほど、今回のオンライン上だけでも、オフライン以上の学びがありました。

本当に目の前にはいないオンラインの場ではありますが、人の温かみを感じることができました。笑いあり、涙ありの1ヶ月でした。

私は英語の先生を養成する英会話スクールを経営しています。

反転授業とアクティブラーニングをふんだんに取り入れた講座です。

その講座の中でもアクティブラーニングについて、指導させていただいています。

今回の受講生の皆さんとアクティブラーニングとは何かを、ここまで掘り下げ、話し合った経験は、今後の英語講師の養成に大いに役立っています。

というか、講座中にインプットして、講座中にアウトプットして、検証させていただき、結果をみんなでシェアするという恵まれたサイクルができ、気づけば講座中にパワーアップしまくっていました。

私のように、すばらしい経験をもっと多くの方にしていただきたいと思います。

私は今回学びの伴走者として、はじめて走りました。運営ボランティアとして、受講生のみなさんのお役に立てていたかどうか不安です。またこのようなチャンスをいただける時のために、自身で振り返り、検証して、パワーアップしたいと思います。

今後もオンライン講座の企画を楽しみにしています。

いかがでしたか?

オンライン講座に参加することで、心がワクワクして、気持ちがオープンになって、自分らしさを発揮しながら学べている状況を思い浮かべることができましたか?

次回の「ファシリテーション&コーチング講座」でも、多くのワクワクが生まれると思います。

ファシリテーション&コーチング講座

ネット講座で飛躍的にコニュケーション能力アップ!

11/19(木)から4週間に渡って、オンライン講座

「ファシリテーション&コーチング講座~明日から役立つコミュニケーションスキル」

が開講されます。

私は倉本龍といいます。運営グループのひとりです。

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ネット講座って最近、予備校のCMなどでも見かけますよね。

自宅でいつでも簡単に有名な講義が受けられる!もうそんな時代です。

この講座はそのさらに一歩先を行きます。

ネット上でリアルタイムに、全国から(時には海外から)集まった他の受講生や講師の先生、運営ボランティアとワイワイ議論して、力を合わせて学んでいきます。

実際に仲間と協力しながら、タイトルにもあるようにコミュニケーションスキルを高めていきます。

コミュニケーションスキルの中でも特にファシリテーションとコーチングを中心に扱います。「ファシリテーション」は議論の場づくり、「コーチング」は相手の目標達成をサポートする技術です。

仕事で会議を仕切る、セミナーで大人数の前で発表をする、1対1でじっくりと話し合う…

仕事だけでなく、家庭でも同じような場面があるかもしれません。

実は、運営をしている私も1年前は受講生でした。

場を仕切るのが苦手で会議の運営などに苦労していたところで、今回の講師福島毅さんのオンライン講座を受講しました。

そこで、一番印象に残っているのは「傾聴(けいちょう)」という考え方です。

「話し上手は聞き上手」とよく言われますが、聴き方のトレーニングというのはしたことがない人が多いのではないでしょうか?

しっかりと目を見て聴く、
自分と同じ意見の場合はあいづちを打つ、
異なる場合も一旦は受け入れて考えてみる、
それも全部含めて自分の意見を表明してみる…

平日の夜に自宅で、職業も立場も違う仲間たちと、テレビ会議システムでお互いの話を聴きながら、議論をホワイトボードにまとめ、コンピュータのカメラに映し出して共有する。

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そんな近未来の学び方で、話の聴き方が劇的に変わりました。

話す方にも影響を与え、面と向かってでもオンラインでも気軽にワークショップを企画する、という1年前には想像もしていなかった変化が起こっています。

オンラインで議論なんてすごくハードルが高そうに感じますが、実際にはスマホの通話やSkypeができる人ならすぐに参加できます。

仕事が忙しくても、子育て中でも大丈夫!そんな人たちが集まっています。

明日から使えるコミュニケーションスキル、一緒に身につけてみませんか?

詳しくはこちらをご覧ください。
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「社会に開かれた教育課程」とは何か?

「反転授業の研究」の松嶋です。

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8月に開かれた教育課程企画特別部会における学習指導要領改定について論点整理の解説がYoutubeにアップされています。

前半の概論ではキーワードに「社会に開かれた教育課程」という言葉が数回出てきます。

皆さん、社会に開かれた教育課程とはどのようなものだと思いますか?

今回示されたのは以下の3点でした。

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この内容をみてどのように感じたでしょうか?

「社会に開かれた教育課程」を目指すということは、現在は「社会に開かれていない教育課程」なのでしょうか?

残念ながら「社会に開かれている」と自信を持って答えられる人は少数でしょう。そして多くの先生は学校という閉ざされた特殊な空間の中で教育を行っています。

しかし、この動画でも伝えられているように、これからの日本の状況を考えた場合には、学校が特殊な空間であってはならない、ということではないでしょうか。

子どもたちの人間性を高めるために、地域との学術的な交流やICTを活用した地域外との連携などを多く取り入れていくことが求められています。

そのためにはまずはそれを教える先生自体がそのような体験をする必要があるのではないでしょうか?自分自身が体験していないことを子どもたちに自信を持って行わせることはなかなか出来ません。

私たち反転授業のグループは、ICTを活用してお互いに学び合っています。Facebookのグループ内に留まらず無料のオンライン勉強会から有料のオンライン講座、そしてオフ会までこのグループでは先生同士が繋がり、多くの知見を共有し、豊かな学びを実現しています。

そのような流れの中で、今月下旬から来月中旬にかけてオンライン講座が開講されます。

テーマは「ファシリテーションとコーチング」です。

ファシリテーションやコーチングは現在盛んに研修が行われているアクティブ・ラーニングで必須のスキルです。

この動画の中でもアクティブ・ラーニングの視点で求められる授業改善が以下のように出ていました。

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このような内容を授業の中でどう実現するかについても今回の講座の中で議論していきたいと考えています。

大きく社会が変化していく中で教育も大きな転機を迎えています。

ぜひ一緒に学び合い語り合って、これからの教育で必要とされる力をつけていきましょう。

オンライン講座について詳しくはこちらをご覧ください。
http://flipped-class.net/wp/?p=1948

ファシリテーション&コーチング講座~明日から役立つコミュニケーションスキル

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「反転授業の研究」は、定期的にワークショップ型のオンライン講座を実施しています。

2015年11月19日からは、8回目となるオンライン講座「ファシリテーション&コーチング講座~明日から役立つコミュニケーションスキル」を実施します。

Link and Create代表の福島毅さんを講師に迎え、福島さんの動画シリーズ「どんぐり教員セミナー」を動画テキストに用い、4週間でファシリテーションとコーチングを演習中心で実践的に学んでいきます。

この講座の特徴は、オンラインでボードミーティングなどの演習を行い、実践を振り返り、気づきを深めていくところにあります。

講師や、共に学ぶ他の受講生や、運営チームの存在も気づきを深めるための助けとなります。

単に理論としてファシリテーションやコーチングを学ぶのではなく、実践と振り返りによりスキルを身につけていく講座です。

これらのスキルは、生徒の主体的な学びを引き出していく上でとても重要なものです。

講師の福島毅さんをはじめ、運営チーム14人の多くがアクティブラーニング型授業の実践者であり、新しい教育を創り出していこうという志を持っています。運営チームと受講者とが一体となった学び合いの場で、お互いに交流しながら、共に成長して行けたらと思っています。

ファシリテーション&コーチングの定義

まず初めに、ここで言うファシリテーションやコーチングを定義しておきましょう。

【ファシリテーション】

組織における会議などでグループ活動が円滑に行われるように、中立的な立場から支援を行うこと。またその手法や技術のこと。その役割を担う人がファシリテーター。

【コーチング】

対話を重ねることを通して、クライアント(コーチを受ける対象者)が目標達成に必要なスキル、知識、考え方を備え、行動することを支援し、成果を出させるプロセスのこと。その役割をするのがコーチ。

ファシリテーションやコーチングのスキルがしっかり身につくと、どのような場面で役立つのでしょうか?

以下で具体的な場面について考えていきましょう。

様々な場面で役立つファシリテーション&コーチングスキル

これを読んでおられるあなたは、教育にたずさわっている方でしょうか、親御さんでしょうか、あるいは組織で上司などマネージャー的な仕事をされている方でしょうか? 誰しもが人と関わってコミュニケーションをとったり、ある種の判断・決断を行い、何かをつくりだしたりしています。

でも、こうした時のコミュニケーションの在り方自体を、しっかり学校教育で習ったという記憶がある方は少数派だと思います。

新しいコミュニケーションのキーワードとして、ファシリテーションやコーチングという言葉があるのをご存知ですか? 具体例を追って見てみましょう。

学校現場で・・

学校現場のお話です。これを目にしている方は、教員や塾講師や運営に関わっている教育業界の方も多いと思います。児童・生徒・学生(以下、生徒)のアクティブラーニング(学習者自身の主体的・能動的な学び)が最近活発化していますが、どんな設問をつくって生徒に問いかけ、学びの道筋を示していき、生徒に積極的に対話の場に持ち込んで授業を進めていくか? その手段に戸惑ってはいませんか?

家庭で・・

家族での役割分担はなんとなく決まっていると思います。しかし、誰が何をすることになっているか、あるいはやるべきかが明確でないと、各自の不満が募ります。やっているべきことをやってくれていない不満です。こうしたときどうするでしょうか? そう、話し合いです。その話し合いは誰がどう取り仕切っていますか?なんとなく立場が強い側が一方的に決めてしまって、そんなはずじゃないのにと思った経験はないでしょうか?

職場で・・

これは、会社組織などでも全く同じことが言えます。
特に組織が大きくなったり、関わる人数が多かったり、あるいは遠くの人や普段合わない人とコミュニケーションを取って仕事をすることも増えてきました。そこでも意思疎通や複数人で何をするか、誰がどうやるかということを迅速に決めなくてはなりません。しかもその場の参加者が納得いく結論がうまく出されなければ、決めたものの実行されないことが多いのではないでしょうか? なんとなくうまくいっていない、それはいやなやつがいるとか、会社そのものが悪いと外向きに指を指すのは簡単です。しかしそれでは問題が解決しないことをあなたは理解していることだと思います。

これらを円滑にするのが、ファシリテーションやコーチングといったスキルです。

たとえば、あなたが教師なら、ファシリテーションやコーチングのスキルは、授業中の生徒とのコミュニケーション、職場の同僚や上司とのコミュニケーション、家庭での家族とのコミュニケーションの改善などに役立つスキルであると考えていただければよいと思います。

オンラインで学ぶメリット

私たちは、オンラインでこの講座を扱っていきます。

オンラインで開催する理由は、以下のことがあります。

1.オンラインのツールが発達し、オンラインにおいても円滑なコミュニケーションを取りながらこれを学べる環境が整ってきたこと
2.忙しい現代人にとって、仕事が終わった夜に自宅からアクセスでき、全国どこからでも会場に出向くことなく参加できること。
3.学習の足跡がオンライン上に残り、後から復習できること。また反転学習方式を取り入れることで、事前の予習を可能にし、受講者のスタートラインの凸凹を揃えられること。

ファシリテーションやコーチングに関する講座は、オフラインでは多くなってきましたが、会場が東京や都市部周辺だったり、休日の昼や平日の夜も、出られないといった方のためには、こうした夜のオンライン講座を設ける必要をわれわれ運営チームでは考えています。

今回の講座の運営は、ファシリテーションやコーチング等の演習を豊富に行っている講師ならびに、そうしたオンライン講座を過去に受講した経験者から編成されています。従って、こうしたオンライン講座を初めて受ける方も何度目かの方にとっても馴染みあるフレンドリーな場になることでしょう。

新しいオンラインでの学び方

オンライン講座というと、動画などを見てひとりで学ぶイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?

また、拘束力が弱いため、オンラインだと最後までやり遂げられないというイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。

「反転授業の研究」が主催するオンライン講座は、学習者中心の考え方に基づき、様々な工夫をしており、過去5回の講座では、脱落者が10%以下(そのうち2回は脱落者ゼロ)という驚異的な修了率を達成しています。

その秘密は、ビデオ会議室を使った独自の講座運営方法にあり、オンラインであっても、非常にコミットメントが高まる仕組みになっています。

講座は、Moodleと呼ばれるプラットフォーム内に作られたフォーラムでの非同期の学び合いと、ビデオ会議室を使ったリアルタイムセッションから構成されます。

ビデオ会議室を用いたリアルタイムセッションでは、講座開催中に全部で5回行われ、講師によるレクチャーと、小グループでの演習を行います。

リアルタイムセッションの様子 ※写真は「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」のときのものです。

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その後、リフレクションカードを書き、Moodleへアップし、他の受講者のリフレクションを読む、ことによって更に「振り返り→気づき」を深めていきます。

Moodle内では、受講者と運営ボランティアの5-6名の混成グループをいくつか作り、グループ内でお互いにフィードバックを送り合います。他のグループにコメントしてもOKです。

Moodle内のグループは、毎週メンバーをチェンジするワールドカフェ形式で行います。

 

その他に、週に1度、オンラインの雑談部屋を開きます。まじめなリアルタイムセッションとは違って、飲み物を用意して、リラックスした気分で参加す る雑談部屋では、笑い声が溢れ、本音トークが飛び交います。授業実践に取り組む中で生まれる悩みを雑談部屋でシェアすることで、意外な解決策が見つかるこ ともあります。

雑談部屋があることで、運営チーム、参加者同士の交流が深まっているようです。

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※写真は「ファシリテーションスキル入門」のときのものです。

「反転授業の研究」が主催するオンライン講座には、受講者間の繋がりが深まっていく仕組みがあります。

それは、オンラインであっても、「会っている」「参加している」という実感を感じることができるからかもしれません。

その結果、これまでの講座では、講座終了後も受講者同士の関係性が継続し、多くのコラボレーションや、オンラインの学習コミュニティが生まれていま す。また、また、オンライン講座の受講者として参加した方が、講師、運営、運営ボランティアになっていくという循環も生まれています。

まとめ

  • 授業、家庭、職場のコミュニケーションを改善するファシリテーションやコーチングスキルを学ぶことができる。
  • オンラインでの新しい学び方を体験できる。
  • ファシリテーション&コーチングを継続して学び合える学びの友を作ることができる。

講師紹介

企業や学校教員向けに会議ファシリテーション技術を伝授!

講師 Link and Create 代表 福島毅

fukushima

Link and Create 代表
直感コンサルタント・コーチ
柏市教育研究所 ICT活用推進アドバイザー
一般社団法人 教育共創研究所 上席研究員
柏まちなかカレッジ副学長
気象予報士、防災士、ワークショップデザイナー

 

◇経歴
1962年 神奈川県生まれ。
北海道大学大学院理学研究科(地球物理学専攻)を修了。理学修士。
メーカー勤務(日立製作所)を経て千葉県の教員(理科地学と情報)として23年間勤務。
その後、独立してワークショップや研修を行うLink and Createを立ち上げる。
柏市において、「柏まちなかカレッジ」を立ち上げ、市民でつくる市民のための学びの場づくりも行っている。また、柏のコワーキングスペース「NOB」に て、フューチャーセンターディレクター兼ファシリテーター、各種コーチングやカウンセリング等も行っている。

2013年4月より学校教員向けの研修や学校改革プログラムに着手。
教育委員会や高校を中心とした各種教員研修や教員採用試験の受験塾Teachers College東京校でのファシリテーターを担当。また、現在、教員向けのYouTube動画を使った「どんぐり教員セミナー」を主催し、200本以上の動画をアップロードしている。

◇研修実績

・日本教育大学院大学 教員免許更新制授業担当(平成25年度)
・千葉県教育委員会主催 県立学校等10年経験者研修担当(平成25年度)
・大分県教育委員会 学校CIO、情報化推進リーダー研修(平成26年度)
・熊本県立教育センター コーチング・ファシリテーション研修(校長・教頭・主幹教諭対象)(平成27年度)
・柏市教育委員会主催  柏市小中学校5年経験者研修講師(平成23年度~)
活用型学力を育成するためのワークショップ研修講師(平成23年度~)

・東京都立高校 OJT研修(ICT活用、反転授業、アクティブラーニング) (平成24年度)
・東京都立高校 防災教育研修(防災訓練) (平成26年度~)
・東京都副校長研修ベーシックプログラム(平成27年度)

・一般社団法人 教育共創研究所 上席研究員(セミナー担当) (平成23年度)
・一般社団法人 子供の成長と環境を考える会主催  新人教員研修特別プログラム講師(平成24年度~)
・Teachers College東京校 講師・ファシリテーター担当 (平成26年度)
・チームで学ぶ教員採用試験対策講座 講師・ファシリテーター担当(平成27年度)
・柏市教育研究所 ICT活用推進アドバイザー(平成27年度~)

◇著書
『イントラネット100のアイデア(正高社2000年)』
共著に『教科「情報」実習へのフライト(日本文教出版2001年)』

◇ブログ
教育のとびら
異星人思考法
日本と世界の新しい仕組みの提案

 

情報デザイン教育の研究・実践を通し、新たな学びデザインを構築!

matsushima

運営:松嶋渉(山口県立萩商工高等学校 情報デザイン科長)

山口県の公立高校で教員をしています。教科は商業で主に情報系(プログラミングやWebデザイン)の授業を担当しています。

授業内でAL型授業を始めて4年目になりますが、ファシリテーションの重要性を日々感じています。
どのような授業をしているかについては、昨年実教出版の小冊子に寄稿したものや以前にブログに書いたものがありますので、関心のある方はご覧ください。

ICTを利用した反転授業「ビジネス基礎」→http://www.jikkyo.co.jp/download/detail/69/9992656674

ブログ「授業の在り方について。反転授業やアクティブラーニングなどの取組をどのように取り入れるべきか」
http://watarumatsu.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html

最近は、地域の活性化のためのワークショップでもファシリテーターとして参加したり、他の学校や企業とのコラボレーションでもファシリテーターをすることが多くなってきました。今回の講座でも様々な立場の方が参加されると思いますが、多くの方の知見を知見を共有できるようにしていきたいと思っています。

今講座もも前回の講座に引き続き運営として参加いたします。受講生の皆さんの助けになれるように取り組んでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

「なぜそうなるの?」を問いかけ続ける深い学びの場づくりを

運営:倉本龍(立命館守山中学校・高等学校・教諭)

倉本龍
滋賀県の私立中高で教員をしています倉本龍(くらもとりょう)です。

「今日の授業を活かすと、明日からの世界は変化している」
をテーマに学習活動を行っています。

また、「1人1台iPad」環境である勤務校では、ICT教育推進や教育研究を担当し、「主体的な学び」を組織として行う旗振り役をしています。

昨年、今回と同じ福島毅さん講師の「アクティブラーニングに使える!ファシリテーションスキル入門」に受講生として参加し、様々な方法やマインドを学びました。
教育に対する価値観が変わった、自分の活動の原点です。

今回は運営の1人として、みなさまの学びを全力でサポートします。

よくある研修会と違うのは…

・全国にともに学ぶ仲間ができます。
・1ヶ月間の長い講座期間中に成長を実感できます。
・主体的に関わることで講座の雰囲気づくりにも参加できます。
・主要都市でしか開かれない最先端の講座を自宅で受けられます。
・オンライン講座を経験し、その方法やノウハウを習得できます。

全員の力を結集して、この講座を共創(co-creation)しましょう!

<個人ブログ>
キューリ.com〜自然哲学者を育む職人になりたい個人の記録
http://s.ameblo.jp/naturalph/

わからない、どうしたらいいの、から学びの次のステージへ

平野貴美枝

運営:平野貴美枝

平野貴美枝です。ニューヨーク市にあるロングアイランド大学ブルックリン校でTESOLの修士を取得。移民の生徒たちに英語を教えていました。帰国後、3校の私立に勤務し、困難校から超進学校まで経験しました。現在、関西大学北陽高等学校中学校英語科教諭。2010プロジェクトの一部として、中学校設立に関わる。All English、多読、ラウンド形式、ICT、等時代の動きを先取りした授業に取り組んできました。プログラミングで全国の先生方を応援するSensei TIPSのco-founder。FAJ(日本ファシリテーション協会)会員。ワールドカフェ、フューチャーセッション、アクションラーニングなどの対話の手法を学びながら、多様でインクルーシブな場づくりに取り組んでいます。京都で活動するJapanese Dialogue Style ‘MANABIAI’オーガナイザー兼ファシリテーター。現在は質問づくりを促進するQFTというメソッドに注目しています。今回は運営ボランティアに初めて挑戦いたします。ドキドキワクワク。Let’s make a big leap forward together!

オンラインでのコミュニティ創りに挑戦中!

tahara

運営:田原真人(反転授業の研究主宰、オンライン教育プロデューサー)

早稲田大学理工学研究科物理学及び応用物理学専攻博士課程中退後、物理の予備校講師に。河合塾などで10年以上教える。『微積で楽しく高校物理が分かる本』など著書10冊。2004年から物理ネット予備校(フィズヨビ)を立ち上げ、動画講義やMoodle、Web会議室を使ったオンライン教育に取り組む。オンラインでの反転授業、ワールドカフェ、ワークショップ、ダイアログなど、オンラインでの場創りに取り組んでいます。

2012年に「反転授業の研究」を立ち上げて以来、オンラインコミュニティの運営を通してファリシテーションとやコーチングの重要性を痛感しています。オンライン講座には、プロデューサーを担当しています。

運営ボランティアのみなさん

「反転授業の研究」が主催するオンライン講座では、運営ボランティアがオンラインでの学び合いの文化を継承する役割を果たしてくれています。運営ボランティアが入ることで、「教える側」「教わる側」という固定化した枠組が崩れ、講座にダイナミズムが生まれています。

運営ボランティアの皆さんとの交流も、この講座の価値の1つだと思います。

青木芳恵

青木芳恵
青木芳恵です。普段は神戸六甲山にある探究型オルタナティヴスクール「ラーンネット・グローバルスクール」のナビゲータとして、子ども達が本来自ら持っている「学ぶ力」を引き出す場作りと授業を行っています。
たくさんの子ども達との関わりの中で、
「人は誰もが自分で成長する力を持っている」事を目の当たりにしてきました。
色んな場で、人が感じる小さな「あ」や「お」というスイッチを、言語非言語問わず形にしていくという学び方に心惹かれています。今回は、ファシリテーショングラフィッカーとして、運営ボランティアに初参加します。溢れる言葉と場を可視化していくグラフィックレコードが、参加される皆さんの小さな「あ」に繋がれば嬉しく思います。

ラーンネット・グローバルスクール
http://www.l-net.com

江藤由布(近大附属高・教諭)

江藤由布
私立高校英語教諭、一般社団法人オーガニックラーニング代表理事の江藤です。

わたしの授業はオリジナルのLEAFとREAPモデルに乗っ取っています。LEAFとは、教科書に依存しない、生教材、オールイングリッシュ、アクティブラーニング、反転学習の頭文字をとったものです。REAPとは、生徒の学びたい、人にいいことをしたいという根っこの想いにリーチし、オーセンティックで創造的な学びを引き起こすアプローチです。

授業は「教えない授業」ですので、高いファシリテーションスキルを要求されます。特に最近は生徒が自律的に学び出し、自分たちでプロジェクトを立ち上げて動き出すなど、自己組織化が始まり、求められるレベルがさらに上がって来ました。この講座では、みなさんと共に、ファシリテーションの種類や手法だけでなく、なぜファシリテーションが必要なのか、その半歩先には何があるのか、実現したい未来とは何なのか、など深い部分まで掘り下げていきたいです。みなさんにお会いするのを楽しみにしております。

一般社団法人オーガニックラーニング
http://www.organic-learning.net/

江藤由布 公式HP
http://yufuetou.wix.com/leaf

加藤久美子

加藤久美子

こんにちは。ボランティアスタッフの加藤久美子です。
ラーニングデザイナー、アドラー心理学親と子の勇気づけSMILE講師、マインドマッププラクティショナー、アルク児童英語講師。教育関係の会社を経営、LMSでの学習を構築しています。

この反転授業オンライン講座でID(インストラクションデザイン)講座を受講し、その後オンラインで学習を続け、ラーニングデザイナーの資格を取得しました。

今回は、2つの目的をもって受講の皆様をサポートしたいと思います。
1つは、オンライン学習に慣れて良さを知っていただくこと。
オンラインというと、人間味がないような思いを抱かれる方もいると思います。しかし、全く違います。受講仲間同士、以前から知っているようなとても良い関係が築けます。
ID講座の時、講師の先生を交えてチャットをしながら、同じく受講生でいらした田原さんとレポート提出の競争をしたこともありました。
今回もライブチャットがありますので、いろいろな意見を交換しましょう!!

もう1つは、ファシリテーションをもっと知っていただくことです。
ファシリテーションは、場の空気を良くします。そして、人が活き活きします。
15年ほど前に知ったものですが、もっと広まってよい技術だと思います。

さて、先日、福島先生の実際の講義を受けてきました。
宇宙の話でしたが、まるで「宇宙人」のようによくご存じでした。
感動した!! 面白かった!!

この面白さを、是非ご体験ください。

ギュンター知枝

ギュンター知枝

みなさん、はじめまして!

運営ボランティアのChie ことギュンター 知枝です。

私は徳島大学のドイツ語の非常勤講師で、パステル和( NAGOMI )アートのインストラクターでもあります。

いわゆる一般教養科目であるドイツ語を通じて、いかに学生が今後役に立つスキルを身につけてくれるか( その為に、最近はアクティブラーニングを取り入れています )

絵を描く人が、私のアイデアの影響を受け過ぎず、いかにのびのびとその人らしい絵が描けるか

これは、私のコーチングおよびファシリテーション能力にかかっていると思います。

そもそも私がコーチングやファシリテーションに興味をもつようになったのは2年ほど前にドイツ語教師としての行き当たりばったりな自分をスキルアップしたいと思ったことからです。

ドイツ語教員の養成研修講座を受講し始め、それと同時期に反転授業の研究Facebookグループに出会い、教育に関わるたくさんの方々とつながっていきました。

反転授業の研究Facebookグループの、月1回のオンライン勉強会に参加したり、オンラインでコンサルティングを受けたり、オンライン講座の運営ボランティアをしたりするうちに

私の中ではオンラインで勉強することが当たり前の選択肢となってきました。

徳島に住んでいる私にとって、東京や大阪で行われる勉強会に頻繁に参加するのは時間的にも金銭的にもなかなかきびしいのが現状です。

それが、オンラインなら家に居ながら参加することができ、仲間の顔を見ながら勉強することができるので親近感もわいて、結果として時間のある時に実際に会って交流することも。

試してみたことの結果を報告しあったり、おすすめの本の情報を交換しあったり、オンラインの学びがきっかけでできた仲間は、私の宝物です。

同業者だけでなく、似たような悩みや疑問をもつ幅広い分野の仲間が増え、その後も交流していける楽しさと心強さを、ぜひみなさんにも味わっていただきたいと思います。

みなさんの学びのお手伝いができるのをうれしく思います(^ ^)

角田愛(ハヤ イングリッシュアカデミー代表)

角田愛

本講座にて、運営ボランティアをさせていただきます、奈良県王寺の英会話スクール

ハヤ イングリッシュアカデミー代表のすみだあいです。

実は、名刺を渡すたびに、いつも同じ質問を受けます。
「なんでハヤ イングリッシュアカデミーなんですか?」

このネーミングをしたのは、「ハヤシ」でもなく、「ハヤオ」でもありません。「すみだ」です。
ハヤ = 88 = 早 = 速 = 流行(る)

縁起のいい末広がりの8
早(ハヤ)く上達する工夫が盛りだくさん
講師の話す英語が速(ハヤ)い
今、一番流行(ハヤ)りの英会話スクール

まさかっ、ダジャレだったの?!

“どこよりも早く上達できる英会話スクール”を作ろう♪
7年前、そんな想いを込めてちょっとダサいネーミングをしました。

生徒さんは4歳から78歳までの幅広い年齢層。
子どもたちにも、保護者の方にも、そして大人たちにも、古き良き都の奈良で英語の楽しさを最大限に利用して、みんなが仲良くなれることに真剣に取り組んでいます。

うちのホームページのブログは、少しでも読むだけで、こんな気持ちになってくれたらなぁと思って書いています。

「もうちょっと英語の練習、続けてみよう。」

「お〜こんな簡単な方法があるのか〜!試してみよう!」

「みんなが頑張ってるから、私も頑張ろう!」 などなど

↓ もしよかったら、こちらからどうぞ。
http://88-english.com/

そして、88(ハヤ)の8を横にすると、∞無限(infinity)。

どんな人にも、そしてどんな組織にも無限の可能性があると信じております。その可能性を引き出すためには、人間関係が一番大切なのは皆さんご存知だと思います。コミュニケーション力さえあれば、どんなことでも成し遂げられる。ファシリテーションとコーチングの両方を一度に学べるこのオンライン講座で学びの伴走をさせていただけること、めちゃくちゃワクワクしています。

それでは皆さまにお会いできること、楽しみにしております♪

坂本保代(株式会社マイクロブレイン)

坂本保代

みなさま、はじめまして。運営ボランティアの株式会社マイクロブレイン坂本保代です。教材作成ツールのイノベーション「白板ソフト」を作っています。

今回初のボランティアをさせて頂きます。学びの伴走者になりたいと思います。
ファシリテーターの存在を知ったのは、6年前だと思いますが、文科省主催の第2回リアル熟議 http://www.mext.go.jp/jukugi/real_jukugi_list.html に参加させていただいた時、
大勢の方に囲まれ、大変ドキドキしながら参加させていただいた中で、ファシリテーターの方がいらして、どんな役割なんだろう?司会者との違いは何?と、頭の隅で「ずーと」気になっていました。

当時のサイトの引用になりますが、「子どもたちを取り巻く変化を踏まえつつ、課題に立ち向かい、そして、より良い教育現場を創りだす知恵と実行力を生み出していくためには、教育現場に関わる様々な当事者の知恵と力を結集していくことが必要です。(中略)実際に集まり、より良い教育現場作りや教育政策等について議論する【リアル熟議】の取り組みが普及するように推進しています。」

ここで、ファシリテーターの重要な役割が分るのですが、それを身に着けるには簡単ではないと思います。是非、一緒に学べたらと思います。私にとって、ファシリテーションとは、7年前のリアル熟議の延長線なんです。問題解決が出来るようになるって、なんて素敵なんでしょう。

相手を尊重し、より良いコミュニケーションを取るための、技術をオンライン講座で自然に身につけましょう。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

永島宏子

永島宏子
キャリア教育コーディネータの永島宏子です。
実験が好きで化学科を卒業後、制御システムメーカーでプログラミング、テクニカルライティングの仕事をしていました。
双子の出産で退職し、子育てのなかで教育に関心を持ち、現在の仕事をすることになりました。
中学生や高校生がざまざまな大人に出会うことで、自分の将来を考えるきっかけを作っていけたらと思っています。
私自身、仕事の中からたくさんの刺激を受けながら、「自ら学ぶ」を実践中です。
AL反転授業で、小林先生、田原さんはじめ多くの方に出会い、これからの教育に可能性を感じました。。
今回はボランティアですが、受講生の皆さんと同じように不安と期待でいっぱいです。
どうぞよろしくお願いいたします。

松本一見

松本一見
はじめまして。運営ボランティアの松本一見です。
私は現在、留学生に日本語を、日本人に言語学を教えています。
これまで私はいわゆる「日本語教授法」については学校などで学ぶ機会がありましたが、「ファシリテーション」については「見よう見まねでなんとか」やってきました。
しかしながら、「何をどう」したら上手く行くのか、「どんな時に」どんな仕掛け、声がけが必要なのかなど、足りないことはわかっていても、具体的にどう改善していけばいいのかなど、手探り状態から抜け出せていません。
今回の講座で受講者の皆さんと同じ視点で何らかの答えを見つけていきたいと思っています。4週間、どうぞよろしくお願いいたします。

山中貴美

山中貴美
みなさま、はじめまして。運営ボランティアの山中です。滋賀でオンライン英会話スクールを運営しています。

日々、仕事でも家庭でも悩みはつきません。昨年、ファシリテーション、という言葉を知って、これはもしかして悩みを解決してくれる救世主ではないか、と思い本を読んでみましたが、やはりなかなか自学自習では、質問があってもできず、うまく学べませんでした。

それが、この度、わたしの人生に革命的な変化をもたらしたオンライン講座で、ファシリテーションとさらにはコーチング講座が開かれると聞き、すぐに参加することに決めました。

日本中の学者者とつながることができ、質問し放題のオンライン講座と、ファシリテーション、コーチング講座とのコラボです。期待しないわけにはいきません。

みなさまと、学びを追求できるのが本当に楽しみです。
どんな出会いがあるでしょうか?
どうぞよろしくお願いいたします。
世界かきっと違って見えますよ。

ワークショップ形式で学ぶオンライン講座

この講座は、解説動画、Moodleでのフォーラムセッション、GotomeetingやZoomなどのWeb会議システムによるリアルタイムセッションを組み合わせて、4週間のオンライン・ワークショップ形式で行います。

【対象】

ファシリテーションとコーチングに関心があり、コミュニケーションスキルを改善したいと考えているすべての方

※アクティブラーニング型授業の定義については、このページの最初をご覧ください。

【受講前に準備していただきたいもの】

(1)Webカメラとマイク付の端末

リアルタイムセッションでは、各自がビデオチャットで参加しますので、Webカメラとマイクがついたパソコン、または、タブレット端末をご用意ください。

※Webカメラがなくても講座に参加可能ですが、ご用意いただいたほうが、より参加度が高まり、楽しめると思います。

(2)パソコン

インターネットに接続可能なパソコンをご用意ください。Moodleのフォーラムセッションに課題を提出していただくのに必要となります。

(3)テキスト

どんぐり教員セミナーの動画を教材として使用します。

【事前学習】

次の動画を視聴しておく。

どんぐり教員セミナー034″FCの存在意義と基本事項(ファシリテーション・コーチング基礎2)”

どんぐり教員セミナー035″傾聴とは(ファシリテーション・コーチング基礎3)”

【講座の進め方】

11/17,18 GoToMeetingとzoomの接続テスト

11/19 オープニングセッション&自己紹介

【講座の到達スキル目標】

★1 授業運営に関して(必須レベル)
・生徒(児童・学生)への問いかけや呼びかけの言葉やイメージがつかめるた。
・生徒のグループ学習の進行に自信が持て、運営に安定感がでるようになった。
・生徒とコミュニケーションや心の交流が以前より持てるようになった。

★2 職場における雰囲気や合意に関して(必須レベル)
・上司との意見調整や同僚との会議にファシリテーションをある程度導入することができた。特に自分が会議の進行役(ファシリテーター)を実際につとめたり、アジェンダ提案、会議のレコーディング・まとめなどをするようになった。
・コーチングによる関わりがある程度できるようになり、人の可能性を発見し高めることができた。

★3 その他のスキル(プラスアルファ)
・意見対立したときにも、双方の満足があるような第3案を促したり、合意形成に至る回数が増えた。
・オンライン上のコミュニケーションをスムーズに行うことができた。

当講座では、ファシリテーションやコミュニケーションスキルに関する基本的なレクチャーおよび演習をオンラインで行います。

1.相手(会議など複数の場合は参加者)の声に耳を傾ける傾聴する
2.相手を承認する
3.意見やアイデアを発散させたり収束させる
4.質問を考える、適切なタイミングで質問を投げかける

実際にはこうした概念についてのレクチャーを予め動画で理解し、理解を深めるためのディスカッションや質疑応答、講師や参加者の経験を共有し互いに学んでいく方法を取ります。予習時間は、最大30分程度です。

全部で5回で構成されています。おおよその構成は以下を予定しています。

第1回 ファシリテーション・コーチングの基本スキルについて

まずは、オンラインツールを使った学び方に慣れるところから始めます。オンラインで初めて学ぶ方、経験者の方も含めてのオリエンテーション、ファシリテーションやコーチングの基礎技術を学びます。また参加者同士を互いに知る交流の場面を設けます。

第2回 ボードミーティングでファシリテーションを体験しよう

「傾聴」「観察」「承認」などの基本スキルをおさらいし、実際にボードミーティングを通して体験的にファシリテーションを学んでいきます。

第3回 ボードミーティングを改良しよう。

関係がこじれている場合や、少しハードな場面でも納得いく結論を参加者が導けるような、より高度なファシリテーションスキルについて、シナリオを使ったミーティング体験をしたり、質疑応答を通して学びます。

第4回 コーチとしてまわりをサポートしてみよう

人は問われると考えます。そして動き出します。
逆に響かない問いでは動きませんし、防衛・逃げを起こします。
変革をドライブする問いとは何でしょうか? どうやってつくり、どのタイミングで使うのでしょうか? 実際のコーチング場面を想定してコーチングについて学びます。

第5回 コーチングスキルを磨こう&エンディング

学んだコーチングスキルを活かして、現場を活気づけるコーチングについてさらに演習していきます。場面を想定してグループでコーチング演習します。また効果的な振り返り(リフレクション)方法についても学びます。

Q&A

Q リアルタイムセッションに参加できない日があるのですが大丈夫ですか?

A リアルタイムセッションは、翌日以降、録画動画が見れるようになりますので、そちらで確認していただくことができます。

Q パソコンが苦手ですが、サポートはしてくれますか?

A 運営がテクニカルサポートを担当します。Moodleの使い方や、GoToMeetingやzoomの使い方については、動画マニュアルを配布しますので、それに従って操作してください。操作方法が分からないときは、いつでも相談してください。接続トラブルについても対応します。ソフトの使い方については、担当者がサポートします。

Q 教師ではないのですが、申し込むことはできますか?

A 様々な場面でのコミュニケーションスキルを改善するための講座ですので、受講対象は教師に限定していません。

Qリアルタイムセッションには、iPadから参加できますか?

A GoToMeetingやZoomは、iPadから参加可能です。あらかじめアプリをダウンロードしておく必要があります。詳しくは、こちらをご覧ください。

受講者へのプレゼント

toku1 ハードな場面で合意形成するファシリテーション虎の巻PDF


すんなりいかない手ごわい会議の場をハンドルし、支援するためのファシリテーションのマル秘のテクニックを特別に公開します。講師が行ってきた合意形成ワークショップや最新の合意形成に関する知見を凝縮してあります。

toku2 オンラインワークショップ運営の手引き


ビデオチャットとLMSを連携させて、オンラインで勉強会やワークショップをやっている田原真人が、運営のノウハウを資料にまとめてプレゼントいたしま す。様々なツールを実際に試した結果、分かったことや、リアルのワークショップとは違ったオンラインの難しさを解消するコツなど、あなたの活動を広げるの に役立つノウハウです。

お申込み

講座名:ファシリテーション&コーチング講座~明日から役立つコミュニケーションスキル~

申し込み締め切り:2015年11月17日(火)

定員:28名 (定員に達し次第、締め切ります)

開講期間:11月19日(木)~12月17日(木)

※4週間の講座期間中にGoToMeetingによるリアルタイムセッションを5回行います。

リアルタイムセッションの日程:

11/19(木) 21:30-23:00 第1回 ファシリテーション・コーチングの基本スキルについて

11/26(木) 21:30-23:00 第2回 ボードミーティングでファシリテーションを体験しよう

12/3(木) 21:30-23:00 第3回 ボードミーティングを改良しよう。

12/10(木) 21:30-23:00 第4回 コーチとしてまわりをサポートしてみよう

12/17(木) 21:30-23:00 第5回 コーチングスキルを磨こう&エンディング

この他に雑談ルームを4回開催します。

受講料:32,400円(税込)

※満員御礼 : お申し込みを締め切りました。

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第20回反転授業オンライン勉強会「アクティブ・ラーニングを学校から解き放つ」

「反転授業の研究」の田原真人です。

アクティブラーニングが教育分野のバズワードとなりつつありますが、そもそもアクティブラーニングとは、何のためのものなのでしょうか?

学校という場が、未来の社会の準備の場だとすると、そこで、どのような準備をすればよいのでしょうか?

岩手県の大野高校の校長として、未来思考で様々な活動をされている下町壽男さんにお話をうかがいます。

日時:11/6(金) 21:30-23:00

場所:オンラインルーム GoToMeeting 第2部のグループワークでは、Zoomを利用します。

参加費:無料

登壇者:下町壽男さん(岩手県立大野高等学校校長)

タイトル:アクティブ・ラーニングを学校から解き放つ

※第2部では、ビデオチャットを使ったグループワークを行いますので、ビデオチャットの用意をお願いします。ビデオチャットの用意をされていない方は、メインルームでテキストチャットによるコメントでの参加となります。iPadからの参加も可能です。

アクティブ・ラーニングを学校から解き放つ

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<プロフィール>

岩手県立大野高等学校校長。

岩手県立盛岡第三高等学校(19962004年)、岩手県立花巻北高校(2004年~2009年)等を経て県外派遣教諭として青森県立八戸西高校に勤務(20092011)。岩手県教育委員会学校教育室「学力・授業力向上担当」主任指導主事(20112013)、岩手県立盛岡第三高等学校副校長(20132015年)を経て現職。担当教科は数学。2011年から授業改革と教員文化を変える取組を継続して行っている。著書に、『つながる高校数学―見方をかえれば、高校数学の全体像がわかる―』(2012ベレ出版)。現在、溝上慎一監修「大学・高校アクティブラーニング」(東信堂)執筆中。

下町さんのインタビュー記事はこちら

<内容>

「アクティブ・ラーニング」は、今や、初等中等教育から高等教育までをつなぐ教育政策の「キーワード」として浸透してきた感があります。しかし、確かに言葉としては市民権を得て、全国に流通されているように見えますが、学校現場では、その意図、理念が理解されず、単なるグループ活動を主とする授業形態という上滑りの状態で定着されつつあるような気がします。

そもそも、アクティブ・ラーニングが叫ばれる背景には、知識基盤社会、グローバル社会の到来といった、社会状況の急激な構造的変化の中で、地球規模で考え、行動し、世界に貢献する人材を育成することや、子どもたちを賢い市民に育て、共生社会に寄与し、参画するためのマインドセットを整えることが意図されているはずです。コンテンツベース(各教科・科目の目標・内容中心)からコンピテンシーベース(各教科・科目横断型の「資質・能力」重視)への変換というスローガンもそれに拠るところではないかと思います。

さて、では、子どもたちにそのような力を育てようとする学校組織や教員文化はどのようになっているでしょうか。

私は、教育現場において、その内部に横たわる問題が、往々にして外部の人間によってメスが入れられ改革が進められる、そういう他律的なシステムが、学校や、そこに携わる教員の体質としてあるのではないかと感じています。ひんしゅくを買うことを承知で述べると、アクティブ・ラーニングやキャリア教育を行うための必要条件は、それを語り、行う教師自身が、自らのマインドセットを整え、スキルアップを考えていくことではないかと思います。

ところが、特に公教育の教育現場は、ある種特殊な空間であって、基本的に前例踏襲型、内向きの経営形態が多く、教員も、変化を嫌い、学校という閉じた世界と教育行政という縦の関係の中だけで業務を行っている傾向が強いように思います。もちろん、それは、学校が多忙であるということにも起因しているかもしれません。しかし、いじわるな見方をすると、変革することや、自分を磨くことなど、本当はやりたくないから、瑣末なタスクに身を置いて安住しているように見えないこともないのです。つまり、「忙しいからできない」「瑣末なことに追われる」の言葉の裏には、「本当はやりたくない」というメンタリティが働いているように見えるのです。そのような中で、学校としてのアクティブ・ラーニングを組み立てることはとても難しいと思います。なぜなら、もしかしたら、管理職、職員両者がともに「アクティブ・ラーニングなんて本当はやりたくない」と思っている学校では、行ったという事実づくりのためだけのものしか実現できないからです。

私は、学校現場でアクティブ・ラーニングが、その学校の課題や育てたい生徒像に基づいたものとして機能するためには、積極的に外部との連携を行うことを提案したいと思います。その外部とは、地域や校種を超えた学校はもちろん、塾や教育関係のコーディネーター、キャリアカウンセラー、ソーシャルワーカー等々、そして、地域の中に確実に存在するであろう、学校と地域を結ぶイノベーターなど、クリエイティブな人々に広くアプローチしてネットワークを築くことが必要ではないかと思うのです。それは、学校としてでもあり、教師個人としてでもあります。そのことによって、外向きの視点から教育を見つめ、教師のマインドセットが整うのではないかと思うのです。

最近、電通総研が「アクティブ・ラーニング こんなのどうだろう研究所」を立ち上げました。学校現場にもアプローチするということで、準備が進められています。こういう、ビジネスソリューション的コンセプトによるアクティブ・ラーニングの構築は、えてして「這いまわる経験主義」に陥り、教科の深い学びにつながらないと批判する向きもありますが、私は個人的には興味があり、可能性も感じています。ですが、私は、電通総研の提示するビッグビジネスに丸投げするのではなく、それぞれの学校が自分たちの頭で考え、創意工夫を凝らし、他者と繋がりをつくっていくことで、同じようなことを草の根的に行えるのではないかと思うのです。

なぜなら、この「反転授業の研究」というグループが、それだけの力量と可能性を有したアクティブな組織体であり、今回のセッションも含め、実際に、様々な活動が随処で起こっていることがその例証でもあるからです。

今後、そのような連携をどう作り、どんなコンテンツを開発するか。また、その中で、教師のマインドセットをどう整えていけるか、その学校や地域の求める生徒像をどう実現していくか、評価の方法の斬新なアイデア、など、未来型の楽しい教育現場について議論できればと思います。

お申し込み方法

(1)このページからお申し込みください

お申し込みはこちら

(2)自動返信メールに参加方法が書いてありますので、指示に従って参加してください。

※自動返信メールの内容

【入室準備】

iPadなどのタブレットからの参加の場合は、事前にGoToMeetingとZoomのアプリをインストールして下さい。

【入室方法】

上記の準備を終えた後、自動返信メールに書いてあるURLをクリックすると、自動的にWebルームに接続されます。

エイミー・レンゾーさんインタビュー(3)

国際的に有名なワールドカフェホストであるエイミー・レンゾーさんにオンラインでインタビューさせていただき、それを記事として連載しています。

インタビューPart 1と2は、こちらから読むことができます。

エイミー・レンゾーさんインタビュー(1)

エイミー・レンゾーさんインタビュー(2)

インタビューをしながら、僕が「反転授業の研究」での活動を通して感じるようになってきた問題意識と、エイミーさんの話とがシンクロしていると感じるようになりました。

社会システムと自然のシステムとの不整合が大きくなってきている中で、その社会システムへ適応していくと、自分の中の内なる自然との乖離が大きくなっていき、そこから生じる矛盾が、様々な問題を引き起こしているのではないかという問題意識を共有しました。

では、どうやって、その不整合を解消し、より調和した状態を回復していくことができるのだろうか?

そのためのカギを握るのが「Beauty(美)への反応」だとエイミーさんは言います。

美に触れたとき、人は、深いものへ触れることができ、自分の中の内なる自然や、他の人との繋がりを見出すことができるのではないでしょうか?

「Beauty(美)への反応」は、どのように社会システムと自然システムとの調和へ繋がっていくのでしょうか?

さらに、お話をうかがってみました。

 

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私たちは、調和して生きることができる

―― 社会の変化は、どのようにして起こるとエイミーさんは、考えていますか?

今、ヨーロッパでは、難民の人たちがたくさん流入してきました。それは、ある意味では、本当にひどいことです。生きていく場所をうばわれたり、恐ろしい目にあうからです。

ただ一方では、このことに対して、人間らしい反応が多くみられています。人々は、その困っている人たちをみて、自分に何ができるのだろうか、と考えて反応しています。
そこにbeautyがあると、私は感じています。

利己的な考えよりも、他の人のことを考えることができるようになるのです。それをみることは、大変すばらしいことだと思います。

―― 先日、友人とシリアからの難民について話していたんです。ヨーロッパの人たちの中には、問題の原因がヨーロッパにあると考え、だから、難民を受け入れるべきだと考えている人たちがいるという話を聞いて、希望があるなと思いました。

狭い範囲で考えている人がいる一方で、システム思考で考えて、遠くの因果関係を見て行動できる人たちがいるということに大きな可能性を感じました。

このように考えることは、生態系的で、自然とのつながりを感じました。

本当にそうだと思います。私たちは、自然と自分たちとを分けて考えたがりますが、実際には、私たちは他の生き物たちとも同様に、自然のなかに生きているのですからね。

人間であることはある意味で、とてもすばらしいことだと思うのですよ。私たちは調和して生きることができるのです。いくつかの文化では、より自然とともに生きていますよね。重要なことは、私たちが、自然の一部であることを忘れないことなのです。

―― 私は、自然農法からたくさんのヒントを得ています。福岡正信さんという有名な自然農法家をご存知でしょうか?

はい。知っています。

―― 彼は、たくさんの種類の種を中に入れた粘土団子を撒くんですね。彼も、どの種が発芽するか知らないのです。でも、Natureが、どの種が発芽するのかを知っているのです。彼は、ただ、たくさんの種類の種を入れるだけなんです。

それは、面白いです。パーマカルチャーと似ていますよね。

―― はい。考え方はとても似ていますよね。違いは、パーマカルチャーは人間がデザインしますけど、福岡さんの場合は、デザイン自体もNatureに任せてしまうことですね。

僕は、少し前に「クラウドに粘土団子を撒こう」というブログ記事を書きました。

→ クラウドに粘土団子を撒こう!ペイフォワードの循環が意識革命を起こす

僕は、どのアイディアが発芽するか分からないですよね。なぜなら、僕たちはシステムの中にいて、システム全体を見渡すことができませんから。だから、僕ができる唯一のことは、粘土団子の中にたくさんのアイディアを詰め込んで大量に撒くことだなって思ったんです。

興味深いですよね。そのときには、どんな結果が出るかは、先に計画しているわけではないのですよね。人がすることは、見る、気がつくということなのです。どうなっているか、気にしてみているだけなのです。それは、一つのアナロジーですよね。たとえば、アイデアがあったとします。私たちは、それをただ置くのです。でも、どのアイデアが芽を出すかは分からないのです。

ワールドカフェでは、私たちは、入れ物をつくっているのだとよく言います。そして、関係性の土壌を耕すのです。それがワールドカフェで行われていることの一つなんです。relational fieldを耕すことをしているのです。なぜなら、私たちは、いろいろ余計な手出しをする必要がないからです。私たちが準備するのは、場所なのです。そこでは、人がお互いに話をして、反応して、人のいうことを聞きあうのです。お互いに学びあって、興味を持ち合うのです。私たちは、そこに立ち止まり、会話をはじめる場所を用意するのです。違った考えを持っている人たちも、安心して意見が言える場所です。

――以前は、成功するか失敗するかということを気にしていたんです。でも、最近は、結果はNatureによって選ばれているって受け入れられるようになったんです。これは、僕にとってはとてもよいことです。ファシリテーションをしているといろんな予想外の結果が出てきます。今は、すべての結果を受け入れることができて、ただ、場で起こっていることを見ることができるようになりました。僕の予想と結果が異なることはあり、以前は、その結果を拒絶していたこともあって、自分の予想通りになるようにコントロールしようとしたりしていたんですけど、今は、「ほぉ、この種が発芽したか。」みたいに見守ることができるようになりました。これは、僕にとっては大きな変化でした。

それは、とてもよく分かります。

 

新しい関係性を生み出すためのalternativeなやり方

―― 僕は、どうやって「仕事」の概念を変えられるかということを考えています。仕事って、すごく狭い範囲で捉えられていることが多いと思います。最近、仕事について違った種類の経験をしました。昨年、有料のオンライン講座をやったときに、みんなが僕のことを「お金が欲しい」って思っているんじゃないかって気がして、自分が孤立している感覚があったんです。活動を持続可能なものにしていくためにはお金も必要なんですけど、自分にはビジョンや使命感があってやっているんですね。それで、そういう自分の気持ちをオープンにしたんです。「Why」の部分を語ったんです。そしたら、お金を払って申し込んでくれただけじゃなく、オンライン講座の受講生を集めるためのビデオを作ってくれたんです。

それは、すばらしい例ですね。

―― それは、僕にとって「美しい経験」でした。自分にとってすばらしい瞬間というのは、お金を得たときじゃなくて、一緒に仕事を創った仲間にお金を払う瞬間なんです。だから、もっと仕事をコラボレーションによって創って、仲間にもっと「美しいお金」を払いたいんです。

すごくよく分かります。私は、本当に、他の人と一緒に仕事をすることが大好きなんです。私たちがやっていることだと、先生と生徒といった固定化した関係ではないので、互いに学びあい、影響しあうのです。私たちも、グループから学んでいます。同じ立場を共有するエネルギーがあるのです。

私は、alternativeのやり方をしているのです。もちろん、運営していくのに資金は必要です。でも、私がやっていることは、たとえば、お金の分け合い方に幅をつけたり、また、資金が少ない人にでも、その人にやってもらうことで参加できるようにすることです。

あなたがやっているように、人がうまくいくように支援するということはとてもすばらしいですね。

エイミーさんのインタビューを終えて

2年前にエイミーさんがフィールズ大学で行っていたワールドカフェホスティングのオンライン講座に出たことがきっかけで、目の前に新しい世界が広がり、自分自身もオンライン講座を開くことができるようになりました。

オンラインのダイアログについて2年間で考えてきたことを、エイミーさんに直接ぶつけることができ、エイミーさんの考えをうかがったことで、理解をさらに深めることができました。

物理的には遠く離れていても、顔を見て、相手の存在を感じながら話すことで、ハートレベルの対話をすることができます。

ハートレベルの対話の中で「美」に触れる瞬間を生み出すことができれば、対話に加わっている人たちは、意識の深い部分に触れることができ、自分の中の内なる自然ともっと繋がることができるのではないでしょうか。

自分の心をオープンにすれば、異なる文化的背景を持った人たちとの間でも、ハートレベルの対話をすることができ、それが、お互いの意識のキャパシティを大きく拡張し、世界に対する当事者意識を高めていくことにつながると思います。

エイミーさんと話をする中で、人と人との繋がり方や、お金の回り方が変わっていけば、社会における「行動ルール」が変化していき、社会システムが、自然システムと調和する形へ移行していくというイメージを持つことができるようになりました。

今やっていることを、確信を持って進めていこうと、改めて思いました。

 

 

2015年10月にワールドカフェ20周年記念でエイミーさんがゲストファシリテーターとして来日します。

エイミーさんによるワールドカフェを体験するチャンスですので、興味のある方は参加してください。

10月25日には、全国9箇所をつないでワールドカフェを行うそうです。

ワールドカフェ20周年記念イベント

エイミー・レンゾーさんインタビュー(2)

国際的に有名なワールドカフェホストであるエイミー・レンゾーさんにオンラインでインタビューさせていただき、それを記事として連載しています。

インタビューPart 1は、こちらから読むことができます。

エイミー・レンゾーさんインタビュー(1)

エイミーさんとお話しすると、彼女が様々な問題を深く深く考えていることが伝わってきて、それに接することで、自分の思考もそこに引き込まれていくように感じます。

今回は、エイミーさんが書いているブログ Beauty Dialogueのテーマである「Beauty」について、詳しくうかがいました。

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Beautyに対するな反応とは何か?

―― Beauty Dialogueの記事を読みました。Amyさんにとって「Bearuty」はとても重要な概念だと思います。僕は、この4年間、何度か「Beautyな経験」をしました。その経験は、僕に大きな力をくれました。「Beautyな経験」を共有した僕の友人たちも同じように力を得て、その結果、僕たちのマインドセットは大きく変化しました。それで、Amyさんに「Beauty」についてどのように考えているのかお聞きしたいと思いました。

私もあなたに賛成です。Beautyは、人間にとってとても重要な経験だと思います。
人によってどう経験するかは違うでしょうが、beautyは本当に重要なファクターです。

あなたが私のブログを呼んでインスパイアされたと言うこと、あなたにとって意味があったと言うことを聞いて、心が動きました。

長い間、私はビジネスウェブサイトを持っておらず、ブログだけを使っていました。
私の、心の中にある「本当に重要なこと」を書くために使っていたのです。

これはビジネスだとか、これは個人的なことだとか、そういう区別は必要ないと思っているんです。人間としてどういう人であるかが、その人にとって一番重要なことなんです。

どうやって世界をとらえるか、というのが、その人自身なのです。

私は、私自身の「カメラレンズ」を通して世界をみています。
私はそれを使って、BeautyやHarmonyをいつも探しているのです。

写真によって、私が美しいと思うものを見せることができます。
他の人たちが美だと思うものではないかもしれない。それは、伝統的な美とは異なるかもしれない。それは、素材とか色とか2つの異なるものが交じり合っているものかもしれない。

でも、私にとって、興味深いことは、Beautyに対する人々の反応なんです。
Beautyに反応するということは、精神的な体験なんです。
Beautyへの反応は、私にとって、特別な体験です。

Beautyへの反応に触れると、私は、すべてが止まったような気持ちになります。そして、その瞬間のなかに生きる(be in the moment)のです。感謝を持ちながら。人が、そのような「be in the moment」の感覚を持つときには、とても深いものに触れることができるのです。

私たちは、忙しい生活を送っていて、身の回りのBeautyに気づきません。
立ち止まってみれば、自然界のBeautyや、他の人たちの顔に表れるBeautyに気づきます。
その本質が輝き始めて、美しさが表れているのに気づくでしょう。

 

自然とのつながりとBeautyについて

―― 僕は、長い間、自然から隔てられていると感じてきました。なぜなら、社会システムと生態系システムとが全く異なるからです。生態系の原理がCo-Creationなのに対し、社会システムは一部の人たちが他の人たちを支配しているヒエラルキー社会だからです。僕は、かつて、ヒエラルキー社会に適応していたので、生態系からは遠ざかっていました。ただ、社会システムの中で、生態系のことを勉強していただけでした。

でも、最近になって、生態系と、もう一度、繋がり直している気がしています。

テクノロジーは、人間を自然から遠ざけてきましたが、インターネットのようなテクノロジーは、人をこれまでとは異なる形で繋いできました。インターネットは、ある意味では、生態系的なシステムだと思います。私は、他の人たちを、今までとは違う形で繋ぎなおすことができると考えています。

最近は、自分の心の中にNatureを感じるし、自分が、生命の一部だと感じるんです。

それは、とても興味深い洞察ですね。
私たちは自然から分離できませんよね。なぜなら、私たちが自然だからです。
自然の一部だからです。

土壌で作られた食べ物を食べ、空気を吸います。これらは、すべて自然だからです。
私たちは、自然のシステムの一部なのです。どれほど自然のシステムから隔てられていると感じても、私たちは自然の一部なのです。

そして、私たちはHuman natureを持っていて、それは、自然の中にあるのです。

多くの場合、Human natureとnatureが一緒だということに気づきません。なぜなら、私たちの生活はクレイジーで忙しくて、静かな自然とは違うからです。

でも、それに気づくためには、止まらなければいけません。止まることができたら、BeautyやBeautyへの反応に気づくことができます。

止まることによって、私たちが自然から隔てられているという幻想から目覚めることができます。

Beautyへの反応に触れると、私たちの心の箱が開き、マインドがオープンになり、他のすべてのものとの繋がりに気づきます。

ほんの一瞬かもしれないけれど、覚醒しているように感じて、どれほど他とつながっているかに気づくことができます。

ネイティブ・アメリカンであるナバホ族の人たちは、ロング・ウォークのときにuniverseに祈っていました。

それは、自分が歩くときに、前にも後ろにもBeautyがあるようにと祈っていたのです。

そして、右、左、外側、身体の内側・・というようにいたるところにBeautyがあるようにと祈っていました。

つまり、Beautyに囲まれて人生をおくれるようにと願っていたのです。

彼らは、自然とハーモニーを持ちながら生きることを願ったのです。

自然と生態系では、すべてのものがその一部であり、お互いに関連しています。それは、私たちも同じなのです。私たちは、自然と切り離されてはいけないのです。

ですが、今、私たちの社会システムは、そのことを忘れたヒエラルキー的なシステムを持ち、それは、持続可能性を考えていません。私たちは、どこから来て、これからどこに行くのか、社会のシステムはそのことを考慮にいれていないのです。

システムが今、ほころびをみせています。それは、自然にしろ、社会の問題にしろ、いろいろなところにあらわれています。

私は、何が起こっているのかをみることに強く関心を持っているのです。私は、その全体像をつかむことができるのかわかりませんが、とにかく、それをみたいと思っています。

Beautyレンズを通して、どこに調和があるのか、どこにバランスがあるのか、どこにパターンがあるのかをみて、私は人間としてどう生きるのか、それを考えているのです。

Beautyに囲まれて生きるためには

忙しい日常や、狭くて利己的な世界認識から抜け出して覚醒していくための手がかりが、Beautyなのではないでしょうか。

エイミーさんが言うように、「Beautyへの反応に触れると、私たちの心の箱が開き、マインドがオープンになり、他のすべてのものとの繋がりに気づく」のです。

その結果、お互いが深いレベルで繋がれるようになり、システム全体が良い方向へ進むように考えられるようになり、協力して持続可能な社会を目指していくことが可能になるかもしれません。

そこへ至るキーワードがBeautyなのではないかと思います。

 

ワールドカフェ20周年記念でエイミーさんがゲストファシリテーターとして来日します。

エイミーさんによるワールドカフェを体験するチャンスですので、興味のある方は参加してください。

全国9箇所をつないで行うそうです。

ワールドカフェ20周年記念イベント

 

インタビューPart 3はこちら

オンラインワールドカフェを終えて

world-cafe-online

2015年9月24日に「反転授業の未来を語ろう!オンラインワールドカフェ」を行いました。

1年前に12名でオンラインワールドカフェのテストを行ったことはありましたが、本格的な開催はこれが初めてでした。

オンラインワールドカフェの実践者として有名なエイミー・レンゾーさんに、実際にどのように実践しているのかをスカイプでうかがい、私たちがやってきたオンラインのグループワークの経験と組み合わせて行いました。

エイミーさんは、Maestro ConferenceとGoogle Documentを組み合わせて行っているということでしたが、私たちはWizIQとMoodleを組み合わせて行いました。

Maestro Conferenceは音声チャットだけなのに対してWizIQはビデオチャットとホワイトボードが使えることや、Google Documentへの正体にGmailアカウントが必要であるけどMoodleには制限がなく、さらに、Moodleのほうが多機能なため、より自由な設計ができると思ったからです。

また、Moodleのフォーラム機能を使ってテキストベースで行う非同期の対話と、WizIQのビデオチャットを使って顔を見ながら同じ時間を共有して行う対話とを、いかに組み合わせれば効果が上がるのかということにも注意を払いました。

テキストベースの対話は、思考をゆっくりと深めることに向いていますし、仕事の合間などに参加できるので参加者の負担が少ないです。

一方、顔を見ながらの対話は、思わぬアイディアが出てくる可能性を秘めています。

今回は、ラウンド1をMoodle上で3日間行った後、ラウンド2と3をWizIQのビデオチャットで行うということにしました。

ラウンド1(Moodle上でのフォーラムセッション)

ラウンド1には、28名の方が参加し、自己紹介フォーラムで自己紹介をした後、ラウンド1の問いに取り掛かりました。

4-5名のグループに分け、同じグループ内のテーブルメイトの投稿にコメントをしていき、他のグループの人へのコメントもOKとしました。

ラウンド1の問いは、以下の通りです。

あなたの人生に影響を与えた「学び体験」を教えてください。

3日間で200個ほどの投稿が乱れ飛び、「学び体験」について多くの知見を共有しました。

それを1枚の紙にまとめたのがこれです。

round01

まず「繋がる」というキーワードが出てきました。

ヨガ、マインドフルネス、瞑想などの体験や、モンテッソーリ教育を通して子どもの成長力へ気づく経験などは、生き物としての自分自身と繋がる学び体験なのではないかと思います。

また、「脱皮」というキーワードも多く出てきました。自分と異なる他者と出会い、憧れたり(ロールモデル)、引き出されたり(コーチング)、全否定されたり、カルチャーショックを受けたり・・といった経験を通して、自分の思考のフレームが壊れ、リフレ―ミングされるという経験を上げた人が数多くいました。

異なる他者と協力して創造する「共創」も、重要なキーワードになりました。創造は、そこに加わる人たちに自己肯定感と自信を与えてくれ、その結果、自分自身と深くつながったり、他者との繋がりを認識することができたりしていくのではないかということが浮かび上がってきました。

第2ラウンド(WizIQでのビデオチャットセッション)

第2ラウンドは、WizIQにて行いました。WizIQへ接続できない方が4名ほどいて、今後への課題を残しました。

タイムスケジュールをMoodleに表示し、参加者には、WizIQとMoodleの両方にログインしてもらうようにしました。

WizIQでファシリテーターが、WizIQの使い方とワールドカフェの進行についての簡単な説明を行った後、Breakroom機能を用いて参加者を5つのルームに振り分けていきました。

breakroom

ラウンド2の問いは、次の通りした。

アクティブに学んだ結果、自分で考えて行動する人が社会に溢れる10年後、社会はどのように変化しているでしょうか?

テーブルの1つからは、

「社会というのは、国内じゃなくて、グローバル社会じゃないか?」

という声が出てきました。

また、学校や企業という組織の枠組を超えて、インターネットを通して個人と個人が直接つながっていくグループができ、一人の人間が、いくつものグループに重複して所属する現象が起こるのではないかという声も出てきました。

学校の学びに比べて、社会での学びは自由だが、10年後は学校の学びが社会での自由な学びに近づいていくはずだという声もありました。

国籍、地域、年齢、性別を超えて集まった気の合う仲間が集うことによって新しい文明が生まれるという壮大なイメージも浮かんできました。

テーブルトークのあと、10分ほど時間を取り、気づいたことをMoodleのフォーラムに書き込んでもらって共有しました。

全体でのシェアが簡単にできるところが、リアルのワールドカフェにはない、オンラインのメリットだと感じました。

ラウンド2の声を拾って1枚の紙にまとめました。

round02

ラウンド3(WizIQでのビデオチャットセッション)

ラウンド2の気づきをMoodleに書き込んでもらっている間に、ファシリテーターは、テーブルメンバーのシャッフルを行いました。

ファシリテーターが作業をする間は、参加者にとっては待ち時間になるので、その時間にMoodleへの書き込みをしてもらうように工夫しました。

第3ラウンドでは、最初にラウンド2で話したことを共有してもらってから、第3ラウンドの問いについて考えてもらいました。

第3ラウンドの問いは以下の通りです。

自分自身がアクティブに学ぶことによって、周りにアクティブな学びを促してきたあなたの人生は、10年後、どの様に輝いていますか?

テーブルからは、オンラインで繋がることによって学びをお互いに促しあう状況が生まれ加速しているという声が出ていました。

学校、企業、起業家などが、組織の枠を超えて個人で繋がって共創し、学び合う未来というものが浮かび上がってきました。

10年後崩壊するものとしては、国民皆保険や大企業のような生活を保障してくれるようなシステムが挙げられ、その代りに信頼関係で結ばれたネットワークにリスクを分散するようになるのかもしれません。

1枚の絵にまとめてみると、10年後の「生きる力」というものがどんなものなのか見えてきたような気がします。

round03

ハーベスト(Moodleのフォーラムに書き込み)

ビデオセッションを終え、各自でMoodleに2つのことを書きこんでいただきました。

(1)自分の創りたい未来のために、どのような行動をしたいですか?

(2)オンラインワールドカフェに参加した感想は?

参加者で書き込みを共有し、相互にコメントし合いました。

参加者の方の感想をいくつか紹介します。

地方に住んでいる私でも、こんなに色々な方と一緒に「会う」ことができるオンラインのすごさを改めて感じました。私にとってはちょっとテーマが大きかったので、もっともっと時間が欲しかったです。また、2回目、3回目があったらぜひ参加したいと思います。

ワールドカフェをオンラインで体験。なんて素晴らしい取り組みでしょう。
2つのワールドにお邪魔させてもらいました。全く違う発想も出てきました。
普段お付き合いすることのない地域、職業、年齢の方と話をすることで視野が広がりました。

オンラインだけでは味わえないMOODLE
MOODLEだけでは味わえないオンライン

2つのものをブレンドすることで新しいものができる。たのしかったです

オンライン環境の違う中で、不具合もたくさんあったかと思いますが、色んな方とオンラインでこうして対話できるというチャレンジにわくわくしています。

リアルな場でも、場のあり方によっては話したいのに話せない人がいるのは同じであると思うので、オンラインという環境の中で、どういう「場」を作っていけばいいのか、

また2回3回と続けていく中で見えてくるものがあるのでは、と自分の中でのfunが見つかったような気がします。話している人、ホワイトボードやチャットで書く人、色んな可能性があって楽しみです!

田原さん、参加された皆様、いい体験をありがとうございました!また次回!

画面にも出られず、チャットも書き込めず、モタモタ。おいてけぼりの生徒の気持ちが味わえたのは良かった。収穫。

聞いているだけでも収穫多いということもわかった。

ワールドカフェは3回目。収穫のスキルが分かってきたような。

オンラインの中にこんな世界が広がっていて仲間がいるということの嬉しさ頼もしさ。まさにパラダイム転換起こっています。田原さんはじめ皆様になんとお礼をもうしあげてよいやら。本当にありがとうございます。たくさんエネルギーいただいています。

やはり、文字とは違う臨場感があります。また、短い時間でしたので、ほどよい緊張感もありました。

始めは、「?」でしたが、最後は、「もう終わっちゃうの?」という気持ちでした。

途中、チャットボックスの存在をわすれてしまってすみません。

1人だけの思考では出てこない発想が、ほかの方といっしょに話すことによって引き出され、新しい回路が開かれていくような感じですね。そして、それを糧に、また次のステージに進んでいける気がしました。

また、ほかの方の取り組みなどを伺うことで、自分自身の行動も促されると思います。

Moodleとオンラインの組み合わせも、それぞれいいですね。

ただ、お話をしていただけですが、楽しく学ぶことができたと感じています。

ありがとうございました。

有意義ではあったが、不完全燃焼とラウンドによっては尻切れトンボになった感は否めない。でも、今回の縁で、反転授業の研究のグループ内で会うときっと距離は縮まっているはず。

この高揚感は、リアルタイムでのやり取りでしか味わえないと感じました。しかも抜群のタイミングで、エネルギーをもらいました。ちょうどここ2、3日の間に新しい共創に踏み出したばかりでした。moodleの書き込みの効果も高いと思いました。他のテーブルの方とも話がしたかったですね~。今回、仕事を高速で終わらせ、飲み方も断って参加しましたが、本当に良かったです。次回はもっとうまくやれると思います。また、どうぞよろしくお願いします。

オンラインでなければワールドカフェというものに参加できなかったので、新たな試みをして下さった田原さんに心から感謝しています。貴重な経験になりました。

一方でオンラインはどうしても機器による障害により、会話や進行が寸断される難しさも感じました。それでも、それを遥かに超える可能性を感じたので、きっと経験を積んでいけばリアルを超えた新しい世界が出来ていくのだろうな、と思いました。

自分が知らない知識や考え方に触れることができました。やはり人と交わることは大事だと思いました。

みなさん熱いですね。ちょっと打ち解けるのに時間がかかってしまいましたが、打ち解けたら多分徹夜でしょうね。溝上さんがリーダーしてくれるとタガをくくっていたので、アイスブレークとか自分で考えておかなかったのは反省。

反転授業とかAL学習の予備知識とか経験により議論の内容が変わってくるので、テーマをいくつか作って参加者がどのテーマに行くか選べるといいのかもしれませんね。

幹事さんを変えて定期的にやりたいですね。

オンラインの良いところは、どこにいてもつながることができること。

この点をもっと活用して集合知結成ですね!

短時間でしたが、ワールドカフェになっている感覚はありました。
話す順番、ホワイトボードは、戸惑いがあって、全く同じとはなりませんが、時間に対する情報量は、素早く密になるように思うので、使い勝手は感じます。
(即席のルームマスターになってしまって、実は緊張しっぱなしでした。)

今回は、オンラインワールドカフェへの最初のチャレンジということで、いくつかの課題が出ましたが、回を重ねていくにつれて改善できそうだという見通しも持つことができました。

フォーラムを使ってテキストベースでやり取りすることと、ビデオチャットで化学反応を起こしていくことの両方をうまくブレンドすることで、どちらか一方よりも効果を上げられるのではないかと感じました。このあたりは、普段、反転授業に取り組んでいる実践者としての勘が役に立っていると思います。

これまで、オンラインにフラットなコミュニティを作り、対話を通して共通ビジョンを作っていこうとするときにネックになるのが、「オンラインの対話」でした。Facebookグループなどでのテキストベースのやり取りだけでは、関係性の質を高めていくのに不十分だと感じていたのです。

今回、オンラインワールドカフェをやってみて手ごたえを感じたことで、オンラインコミュニティ運営のための有効なツールを手に入れることができたと感じています。
 
オンラインコミュニティを作る→テキストベースとビデオチャットを組み合わせた対話の場を創る→共通ビジョンを作り共創する

という流れを確立できれば、あちこちでクリエイティブな活動が生まれるかもしれません。

今後、ワールドカフェに限らず、様々な対話セッションをオンラインで行うことや、GoToMeetingやZoomなどのビデオチャットを利用した対話セッションなどにも取り組んでいきたいと思います。

今回のオンラインワールドカフェは、ワールドカフェ20周年記念イベントとして世界中で実施されているImpact Cafeにエントリーしています。

10月25日には、日本の9カ所でワールドカフェが同時開催されますので、ワールドカフェに興味を持った方は、ぜひ、情報をチェックしてください。

ワールドカフェ20周年記念イベント

エイミー・レンゾーさんインタビュー(1)

アクティブラーニングや反転授業を行うときに大切なのは、教師が安心安全の場をつくり、生徒が自分の考えていることを自由に発言することができるようにすることだと思います。

それによって多様な考えが場に溢れ、各自が自分とは異なる考え方や物の見方に触れることができ、多面的な理解が可能になるのです。

そして、そのような理解を可能にしてくれた仲間をかけがえのないものだと感じて、協力できるようになるのです。

僕がこのことに気づくきっかけとなったのは、ワールドカフェとの出会いでした。

2年ほど前、多様性を創造性にどのように結びつけたらいいのかを考えていてワールドカフェという手法に出会ったのです。

『ワールドカフェをやろう!』という本を読み、感動して著者の香取一昭さんに長いメールを送りました。

そして、香取さんとスカイプをさせていただくことになりました。

香取さんからお話をうかがって、本では理解できていなかったことを理解することができました。

さらに、ワールドカフェの国際的なオンラインコミュニティの運営者であるエイミー・レンゾーさんを紹介してくれました。

エイミーさんが実施したフィールズ大学の8週間のオンライン講座を受けたことで、僕がオンラインのファシリテーションをすることができるようになりました。

「反転授業の研究」が主催する数々のオンラインイベントは、すべてここから始まったのです。

10月にワールドカフェ20周年イベントがあると言うことを知り、2年ぶりにエイミーさんに連絡を取り、このインタビューが実現しました。

様々な部分で共鳴し、話が長くなりましたので、数回に分けて紹介します。

 

オンラインの対話に興味を持った理由

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―― エイミーさんは、オンラインコミュニティの運営や、オンラインワールドカフェ、ワールドカフェホスティングのオンライン講座など、オンラインでのコミュニケーションに関わる活動を数多くされていますよね。

僕も、オンラインコミュニケーションに大きな可能性を感じていて、いろんな対話イベントやオンライン講座を開いています。

エイミーさんは、オンラインコミュニケーションのどこに可能性を感じていますか?

 

それは、とても意味のある質問ね。

私はカルフォルニアにいるのに、あなたを、こんなに近くに感じられるわよね。

ワールドカフェの原理は、多様性が大事だということです。

だから、異なる立場の人と会話をすることは意味があります。

オンラインコミュニケーションによって、みんなが、お互いの声を聞くことができて、国境を越えて、飛行機の燃料も使わずに、お金も使わずに自宅にいて、簡単に同じ空間を過ごすことができます。

多くの人は、他の国の人と話すために、その国に行かなければならないと思うけど、実際には会話することができるし、それだけじゃなくて、オンラインで深いつながりを作ることができます。

私は、いろいろなオンラインの試みをホストしてきました。

ワールドカフェとか、トレーニング、セレモニーなどをしてきました。

セレモニーでは、何かを讃えるということもできます。

オンラインイベントをホストするときには、自分が学んでいることに驚きます。

オンラインの活動を始めてから今まで学んできたのは、対面で話すのと同じように、オンラインでも心の交流ができるということです。

それは、大きなギフトだと思いました。

それで、オンラインホスティングに興味を持ち始め、オンラインホスティングのスキルも伸ばしてきました。

オンラインでは、注意を向けること、集中すること、決定することなどが大事だと思っています。

その目標に注意を向けるならば、あなたは、やりたいことを何でもできる。場をファシリテートして、他の人たちのリアリティとつながることができる。

インターネットは、リアルじゃなくて頭の中だけだと思っている人もいるけれど、それは間違いです。

もちろん頭だけでもつながることもできるけど、ハートレベルで交流することもできるんです。

 

オンラインでもハートレベルで交流できる

―― オンラインでハートレベルの交流をすることができるというのは、とても大きなキーワードだと思います。

産業革命後、テクノロジーは人間を自然から遠ざけてきたと思うんです。でも、インターネットは、人間を自然に戻していく可能性があるテクノロジーだと思います。

実際、オンラインのハートレベルの交流によって、僕のマインドセットは大きく変わってしまい、2年前とはほとんど別人のようです。

エイミーさんも、インターネットは、マインドセットを変えることのできるものだと思いますか?

私も、同じことを経験しました。

ワールドカフェは、それと同じ方法で私たちのマインドセットを変えています。

なぜなら、私たちは他の考え方にさらされるからです。

もちろん、論文や新聞記事でも、他の人の考えに触れることができます。

でも、もっと深いレベルで話をしたときに大きな変化が起こります。

 

アラブの春の後、私は、オンラインワールドカフェをホストしました。

1つの小グループには、イスラエル人の若い男性とシリア人の若い男性がいました。

わざと同じグループに入れたんです。

シリア人の男性は、はじめ、自分の生活について話しませんでした。

彼は、イスラエル人は恐ろしくて心無い人たちだと教わってきたのです。

彼のコミュニティはイスラエルと悪い関係だったのです。

でも、話をして、お互いに質問に答えた後は、彼はこう言いました。

「あなたを兄弟のように感じる。あなたの言葉は、自分の言葉のように感じる。」

「私はあなたの言葉の中に心を感じることができる。」

そう言って、彼は泣き始めました。

私は、そのストーリーをハーベストのときに全体にシェアしました。

そうすると、他のみんなも大きく心を動かされました。

私たちは、とても深いレベルで心を動かされて考えが変化しました。

それは、対面でのワールドカフェで起こることと同じことでした。

もし心がオープンになって、他の人の声を聞くことができれば、他の人の考え方に触れることができるのです。

それは、人の心を変えます。

 

オンラインで他の人の考えに触れる方法はたくさんあります。

SNSやブログもそうですね。

私たちは、大量のものの見方にさらされています。

もし、好奇心を持って会話を始めたら、何が起こるでしょうか?

ワールドカフェでは、安心安全の場を創って、お互いに注意深く話を聞くようにします。

お互いにリスペクトします。

お互いの違いをリスペクトします。

オンラインの会話でそのような態度を取ることができるようになると、全く違った種類の経験をするようになります。

意識の範囲が大きく広がって、自分自身や他の人々を理解するキャパシティが大きくなります。

だから、インターネットは人々の意識を変化させると思います。

私たちは選択肢を持っていると思います。

人類は自分たちの未来を決めることができると思います。

 

教師の役割は「教えること」から「ガイド」へと変化する

―― 自分たちで決めるのが大事だということについて、最近、面白いことがありました。

僕がやっている物理のオンライン講座で学びあいの夏期講習をやったんです。

僕のビデオ講義を見て、チームで問題を解いていくというものでした。

第1週は、教える側に回っている人たちがグループをリードしていました。

第2週になると、質問をする側がリーダーシップを取るようになりました。

本質的な質問が出てきて、みんながそれに引きつけられたのです。

第3週になると、面白いことが起こりました。パワフルクエスチョンをするために、彼らはビデオを見ることを止めてしまったのです。

それはすごい!!

あなたと話す前に、次のフィールド大学でやるワールドカフェのラーニングプログラムについて作業をしていたんです。

Moodleとzoomを使います。zoomだとグループ全体を一度に見れるんです。

私は、あなたが今言っていることを考えていたんです。ピアラーニングです。

私は先生だけど、「教える人」じゃなくて「ガイド」なんです。

環境を作って、他の人を招待します。

そして、学ぶプロセスをはじめます。

招待された人が自分で学び始めて、他の人たちと学び合うんです。

だから、あなたの取り組みは、すごくいいと思います。

―― 実は、 その後、彼らにMoodleのコースとWizIQのアカウントを開放しました。今は、彼らだけでやっています。(笑)

パーフェクト!

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エイミーさんと話をしてみて感じたこと

エイミーさんと話しているときに感じていたのは安心感でした。

この人なら、自分の気持ちを話しても、理解してくれるという安心感が、僕の心を開きました。

ファシリテーターの持つ理解の幅、意識のキャパシティが、相手の心を開かせていくのだということに気づきました。

エイミーさん自身が、心をオープンにして、他の人の考えを受け入れてきたことによって、「意識の範囲が大きく広がって、自分自身や他の人々を理解するキャパシティが大きくなる」という経験を積み重ねてきたんだということが、お話してみてよく分かりました。

エイミーさんがやっているようなオンラインワールドカフェを、僕(田原)がホストになり、9月24日に実施します。

「反転授業が創る未来を語ろう!オンラインワールドカフェ」

※申し込み締め切り 9/20

 

ワールドカフェ20周年記念でエイミーさんがゲストファシリテーターとして来日します。

エイミーさんによるワールドカフェを体験するチャンスですので、興味のある方は参加してください。

全国9箇所をつないで行うそうです。

ワールドカフェ20周年記念イベント

 

インタビュー記事は、Part2へ続きます。

→ エイミー・レンゾーさんインタビュー(2)

反転授業が創る未来を語ろう!オンラインワールドカフェ(9/24)

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「反転授業の研究」の田原真人です。

みなさんは、ワールドカフェってご存知ですか?

僕が、ワールドカフェに出会ったのは、2年前のことです。

オンラインコミュニティの中に集合知を発生させる方法を探していたときに、香取一昭さん著の『ワールドカフェをやろう!』という本に出会い、自分が求めていたものはこれだと思いました。

そして、エイミー・レンゾーさんのワールドカフェホスティングの講座を受講し、理論的背景を学びました。

リラックスした空間の中で繰り広げられる「カフェ的な会話」は、創造性に満ちています。そこに「パワフルな問い」を投げかけ、文脈という土手を作っていくことで、力強い流れを生み出していくことが可能になります。各自の頭に浮かんだことをテーブルクロスに描いていき、最後にそれをシェアすることで、様々な気づきや、意味のつながりを得ることができます。

ワールドカフェは、集合知にアクセスできる優れた方法なのです。

オンラインワールドカフェ

「反転授業の研究」は、オンラインコミュニティです。

メンバーは、国内外に散らばっており、実際に集まることができる機会は限られています。

そこで、オンラインでワールドカフェをやる方法を探し、何度か実験的な開催を行っていました。

WizIQやGoToMeetingなどのWeb会議システムや、Moodleと呼ばれるLMSを使ったオンラインイベント、オンラインワークショップを何度も行う中で、オンラインでワールドカフェをどのように実現できるのかが見えてきました。

さらに、実際にオンラインワールドカフェを実践しているエイミー・レンゾーさんから運営方法についてのヒントをいただき、オンラインでの開催のイメージが固まりました。

10月25日にワールドカフェ20周年記念イベントが日本で開催されることになり、僕にワールドカフェへの道を開いてくれた香取一昭さんが実行委員長、ワールドカフェホスティングを教えてくれたエイミー・レンゾーさんがゲストファシリテーターとして来日するということで、ずっとやりたかったオンラインワールドカフェの開催を決め、Impact Cafeにエントリーすることにしました。

今回、開催するMoodleとWizIQとを組み合わせたオンラインワールドカフェは、世界初の試みになると思います。

反転授業が創る未来を語ろう

今、教育界では、反転授業やアクティブラーニングが大きな話題になっています。

社会の構造変化に伴い、教育にも大きな変化が生まれています。

その中で、一番大事なのは、僕たちがどんな未来を創りたいのか。そのために教育はどのような役割を果たせるのかということを、自分自身の根っこの想いから語っていき、お互いに耳を傾け、行動していくことではないでしょうか。

オンラインルームに集まり、ホワイトボードに好きなことを書きこみながら、自分の根っこの想いや、教育の持つ可能性、僕たちが作りたい未来について語り合いませんか?

ワールドカフェやオンラインイベントが初めての方も大丈夫です。

はじめての人が安心して参加できるための工夫をいっぱいしています。

教師以外の方も、ぜひ、参加して下さい。あなたの視点を必要としています。

自由なカフェ的空間の中で、参加者の皆さんの想いが溢れて、それがつながったときに、素敵な未来が見えてくるはずです。

進め方

フォーラムセッション(9/21-23 Moodle上で行います)

ラウンド1

問い:あなたの人生の中で心に残っている「アクティブに学んだ経験」を教えてください。

→ Moodleのラウンド1の自分の名前が書いてあるテーブルの返信で投稿してください。

→ 同じテーブル内のメンバーの投稿にコメントしてください。

→ 他のテーブルのメンバーの投稿にコメントしてもOKです。

 

ビデオチャットセッション(9/24 20:00-23:00 WizIQで行います)

9月24日 21:00になりましたら、WizIQに入室していただきます。


※セッションの開始は、21:30からです。

21:30-21:45 ファシリテーターの挨拶&説明

21:45-22:10 ラウンド2

問い:アクティブに学んだ結果、自分で考えて行動する人が社会に溢れる10年後、社会はどのように変化しているでしょうか?

→ ファシリテーターが、みなさんをテーブルに振り分けます。

→ テーブルマスターは、メンバーのカメラ・マイク・ペンをアクティブにしてください。

→ 最初に簡単に自己紹介してください。

→ 問いについて会話してください。

→ きづいたことは、ホワイトボードかチャットに書き留めてください。

→ 22:05になったら、テーブルマスターはMoodleに(1)ホワイトボードのスクリーンショット (2)チャットログ をアップロードしてください。

→ メンバーは、Moodleのラウンド2のところに、気づきを2-3行で書いて下さい。

22:15-22:40 ラウンド3

問い:自分自身がアクティブに学ぶことによって、周りにアクティブな学びを促してきたあなたの人生は、10年後、どの様に輝いていますか?

→ ファシリテーターが、みなさんを、別のテーブルに振り分けます。

→ テーブルマスターは、メンバーのカメラ・マイク・ペンをアクティブにしてください。

→ 最初に簡単に自己紹介してください。

→ ラウンド2で話したことについて、テーブルマスターが簡単に説明してください。

→ 各テーブルで話したことの中で、印象に残ったことを最初に話してください。

→ 問いについて会話してください。

→ きづいたことは、ホワイトボードかチャットに書き留めてください。

→ 22:35になったら、テーブルマスターはMoodleに(1)ホワイトボードのスクリーンショット (2)チャットログ をアップロードしてください。

→ メンバーは、Moodleのラウンド3のところに、気づきを2-3行で書いて下さい。

22:45-23:00 ハーベスト

→ 全員、WizIQのメインルームに集まります。

→ Moodleの他のテーブルを見渡してください。

自分の創りたい未来のために、どのような行動をしたいですか?Moodleの「ハーベスト」のところに書き込んでください。

→ 同じテーブルの人にコメントしてください。(翌日でもOK)

→ 他のテーブルの人にコメントしてもOK。(翌日でもOK)

日時 9月24日(木) 21:30-23:00  (21:00 open)

※事前に接続テストの日を設けます。

申し込み締め切り 9月20日(日)

参加費 無料

参加資格 このテーマに興味を持っているすべての方

用意するもの PC、または、タブレット端末(iPadなど)

※PCの場合は、ヘッドセットとWebカメラをご用意ください。PCの内蔵マイクを使用するときは、ハウリング防止のためにイヤフォンをご用意ください。

定員 30名

参加方法 お申込みいただいた方へ、メールでお知らせします。

お申込みはこちら

アクティブラーニングが、「クラウドの時代」を生きる若者を育てる

「反転授業の研究」の田原真人です。

Bob Stilgerさんは、

「お互いに耳を傾け合うことで、未来は創られる」

と言います。

これは、直感に基づいて動いた人たちが集まり、それぞれの体験を傾聴し合うことによって、ぼんやりしていた「今起こっていること」のBig Pictureを共有し、さらにそこからインスパイアされた直観によって次の行動が生まれていくというサイクルが回るからではないかと思います。

震災後の4年間、新しい未来を模索して、様々な試行錯誤をしてきました。そして、その実践から得た気づきをアウトプットしていきました。

アウトプットしていくと、様々な反応があり、多くの人と縁がつながり、そこからたくさんの気づきを得て、さらに試行錯誤とアウトプットを重ねていきました。

そこから、未来へ繋がる道が少しずつですが見え始めています。

そして、同じPictureを描いている人たちとも巡り会うようになってきました。

僕の中では、新しい世界(new world)のリアリティは増す一方です。

しかし、それを、高校生や大学生にどうやって伝えたらいいのかというところで悩んでいました。

高校生や大学生の現実と、僕が感じているリアリティの間には距離がありすぎて、僕の言葉が彼らに届かないように感じていたのです。

でも、「どうせ言っても通じないんじゃないか」という思いを抱いて足を止めるよりも、実際に言って通じるか通じないか試したほうがいいですよね。

その中から、どのようにしたら通じるのかという方法も見えてきます。

先日、自分が運営しているフィズヨビで「未来を創る人~出会い・発見・創造」というオンラインダイアログを行いました。

話をしてくれたのは、桑原恭祐さん。

桑原さんは、大学4年生のときに、「クラウドの時代になる」と直感し、大手企業やベンチャー企業などからもらっていた内定をすべて断ってフリーターになり、情報の受信力、編集力、発信力を高めながら自分自身の価値を高めることを選択した人です。

桑原さんは、京都精華大学の筒井洋一さんの「グループワーク概論」でCT(授業協力者)を務めたり、近大附属の江藤由布さんのOrganic Learningでは共同代表になるなど、未来を創る動きを鋭くキャッチして、立ち上げに関わりながら経験を積み、ネットワークを広げ、価値創造する力をぐんぐん伸ばしています。

24歳の桑原さんが語る「クラウドの世界」は、自分自身の根っこの思いを語ることによって、共感する人とクラウドで緩くつながっていく世界であり、その中で、多くの出会いが生まれ、そこから気づきを得て、協力し合いながら創造できるようになる世界です。

この話を友達にしても、ほとんど分かってもらえなかったそうですが、今の僕たちなら、桑原さんの話をうなづきながら聴くことができます。

なぜなら、それは、「反転授業の研究」が実現している世界そのものだからです。

桑原さんの話は、高校生や大学生の心にも響いたようでした。

参加者のみなさんの声から、僕も多くの気づきをいただきました。

cloud

クラウドの世界は、パラレルワールドだ

自分の価値に、自分で気づくことは難しいです。

自分にとっては当たり前だと思っていることが、別の人にとっては役立つことだったりします。

コミュニケーションを取ることで、はじめてそれが明らかになり、自分が役に立てることが見つかり、価値を生み出せるようになるのです。

僕は、桑原さんのように決断したわけではなかったのですが、結果的に、他の人よりも早く「クラウドの世界」へ突入しました。

クラウドの住人になったことで、リアルの世界だけで生きていたころの常識を手放し、クラウドの世界の常識を身につけていきました。

そこについては、あまり話をしたことがなかったので、先日のダイアログで、参加者の方のコメントをうかがっているうちに、暗黙知だった部分が引っ張り出されてきました。

それは、「リアルの世界」と「クラウドの世界」とには、決定的な違いがあることです。

「リアルの世界」には、唯一のリアルな身体を持つ「私」が存在し、その「私」が同時にいくつものグループに所属することはできません。

だから、どのグループに所属するのかを選択しなければならないのです。

しかし、「クラウドの世界」では身体がありません。

それは、同時にいくつものグループに所属できることを意味します。

だから、どれか1つを選択する必要はないわけです。1つに選択するというのは「リアルの世界」の制約であり、「クラウドの世界」は、その制約から自由なのです。

 

1つに選択する必要がないということは、大きな意味を持ちます。

予測が難しい未来ルーレットに対して、何か1つに賭けなければならないのであれば、どうしても慎重になります。

でも、いくつも賭けていいのであれば気が楽ですよね。たくさん賭けておけば、必ずどれかは当たるはずです。

たくさん賭けるほど当たる確率は上がり、生き残る可能性が高まるのです。

そのことに気づいてから、自分の中の多様性に目を向け、その中の1つに絞り込むことなく、多様な自分をそのままアウトプットしていくようになりました。

とにかくたくさんの種を撒くようにしています。

「クラウドの世界」では、1つの種を撒くコストは非常に低いのにも関わらず、それによって増加する未来の可能性は大きいので、種はできるだけたくさん撒いたほうがよいのです。

どの種が発芽して成長していくのかを決めるのは僕ではありません。

宇宙に選ばれた種が発芽して成長していきます。

「反転授業の研究」も、かつては気軽な気持ちで撒いた種の1つでした。

発芽した芽が成長していくと、多くの人に発見してもらえるようになり、出会いが生まれ、そこから気づきを得て、価値創造できるようになっていきます。

この4年間で撒いた他の種のいくつかも発芽していますので、今後、そこからも価値創造できるようになっていくと思います。

 

クラウドの世界で必要なスキル

クラウドの世界で必要になってくるスキルとは、どのようなものなのでしょうか?

それは、あなたが、どんな人とコラボしたいのか?って考えてみると見えてきます。

 

「リアルの世界」では、あなたに職をくれるのは、例えば会社で採用を担当する人事の人だったりします。

だから、人事がどのような評価基準で選ぶのかが大事になってきて、その評価基準が社会の序列を生み出します。

でも「クラウドの世界」では、あなたをコラボレーションの相手として選ぶのは、あなた以外のすべての人です。

あなたがアウトプットしているものから、あなたの価値観、志、感性などを読み取り、あなたと一緒に価値創造したいと思った人が、あなたをチームに誘うのです。

「クラウドの世界」には、多様な価値観に溢れているので、あなたの潜在的な「仲間」が、あなたを見つけてくれるためには、あなたの根っこの思いから出てくる尖ったアウトプットが重要になってきます。

どこかで聞いたことのあるような受け売りのアウトプットは、心に響きません。

あなたが自分の心と体で体験し、あなたが時間と労力をかけて暗黙知から引っ張り出してきた言葉だけが、あなたの未来を創るのです。

今は、まだ、「クラウドの世界」の価値に気づいている人は少数ですが、今後、急激に増えてくるでしょう。

「リアルの世界」と「クラウドの世界」とを行き来しながら、それぞれの世界の強みと弱みを理解し、それらを上手に組み合わせることで、価値を生み出していく人も増えてくるはずです。

僕達は、今後、そのようなパラレルワールドへ突入していきます。

そして、今の子どもたちが活躍する時代は、まさに、リアルとクラウドが混在するパラレルワールドなのです。

そのような世界で、よりよく生きるための力とは、どのようなものになるのでしょうか?

 

受信・編集・発信のサイクルを回しながら、自分の枠組を広げていく

僕が重要だなと感じているのは、自分が学ばざるを得ない状況に自分を投げ込んでいくこと。

そして、周りのすべてから学び、そこに散らばっている情報を自分の視点で編集し、ストーリーとして発信していくこと。

このような力を学校教育の中で伸ばしていくことができればいいなと思っています。

そして、アクティブラーニングや反転授業には、その可能性があると感じています。

一人では達成できない課題を、チームで協力して解決していくためには、お互いの個性を理解して組み合わせ、その和集合を大きくしていくことが必要になってきます。

それは、リアルとクラウドが混在するパラレルワールドを生き抜く力を育てる第一歩になるのではないかと思います。

まずは、「クラウドの世界」での学びを体験してみませんか?

近未来を体験し、それを、アクティブラーニング実践に役立ててみませんか?

 

申し込み締め切り(8月30日)

実践!アクティブラーニングスキルアップ講座

 

 

 

コクリ(Co-Creation)で地域創生を進める三田愛さんインタビュー

「反転授業の研究」が本格的に活動を開始したのは2年前。そのときのビジョンは、

オンラインに多様性のある森を育て、そこに実る多様な果実(生徒が主体的に学ぶことができる方法)を収穫して共有すること

でした。

Facebookグループ内でフラットな関係を作って、オープンに対話することにより、集合知を生み出すことができるのかという社会実験を行ってきたのです。

その結果、様々な果実が実り、副産物として、メンバーのマインドセットが次々と変わっていきました。

一人じゃできないことでも、協力すると創造できるという経験は、僕たちにパワーと自信を与えたのです。

その結果、心がどんどんオープンになっていき、グループ内にエネルギーが溢れるようになりました。

このような経験は、僕にとって初めてのものでした。これを言い表す適当な言葉を探していて、「共創(Co-Creation)」という言葉に出会いました。

『U理論』の翻訳者である由佐美加子さんがワークショップの動画の中で、「共創(Co-Creation)」について、「美に触れると元気になる」とおっしゃっているのを聞いて、それが、まさしく自分たちが経験したものだったのではないかと思いました。

→ 「Co-Creationという世界に生き方、リーダーシップ」は、こちらの記事から視聴できます。

その後、社会変容ファシリテーターのボブ・スティルガーさんの『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう』を読み、その後、スカイプでお話をうかがう機会がありました。

 → Bob Stilger著『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう』が社会的変容への地図となる

 → 未来は旧システムの周辺部から立ち現れる~共創的教育の芽吹き

ボブさんの著書や、お話の中で出てきた「トランス・ローカル」という考え方には、強く心を動かされました。

旧システムの「ひび割れ」は、システムの周辺部で最初に現れ、そこから新しい未来を創る動きが始まるというのは、まさに僕たちのグループが誕生したきっかけであり、あちこちの周辺部で誕生した「未来を創るコミュニティ」が時代性でシンクロして繋がっていくことで、社会変容が起こる「トランス・ローカル」のイメージは、僕たちの次のステップを指し示すものでした。

ボブさんから、(株)リクルートライフスタイル事業創造部じゃらんリサーチセンター研究員で、ボブさんと共にコクリ!ラボをやっている三田愛さんと話すように勧められました。

三田さんは、少し前に「反転授業の研究」に参加されていて、メッセージのやり取りをしたことがありました。

その後、三田さんが、home’s viの代表理事の嘉村賢州さんの「賢州休みカンパ」企画の応援団長になっているのを拝見して、そのペイフォワードの考え方や活動にとても興味を持っていました。

→ 賢州夏休みカンパ

今回、とてもよいチャンスをいただいたので、自分が今、一番関心があるテーマである「共創(コクリ・Co-Creation)」について知りたいことを、コクリ(Co-Creation)に長年関わっている三田さんにうかがってみました。

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人が本領発揮するような世界が素晴らしい

僕がコクリにたどり着くまでは、結構、長い道のりだったんです。自分の中の屈折している部分を長い時間かけて見つめて、それを解体していった結果、ようやくたどり着いた境地がコクリだったという実感があります。三田さんの場合はいかがだったのでしょうか?どのようにしてコクリにたどり着いたのですか?

私の母が教育者で、人の可能性を引き出して背中を押すのが得意な人だったんです。

その影響で、人が本領発揮するのが素晴らしいとか、すべての人がギフトを持っていて、それが輝く世界が素晴らしいという考えるようになりました。小学生のころから、目がキラキラしている人がすごく好きだったんです。

だから、ずっと、そういうことをやりたいと思っていました。

私は、リクルートでずっと社会人生活をしています。人事領域・事業変革領域にも長くいて、その中でやっていたことは、今から思うと結局、コクリだったんです。

コクリをテーマにしてやっていたわけではないんですが、採用関連とか、企業の人事関連の20人くらいのプロジェクトをまとめていたときも、メンバーがどうやったら最大限輝くか、本領を発揮できるのかという環境を整えることをずっとやっていました。結果的に、業界初の新しい仕掛けを成功させ、関わるメンバーが各自MVPを受賞したり昇進し、より輝くフィールドを自ら創っていきました。

今から思えば、それは、コクリをやっていたんだなと思います。

実は、高校時代の成功体験(体育祭のプロジェクト)も今思い返すと、コクリでした。多様性あるコアメンバーを集め、各自が本領発揮する環境を創り続け、140人を巻込んでいき、最後は予想していない未来になった。

私はそんなコクリのプロセスが大好きなんです。

屈折と挫折を乗り越えた末に、遠回りしてコクリの考え方にたどり着く僕のような人もいれば、まっすぐにそこにたどり着く三田さんのような方もいるのですね。相手の中の「よい部分」にまっすぐにアクセスして繋がることができるのは、三田さんがまっすぐに進んできたからかもしれませんね。

コクリプロセスで地域創生を目指す

今やられている地方創生の仕事は、どのようにして始まったのですか?

リクルートで働きながら、コーチングの資格を取ったりとか、ファシリテーションを学んだりとかするようになりました。その後、国内外のいろんなところに学びに行くようになり、組織変革をやっている人たち、ボブさん、フューチャーセッションをやっている野村恭彦さん、嘉村賢州さん、U理論の中土井僚さんなど、一線で活躍されている人たちと、学びの仲間になっていきました

その中で自分自身に知見が溜まっていって、5年前にじゃらんリサーチセンターの研究員になったときに、そういう専門と関心を持った自分が、地域のお役に立てることって何だろうと思って研究テーマを考えたときに、表面的な観光政策を研究するのではなくて、氷山の下である、裏の構造にアプローチしたいと思うようになった。しがらみ・縦割り・分断等がある構造や、諦め・恐れ・エゴ等がある個人の意識(メンタルモデル)を変え、地域の人がどうやったら本領発揮して垣根を超えて繋がり、自分たちの力で未来を創れるかということを研究テーマにしたいと思ったのです。

最初は1年ごとの研究プロジェクトとして熊本県黒川温泉の地域創生をフューチャーセッションの野村さんと一緒にやったり、上天草市ではシステム・コーチングを使って津村栄作さんといっしょにやったりとか、和歌山県有田市ではU理論の中土井僚さんとプロジェクトやったりとか、自分の関心がある新しいテーマで地域での実証研究を、信頼する方々と1つ1つやっていたんです。

現在、コクリ!プロジェクトは3フェーズ目なんですが、私が1地域1地域サポートするカタチだと年間5地域くらいしかお手伝いできないから、点を面にしたいなと思うようになりました。
 
ボブさんから、実績も上がっているのだったら、そろそろラーニングコミュニティを作る時期じゃないかと言われて、地域同士が学び合えるコミュニティを創ろうと思いました。私は黒川にガッツリ入っているんですが、黒川の人たちが一生をかけてとりくむ変革の担い手だと思ったときに、彼らを支援し続ける仕組み作りが必要だと思ったんですね。

それで、私個人がずっと入り続けるというよりは、そういう仕組みとしてのコミュニティになったほうがいいなというのがあって、ボブさんといっしょに2年前に「コクリ!ラボ」というのを始めました。現在15地域ほどの人が3-4か月に1度3日間集まり、学び合っています。

(コクリ!ラボ設立の経緯や、目的・内容、参加地域などはこちらをご覧ください
http://jrc.jalan.net/cocre/lab/

今、三田さんが取り組まれている「コクリ!キャンプ」というのは、どんなきっかけではじまったんですか?

 

コクリ!プロジェクトを続けていく中で、国の有識者委員会に入ったりとか、いろんな人と接点が増えていきました。地方創生の流れで、経産省とかいろんな省庁が地方創生を考えていているんですが、有識者会議で物事が決まることに違和感がありました。そこは、全然、コクリじゃないわけですよ。ロの字型で、自分の意見だけを言って、いい面だけを見せようとしてしまう感じなんです。

この中で政策が決まってしまうのはもったいないなと思い、もっとコクリプロセスで本音で未来を創ったほうがいいのではないかと思いました。

この場に地域の現場の人もいたほうがいいから、地域の現場の人と、行政の人も繋がったほうがいいし、都会の人で地域のことを何とかしたいという人もいっぱい出ているけど、地域で頑張っている人と接点がなくて動けないという状況があるから、都会の人と地域の人も繋げていくことができる場を創りたいなと思いました。それで、コクリ!キャンプを企画したんです。

どうして、キャンプにしようと思ったのですか?

アダム・カヘンさんの来日ワークショップに参加したときに、ピピっと来たんです。

アダムさんは、アパルトヘイトやドラッグ問題等、国レベルの複雑な課題を多様なステークホルダーの対話で解決に導くことをされています。その話を聞く中で、これの日本版がやりたい!と思いました。

単なるフォーラムではなく、複雑な課題を、影響力と知恵と情熱があるステークホルダーが集まって話し合う場を創ろうと。

誰もが本領発揮して輝くようであってほしいという想いを持って取り組んでいると、その方向に次々に道が開けて、情報も集まってきて、助けてくれる人も出てきて、ステージが一段一段と上がっていくのだということを、三田さんのお話をうかがいながら思いました。

三田さん自身が、他の人の心にアクセスするのが得意だということだけでなく、軸をはっきりと示しているので、他の人が三田さんに繋がることができるのですね。

 

コクリ!キャンプで影響力と知恵と情熱があるステークホルダーを繋いで未来を創る

三田さんの場合は、ステークホルダーを連れてきて話し合う場を創ることができる位置にいるから、実際に変化を引き起こしていくことができますよね。

気がつけば数珠つなぎで人を紹介してもらって広がっていきました。思いに共感して、人が人を紹介してくれてという感じになっています。

ちょっとティッピングポイントは超えたかなという気がしています。

今、アクティブラーニングも、個人で実践してきた人たちが集まってコミュニティを創っていくというボトムアップのプロセスと、文科省から降りてくるトップダウンの流れの2つあって、この2つの流れは、どのようにうまく融合するのかなと思いつつ、僕たちは、ボトムアップのプロセスを続けています。

三田さんは、ボトムアップのプロセスとトップダウンのプロセスとをちょうど繋げているような役割をしているように思うのですがいかがですか?

意識的にボトムアップと、構造的に力があって影響力のある人を繋げようとしています。やりたいことが、社会のシステム変革なんです。そう思ったときに、一部の人たちがいいというのでは社会は変わらないなと思っていて、地域は国からのお金もいっぱい入っているので国の影響力も強いし、そこを見て仕事しているというのもあるので、そういう人をどうやって仲間に入れていくのかというのは大事だなと思っているんですね。

場面に応じて、行けるギリギリまでチャレンジするという感じなんです。例えば、地域でのプロジェクトだったら、そこの首長さんとかは連れてくることができるので、参加してもらったりしています。

また、地域の中で影響力はあるけど、普通はそういう場に来ない人を連れてくるとかしています。1割くらいなら混ぜても大丈夫だという感覚があります。

場を創るときに、メンバーの属性の割合についてどのように考えていますか?

場を創るときって、2割の人がすごくコミットしていたら、場はうまくいくんですよね。全員が参加者で運営者一人だと、ゲストとホストみたいな関係になって、ゲスト100%だと単なるワークショップになっちゃうんですけど、ホスト側の意識がある人が2割くらいいたら、それだけでうまくいくというのがあります。また「事前:当日:事後が4:2:4の法則」と思っています。通常当日に意識が集中しがちですが、実は事前が4割くらい大事なんです。なので、事前にコアチームを作ったり、意図合わせをしたり、半分参加者みたいな人をどんどん巻き込むようなことをしています。

コクリ!キャンプから、特にコクリ!プロジェクトのフェーズは変わってきているのですが、参加者は多様性とバランスをかなり考えていて、影響力のある人もいれば、、名前は知られていないけど影響力のある人とも普通に話ができるという地域のがんばっている若手とかも2-3割入れたりしています。多様性があると肩書勝負じゃなくなるので、漁師さんとか農家さんとかもいれば、大臣補佐官や、IT系の人やNPOの人もいたり、バラエティに富んでいたら全員がすごいから、上下関係じゃなくなるんです。

あとは、場の創り方で肩書を外せるようにしたりとかしています。

メンバーを選ぶときに、三田さんの中で、このメンバーが集まれば、こんな化学反応が起こりそうだなというのが、暗黙知も含めて、きっとあるんですよね。始まる前から、こんな感じになりそうだというイメージが湧いているんですか?

そうですね。イメージが湧くまで準備しますね。肩書を外した対話の場に来たことがない人に対しては、コクリ!キャンプはものすごく丁寧に招待していますね。一人一人会い に行って、趣旨とかコンセプトとか、今までやってきた研究のこととか、映像を見せながらかなり丁寧に話しているんですよ。

この場はワーク ショップでもないし、フォーラムでもなくて、肩書を外して、一人の人間として普段言えないことでも言えることこそ意味があって、そういう安心・安全の場な んですよとか。参加者が場のルールに沿ってその場に入れるように事前にかなり準備して当日を迎えるようにしています。

当日、思ったように迎えられるように、人の選び方、人の呼び方をしています。

一人一人会いに行くというのはすごいですね。僕は、オンラインでの場つくりを手探りでやっているんですけど、今までの失敗の経験が後ろ側に積み重なっていて、小さな工夫がたくさん生まれているんです。三田さんのお話をうかがうと、たくさんの経験が蓄積していて、「ここまで準備しないと肩書が外れない」とか、そういうイメージが湧いているんじゃないかと思います。そういうものの積み重ねで、今の形になっているんだなと思いました。

今は、暗黙知になっている部分を見える化したいと思って、まだできていないんです。コクリの中でもシンクタンク部門のようなチームを立ち上げていこうとしていて、コクリのナレッジをオープンにして使ってもらえるようにしたいと思っているんです。

聞かれたら言えるんですけど、自分ではなかなか整理ができないんです。誰かに質問してもらったら出てくるんですけど。

今は、私個人にナレッジが溜まっているので、それを他の人も使えるようにしたいですね。

 

三田さんは、橋を架ける人

僕は、ボブさんの本を読んだときに、ちょうどいいときに、ちょうどいい本を読んだなと言う感覚がありました。社会変容のシナリオを描いてある図があって、橋が架かるというのがあったんです。

変容のパターン

自分たちのフェーズは、新しいことを始めた人たちが、お互いにつながり始めて、そこから新しい何かが生まれつつあるというところだと思います。次の起こることが「橋が架かる」ということなのかもしれないなと思いました。イノベーターとマジョリティの間に橋が架かったときにキャズムを超えて大きな変化が生まれそうなイメージが湧きました。でも、「橋が架かる」というイメージがうまくつかめなかったんですね。どんな人が、橋を架ける人になるんでしょうか?

橋を架ける人というのは、両方にオーバーラップしている人になるかもしれません。

両方にオーバーラップしていると、両方の気持ちが分かるし、どういう言い方をすればこっちの人が興味を持つとか、どういうつなぎ方をすればいいかということが分かるはずなんですよね。そういう人に繋ぐ役割を担ってもらうということになるのでしょうか。

なるほど。今、三田さんは、まさに「橋を架ける人」の役割をしているわけですね。実際にその役割を担ってみて、どのように感じていますか?

繋ぐ役割をしていることで、自分ができる幅が増えてくることもあるし、全部ができるわけじゃないから区分区分で任せていくみたいなこともしています。

私 で言うと、国関係は5年くらい前は全く関わっていなかったんです。霞が関に足を踏み入れたこともありませ んでした。

ただ、じゃらんリサーチセンターは研究機関なので、センター長とかは国の委員に入っていたりするんです。官庁の事業受託もしているので接点 が周りにはありました。私自身も受託事業をやるようになって、少しずつ接点が増えていくなかで、向こうの考え方の特徴がしだいに分かってくるというところがありました。

U理論で「相手の靴を履く」という言い方をしますけど、向こう側から見るとこうなんだなということを理解していくというフェーズがありました。

ボトムアップのプロセスに関わっていた三田さんが、トップダウンの側の人たちの考え方を、少しずつ理解していったということですね。

黒川とかに入って、やれることをコツコツやっているうち結果が出てきて、経産省の有識者委員会にゲストで呼ばれて、その結果を映像で分かりやすく説明していて、「ロの字会議だと何も決まらないんですよ。」という話をしたら、「この会議もロの字だね。」という話になったりして、そんなやり取りをしているうち に、有識者委員会に入ってくれと言われるようになり、だんだんと向こうの仲間になっていったという感じだったんです。

私は、できるだけ人と 壁を作らないようにしていて、それを大事にしているので、こっちも想いを話すし、向こうからも個人的な想いを聴くようにしているんです。コクリの原点は、肩書き じゃなくて、根っこの想いにアクセスして、肩書きを超えて、垣根を越えてコクリするというところにあるので、1対1で、関係性を少しずつ紡いでいきました。そうしたら、向こうも、少しずついろんな話をしてくれるようになって、信頼がもらえ、仲間となって、 いろんな人を紹介してくれるようになり少しずつネットワークが広がっていきました。どんな肩書きがある人も“人”なので、“人として”話ができる人がだんだん増えていきました。

橋を架けることができる人というのは貴重な存在だと思います。三田さんの壁を作らずに繋がっていく姿勢を見た人が、三田さんなら橋を架けられると期待した結果、今のオーバーラップしている位置にいるのではないかと思いました。両方の立場の人の想いを理解した上で、それを繋いでいく場を創って、一緒に未来を創っていくというストーリーが、三田さんのやっていることを具体的にうかがって、明確にイメージできるようになってきました。

 

誰かが助けてくれる

三田さんの場合は、想いから行動しているので、いろんな人がそこに共鳴して、助けてくれたり、集まったり、ということが起こっていると思いますが、コクリ!キャンプの運営についてはいかがですか?

コクリ!キャンプをはじめるときに、リクルートライフスタイルの当時の社長に企画を出したんです。その人が育ての親みたいな感じでサポートしてくれたんです。

情熱と知恵と影響力がある人を100人集めてフォーラムをやりたいという話をして、会社の会議室でやりたいと言ったら、「ビジョンは素晴らしいけど、TO DOがなくて、コンセプトがない」と言われて、それで、コクリ!キャンプというコンセプトを考えたんです。

そしたら、「キャンプなのにキャンプファイヤーもないの か」と言われたので、「予算の中で考えるとこんな感じだと思います」と言ったら、「そういうのを一度、度外視して考えなさい」と言われました。それで、すべてを 度外視して、場所も選びなおして、空間デザイナーとか、ビジョンを実現するために必要なものは何かを考えてゼロベースで考え直して企画をして、それに予算 をつけてもらって大きくなったんです。

自分では制約だと思っているものが、本当の制約ではないことがありますよね。予算などもそうかもしれませんね。それは、三田さんのビジョンが社長の心を動かしたからこそ起こったことですね。

私は、妄想と言うか、ビジョンは創るんだけど、具現化するものは何もなくて、そこに対してそれが得意な人とかサポートしてくれて大きくなってきたというのがあるんです。

私は想いでやっているから、会社に対する翻訳機能が甘くて、会社に受け入れられやすいような言い方とかで伝えるのが得意じゃないんですよ。経営層中にそれをサポートしてくれる人がいて、どういう言い方をしたら会社が投資しやすいかを一緒に考えてくれるんですね。

それでアドバイスしてもらって企画書をまとめたりしています。

全部の能力を自分が持てないときに、ビジョンに共感してくれる多様な仲間がいると、その人がどうすればいいか考えてくれたり、繋ぎをしてくれたりします。

三田さんは、周りを巻き込んでいく力がすごいんですね。ビジョンに共感した人たちが、そのビジョンを実現するために必要なことをやってくれて実現してしまう。すべてを自分でやらなくてもよくて、得意なことで貢献し合って協力できるから力が出せる。そんな循環が三田さんの周りでは、いつも起こっているのだなとおもいました。

 

私から我々への変化をどのように起こしていくのか

周りを巻き込んで、動きを生み出していくときって、自分の範囲が、個人レベルから集団レベルへと広がっていくんだと思います。僕もそれを何度か経験しているんですが、いつも直感的にやっていて、まだうまく整理されていません。三田さんは、どのように取り組まれていますか?

コクリでは、自分ゴトからみんなゴトという言い方をしています。

共に夢を見るというのが大事だなと思っていて、共に北極星を作るという言い方をしたりしています。

みんなで見た夢だったら、みんなごとになるし、それを一緒にかなえたくなるから、出せるものを出したくなると思うんです。

自分ゴトのマイストーリーとか、自分の根っこの想いを自分自身が気づくということがまず大事で、気づいたものをシェアし合うというところを一番大事にしています。

具体的にはどのようなステップを踏むんですか?

まず、根っこの思いを掘り起こすために、AI(アプリシエイティブ・インクアリー)を使ったインタビューをすることが多いです。

インタビューシートを用意して、結構、時間をかけて、2人ペアで片方40分くらいかけてやったりします。

コクリキャンプのような時間がないときは、一人最低8分くらいですね。そのときは、インタビューシートを使わずに、前に問いを書いてやります。

インタビューの内容は、自分が人生で一番、本当に生き生き輝いた瞬間を思いだしてもらって、それがどんなシーンかというのをありありと話してもらいます。

自分は、なぜ、そう動いたのか。相手から自分はどういう役割だと思われていたのかなど、問いの項目は内容によって変えています。

その後、自分の根っこの思いは何ですかという質問をしたりすると、自分はこんなことを大事にしていたのかということを気づいてもらえたりするんです。

地域だったら、地域に関連したみんなゴトになるような質問を入れています。例えば、「あなたがこのまちに生まれて育ってよかったなと思うことはなんですか」と質問すると、まちに対する思いが出てくるじゃないですか。

相互インタビューの中で、自分が何に突き動かされているのかという内発的動機が確認でき、聴いた人が証人になります。

聴いてもらったという安心感もあって、それを交換したというのもうれしいんですよね。

次のステップで、それを他己紹介するんですよ。

6人グループとかだったら、2人組でやったものを他の4人に紹介してあげるんです。他己紹介すると、語り直しが起こります。他の人に自分のストーリーを話してもらうのはすごくうれしいんです。残りのグループメンバーにも共有できるしということで、一気に場の温度が上がるんですよね。

そこまでやると、自分の根っこの想いに気づき、かつ、関係の質が上がるんですよ。

それができると、北極星ができるための土台が整ったということになります。

自分が何のために生きているかが明確になり、この人たちと一緒なら考えたいという関係になり、その人たちの素晴らしさも分かったということになって、じゃあこの仲間でどんな未来を創りたいかということをやるんです。

北極星の作り方には、いくつかのやり方があるんです。ふつうにブレストしてもいいですし、思いついたことを直接書き出していってもいいですね。そうしていくと、みんなゴトの未来が出てきます。

一番良くやるシンプルな方法は、未来におけるステークホルダーごとに長期と短期の未来を出し合うんですね。例えば、コクリ!プロジェクトだったとしたら、地域の人、企業の人、行政の人、リクルート、コアメンバーとかというのを出して、さらに、「私」という項目も出します。

そして、その主語にとっての長期と短期の未来についてそれぞれが考えます。長期は3年後でも10年後でもいいです。短期はプロジェクト終了の3月に設定します。まず、長期から考えます。例えば10年後にしましょう。

「私」にとって、10年後、やることなすことすべてうまくいったときにどんな未来が最高の未来かというのを書きます。続いて、地域にとっての10年後、行政にとっての10年後・・書いていきます。

書いたものを、「私にとって」というところだけでみんなで共有するんです。そうすると、みんながなんとなく思っていた妄想の未来が場に出るので、みんなの共有ビジョンができるんですね。

その共有ビジョンに対して、実現するために3月までには何をするのが大事かということで、また、出していくんです。そうすると具体的に見えるんですね。

次に、それをするために何がレバレッジ(てこ)になるのかというのをブレストしていくんです。

そうすると地域の人は、こういう人を仲間に入れるのが大事なんじゃないかとか、国の人はもっとこうしたほうがいいんじゃないかとか、もっと集まれるようなプラットフォームを作ったらいいんじゃないかというようなレバレッジが見えてくるんです。

私は講演で、次のコクリ!5ステップを紹介しています。

1)種火をつける。根っこの想いに気づく。
2)関係の質を上げる。垣根を超えて繋がる。
3)北極星を共に創る
4)まずやってみる。一歩踏み出す。
5)すべてから学ぶ。→ 1)へ戻る

このサイクルを回していると、みんなゴトになるんです。

なるほど。かなり具体的ですね。三田さんから見て、「反転授業の研究」は、どうするとコクリ!が起こりやすくなると思いますか?

もしかしたらですが、テーマがあるだけに、テーマドリブンになりがちかもしれないかなと思います。一見、遠回りかもしれないけど、テーマに限らず、その人の想いを話せる時間があったりすると、結局、テーマに結び付くかもしれないし、本当は、こんな人だったんだ、そんなすばらしさがあったんだというのが分かった上でテーマを話すのと、いきなりテーマを話すのとは違うので、そうすると違う突破口が開けるかもしれないなと思いました。

三田さんが話してくれたコクリ5ステップを、「反転授業の研究」の共創へ役立てることができれば、何かを生み出せそうな気がして、ワクワクしました。三田さんが指摘してくださったように、「実践」というレベルで共有するだけじゃなく、「想い」の部分を掘り起こすと違う突破口が見えてくるかもしれません、貴重なヒントをいただきました。

コクリと自然農法の共通点

三田さんは、最近、スコットランドのエコビレッジ「フィンドホーン」に行かれたじゃないですか。Facebookの投稿で、パーマカルチャーについての話を読んだ記憶があります。僕たちも、いろいろやっていくとエコシステムのようなものにたどり着いているんですよ。社会から設定された指標じゃなくて、自分から何かをやっていくということを考えたときに、生き物としての自分というところに戻るんですね。教育が、工場モデル的なものじゃなくて、自然農法とか、パーマカルチャー的なもののメタファーで語られるようになってきて、自然農法をやっている農家のようなポジションで教師が生徒に関わっていくというようなイメージを抱いているんです。土を耕すということが、マインドセットを変えるとか、根っこの思いに気づくということに対応するのかもしれません。三田さんの中で、パーマカルチャーはどのような位置づけなのですか?

フィンドホーンに限らず、コクリ!でやっていることって、土づくりとか、農業で例えることが多いんですよ。いい土を作ると、勝手に生命力が溢れていくと考えているんです。実をたくさん収穫したいがために化学肥料をどんどん入れていくと、短期的には収穫が増すんだけど、土が痩せていって、結局は持続可能にならないということをずっと言っていて、だから、いい土を作るんだということは、コクリ!にコンセプトの1つではあるんですね。

最近、コクリ!ラボのメンバーで言っているのは、コクリ!でやっているのは自然農法だということなんです。それで、いろんな活動を自然農法のメタファーで語ったりしています。

フィンドホーンに行かれて、いかがでしたか?

フィンドホーンでは、パーマカルチャー自体も実践されていました。私がすごく学んだのは、本当に愛に溢れた空間で、人も植物も物もすべて愛されているということです。物にも名前がついているんですね。車とかにも「トム」とか書いてあるんですよ。

本当に全部に丁寧に愛をかけて、その中でそれぞれのエネルギーが、最小パワーで最大になるようにということがすごく考えられていて、エネルギーがちゃんと受け取れるような空間設計がされているんです。

植えてもいないのに種が落ちて勝手に生えてきてジャガイモが取れてというように自生している植物があったりとかして、手間をかけずに自然と育つような仕組みを入れているようなんです。

彼らは、パーマカルチャーを単なる農法として捉えていなくて、人が持っているエネルギーがちゃんと出るような仕組みをハードとソフトで両方整えているんです。彼らは、「ソフトテクノロジー」という言い方を半分ジョークで言っているんですけど、ソフトテクノロジーとして、アチューンメントというものがあるんです。それは、ワークショップする前後とか、農作業する前後とか、人が輪になって手を繋いで、目を閉じて、一人の人がガイドしながら、自分と繋がったり、地球と繋がったりということをやるんです。そういうことをちゃんとやって、自分と地球とがちゃんと繋がってから場に入るということをちゃんとしていたりします。

他にも瞑想の時間があったり、彼らが「ソフトテクノロジー」と呼ぶ仕組みが、いっぱいあるんですよね。

ハードの仕組みとして、汚水が3日間バクテリアの中を通ると、泳げるくらいの水になるようになっていたりとか、人が無駄にお金をたくさんかけなくてもそんな水に戻るという仕組みを、大学と連携したりしながら作っていたりします。そういうのが実践されているコミュニティのような感じでしたね。

フィンドホーンの土産話に、ラブインアクションという言葉があるんです。すべて「愛から行動する」ということなんですけど、ガーデニングとか、クッキングとか、お掃除とかを、全部、ラブインアクションでやるんですね。

私はガーデニング担当をしたんですけど、まず、アチューンメントして、植物とコミュニケーションをして、単に草取りをするというんじゃなく、たとえばバラにエネルギーがいくように周りの草を取るみたいな感覚なんです。抜いた草もコンポストに堆肥として戻るから循環をするわけです。今はどこを抜くべきかは植物が知っているから、コミュニケーションを取りながらやるとか、いつも愛から行動するんです。終わった後は、農具とかをきれいにしてから、アチューンメントして終わるという感じでした。

全部が愛から動いているという感じでした。

いやー、興味深いですね。僕もずっと前から有機農法とか自然農法に興味があって、ブログにも自然農法と教育の関係を記事に書いたりしていました。

→ 農業生物学者から教わったこと

自然農法の福岡正信さんが「放任」と「自然」の違いについて語っていて、これが、教育の分野とも通じる話で、とても興味深いんです。福岡さんの『わら1本の革命』にもじって記事を書いたことがあります。

→ 「反転授業 動画一本の革命」~オセロをひっくり返していく

福岡さんは、一度、果樹園を自然に任せようと思って放置したら、枝があちこちに伸びて重なってしまい、果樹園全体がダメになってしまったそうなんです。それは、周りが狂っている状況で放置しても「自然」にならないということなんです。じゃあ、「自然」とは何かということを追い求めて、彼は、「自然型」というものにたどり着くんです。僕の理解では、「自然型」というのは、生き物の自己組織化的なプロセスが最も効果的に起こるような状況だと思います。彼はそれを長年の試行錯誤の末に把握して、最初は支援しながらそこにもっていって、そのうち、自律的に動くようになるということなんじゃないかと思うんです。パーマカルチャーも植物と動物と人間の関係が、うまく循環するようにデザインされいていて、最初は手をかけるかもしれないけど、そのうちにほとんど手をかけなくても回りだすようなものだと思います。それが、福岡さんの言う「自然型」のイメージとすごく近いんです。

自然型とかパーマカルチャーに接すると、人間と動物と植物とがコクリしているということを感じて、由佐さんが言うように「美に触れると元気になる」という状況になるんじゃないかなと思いました。僕たちは様々な常識を社会システムからインストールされていますが、共創(コクリ)こそが宇宙の摂理だということにリアリティを感じることができると、これを人間関係とか社会に広げていけばいいんだなという確信を持ちながら生きられるようになるんじゃないかなと思います。

インタビューを終えて

ボブ・スティルガーさんの本を読んだときに出会った「トランス・ローカル」という考え方は、単なる理念ではありませんでした。

三田さんやボブさんたちのチームは、地域創生のコミュニティを繋いでいて、まさに、「トランスローカル」を起こすことで社会システムを変化させようとしているのです。

志を同じくする者として、この流れに何かの形で加わっていきたいと思います。

コクリ!プロジェクトのやっているコクリ・キャンプ、皆さんも、ぜひ、注目していてくださいね。

→ コクリ!キャンプ

教育システムと社会との不整合をアクティブラーニングは解決できるのか?

「反転授業の研究」の田原です。

反転授業に取り組むようになったことをきっかけに、日本の教育システムや、社会構造について考えるようになりました。

「なぜ、反転授業をやるのか?」

という問いについて考えていくと、どうしてもそこへたどり着かざるを得なかったのです。

 

工業化社会から知識基盤型社会へ

僕の出身は茨城県の日立市です。

日立鉱山の修理工場としてスタートした日立製作所が生まれた場所です。市内にはヒタチの工場が並び、クラスの友達の父母の多くがヒタチの工場、または、その関連会社で働いていました。

団塊ジュニア世代の僕が受けた当時の小、中学校は生徒数が多く、中学校などは45人クラスが1学年9クラスありました。

校内暴力の嵐が吹き荒れたころで、それを力で押さえつけるために強面の生活指導の教師がいて、学校のあちこちで教師が生徒に体罰を与えるシーンを見かけました。

部活動の先輩後輩の中にも同様の構造があり、先輩が後輩を殴るということも日常的に行われていました。

学校で厳しく言われていたのは、

・時間を守ること

・服装を整えること

・ルールを守ること

・先生に言われたことを、言われた通りにやること

ペーパーテストによる序列化を通して身に付いたのは、

・間違えずにきちんとやること

・作業を素早く完了すること

 

これらは、考えてみれば、工場労働者として不可欠のスキルですね。

決まった時間に必ず出社し、ルールを守って、間違えずに素早く作業すること。

新しい機械が導入されたときには、マニュアルを理解して、その通りに作業すること。

上司の言うことに疑問を持たずに、従うこと。

このような工場労働者としての在り方は、学校教育と一体化していたのだと思います。

そこでは、個性を伸ばすよりも、欠点を修正することに力が入れられます。

「規格」を満たしていない「部品」が1つでもあると、そこで流れ作業が止まってしまうからです。

 

このような資質が求められているのは、工場に限ったことではなく、工業化社会におけるヒエラルキー型組織一般に言えることだと思います。

ヒエラルキー型組織では、上から下に一方向的に情報が降りてくるので、それに従順に従うことが求められます。

そのような組織でのふるまい方は、教師が力で抑え込む学校、先輩が後輩に権力をふるう部活動などに適応することで身につけてきたのです。

 

しかし、グローバル化によって工場は労働力の安い海外へ次々に移転しています。

インド、インドネシア、中国、タイ、ベトナムなどには、たくさんの日本企業の工場が設立されています。

グローバル市場で価格競争をしていくためには、多国籍企業となって、労働力の安い国に製造拠点を移すのが有利だからです。

工場労働者を育成する教育システムに乗って立派な工場労働者になったとしても、働く先の「工場」は、次々と海外移転して減っていくわけです。

実際に、どのくらい海外進出しているのか調べてみました。

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※国際協力銀行の資料を基に作成しました。(元データはこちら

14年間で10%以上海外生産比率が上がり、2017年には約40%に達するという予測がされていました。

 

製造業を中心に繁栄した日本の社会は、否応なく大きな変化をしつつあります。

しかし、教育システムはかつてのまま「工場労働者」を排出し続けているのです。

 

日本の社会はどのように変化するのでしょうか?

グローバル化の波が押し寄せる中、多国籍企業に負けないように、より大きく、より強くを目指すのでしょうか?

それとも、価値観を転換して、新しい方向性を打ち出していく人が増えてくるのでしょうか?

そこに外から与えられる「正解」はありません。

誰かが答を与えてくれるのではなく、自分たちで協力して未来を創っていくことが必要になってくるのです。

 

しかし、工場労働者を育成する教育システムは、「自分たちで協力して未来を創る」ことを教えるよりも、考える力を奪い、生きる力を削いで、レールの上を言われた通りに走る生徒を育てる仕組みを内在しています。

この構造に気づいてから、僕は、大学受験をサポートしている自分の仕事に矛盾を感じるようになり、苦しくなりました。

学びを大学受験に特化してしまうことは、その人の幸せにつながるどころか、むしろ生きる力を削いでしまう結果になるのではないかと思ったからです。

 

その一方で、アクティブラーニングや反転授業に希望を見出しています。

これらは、教育システムと社会との不整合から来る矛盾を解消する可能性を秘めているからです。

正解を暗記して素早く処理するような学びではなく、分からないことを試行錯誤し、チームで協力して振り返りと気づきを積み重ねながら経験学習を進めていくという学びは、まさに未来を創っていくのに役立つ学びだからです。

そのような学び方で教科学習をすることで、必要な知識を学ぶことと、協力して未来を創ることのできるマインドセットの両方を身につけることのできる可能性があります。

 

文科省の動き

2020年の学習指導要領について、下村文科相がインタビューに答えていました。

なぜアクティブラーニングが必要なのか?

文科省も、教育システムと社会構造との不整合が問題と考え、教育システムを現状に合うように大きく変更しようとしています。

しかし、その変化が始まるまでに、あと5年あります。

目の前の生徒は、5年間、その矛盾を押し付けられ続けるのです。

 

社会で価値創造をしている人たちは、試行錯誤を繰り返し、振り返りと気づきを深めながら自分たちで道を創っています。

教室でも、生徒がそれと同じ方法で学んでいくことができれば、自分たちで考えて、未来を創っていく力を育てることができます。

それは、現行の学習指導要領でもできることですし、塾や家庭でもできることです。

大学受験の制約はありますが、アクティブラーニング型授業を通して、自ら学ぶマインドセットを身につけた生徒は、結果として受験も力強く乗り越えてくれるのではないかと思いますし、そこで身につけた力は、大学進学後に大きな財産になっていくものだと思います。

 

アクティブラーニングのオンライン講座

「反転授業の研究」では、9月1日より、アクティブラーニングスキルアップ講座を実施します。

アクティブラーニングの伝道者として日本全国を回って研修をしている小林昭文さん(産能大教授)を講師に迎え、5週間(途中1週間の休みあり)で、アクティブラーニングの実践をチームで磨き合います。

この講座は、アクティブラーニング型講座になっており、受講者は学習者としてアクティブラーニングを体験し、その体験を自らの実践に生かしていけるようになっています。

詳しい内容はこちらをご覧ください。

アクティブラーニングスキルアップ講座

 

アクティブラーニングによって自己効力感を増した生徒が未来を切り開く

2年前、反転授業に興味を持ったとき、

これからは工業型社会から知識基盤型社会に移行し、21世紀型スキルが必要になる

という言葉を聞きましたが、まったくピンと来ませんでした。

自分の中に対応する問題意識や体験がなかったため、言葉が僕の内側の何かと結びくことができなかったのです。

言葉だけが体の周りをふわふわと漂っていました。

自分たちが分からないものを、果たして子どもたちに伝えられるのだろうか?

体験の裏打ちのないことを口から出しても、薄っぺらいメッセージは生徒の心には届かないのではないか?

そんなことを感じたのを覚えています。

 

それで、「反転授業の研究」を、「未来のグループ」にしてみたらどうだろうかと考えました。

これから来るだろうと言われている全員参加型の共生社会をオンラインで実現して、みんなで体験してみようと思ったのです。

21世紀型のグループを作って、そこでの体験をもとに、確信を持って教室で語れるようになればいいんじゃないかと思ったのです。

 

「多様性のある森を作り、そこで収穫される多様な果実を共有する」という言葉を合言葉に、「反転授業の研究」は生長していきました。

「反転授業の研究」ではオープンでフラットな関係がグランドルールに設定されています。

現実社会での多くの関係性は、まだ必ずしもオープンではないし、フラットでもないですが、僕たちが望む未来はそのような社会だろうと思ったからです。

そして、オープンでフラットだからこそ、権威に頼ることなく、自分たちの力を信じて活動し、誰もがリーダーシップを取ることが可能になり、多くのボトムアップの活動が生まれ、自由にコラボレーションが起こると思ったのです。

コラボレーションによる価値創造の体験を共有したときに、僕たちははじめて知識基盤型社会や21世紀スキルというものを体で理解することができ、確信を持って子どもたちに語れるようになるのではないかと思ったのです。

集合知を発生させるための取組み

2年前に「反転授業の研究」で頻繁に飛び交っていたのは、「集合知」という言葉でした。

この言葉は、僕にとって、とても新鮮でした。

毎日、どうすれば集合知が生まれるのかを考えていました。

なんとなく大事だと感じていたのは、「コミュニケーション量を増やす」ということでした。

コミュニケーション量が増えることで、あるところで量から質への転換が生まれるのではないかとなんとなく思ったのです。

それで、毎日、毎日、グループ内の投稿に質問をしていったり、コメントをしていったりしました。

そうすると、グループのメンバーがどんなことに困っているか、その解決策を誰が持っているかが、自然と浮かび上がってきました。

困っている人と、支援できる人とをコミュニティ内でマッチングできれば、価値創造ができるんじゃないかと思いました。

オンラインで講座をやるときに難しいのは受講者を集めることと、講師をブランディングすること。

でも、「反転授業の研究」には、すでにたくさんの人がいて、その人たちが困っていることが何だかが分かっているし、誰ならその解決策を教えられるということを皆が知っているわけです。

あとは、「学び場」をどうやって創るのかということだけでした。

オンラインの学び場をチームで運営

でも、オンラインでどうやって学び場を創ればいいのか?

そのヒントは、意外なところからやってきました。

『ワールドカフェをやろう!』という本を読んだときに、その中に集合知の話が出てきたので、著者の香取一昭さんにメールを送ってスカイプでお話をうかがえないかお願いしました。香取さんは、この分野の第一人者だということを当時は分かっておらず、結構、気楽にメールを送ってしまったんですね。(汗)

香取さんは、初心者の僕にいろいろ教えてくださり、アメリカでワールドカフェホストのためのオンライン講座をやっているAmy Lenzoさんを紹介してくれました。

ワールドカフェのホスティングと、オンライン講座のやり方を同時に学べる!と思い、8週間のオンライン講座に挑戦しました。

英語力の弱さと、初めてのオンライン講座だということで勝手が分からずに泣きそうになりましたが、これを乗り越えればいろんな可能性が生まれると信じて8週間を何とかやり通しました。

この経験は、本当に大きかったですね。

自信もつきましたし、オンライン講座の運営方法も分かりました。

そして、Amyさんのやり方を参考に、「反転授業の研究」で最初のオンライン講座、「神アプリExplain Everythingで超簡単に動画講義を作る方法」をやりました。

古山竜司さん、桑子研さん、横山淳さんと僕の4人でコラボレーションをして講座内容やコンテンツを作っていきました。

Facebookのグループチャットを立ち上げ、そこで相談しながら進めていったんですが、4人がそれぞれの視点で意見を重ねていくことで、すごい勢いでアイディアがブラッシュアップされていきました。

ちょっと席をはずして戻ってくると、チャットに30個とか40個とかのメッセージが溜まっていました。

自由に発言できる雰囲気があり、そこで4人が頭をフル回転させると、どんどん仕事が進んでいく。

誰からともなく、この4人で仕事をするのは楽しい!という声が上がっていました。

次々とアイディアが形になっていくのを体験して、一人じゃ絶対にできないことがチームだとできるということを初めて心の底から実感することができました。

その後、オンライン講座は回を重ね、運営ボランティアを巻き込んだ10-20名の運営チームで運営するようになりました。

それぞれがチームをメタ認知して、自分で自分のやりたいことや貢献できることを見つけて行動していくことで大きな成果を達成できるということを繰り返し繰り返し体験しました。

共創はマインドセットを変化させる

一人じゃできない価値を、協力すると創造できる。

この経験は、僕たちのマインドセットを大きく変化させました。

「反転授業の研究」のメンバーの中には、

2年前の自分が思い出せないほど自分が変わった。

と発言する人がたくさんいます。僕もその一人です。

考えてみれば、今までは、自分の能力の限界というものを常に外から突きつけられてきたんだなと思います。

一人で何かをやらなければならないときは、自分の苦手なことが足を引っ張ります。

1つの苦手なことがボトルネックになって目標を達成できず、それを自分の限界だと感じてしまいます。

しかし、チームで価値創造するときは、自分の得意なことで貢献し、苦手なことを周りから学ぶことができます。

自分の苦手なことが行動のボトルネックにならないのです。

これを体験すると、未来の見え方が大きく変わります。

仲間が助けてくれるから、自分はやりたいことを思いっきりやって、周りに貢献できる。

そのように心の底から感じられると、自己効力感が増し、行動変容が起こります。

「反転授業の研究」の中で、仲間の行動変容は、周りの行動変容を促し、次々とマインドセットが変化していきました。

21世紀型社会へのシフトというのは、テクノロジーや社会の変化ではなく、それをきっかけとして、各個人の意識がシフトすることなのだということを、僕たちは2年間の活動を通して、体験的に理解したのです。

教室内で共創を引き起こして、生徒のマインドセットを変えていく

共創によりマインドセットが大きく変容させた教師たちが、同じメカニズムによって生徒のマインドセットも変容させることができるのではないかと考えたのは自然なことでした。

生徒が、一人じゃ解決できない問題・課題をチームで協力して解決できたとき、生徒の自己認識の焦点が「苦手」な部分から、「得意」な部分へと移行し、自己効力感が増していくはずです。

自己効力感が増すと、世界の見え方が変わり、自分を世界にポジティブな影響を与えることができる有能な存在であるということに気づくことができます。

チームへの貢献の仕方には様々な方法があり、自分の個性に合った活躍の仕方というものがあるのだということに気づくことができます。

そして、テストの結果とは異なる指標で、自分の価値や強みを知ることができるようになります。このことは、将来、生きがいを持って働くことができる天職を見つけることに役立つはずです。

教師自身が、協力し合いながらアクティブに学びマインドセットを変えていき、その経験を生かして、教室でアクティブラーニング型授業を行い、生徒のマインドセットも変えていく。

これが、僕たちが考えていることで、僕の周りでは、すでに起こっていることです。

オンラインでの学びの渦に巻き込まれてみませんか?

9月1日から、アクティブラーニングの伝道師、小林昭文さん(産能大教授)を講師に迎え、アクティブラーニングスキルアップ講座を実施します。

9名の運営チームと、最大30名からなる受講者とが混然一体となり、お互いに実践を振り返って気づきを深めながら、経験学習のサイクルを回していきます。

自分だけでは気づけなかったことが、チームで学ぶことによって気づくことができます。

そのことを経験したときに、チームで学ぶ価値を実感することができると思います。

そして、その実感を、生徒たちにも体験させてあげたいという気持ちが生まれてくると思います。

オンライン講座でつながった人たちとは、講座が終わってからも様々なコラボレーションが起こることでしょう。

その体験は、21世紀を先取りするものであり、その体験をもとに確信を持って生徒に自分の言葉で21世紀を語れるようになるはずです。

そして、みなさんのアクティブラーニング型授業によって、マインドセットを変え、自己効力感を増した生徒たちが、協力し合って未来を創っていってくれるのではないかと思います。

僕たちは、そのようなポジティブな循環を作りたいと思っています。

皆さんの参加を心からお待ちしています。

アクティブラーニングスキルアップ講座

 

「反転授業の研究」物語 第4話 横山北斗さんとの出会い

「反転授業の研究」の田原真人です。

このグループが始まってから今までのストーリーを連載していくことで、新しく入られた方とも物語を共有していきたいと思います。

メルマガ「反転授業通信」に登録いただくと、第1話から順に配信されます。→ メルマガの無料登録はこちら

第4話 横山北斗さんとの出会い

小林昭文さんと繋がったことをきっかけに、次々とアクティブラーニングの実践者と繋がり始めました。

毎日、新しい人と繋がっていくという感じ。
何かが起こっているというワクワク感がありました。

そのときにつながったうちの一人が、関東第一高校の数学教諭、横山北斗さん。

それは、2013年夏、東京に出張していたときのことでした。

その日はミーティングが4つありました。
朝食ミーティングからスタートし、午前中にもう1つ、午後にもう一つ、夕食を食べながら最後のミーティングというハードスケジュールでした。

昼食を食べならがスマホをチェックすると、長いメッセージが入っていました。

それが、横山さんとの交流の始まりでした。

小林さんが僕について書いてくださった記事をFaceBookで見かけて、僕のFacebookの投稿をたどっていったら、僕がこのブログ「反転授業の研究」を
書いていることに気づき、驚いてメールを送ってくださったということでした。

横山さんは、反転授業のための動画を作成するときに、このブログの記事を参考にしてくださったそうです。

「ちょうど東京に来ているので、もしよかったらお会いしませんか?」

とお返事し、夕食ミーティングの前に空いていた1時間に、池袋のコーヒーショップでお話しすることにしました。

そこで、横山さんが教育の道に入るまでの経緯、アクティブラーニングをどうやって実践しているか、実践の背景として考えていることは何か、といったことをたくさん教えていただきました。

・予習プリントや、最初の解説で、あえて詳しく説明せずに、グループワークで発見してもらう。

・解答プリントを配布して、グループワークを行う。

といった話は、非常に刺激的でした。

ちなみに、解答プリントを配布してグループワークを行うとどうなるのかは、そのときにはイメージできなかったのですが、ずっと頭の中に残っていて、話をうかがってから2年後に、自分でやってみて、ようやく腹落ちすることができました。

・学習者が自分で難易度を調整できること。
・答案も参考にしながら、話し合って理解を深めることができること。

こういうことを目の当たりにして、これだったのか!と思いました。

また、小林さんの実践例に登場する「セッティング」「立ち歩き」などが、どのような意味を持っているのかを解説してもらいました。

これが、僕にとって、とても役に立ちました。

その後にフィズヨビで行ったオンラインのグループワークでは、小林さんのやり方をベースにして構成したのですが、横山さんが、小林さんのやり方の背景を教えてくださったので、意図を理解することができ、応用させることができたのです。

フィズヨビのオンラインのグループワークには、横山さんも見学に来てくださり、コメントを送ってくださいました。許可を得て引用します。

物理をあまり学んでないもので、すっかり生徒気分で参加できました。

日頃こういう立場の経験ができないので非常に貴重な経験でした。
ありがとうございます。

授業の中で分かっていく過程や、分からない不安さ、追いて行かれそうな焦り、
難しそうな問題を見た時の恐怖(大げさですが)、確信が持てないことを
グループで共有する躊躇い、しかし例えお互い に確信が持てないとしても
同じように考えている人がいることの安心感などを久しぶりに味わうことができました。

読書などで新しいことを学んでいく過程とはやはり違って、良くも 悪くも
ライブならではのドキドキ感がありますね。 改めて、本当にとても貴重な体験を
させていただきました。 今後の授業で生徒の感情を感じ取るのに間違いなく
活かせると思います。

横山さんは、アクティブラーニングや反転授業をやりたくて教師になったとのことでした。

教員2年目の途中から満を持してアクティブラーニングをはじめ、手応えを感じて、3年目は、最初からアクティブラーニングと反転授業に取り組んでいるとのことでした。

熱意溢れる横山さんには、大きな刺激を受けました。

この縁をきっかけに、第1回のオンライン勉強会では、小林さんに続いて、横山さんに実践報告をしてもらうことになりました。

●編集後記

横山さんと知り合って2年がたちますが、その後の横山さんの活躍は、目覚ましいものがあります。

関東一校で、アクティブラーニングやICTに関する提案を次々に行い、周りを巻き込んでいく様子に未来を感じています。

「反転授業の研究」物語 第3話 小林昭文さんとの出会い

「反転授業の研究」の田原真人です。

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第3話 小林昭文さんとの出会い

2013年の夏、東京へ出張する機会があり、空いている時間に、誰かと会って話をしたいと思いました。

当時の僕は、

動画講義の作り方は分かるけど、教室でのグループワークがイメージできない

という状況でした。オンラインで読書会をやっていたメンバーは、みんな動画講義の経験はあったものの、グループワークをやったことがなかったのです。

それで、日本でグループワークをやっている人、東京で会って話が出来る人を探して、Googleで検索していたんです。

そのとき、初めて「アクティブラーニング」という言葉を知りました。

そして、小林昭文さんのブログ

授業研究AL&AL」
http://d.hatena.ne.jp/a2011+jyugyoukenkyu/

を見つけました。

ブログにはメールアドレスが書いてあったため、そこに「お会いできませんか?」とメールを送りました。

その日の夜、メールに返事が来て、

「日程が合わないのですが、とりあえずスカイプで話しませんか」

ということが書いてありました。

スカイプをすることになり、小林さんのブログ記事を、片っ端から読んでいきました。

そこには、単に効率よくテストの成績を上げるということとは、全く別の次元のことが書いてあり、目から鱗が何枚も落ちました。

そのとき自分が感じていた心の底の深い部分と、「反転授業」が結びつきました。

それまでは、「生身の自分」と「仕事」との間には、少し距離があったのですが、このことをきかっけに2つが一致してきました。

小林さんとスカイプで話をしてから、

アクティブラーニングのことを学びたい。

自分もアクティブラーニングをやってみたい。

そういう気持ちが、沸々と湧いてきました。

小林さんのブログから刺激を受けて、たくさんの記事を書きました。

強い好奇心が湧いて、完全にスイッチが入った状態になりました。

反転授業と生徒の多様性についての考察
http://flipped-class.net/wp/?p=98

●カンニング禁止はテストのルールであって勉強のルールではない
http://flipped-class.net/wp/?p=103

●日本で反転授業を成功させるためには
http://flipped-class.net/wp/?p=108

●「反転授業の効果は試験の点で5%アップ」について
http://flipped-class.net/wp/?p=113

反転授業のデメリット
http://flipped-class.net/wp/?p=118

当時、僕は、予備校講師を辞めていて、ネット予備校でしか教えていなかったので、なんとかオンラインでもアクティブラーニングのエッセンスを取り入れる方法はないかと考えました。

それで、WizIQというWeb教室システムを使って行っている授業に、5分でもいいからアクティブラーニングの要素を入れようと考えました。

小林さんも見学に来てくれ、その中で授業を行いました。

電気回路の授業をやっているときに、受講生から、

「抵抗では、エネルギーが消費されるのに、電荷は消費されないのですか?」

という質問が出ました。

「それはね・・」

といつものように回答しそうになりましたが、

「あ、ここで、学び合いができるんじゃないか」

と思って、質問に対してどのように回答したらいいかを、受講者に問いかけて、チャットボックスに書いてもらいました。

チャットボックスには、たくさんのコメントが並びました。

その中で、水力発電を例にとった分かりやすい説明があり、その説明でみんなが納得しました。

僕は、その説明を書いてくれた人に「拍手」をするようにみんなに呼びかけました。

その授業の後のアンケートでは、ほとんどの人が、その学び合いについて書いていました。

90分間の中でわずか5分程度だった学び合いが、85分間の「予備校講師の授業よりも受講者の心を捉えたという事実が、その後の僕の授業に決定的な変化を与えました。

次回の授業からは、その5分を90分に拡大することにしたのです。

さらには、オンラインでのグループワークにも挑戦しました。

そのときのことを、小林さんがブログに書いてくれました。

●オンライン授業を見学しました
http://d.hatena.ne.jp/a2011+jyugyoukenkyu/20130923/p1

小林さんとの交流が始まり、小林さんがブログとFacebookで僕のことを紹介して下さったおかげで、たくさんのアクティブラーニングの実践者と繋がることができました。

反転授業の研究」で、動画の実践をしてきたメンバーと、アクティブラーニングの実践者とが混じり合いました。

お互いのやってきたことを教えあうことで、反転授業のやり方が見えてくるのではないか。

そんな思いから、WizIQを使ってオンライン勉強会をやることにしたのです。

それが、驚くべき事態を引き起こしました。

(第4話へ続く)

●編集後記

2013年ころに自分が考えていたことを改めて見直すと、知識という面では、今よりもだいぶ少ない状態で記事を書いているのですが、新しいものと出会った興奮というものが文章から出ていますね。

当時、本当にワクワクしていたんです。

「反転授業の研究」物語 第2話 4-5人で集まって読書会を始めた

「反転授業の研究」の田原真人です。

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第2話 4-5人で集まって読書会を始めた

10年以上続けてきた予備校講師を辞め、副業としてやっていた物理ネット予備校の収入で生活するようになり、収入は半減しましたが、自由に使える時間ができました。

この時間を使って未来へ向かって種まきをしようと思っていたときに、

反転授業

というキーワードと出会いました。

当時、アメリカではカーン・アカデミーが話題になっていて、日本でも、中村孝一さんがeboardを始めたり、花房孟胤さんがmanaveeを始めたりしていて、オリジナル性の高い教え方を動画で配信するという仕事が、近い未来成り立たなくなるのではないかと予想していました。

5年以内に新しい価値を生み出す必要があると考えていたところ、飛び込んできたヒントが「反転授業」だったのです。

また、その頃、Web会議室というものに大きな可能性を感じ始めていました。

リアルの教室とオンラインの教室とでは、ターゲットとする層が異なるのです。

ニッチな分野では、ほとんどの人が教えてくれる人を身近で見つけることができないので、ネットで情報を収集しています。

その人たちがWeb会議室で集まって、講師に教わったり、学び合いをするということができるのではないかと思い、様々な可能性を探っていました。

国内、国外のWeb会議室を片っ端から試して、どんなものが使いやすいのかを体験していたのです。

また、Facebookを積極的に使用するようになったのもこのころでした。

フィズヨビではオンラインでのイベントを定期的に実施していたのですが、このころからFacebookを利用するようになりました。

同じ時間にログインして、画面に問題の画像をUPして、答を3択にして、

1)だと思う人はここに「いいね」
2)だと思う人はここに「いいね」
3)だと思う人はここに「いいね」

などと投稿すると、「いいね」をアンケート機能のように使えるんですね。

Facebookを使うようになり、いろんな人とつながり始めました。

反転授業」+「Web会議室」+「Facebook」

この3つのキーワードが僕の中で結びついてきて、

「Facebookで繋がっている友人に声をかけて、Web会議室に集まって、反転授業の勉強会をやったらどうだろうか?」

というアイディアが生まれました。

・動画配信している塾の方
・動画配信システムを開発している方
・教科書の編集者
・教師

などに声をかけました。

eboardの中村孝一さんや、manaveeの花房孟胤さんにも声をかけ、参加してもらいました。

海外の文献などを読んでディスカッションするような形式で、8回続けました。

当時、勉強会に参加していた人たちの間で共通していた思いは、

「すごい時代になったなー」

というものでした。

未来を先取りして体験しているワクワク感がありました。

勉強会を通して分かったことはたくさんありましたが、教室で何をやるのかというところをイメージするのが難しいと感じました。

「グループワーク」というのが、今一つピンと来なかったのです。

勉強会を8回やったところで、一度、活動停止状態になり、ときどきブログを更新するだけの状況になりました。

それが、あることをきっかけにして、状況が一変しました。

(第3話へ続く)

●編集後記

当時、勉強会に利用していたのはVoiceLinkというシステムで、現在はサービス休止しています。

VoiceLinkのインターフェースのデザインをしたのが、アーティストの杉岡一樹さんで、そのときにFacebookでつながりました。

その後、いろんなことがあり、杉岡さんも「反転授業の研究」に参加して下さり、グループのロゴを作ってくださいました。

「反転授業の研究」物語 第1話 それは東日本大震災から始まった

「反転授業の研究」の田原真人です。

このグループが始まってから今までのストーリーを連載していくことで、新しく入られた方とも物語を共有していきたいと思います。

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第1話 それは東日本大震災から始まった

反転授業と東日本大震災とは、全く関係ないことのように思われるかもしれませんが、僕の中では、これらは一続きの物語として繋がっています。

 

しかし、震災のことを考えるのはとても苦しく、このことについて書けるようになるまでに4年間かかりました。

 

「反転授業の研究」のみなさんと一緒に未来を思い描けるようになってきたことで、ようやく過去と向かい合うことができるようになり、言語化することができました。

 

2011年3月11日のあの時、僕は、仙台市内の用事を済ませ、車で自宅に帰っている途中でした。

 

今から広瀬川にかかる橋を渡ろうかというときに、大きな揺れを感じ車を停止させました。

 

しばらくして揺れが収まり、恐る恐る橋を渡ると、見慣れた景色は一変していました。

 

道路は大きく陥没し、ガードレールは内側に折れ曲がってほぼ水平になっていました。窓ガラスが飛び散って散乱していました。

 

陥没した道路を、穴に落ちないようにゆっくりと蛇行して進み、娘の保育所になんとかたどり着くと、園児たちは広間に集まって布団をかぶって身を寄せ合っていました。その中に娘を見つけることができてほっとしました。

 

自宅に戻ると家の中はめちゃくちゃで、冷蔵庫や食器洗器が倒れて一面水浸しになり、割れた食器やガラスが散乱していました。

 

次の日、インターネットがつながり、原発事故が起こったことを知りました。その後は、情報収集と決断の繰り返しに明け暮れる日々が何カ月も続きました。

 

可能な限りの情報を集めて、自分と家族にとって良い決断は何かということを毎日考え続けました。

 

「ただちに影響はありません」に象徴される報道に不信感が募り、自分を取り巻いていた社会システムに対する信頼が大きく揺らぎました。

 

自分自身の形成に大きな影響を与えてきた教育システムや、自分の中の日本人マインドセットにも批判的な目を向けるようになりました。

 

10年以上勤めていた河合塾を辞め、オンラインでの仕事だけで生計を立てることにしました。

 

このままでいいはずはない。
でも、どうしたらよいのか分からない。

 

そういう人生のカオスの中で出会ったのが「反転授業」というキーワードでした。

 

自分の中にはカオスから抜け出すための答はなく、外側に新しいものを探しにいかないといけないと思いました。

 

それまで、ほとんど一人で仕事をしてきた僕が、一緒に学ぶ仲間を探そうと思ったのは、一人ではこのカオスの中から抜け出せそうにないと思ったからです。

 

そして、友人数名に声をかけて「反転授業の研究」を作りました。

4-5名で、オンラインルームに集まり、読書会を始めました。

 

今、振り返ってみると、このグループが誕生し、大きくなっていった背景には、震災後に新たに信頼し合えるコミュニティを作って再生への道筋を作っていこうという人たちの思いがあったと思います。

 

震災後、多くのコミュニティが新たに生まれましたが、「反転授業の研究」もその中の1つだということに気づきました。

 

そこでは、今までリーダーシップを取ることのなかった普通の人が行動を始めました。
僕も、震災前までは、グループになじまない「行動しない人」でした。

 

このままじゃいけない。
でも、どうしたらいいかわからない。

 

という共通の思いが、このグループの学び合いのエネルギーになっているのではないかと思います。

 

それを、原点として書き留めておこうと思います。

(第2話へ続く)

実践!アクティブラーニングスキルアップ講座 〜チームで磨く授業スキル〜

al-kouza

こんにちは。Facebookグループ「反転授業の研究」を主宰しています田原真人(たはらまさと)です。

「反転授業の研究」は、定期的にワークショップ型のオンライン講座を実施しています。

2015年9月は、7回目となるオンライン講座「実践!アクティブラーニングスキルアップ講座 〜チームで磨く授業スキル〜」を実施します。

産能大学教授の小林昭文さんを講師に迎え、小林さんの著書『アクティブラーニング入門』をテキストに用い、5週間(途中に1週間の休み)でアクティブラーニングの実践を磨いていきます。

※テキスト『アクティブラーニング入門』

この講座の特徴は、受講者が主体的に学び、自分の実践を振り返り、気づきを深めていくところにあります。

講師や、共に学ぶ他の受講生や、運営チームの存在も気づきを深めるための助けとなります。

つまり、アクティブラーニング型授業実践を、アクティブラーニング型の講座で学ぶということなのです。

ですので、講座を学習者として受講する経験から得られる気づきも、授業者としてアクティブラーニング型授業に取り組むときに役立つはずです。

講師の小林昭文さんをはじめ、運営チーム9人の多くがアクティブラーニング型授業の実践者であり、新しい教育を創り出していこうという志を持っています。運営チームと受講者とが一体となった学び合いの場で、お互いに交流しながら、共に成長して行けたらと思っています。

 

あなたもアクティブラーニング型授業をやっているかもしれない

この講座は、「アクティブラーニング型授業(AL型授業)を実践している人」を対象にしています。

このように言うと、「自分は、アクティブラーニング型授業をやっていない」から対象外だと思った方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、少しお待ちください。

私たちはアクティブラーニング型授業の範囲を広く捉えています。多くの方は、自分では意識せずに、私たちの考えるアクティブラーニング型授業を実践しています。

まず、アクティブラーニングとは何でしょうか?

小林さんは、溝上慎一氏の次の定義を採用しています。

アクティブラーニングの定義

一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う。(溝上慎一2014)

そして、この講座では、学習者にアクティブラーニングが起こることを含むすべての授業形式を、アクティブラーニング型授業(AL型授業)だと捉えます。

AL型授業の定義

学習者にアクティブラーニングが起こることを含むすべての授業形式。

この定義には、特定の構成、構造、スキルなどは含まれていないことに注意してください。グループワークをやっていないとアクティブラーニングではないなどの縛りはないのです。

小林さんは、「100%ワンウェイでないならAL型授業と言える」とも言っています。

多くの教師は、授業の中に少しはアクティブラーニングの要素を入れているのではないでしょうか?

もし、あなたが教師なら、自分の授業の中にアクティブラーニングの要素が入っていないのか考えてみてください。

もし入っているのであれば、あなたの授業はAL型授業と呼べるものであり、この講座を通して、一緒にアクティブラーニングが起こる時間を増やす工夫や、より深い学習が起こる仕組みや仕掛け、生徒への働きかけ方を一緒に工夫していくことができます。

 

コルブの経験学習サイクルを回しながら学んでいく

知識を一方向的に伝えていくのではなく、学習者に主体的に学ばせようとするときに核になるのが、コルブの経験学習モデルです。

コルブ(Kolb)の経験学習モデル

①具体的な経験(体験する)

②内省的な観察(振り返る)

③抽象的な概念化(気づく)

④能動的な試み(行動計画を作る) → ①へ戻る

この講座では、まず、『アクティブラーニング入門』の指定箇所を読み、各自が自分の実践を振り返って、気づいたことをMoodleに投稿します。

この後、2つの方法でさらに気づきを深めていきます。

1つ目はリアルタイムセッションを通してです。リアルタイムセッションでは、アクションラーニング(質問会議)のコーチ資格を持つ小林さんが司会者となり、アクションラーニングの手法を応用して受講者同士で質問したり、解答したりしながら気づきを深めていきます。

2つ目は相互フィードバックを通してです。リアルタイムセッションの後、リフレクションカードに記入し、Moodleで共有します。それらに対してチーム内でお互いにフィードバックを送り合うことで、さらに気づきを深めていきます。

その後、行動計画を作り、各自の実践の改善へと繋げていきます。

AL型授業実践をコルブの経験学習サイクルを回しながら改善していくのと同時に、自らのAL型授業実践についての学びがどのようにして進んでいくのかをメタ認知することで、次のことも同時に学ぶことができます。

  • コルブの経験学習のサイクルが効果的に回るための場の創り方
  • チーム学習が効果的に進むための質問スキル

「学ぶ内容(AL型授業実践)」と、「学び方(コルブの経験学習サイクルを回す)」を同時に学ぶことができる講座だと思っていただけるとよいと思います。

学ぶ教師を支える「新しい学習会」

生徒の主体的な学習を促すのは、教師の権威ではなく、主体的に学んでいる教師の背中です。

「主体的に学べ」と生徒に言っても生徒は動きません。

教師自らが主体的に学んでいる様子を見せることにより、それをロールモデルとして生徒は主体的に学び始めるのです。

しかし、一人でアクティブラーニング型授業について学んでいくのは、簡単なことではありません。

そこで、アクティブラーニング型授業実践を支える仲間の存在が重要になってきます。

このオンライン講座は、アクティブラーニングの実践を磨く「新しい学習会」のフレームにもなっています。

この講座を通して、「学び方(コルブの経験学習サイクルを回す)」を身につけると、同じやり方で、あなたの周りの実践者を巻き込んで「新しい学習会」を開くことができるようになります。

身近なところに共に学ぶ仲間がいないのであれば、オンラインで「新しい学習会」を開くこともできます。オンラインで「新しい学習会」をやる方法についても、この講座での体験を通して理解することができるでしょう。

学習会の運営方法についても、この講座でつながった学びの友が支えてくれるはずです。

 

全国の実践者と繋がることができる

この講座を運営しているのは、Facebookグループ「反転授業の研究」のメンバーです。このグループは、3300人以上からなり、国内、国外の教育に関心のある様々な人たちが参加し、毎日、活発なやり取りをしています。

運営チームのメンバーは、「反転授業の研究」で中心的な役割を担っており、運営チームのメンバーを通して、全国のアクティブラーニングや反転授業の実践者と繋がっていくことができます。

講座開講中に、受講者と運営チームが、お互いに十分に交流できる機会を持ちます。

その結果、これまでの講座では、講座が終了後も、オンラインで繋がって継続して学び合えるような関係性が生まれています。

 

これまでになかった新しいオンラインの学び方

オンライン講座というと、動画などを見てひとりで学ぶイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?

「反転授業の研究」が主催するオンライン講座は、学習者中心の考え方に基づき、様々な工夫をしており、過去4回の講座では、脱落者が10%以下(そのうち2回は脱落者ゼロ)を達成しています。

その秘密は、ビデオ会議室を使った独自の講座運営方法にあり、オンラインであっても、非常にコミットメントが高まる仕組みになっています。

講座は、Moodleと呼ばれるプラットフォーム内に作られたフォーラムでの非同期の学び合いと、ビデオ会議室を使ったリアルタイムセッションから構成されます。

ビデオ会議室を用いたリアルタイムセッションは、講座開催中の火曜日に行われ、アクションラーニングの手法を応用し、気づきを深めていきます。

リアルタイムセッションの様子 ※写真は「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」のときのものです。

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その後、リフレクションカードを書き、Moodleへアップし、他の受講者のリフレクションを読む、ことによって更に「振り返り→気づき」を深めていきます。

Moodle内では、受講者と運営ボランティアの5-6名の混成グループをいくつか作り、グループ内でお互いにフィードバックを送り合います。他のグループにコメントしてもOKです。

Moodle内のグループは、毎週メンバーをチェンジするワールドカフェ形式で行います。

 

その他に、週に1度、オンラインの雑談部屋を開きます。まじめなリアルタイムセッションとは違って、飲み物を用意して、リラックスした気分で参加する雑談部屋では、笑い声が溢れ、本音トークが飛び交います。授業実践に取り組む中で生まれる悩みを雑談部屋でシェアすることで、意外な解決策が見つかることもあります。

雑談部屋があることで、運営チーム、参加者同士の交流が深まっているようです。

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※写真は「ファシリテーションスキル入門」のときのものです。

様々な運営上の工夫を重ね、「反転授業の研究」が主催するオンライン講座は、オンライン講座としては他に例を見ないほど脱落者が非常に少ない講座となってきています。

それは、オンラインであっても、「会っている」「参加している」という実感を感じることができるからかもしれません。

その結果、これまでの講座では、講座終了後も受講者同士の関係性が継続し、多くのコラボレーションや、オンラインの学習コミュニティが生まれています。また、また、オンライン講座の受講者として参加した方が、講師、運営、運営ボランティアになっていくという循環も生まれています。

まとめ

  • 「AL型授業実践」のスキルをチームで磨くことができる
  • コルブの経験学習サイクルを回して、振り返りと気づきを積み重ねていく学び方を学ぶことができる。
  • アクションラーニングの手法を体験することができ、質問スキルを高めることができる。
  • 『アクティブラーニング入門』をテキストに用いた「新しい学習会」を実施する方法を学べる。
  • オンラインでの新しい学び方を体験できる。
  • AL型授業実践を継続して学び合える学びの友を作ることができる。

 

講師紹介

アクティブラーニングの伝道師

kobayashi

講師:小林昭文(産業能率大学教授)

(プロフィール)1952/8/18 生(62歳)、埼玉大学理工学部物理学科卒業、空手修業を経て 35 歳から埼玉県公立高校教諭。県立和光高校→県立浦和東高校→県立岩槻高校→県立越ケ谷高校(2013/3 月定年退職)。

現在は、産業能率大学経営学部教授、河合塾教育研究開発機構研究員、日本教育大学院非常勤講師(アクティブラーニング特論担当)、河合塾コスモ名古屋講師(物理基礎担当)。

埼玉県立教育センター主催の研修会でカウンセラー養成講座初級中級上級終了。上智大学カウン
セリング研究所カウンセリング研修基礎上級終了。 日本アクションラーニング協会認定 AL シニアコーチ。

教諭時代に埼玉県教育委員会主催研修会や県内外の教育委員会・各高校主催の講師を 15 年間で約 100 回務めた。(テーマは、カウンセリング、生徒指導、キャリア教育)

定年退職後の 1 年間に全国で約 70 回の講師を務めた。(テーマは「アクティブラーニング型授業」) (山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、岐阜県、三重県、京都府、大阪府、鳥取県、広島 県、福岡県、長崎県、沖縄県) その後は年間100回のペース。

著書:
「アクティブラーニング入門」(小林昭文著/産業能率大学出版部)
「担任ができるコミュニケーション教育(単著/本の森出版)」、
「記述式心の処方せん(共著/二見書房)」など。
「アクティブラーニングが授業を変える(日本教育新聞 2014/3月~2015年2月)」を連載中。

反転授業を実践!

坂本保代

運営:松嶋渉(山口県立萩商工高等学校 情報デザイン科長)

山口県の公立高校で教員をしています。教科は商業で主に情報系(プログラミングやWebデザイン)の授業を担当しています。

AL型授業を始めて4年目になりますが、最初はアクティブラーニングという言葉を知りませんでした。アウトプットの重要性を感じて「生徒が話し合う中で授業の内容が身に着くものにしよう」と考えて始めたのがきっかけです。
その取り組みの詳細については昨年実教出版の小冊子に寄稿したものや以前にブログに書いたものがありますので、関心のある方はご覧ください。

ICTを利用した反転授業「ビジネス基礎」→ http://www.jikkyo.co.jp/download/detail/69/9992656674

ブログ「授業の在り方について。反転授業やアクティブラーニングなどの取組をどのように取り入れるべきか」
http://watarumatsu.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html

最近は、アクティブラーニングが単なる授業の形式ではなく、生徒の頭の中が「アクティブにラーニングしている」授業であるように工夫していきたいと思って います。ジグソー法やLTDなどの構造化されたフレームワークを使いつつ、現場の生徒にカスタマイズした授業を行っていくことが大切だと考えています。

今回は運営として参加いたします。受講生の皆さんの助けになれるように取り組んでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

オンラインでの学習コミュニティ創りに挑戦中!

tahara

運営:田原真人(反転授業の研究主宰、オンライン教育プロデューサー)

早稲田大学理工学研究科物理学及び応用物理学専攻博士課程中退後、物理の予備校講師に。河合塾などで10年以上教える。『微積で楽しく高校物理が分かる本』など著書10冊。2004年から物理ネット予備校(フィズヨビ)を立ち上げ、動画講義やMoodle、Web会議室を使ったオンライン教育に取り組む。オンラインでの反転授業、ワールドカフェ、ワークショップ、ダイアログなど、オンラインでの場創りに取り組んでいます。

2013年に小林昭文さんのアクティブラーニング実践に出会い衝撃を受けました。それ以来、アクティブラーニングに取り組んでいます。運営と全般的なテクニカルサポートを担当していますので、ご不明な点があれば、田原までお問い合わせください。

運営ボランティアのみなさん

「反転授業の研究」が主催するオンライン講座では、運営ボランティアがオンラインでの学び合いの文化を継承する役割を果たしてくれています。運営ボランティアが入ることで、「教える側」「教わる側」という固定化した枠組が崩れ、講座にダイナミズムが生まれています。

運営ボランティアの皆さんとの交流も、この講座の価値の1つだと思います。

江藤由布(近大附属高・教諭)

江藤由布

LEAFモデルで英語教育を変える、江藤由布です。LEAFとは、教科書に依存しない、生教材、オールイングリッシュ、アクティブラーニング、反転学習の頭文字をとったものです。そもそも、オールイングリッシュで授業をするということは、一斉講義では間が持ちませんので、自然にAL型になります。また、この授業形態をぐるぐると螺旋のように繰り返すことで、自律的に学ぶ生徒が育ち、生徒主体のAL型の新しい授業形態が生まれることもあります。今回は、ボランティアスタッフとして関わっていますが、体験的に学んで来た事を、体系立てて学べるということで、ワクワクしています。みなさんとお会いするのを楽しみにしています。Let’s learn together!

LEAFモデルで英語教育を変える

遠藤良仁(岩手県立大学・講師)

遠藤良仁

看護大学で教員をしております遠藤良仁(えんどうよしひと)と申します。看護師の基礎教育や免許取得後の継続的な教育に関わりながら、より効果的、効率的なあり方や方法に興味があります。模擬的に臨床場面を再現して学ぶシミュレーショントレーニングからインストラクショナルデザイン、そして反転授業へとたどり着きました。現代そして未来の看護職の生活や状況に合った学習支援の方法を模索しています。前回参加した動画講義ワークショップに続いて、今回もAL講座にボランティアとして参加し、画面の奥にはともに学ぶ仲間がいる安心感や励ましを感じていただけるように感想を書いたり共感したり自分なりにできることを行おうと思います。よろしくお願いします。

倉本龍(立命館守山中学校・高等学校・教諭)

倉本龍
滋賀県の立命館守山中学校・高等学校で理科を担当している倉本龍です。
アクティブラーニングは3〜4年前から、試行錯誤しながら色々な形で実施しています。
現在はiPadを用いたアクティブラーニングやアダプティブラーニングを試行中です。
運営ボランティアの立場ですが一番楽しむことでみなさんと一緒に磨き合い、スキルアップできればと考えています。
よろしくお願いします。

角田愛(ハヤ イングリッシュアカデミー代表)

角田愛

奈良県王寺の英会話スクール
ハヤ イングリッシュアカデミー代表のすみだあいです。

名刺を渡すたびに、質問を受けます。
「なんでハヤ イングリッシュアカデミーなんですか?」

このネーミングをしたのは、「ハヤシ」でもなく、「ハヤオ」でもありません。「すみだ」です。
ハヤ = 88 = 早 = 速 = 流行(る)

末広がりの8
早く上達する工夫が盛りだくさん
講師の話す英語が速い
今、一番流行りの英会話スクール

まさかっ、ダジャレの領域?!

“どこよりも早く上達できる英会話スクール”を作ろう♪
7年前、そんな想いを込めてちょっとダサいネーミングをしました。

これからも生徒さんたちがより早く上達できるために、反転授業用の動画を活用し、授業中にしかできない、人と一緒にしか共有できない時間を大切にしております。その際に必要なアクティブラーニング力をつけるために試行錯誤しながら、経験を増やしていっています。生徒さんたちをもっともっとアクティブにするために、ゲームやアクティビティを用いるなど、手段を選びません。

生徒さんは4歳から78歳までの幅広い年齢層のため、
子どもたちにも、保護者の方にも、そして大人たちにも、アクティブラーニングの良さを広めてゆきます。

ご参考:http://88-english.com/

福田美誉

福田美誉

平素、大阪梅田の教育サービス会社で、大学、社会人向けの教材や学習デザインの企画、研究開発を行っております。
特に、情報教育、キャリア教育の分野に取り組んでいます。
日々、教育や産業の未来がどうなっていくのか、その中で自分にできることは何かを考え、行動しております。

アクティブラーニングおよびそれをとりいれた授業は、今後もっと取り組んでいきたいと思う分野です。
理論以上に、現場での実践経験や改善活動が重要と感じてます。
教育に携わる者として、自ら学ぶ姿勢や意欲を持ち、周りに積極的に働きかける人材を育成し、私自身成長する、そんな講座を今後開きたいです。

前回のオンライン講座「動画作成にチャレンジ!」では講師を務めさせていただきました。
今回、運営ボランティアとして初めて参加させていただくことになりました。
学習環境の構築、リアルタイムセッションや雑談ルームのファシリテート、受講生・スタッフのみなさまとのコミュニケーション、そしてアクティブラーニングに関する実践方法など、いろんな学びが得られると期待しております。
そして、学びだけでなく、新しい出会いも楽しみです。

溝上広樹(県立高校・教諭)

溝上広樹
熊本県の高校で生物を教えています溝上広樹です。アクティブラーニング型授業に取り組み、地元で有志によるAL学習会を立ち上げています。今ではオンラインも活用して地域を越えた学び合いを行っています。

1年前に「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」に参加しました。当時の仲間とは現在でも学び合いが継続し、授業だけでなく考え方や生き方も変えるきっかけとなる貴重な経験が出来ました。

今回は運営ボランティアとして、よりよい学びの場づくりに貢献できるよう、微力ながら積極的な参加と運営協力を行っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。本講座での新しい出会いを楽しみにしています。

ブログ:『チームで学ぶ!高校生物』 http://albio.hateblo.jp/

ワークショップ形式で学ぶオンライン講座

この講座は、解説動画、Moodleでのフォーラムセッション、Gotomeetingによるリアルタイムセッションを組み合わせて、5週間(途中に1週間の休みあり)のオンライン・ワークショップ形式で行います。

【対象】

アクティブラーニング型授業の実践者

※アクティブラーニング型授業の定義については、このページの最初をご覧ください。

【受講前に準備していただきたいもの】

(1)Webカメラとマイク付の端末

リアルタイムセッションでは、各自がビデオチャットで参加しますので、Webカメラとマイクがついたパソコン、または、タブレット端末をご用意ください。

※Webカメラがなくても講座に参加可能ですが、ご用意いただいたほうが、より参加度が高まり、楽しめると思います。

(2)パソコン

インターネットに接続可能なパソコンをご用意ください。Moodleのフォーラムセッションに課題を提出していただくのに必要となります。

(3)テキスト

『アクティブラーニング入門』(小林昭文著/産業能率大学出版部)

※各自でご購入ください。

【事前学習】

『アクティブラーニング入門』(小林昭文著/産業能率大学出版部)の第1章から第3章までを読んでおく。

【講座の進め方】

8/30,31 GoToMeeting接続テスト

9/1(火) オープニングセッション&自己紹介

【第1週】アクティブラーニング型授業の始め方 (第4章01-05)  9/1-7
  • AL型授業入門講座
  • コルブの経験学習モデル
  • 安心安全の場つくりの重要性
  • 授業の目的を設定する
  • コンセンサスゲームで仲間づくり

9/8(火)第1週振り返りセッション

【第2週】アクティブラーニング型授業の実際(1) (第5章01-05) 9/8-15
  • 生徒を迎える
  • 態度目標(ルール)と内容目標の設定
  • 時間節約の方法~プリント配布の仕方
  • 最初の15分間の説明で気をつけていること

9/15(火)第2週振り返りセッション

【第3週】アクティブラーニング型授業の実際(2) 9/16-28
  • 問題演習の際の練習問題の作り方
  • 問題練習時のグループへの介入方法
  • 振り返り
  • 確認テストの構造

9/29(火)第3週振り返りセッション ※連休のため9/21(火)はリアルタイムセッションはお休みです

【第4週】アクティブラーニング型授業の実際(3) 9/30-10/6
  • グループワークについて①放任型の問題点
  • グループワークについて②干渉型の問題点
  • グループワークについて③「質問による介入」の効果
  • グループワークについて④定説はまだない?

10/6(火)第4週振り返りセッション&エンディング

この講座を受講すると

  • アクティブラーニング型授業の質を高めることができる。
  • 「振り返り→気づく」力をつけることができる。
  • 『アクティブラーニング入門』をテキストに用いた「新しい学習会」を実施する方法を学べる。
  • オンラインでの学び合いを体験することができます。
  • アクティブラーニングについて相談し合える仲間を作ることができる。

Q&A

Q GoToMeetingのリアルタイムセッションに参加できない日があるのですが大丈夫ですか?

A リアルタイムセッションは、翌日以降、録画動画が見れるようになりますので、そちらで確認していただくことができます。

Q パソコンが苦手ですが、サポートはしてくれますか?

A 運営の田原がテクニカルサポートを担当します。Moodleの使い方や、GoToMeetingの使い方については、動画マニュアルを配布しますので、それに従って操作してください。操作方法が分からないときは、いつでも相談してください。接続トラブルについても対応します。ソフトの使い方については、担当者がサポートします。

Q アクティブラーニング型授業をやったことはないのですが、申し込むことはできますか?

A この講座は、アクティブラーニングを実践している方が対象になります。アクティブラーニング型授業の定義についてはこのページの最初をご覧ください。

Qリアルタイムセッションには、iPadから参加できますか?

A GoToMeetingは、iPadから参加可能です。あらかじめアプリをダウンロードしておく必要があります。詳しくは、こちらをご覧ください。

受講者へのプレゼント

toku1 オンラインワークショップ運営の手引き


ビデオチャットとLMSを連携させて、オンラインで勉強会やワークショップをやっている田原真人が、運営のノウハウを資料にまとめてプレゼントいたしま す。様々なツールを実際に試した結果、分かったことや、リアルのワークショップとは違ったオンラインの難しさを解消するコツなど、あなたの活動を広げるの に役立つノウハウです。

お申込み

講座名:実践!アクティブラーニングスキルアップ講座 〜チームで磨く授業スキル〜

申し込み締め切り:2015年8月30日(日)

定員:30名 (定員に達し次第、締め切ります)

開講期間:9月1日~10月6日

※5週間の講座期間中にGoToMeetingによるリアルタイムセッションを5回行います。

リアルタイムセッションの日程:

9/1(火) 21:30-23:00 オープニング&自己紹介

9/8(火) 21:30-23:00 第1週振り返り

9/15(火) 21:30-23:00 第2週振り返り

※9/22(火)は、連休のためお休み

9/29(火) 21:30-23:00 第3週振り返り

10/6(火) 21:30-23:00 第4週振り返り&エンディング

この他に雑談ルームを4回開催します。

受講料:30,240円(税込)

 

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反転授業を世界へ広めるジョナサン・バーグマンさんインタビュー

「反転授業の研究」の田原真人です。

「反転授業」の生みの親であるバーグマンさんが、「反転授業の研究」に参加して下さったことから、このインタビューが実現しました。

「反転授業」は、2007年にバーグマンさんと同僚のサムズさんが、自分たちの講義を録画して授業前に録画し、授業前に視聴し、授業中に理解度チェックや個別指導、プロジェクト学習を行う形態を「反転授業(Flipped Classroom)」と呼び、彼らの実践がマスメディアで知られるようになったことから広がったものです。

そのストーリーは、彼らの著書『反転授業』に詳しく書いてあります。

草の根の活動からスタートしたボトムアップのムーブメントであることに、僕は大きな意味があるのではないかと思っています。

『反転授業』を熟読し、その中で感じた疑問点を質問するという形式で、スカイプインタビューをさせていただきました。

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生徒が喜ぶビデオの作り方

『反転授業』の第4章 反転授業の実施方法 では、反転授業を実施するための具体的な方法が詳しく書いてあります。これを読むと、何を使ってどのように始めればいいのかが分かると思います。

英語圏に比べて、日本ではYoutubeなどにアップされている講義動画の質、量とも不足しているので、反転授業を始めるためには、自分自身で動画を作る必要があるケースが多いと思いますが、5年ほどたつと状況が変わってくるかもしれません。

バーグマンさんが書いているように、僕も、まずは、最初から凝らずに、最小限の費用で、スクリーンキャストでシンプルな動画を作ることから始めるのが良いと思います。

そして、その後、余力があれば、様々な工夫をしていくのが良いと思います。

バーグマンさんは、生徒が喜ぶように別のカメラで撮影した短い動画を講義動画へ挿入するという工夫を考えました。これが、大きな付加価値を生み出しているそうです。

本の中で、「他の教員と一緒にビデオを作ってみる」という取り組みが紹介されていて、これが一人で解説するビデオでは得られないパワーがあるとのことなので、どのように作成しているのか質問してみました。

―― 会話スタイルのビデオというのは、どのように作成するのですか?

会話スタイルビデオの鍵は、一人が教師で、一人が好奇心のある生徒の役をすることです。

生徒役がいろんな質問をして、教師が回答するということにすると、もっとインタラクティブになります。

―― 台本を、予め作っているんですか?

はい。それと、ユーモアを加えるようにしています。最初にジョークを入れると、それが好きな生徒もいるし、そうでもな生徒もいるけれど、生徒の興味を引き付けることができます。

化学の授業では、楽器を弾くというジョークを入れています。どの楽器を私が弾くことができるかというということで、たいていの楽器は下手なんですけど、ハーモニカはうまく弾けるんです。生徒たちは、そのことを知らなかったんです。

生徒たちの時間を浪費するのはよくないので、2分程度にするようにしています。

―― 最初に生徒の興味をひきつけるのは大事ですよね。

はい。だから、もう一人をビデオに加えて話すと、もっといいんですよ。

まじめに話すときもあるし、ふざけて話すこともあります。

興味を引き付けるために動画を挿入するのはとても有効です。たとえば、「正確さ」について話したときには、車の速度メーターを出して、どのように速度を測定するかについて話しました。スマートフォンのカメラで速度メーターを撮影して、その映像をカムタジアスタジオに埋め込んでビデオを作りました。

僕は、講義動画を作るときに「リアルの代替ではないバーチャル」ということを考えてきたのですが、講義スタイルという点では、授業と同じスタイルの講義を作成していました。しかし、「ビデオを挿入する」ということを考えると、教室外の様々な出来事を講義動画に挿入できるようになり、可能性が無限に広がるのだということに気づきました。カムタジアスタジオは、簡単に動画の挿入ができるし、画面の一部に動画を挿入して、それを見せながら説明するということもできます。動画だからこそできることをやることで、付加価値が増していくのだということは、大きな気づきでした。

反転型完全習得授業を可能にするMoodleのクイズ機能

バーグマンさんの取り組みの大きな特徴は、反転授業と完全習得学習を組みあわせた反転型完全習得授業にあると思います。

これまで、完全習得学習の実施を阻んでいたのは、完全に習得したかどうかを確認するために、十分たくさんの問題を用意し、それを採点しなければならないため、教師の労力が大変になりすぎるということでした。

バーグマンさんとサムズさんは、Moodleのクイズ機能を用いて、そこに大量の問題をストックしておき、そのストックから問題がランダムに抽出されて習得度テストを受けられる仕組みを作りました。現代のテクノロジーが、教師の労力がかかりすぎるという問題を解決したのです。

完全習得学習では、生徒一人一人が自分のペースで学ぶため、知識を学ぶタイミングも異なってきますが、講義がビデオになっていることで、生徒は自分のペースに合わせてビデオを見て学び、課題や実験をこなし、習得度を確認するテストを受けることができるのです。

講義ビデオ、課題、Moodleの習得度テスト、共に学び合う生徒、教師は、すべて主体的に学ぶための「学習環境」であり、それらを利用しながら、生徒たちは自分で学んでいき、教師はそれを支援するのです。

反転型完全習得授業を可能にしたMoodleの使い方について、バーグマンさんに質問しました。

―― Moodleに入れている習得度テストは、1つのビデオについて1つのクイズを作っているのですか?

いいえ。1つのユニットに対して1つのクイズを作っています。1つのユニットは、だいたい7つのビデオからなり、7つの「学ぶべきもの」を扱っています。

Moodleの中に、「学ぶべきもの」ごとにフォルダを作り、その中に6-7個の問題を入れています。

たとえば、電気回路のユニット をやる場合を例に挙げましょう。その中の各フォルダには、並列回路、直列回路、電圧と抵抗などになっています。各フォルダには10個くらいの問題を入れま した。生徒がテストをやるときには、3個のフォルダからランダムに問題をピックアップして、各生徒は異なるテストを受けることができます。

このやり方のいい点は、生徒がテストに合格できなかったときに、もう一度テストを受けるわけですが、そのときに、違う問題が違う順番で出てきて受けることができます。

普 通のテストだったら、最初は簡単な問題で、後に行くほど難しくなりますが、ランダムに問題が出てくるので、ある生徒はだんだん難易度が上がっていくけれ ど、別の生徒は最初に難しい問題が出て、あとから簡単な問題が出るということもあります。でも、まあ、それでもいいかと思っています。

大事なのは、1つの章が1つのバンクじゃなくて、1つの節がバンクになっているということです。

たとえば、第3章の大きなバンクの中に7個の節のバンクがあって、各節の中に6-7個の問題があります。120個くらいの問題がバンクにストックされていますが、生徒は、毎回、その中のランダムに選ばれた12問を解くことになります。

そのようなシステムになっているから、合格しなかった生徒が再チャレンジするときには、違う問題に取り組むことになります。

―― 本の中で、ゲーム・ベースド・アセスメントというものが出てきましたが、あれは、どのようなものなのですか?

ゲーミフィケーションを導入したんです。

テストのためのトレーニングをするのではなくてゲームみたいにするんです。シューティングゲームの場合は、レベルが上がる前にトレーニングしますよね。そのようなやり方で教える先生が増えてきた。

オーストラリアの教師たちは、MyEdというゲーミフィケーションのためのプラットフォームを作りました。ただ、Moodleみたいなランダムに問題を出せる機能がないのはちょっと不便なんです。

http://myedapp.com

生徒たちは、クエストを手がかりに問題に取り組んで、クリアするとバッヂを獲得することができて、楽しく学ぶことができます。

――カーンアカデミーもバッジシステムがついていると思いますが、同じようなものを作れるということですか?

MyEdは、カーンアカデミーと同じようなゲーミフィケーションのシステムですけど、自分で簡単にカーンアカデミーのようなものを作ることができるシステムですね。

バーグマンさんの取り組みは、より合理的な学習スタイルを確立しました。教師の役割は、生徒を見て回って、生徒がうまく学べるように支援することです。教 師と生徒のコミュニケーションは、かつてよりも個別的になり、必要なときに必要なコミュニケーションを取れるようになったのだそうです。

MyEdにログインしてみると、課題をクリアするとレベルが上がったり、バッジがもらえたりという感じで、ゲームのように楽しく学べるプラットフォームになっていました。反転型完全習得授業が広まれば、このようなプラットフォームがたくさん出てくるかもしれません。

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Universal Design of Learningについて

『反転授業』の中で、僕の注意を引いたのは、Universal Design of Learning(UDL)という考え方でした。生徒には個性があり、理解の仕方も、理解したことを示す方法も、それぞれにとって適したやり方があります。そこで、生徒に自由を与えて、自分で選択させるということが重要なのだというのです。

この本に刺激を受けて、僕が、現在やっているフィズヨビ夏期講習でも、可能な限り学び方の自由を与えることにしたところ、参加者から予想もしなかった提案が出てきました。それを、ファシリテーターの教師が喜んで認めたことで、次々と提案が生まれ、生徒の主体的な学びが大きく促進していくという経験をしています。

バーグマンさんたちは、UDLを取り入れたことで、どのようなことが起こったのか、質問してみました。

―― UDLを導入して、いかがでしたか?

私はもっと狭く考えていたんですけど、パートナーのサムズはもっと柔軟に考えていました。

自分の理解度を示すための様々な方法が出てきて、ビデオゲームを使って自分が理解していることを示したという生徒もいました。

難しい点は、本当に分かったかどうかを確かめるのが難しいんです。どのようにして示してもよいといってやっています。10%くらいはプレゼンのやり方を変える必要が出ましたが、他は問題なしで、すごくよくやった生徒もいました。

私をポジティブに驚かせた生徒もいたし、ネガティブに驚かせた生徒もいました。

一人の女子生徒は、読んだことをパワーポイントにコピペして、プレゼンしたので、私が「何を分かったの?」と質問したら、説明できませんでした。それで、私は、〔分かっていないんじゃない?」と聞いたら、彼女は、「これは、やりすぎで、私は、テストだけ取れれば十分です。」と言ったのです。

このような経験から、私は、UDLの導入は、生徒が学び方を学んだ後にしたほうがよいと考えています。

でも、生徒が自分がマスターしたことを示す方法についてオプションを与えて、生徒に選ばせることは大切だと思いますし、たいていはうまくいきます。

 

主体的に学ぶマインドセットを育むためにどうしたらいいか

反転授業やアクティブラーニングを実施する際、重要になってくるのは、主体的に学ぶマインドセットをどのように育むかということではないでしょうか。日本における実践者も、その部分で苦労している人が多いと思います。

バーグマンさんたちは、マインドセットについてどのように取り組んでいるのか聞いてみました。

―― 日本では、先生の言うことを忠実に聞くように叩き込まれる教育によって受身で学ぶマインドセットの生徒が育ってくる傾向があります。そのような生徒にアクティブに学ばせるためにはマインドセットを変えるために苦労する場合が多いです。あなたの本にも同じようなことが書いてありました。あなたは、どのようにしてマインドセットを変えているのですか?

最初に反転授業をやったときは苦労しましたね。生徒たちは、なぜ今までと違うやり方をしているのかが分かりませんでした。今までずっと机に座って、スマートボードで授業を受けてというスタイルでやってきたので、どうしてこんなに違うやり方でやるのかって思ったんですね。

物理の授業をやるときに、生徒がこのようなやり方を好きじゃなかったら大変ですよね。でも、授業中に生徒があなたにたくさん質問できるというメリットがあります。

また、物理の演習時間をもっと時間をとるというメリットもあります。そうすると、宿題にかかる時間も短くなります。

このやり方だと、生徒が気づいていないいろんな部分が改善しています。私は、今朝、UKの先生とスカイプで話していたんですが、その先生たちは、生徒の態度と成績が驚くほど伸びたと言っていました。

教師の中には、やったことがないので、授業時間をアクティブにしたり、生徒たちを夢中にさせたりすることは難しいと言う人もいます。

最初の年は、生徒たちも同じように、やったことがないから難しいと言っていました。

でも、次の年には、生徒たちにこのやり方は受け入れられて、3年目には、反転授業で学び続けていこうという雰囲気ができました。

文化の違いがあるから、同じやり方でうまくいくかどうかわかりませんが、あなた方は、日本の文化に合うようなやり方を見つけていくのではないかと思います。

アジアでは、いろいろなところで反転授業が受け入れられています。私は2-3週間の間に、台湾、韓国、中国に行く予定になっています。パートナーのアーロン・サムズが昨年は東京に行きました。そして、東京の学校を見てきました。そういえば、私の父はアメリカの空軍に入っていたので、子どものころに京都と沖縄に住んでいたんですよ。

日本には、「学び合い」や、小林昭文さんたちがやってきたアクティブラーニング、下町壽男さんたちがやってきた参加型学習など、目の前の生徒を良くしようということで現場から生まれた多くの実践があります。それらと、講義動画や、完全習得学習を可能にするシステムなどのテクノロジーが組み合わされば、自分たちの環境にあった日本型の反転授業も生まれてくると思いますし、すでに生まれてきていると思います。

 

反転授業は、どのようにすると普及していくのか?

――あなたの話にもでてきましたが、反転授業をやったことがない人は、反転授業は難しいのではないかと考えがちだと思います。でも、実際にやってみるとそうでもないというのも事実です。反転授業が広まるためには、どうしたらよいと思いますか?

新しいやり方がよいやり方だと納得させるために、テストのスコアを上げたり、態度を改善した入りすることが効果があると思います。

親は、子どもたちによい点数を取らせたいから、もし新しい方法で、そのような結果を出すことができるのであれば、それを導入したいと思うはずです。

もし、親のニーズと教師のやりたい方法とが合わさるとパワーになるということを、UKの教師とも話していました。

朝、スカイプで話していたUKの教師のところでは、反転授業の本を読んで導入したいと思っていた教師に対して学校の理事長や親などからのサポートが得られて、パワーになったと言っていました。

その後、UK政府から許可を得て、UK全体の中の14個の学校で導入できることになりました。今、学習データとリサーチをしているのですが、よい結果を得ています。

それは、UKでの方法ですが、日本でも同じようなやり方でやる必要があるのではないでしょうか?

反転授業を広めていくということを考えたとき、「父母の理解を得る」ということが、同じように重要なポイントになりそうです。目に見える結果を出してエビデンスを出して、父母や理事、投資家などを納得させていくということに戦略的に取り組んでいくということも、今後、必要になってくると思いました。

 

反転授業での教師の役割

バーグマンさんたちの反転型完全習得授業では、教師は、動画、Moodleの習得度テストなどと並び、生徒が主体的に学ぶための学習環境の1つになります。生徒の様子を見回りながら、生徒がより深く学べるように形成的評価をしていくのです。生徒は、動画を見て、「意味のある質問」を教師にすることを求められます。それが、とても興味深いと感じたので、質問しました。

――バーグマンさんが反転型完全習得授業をやっていたクラスの生徒数は何名ですか?

33-4名です。

―― すべての生徒があなたに順番に質問するんですか?

全員が同じことをやっているのではなく、ビデオを見ている生徒がいたり、実験をやっている生徒がいたり、課題をやっている生徒がいたり、Moodleでテストを受けている生徒がいたりします。

教師はクリップボードを持っていて、生徒の様子を見回って、各生徒に声をかけます。生徒は教師に意味のある質問をします。アロンは、クリップボードに生徒の質問を書いています。多くの生徒が同じ質問をするときは、集めて説明したりしています。

生徒がした質問は、後でコンピューターに入力しておきます。

バーグマンさんは、画面を共有して授業風景を映した動画を見せてくれました。そこでは、PCが置いてあるコーナーや、化学実験をやっている机、レポートを書いている机などがあり、生徒は別々のことをやっていました。PCで動画を見ている生徒もいれば、Moodleで習得度テストをやっている生徒もいました。下のキャプチャ画像では、手前の生徒は化学実験をやっていて、奥のスペースでは、動画を見たり、Moodleで習得度テストをやったりしています。

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―― 何をやるかは、生徒が選べるんですか?

普通は生徒たちが選べるんですが、教師が指示をするときもあります。

―― 教師に説明するということは、生徒の学ぶ態度を改善すると思うのですが、いかがですか?

生徒たちが質問するのは、私がやってきたことの中で一番よいことかもしれない。生徒たち全員に少なくとも1つの質問をするようにと言っています。

生徒たちは、深い質問をしないときもあります。単に私が説明したことを繰り返すことに慣れていましたから。でも、やっていくうちに、意味のある質問ができるようになってきた。なぜなら、私は、どうやって考えるのかを教えていたからです。

―― 教師が生徒に確認のために質問するというのは普通ですけど、生徒が教師に必ず質問するというのはもっとアクティブなスタイルですよね。

私とアロンは、クリップボードを持って回っていて、課題を終えた生徒に、「あなたは、何を理解したのかを説明してください」ということがあります。生徒の中には答えられない人もいて、その場合は、もう一度ビデオを見るように指示したりしています。

たとえば、重力について教えているとします。生徒に質問すると、物がポトッと落ちるのが重力だと回答したりします。でも、実際には2つの物体が引き合うのが重力ですので間違いですよね。生徒が私に質問するときもあるし、私が生徒に質問するときもあります。

たとえば、「重力とは何か」というような本質的な質問を生徒に質問していたりしています。

私は、サイエンスの教師なので、生徒にとって、概念を理解するのが難しいことを知っていますからね。

―― もし、生徒が「ビデオを見て、自分は完全に理解したから質問がない」と言ったときはどうするんですか?

たとえば、「何を理解したのか説明してください」とか言ったりする。そういうことを言う生徒がよくいるので、それに対して言うことが100くらいあります。

ビデオに出てきたことについて、もっと詳しい質問をします。たとえば物理だったら、たくさんの質問があります。

「サッカーボールは、どうやってカーブする?」

サイエンスは、ビデオの中の知識をどうやったらもっと拡張できるのかということを教師がいくらでも考えることができますから。

天文学も同じで、生徒に聞く質問をいくらでも考えることができます。

次の日、生徒に質問しようと思ったことの答を自分が知らないこともあります。そういうときは、インターネットで調べたりしています。

インターネットに接続しているスマートボードを使って、その場でインターネットで調べることもあります。生徒は、それを見て、どのように調べればいいのかを学ぶことができます。

生徒たちがiPadで調べていて、うまくいかないときは、私が行って、生徒のiPadで調べてみせることもあります。そこで、調べ方を教えるんですね。

バーグマンさんとの話をきっかけに、「意味がある質問をする」ということが、どういう効果を生み出すかということを考えているときに、「すべての探究学習は、よい問いから始まる」という言葉と出会いました。最初は、生徒の疑問点に教師が回答して回っているということなのかと思ったのですが、疑問点を解決するよりももっと大事なことは、疑問を手掛かりに探求していくことを学ぶことであり、教師の役割は質問に回答することよりも、探究をガイドすることなのではないかと思います。バーグマンさんの授業では、教師がまさにそのような役割を果たしているのです。

反転授業は、教師のやる気を引き出す

――生徒との有意義な交流は、教師のやる気を引き出す効果を持ちます。僕は、予備校の大教室で講義をしていたころ、5-6年もすると自分の講義スタイルが固まってしまい、それを反復するのが苦痛になってきました。しかし、アクティブラーニングスタイルにすると、毎回、目の前で新しいことが起こり、様々な気づきが生まれます。授業改善に限界がなく、教える喜びが増してきました。バーグマンさんの場合はいかがですか?

そういう話をいろんな先生から聞きました。先生の中には、教師を辞めようと思っていたけど、反転授業をできるのなら、辞めずに続けようという人もいます。

先週、32年教えていて引退しようと思っていたけど、反転授業のことを知ってもっと続けようと思ったという先生に会いました。

反転授業が、生徒のためだけでなく、教師のためにもなるということが、重要なポイントだと思います。教師と生徒の人間的な交流は、教師の喜びです。その時間を多くとることができるというのは、教師と生徒の両方にとってよいことなのです。

 

Flipped Learning Networkについて

――Flipped Learnng Network(FLN)について教えてください。

FLNはNPOで、私は、多くの人が反転授業をするのを手助けしようということでやっています。25万人の教師のグローバルネットワークです。いろんな国で会議をやろうとしています。10月にはオーストラリアで会議をします。3月にはUKで会議します。そんな風にいろんなところで会議をします。

もしかしたら、韓国や台湾でやれないかと検討中です。スペインでも会議をしようとしています。日本でも会議をする人を見つけなければいけません。日本で会議をするときは、あなたのように関心のある人たちを集めなければなりません。トレーニングのプログラムをすることもできるかもしれないし、トレーニングを受けた人が教える側に回ってトレーニングをすることもできるでしょう。そうやって、どんどん輪を広げていけたらと思っています。

――いつFLNがはじまったんですか?

3年前です。

――わずか3年で25万人に増えたんですね。FLNは、あなたの考えや生活を変えましたか?

はい。人生の一部を変えました。私は今は、教室で教えていません。反転授業はよいものだと思うので、もう一度、教室で教えたいという気持ちがありますけど、今は、いろんな国に行って話をしています。

各国にいるすばらしい教師たちに影響を与えたり、反転授業のことを学んだ教師たちは、以前は120名くらいでしたが、その教師たちがやり方を、さらに伝え、今は、たくさんの教師たちが反転授業をやっています。

それは、私の人生を変えました。

―― 私は、Facebookグループを運営しているので、どうやって25万人のオンライングループが出来上がったのかにとても興味があります。3年前は、あなたは普通の教師で、オンライングループを運営するノウハウを持っていなかったと思います。どうやってここまで成長させたのですか?

1つは、もっと人を誘っていくと、もっと価値が増えていくということです。あなた一人だけがリーダーではなくて、サブリーダーがいて、他の人の質問に回答していくとよいと思います。Facebookがよいインフラかどうかは分かりません。その理由は、サブグループに分けられないからです。数学の教師のグループや、サイエンス教師のグループも同じかもしれません。

そのシステムは何かは分かりません。今、25万人で使っているシステムは、そんなに使いやすくないので。

オンライングループはスタートして3年立ちましたが、いまだに、何を使ったらいいのかを探しているところです。

今使っているシステムは、教師にとってインタラクティブではないんです。

―― オンライングループをどのようにして持続可能にしているのですか?

私たちのグループでやったのは、3-4人の司会者を置いたことです。司会者の役割は会話を続けることです。たとえば、数学に詳しい司会者は、数学のオンラインの部屋で会話を仕切っています。サイエンス部屋、小学校部屋なども同様です。

だから、もし、サブグループがあれば、会話がもっと簡単に続けられると思います。

運営者は、司会者へお金を払うようにしていて、労力に報いています。

―― 運営に必要な費用は、どこから得ているのですか?

スポンサーからお金を得ているので、司会者にお金を払ったり、システムへ投資したりすることができています。また、会議の参加費もお金を生み出しています。

プラットフォームをどうするかという問題は、バーグマンさんもまだ答が見えていないということで、今後、試行錯誤を共有していきたいと思いました。「反転授業の研究」では、メンバー数が1000名を超えたあたりで、分科会が作れるプラットフォームがあったほうが良いのかと思い、「反転授業の森」を作りましたが、うまく機能していません。一方で、FLNとの違いは、教師以外の属性の人がグループ内に数多くいて、様々な視点を持ち込んでくれるという点です。早い段階から「集合知」というものがキーワードになっていたので、「多様な人たちが対話すること」を重視していて、分科会という考えがフィットしないのではないかという思いもあります。

リーダーとサブリーダーが、様々な質問に回答していくというシステムも、情報の一方向的な流れを生み出しそうな気がしていて、それよりは、現在の「後押しシステム」のように、支援型リーダーが次々と生まれてくるような仕掛けを考えていくほうが、「反転授業の研究」のコンセプトには合うような気がします。

FLNはスタートして3年、「反転授業の研究」は2年です。まだまだ試行錯誤の時期だと思います。

 

この仕事は、神様がくれた使命

シカゴの周辺部で化学の教師をやっていたバーグマンさんは、今や、世界を飛び回って反転授業の普及に努めています。今、バーグマンさんは、いったい何をめざしているのでしょうか。うかがってみました。

―― バーグマンさんのゴールは何ですか?

私たちは、スーパーヒーローではなく、世界を変えようと思っていたわけではありませんでした。でも、それが起こりました。

私は、ゴールがあるかって分かりません。ただ、一つだけシンプルなゴールがあります。子どもたちは、このやり方で本当に学ぶことができるということです。それと、このやり方は、先生と子どもたちの関係をよくします。もし、ゴールがあるとすれば、人々の関係をよくしたいということです。生徒と先生、生徒同士、先生同士。他にゴールはないと思います。

これをはじめたときには、こんなに広がるとは思いませんでした。これは、私たちの使命だと思います。これは、神様がくれた仕事だと思います。

ただ、先生たちを手伝いたいと思っています。このことに、とても興奮しています。

大きいゴールということじゃないです。

―― 僕は、動画を使って学び合いの授業をしていて、受講生が自分だけのために学ぶんじゃなくて、一緒に学ぶ人の役にも立とうとして行動し始めると、一人じゃ学べないこともチームで学べるようになるということを経験しました。そして、それが受講生の自己肯定感を上げることに繋がるのだということに実感して、これが広がっていけば、人と人とのつながり方が変わって、世界が変わっていくのではないかというイメージが湧きました。

これは、未来を変えられると思います。

そのことに興奮しています。

私は、楽観主義者だから、このやり方がうまくいくと信じています。

僕は、教育業界の主流とは遠く離れた地方の予備校講師をやっていて、それが、「反転授業」に関わるようになり、周りから助けてもらっていつの間にかいろんな活動をするようになりました。バーグマンさんとはグループの規模は違いますが、自分の力ではなく、時代の大きな流れに押し出されてきたというような感覚があり、使命感も感じています。だから、バーグマンさんの「神様がくれた仕事」という言葉は、とてもよく分かるような気がしました。

教室で生徒が十分に学べていないという課題は、テクノロジーの発展により、気がついたら、その課題の解決方法が、身近なところに存在していて、発見される のを待っていたのです。その課題に切迫感を感じていたのは、「中央」の恵まれた環境の学校ではなく、「周辺」の学校であり、だからこそ、「周辺」にいた バーグマンさんたちによって「発見」されたのではないかと思います。

バーグマンさんが化学を教えていた学校は、資金が潤沢ではなく、設備もあまりよくない学校でした。その中でバーグマンさんたちは、身近にあって使えるものを使い、自分たちで工夫を凝らして反転型完全習得授業を実現しました。だからこそ、それが、多くの学校が共通して抱える問題を解決するモデルとなりました。

教室の主役が教師から生徒へと「反転」するパラダイムシフトの動きは、目の前の生徒の学びを改善しようとして工夫を凝らしている教室からこそ生まれるような気がしています。そして、ごく普通の教師たちが、それぞれの教室で、目の前の生徒たちのために行った試行錯誤がシェアされていった結果、多くの教師たちにとっての解決策となるような方法が見つかるのではないかと思います。

バーグマンさんの物語は、ボトムアップの動きを生み出そうとしている僕たちに、力を与えてくれるものでした。

 

 

岩手県立大野高等学校校長 下町壽男さんインタビュー

「反転授業の研究」の田原真人です。

2015年2月19日に、「反転授業の研究」で、金沢大学の杉森公一さんが、「あなたと夜と数学と」というブログの中のあるブログ記事をグループにシェアしてくれました。

参加型授業の一つの理論武装

僕は、この記事を読んで心が震えました。

なぜ、参加型授業が大切なのかということを、小細工なしで真正面から論じて、そのまま寄り切ってしまうような力強い文章でした。

ブログの文面から、書いてある内容は、長い時間をかけて熟成されてきたものだということが容易に想像できました。

自分が記事を読んで感動したことを伝えたいと思い、連絡先を探しました。プロフィールから、「しもまっち」というペンネームと、盛岡三高に勤務する数学教師だということは読み取れたものの、連絡先を見つけることができませんでした。

「いつか、お話をうかがいたい」

と思って、ブログをブックマークに入れました。

「いつか」は、予想以上に早く訪れました。ブログ記事を読んだ翌週、「しもまっち」こと下町壽男さんが、「反転授業の研究」に加わってくださったのです。

きっと、時代が下町さんと引き合わせてくれたのですね。

下町さんは、当時は、盛岡三高の副校長として参加型授業の発展に取り組んでおられ、現在は、大野高校の校長として、新たなチャレンジをされています。

待ち望んでいたインタビューが、ようやく実現しました。

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盛岡三高の参加型授業

―― 下町さんは、盛岡三高には長くいらっしゃったんですか?

副校長としては2年間。その前に7年間いました。私は、盛岡三高出身なので、生徒のときを合わせればもっとですね。

―― 盛岡三高で参加型授業をすることになったきっかけはどのようなことだったのですか?

15年前に盛岡三高に赴任したときは、過剰に、一方的に追い込むような授業が多かったんです。超難関大と国立大に200人以上入れなさいというノルマがあって、なおかつ、インターハイにも行って文武両道をやりなさいということで生徒を駆り立てていました。進学実績やインターハイ出場などの成果は上がっていたんですが、その一方で、生徒はどんどん疲弊していったということがありました。

私は、そのときには、ちょっと異質なタイプでしたね。そういうしごくような授業というのはやらないで、グループ作るとか、アウトドアで何かをやるとか、大学に行って生徒に発表させるとかといった授業を積極的にやっていました。当時の盛岡三高の教員で、そのような授業をやっているのは少数でした。

それから、再び盛岡三高に戻ってきたら、学校が変わっていたんです。平成18年に未履修問題というのがあって、地歴科目で受験に特化した裏カリキュラムをやっているということで問題になったんです。それをきっかけに、平成19年から生徒に時間を返そうという運動が起きたんです。この運動がうまく進んでいったところに、私が入ったんです。

これは、私がやろうとしていたことが実現されていると思いました。

当時は、参加型授業って呼んでいたんです。アクティブラーニングという言葉じゃなかったんです。アクティブラーニングだということでやろうとしていたんじゃなくて、自分たちの学校の生徒をなんとかしようというというところから出発していたんです。気がついたら、時代が要請しているアクティブラーニングというものと同じようなものだったということなんです。

―― 最初に赴任したときに、周りの先生が生徒を追い込むような授業をしている中で、下町さんは、孤軍奮闘していたのではないかと思いますが、当時は、どのようなことを考えていらっしゃったのですか?

何だかんだいって、生徒が私についてきてくれていたんです。

PISAショックが話題になったころ、数学リテラシーでいうと、点数は高いけれど、数学を解くのは楽しくないという結果が出ていたんです。そのときに、生徒の有志が「このやり方では私たちはついていけません」という声を上げたんです。そういう生徒たちを組織してビデオを作ったりしたんです。これが、なかなか面白いビデオなんですよ。私がスパルタ教員の役で登場し、生徒は「もう我慢できません」みたいなことを言うんですよ。私が監修して作ったその作品は、県のコンクールで入賞したんですよ。

こういったささやかな抵抗をしていましたね。

周りの先生方からは、「先生、好きだねー」みたいな反応でした。

ただ、平均点競争みたいなものがあるんですよ。前の学年に負けないとか、盛岡一高に偏差値で負けないとか、隣のクラスに平均点で負けないとか、そういうのがあるので、「下町は、遊びばっかりやってて、結果を出していないじゃないか」と言われたくないので、そこは、何とかがんばるわけですね。

そこはがんばるわけですが、自分のやりたいことを授業の中に取り入れて、ずっとやっていました。

下町さんの言動は、反骨精神が溢れていてすばらしいといつも感じているのですが、それは、いち数学教師として教壇に立っていたころからずっと続いていたことなのですね。孤軍奮闘していた下町さんの考えに、ようやく時代が追いついてきたのではないかと思います。

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数学の純粋な面白さは、できる子もできない子も楽しめる

――下町さんのブログを拝見すると、数学に対する愛情があふれているなっていつも思うんです。これだけ書けば十分というレベルをはるかに超えて、ものすごく「過剰」な感じがあるんです。その「過剰」な部分が、数学に対する愛情の部分なんじゃないかなと感じているんです。数学との関わりは、どのような感じなんですか?

私はどっちかというとアート寄りなんですよね。理科とかはあまり得意じゃなくて、数学とか音楽とかそういう方面が好きなんです。

数学の教員になったときは、数学が零点の子どもたちがいっぱいいるような学校だったんですよ。

因数分解の授業をやったときに、

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と書いてあるんですね。そういう子どもたちに数学を教えるのってどうやればいいんだろうかって悩んだんですけど、教科書をそのまま教えるというアプローチを止めて、物を作ったりとか、外に出たりとか、生徒に研究させるとかすると、数学零点の子でも大学レベルの数学まで行ってしまうことがあるんですよ。なかなか面白いんです。そういうことを初任のころに経験して、それが、自分の教え方になったのかなという気がします。

数学できない子でも、めっちゃできる子でも、同じなんですよ。

―― それは、下町さんから、何かがその子たちに伝わって、その子たちの何かが変わるんですよね。それは、何が伝わっているのですか?

そうですねー。数学の持つ面白さを共有したいと言う気持ちなんですよね。

数学の持つ面白さみたいなものをあちこちから探していけば、基礎から積み上げていったものばかりじゃなくて、ぽーんと音楽の話とか、宇宙の話とか、そういうのを持ってきて、興味のあるような話をすれば、数学の問題を解く技術がなくても楽しむことはできるんです。

たとえば、私が前にいた学校では、家が大工さんの生徒が多かったんです。じゃあ物を作ろうということで、木を切り出して、数列の話につなげたんですね。私の授業は生徒から実技数学って呼ばれていたこともあって、数学的な何かができたかどうかは分かりませんが、とりあえず、何か面白いものをやってくれるのかなという期待は、生徒の中にあったのかなと思います。

生徒が喜んでくれるような授業をやらないとこっちもつまらないので、そういう面白そうなネタをどんどん探して、そうやって30年もやっているうちにネタもどんどん増えていきました。

―― ブログの記事を拝見していると、いつも身近なものから出発して、下町さんに導かれるままに、気がついたらずいぶん遠くまで来てしまったという感じがするんですよ。旅に連れて行ってくれる感じと言ったらいいんでしょうか。日常的なところから頭を使って考えていくと、遠くまで行くことができるんだ。こういう思考運動って面白いんだ。自分自身で考えることができれば、面白いことは、身近なところに溢れているんだということを体験させてくれるんです。

いろんな人の実践を取り入れて、参考にしたりしています。そういう人に自分もなりたいなと思ってやっています。

―― あの楽しみ方は、問題を解けるという楽しみとは違いますよね。数学とか科学やっている人は、下町さんがやっている「あの楽しみ方」をどこかでマスターし ているような気がします。「反転授業の研究」にいる横川淳さんは、『気楽に物理』という本を出版されているんですけど、下町さんと同じように、身近なところから、高校で学ぶような物理を駆使して、やっぱり遠くまで連れて行ってくれるんですよ。でも、そういう心って、問題を解いて点数を取ろうとしているだけの人には育っていないですよ。下町 さんに数学を教わった生徒さんは、そういう楽しみにたくさん触れて、下町さんをロールモデルとして、自分で考えて楽しんでいくことを学んだんじゃないかと 思うんですけど、いかがでしょうか。

私は、盛岡三高に転勤したとき、前の学校が、いわゆる底辺高と呼ばれる学校だったので、私の遊び心のような授業は受け入れられないかなと思ったんですね。 そんなことよりも、早く教科書を進めろよみたいな反応が来るかと思ったんです。でも、全然そうじゃなかったんです。

教え込んで偏差値上げろというやり方でずっと進むと、生徒の数学の喜びが、数学そのものじゃなくて、人に勝つことになるんです。点数が良かったとかって。

数学の問題を解きながら、これってこういう面白いことがあるよということを言うと、実は生徒は、もっと話してくれって言うんですね。たとえば2年生の理系の数学で、微分をやった後に、マクロー リン展開をやったんですよ。そういうのを一生懸命やると、他のクラスの先生方は、そんなことをやったって点数にならないって言うんですけど、生徒は一生懸命、面白がってやるんですね。それはもちろんテストには出しませんけども、レポートを書いてきて、グループを作っていろんな研究をして、分からない子は、 その子なりにエッセーを書いてくるんですね。マクローリン展開できないもんですから、それでごまかすんですけど、それが、また良くてね。

そういう教科書とか偏差値とかを離れた数学の純粋な面白さって、進学校の生徒であろうが、普通のそうでない生徒であろうが、たぶん同じじゃないかなと思っています。

実際にそういうことをやってきた生徒たちは、理系に進んだり、超難関大とかを受けたりする子が結果的に多いですね。そうじゃなくて、叩いて叩いてという方法だと先生のレベルまでしか生徒が行かないんですよ。

―― 自分が高校生だったころの感覚を思い出すと、教員側になってから「生徒はこう考えているんじゃないか」というイメージとギャップがあるんです よ。高校生だったころは、結構、純粋で、点数を取るというよりも、感動で震えたいとか、そういう気持ちが実は強かったんです。点数取るためだけに勉強しな くてはならないなら、点数取れなくてもいいみたいな、変な方向へ行っていたんです。

生徒に聞いても、僕と同じような感覚を持っている人がいる。本当にちゃんと学べれば、変な矛盾が消えて心が育つという気がするんです。盛岡三高の参加型の授業というのは、生徒の純粋な部分とつながっているという感じがしました。

あ と、先生が、授業を工夫しようとしているという姿が生徒に伝わるという部分もあるのかなと思いました。数学の話で言うと、私が面白い数学の話をするから、 それに対して生徒が反応しているという部分もあるかもしれませんが、実はそうじゃなくて、自分がこんなに数学にLOVEでって、自分がLOVEである対象 である数学も生徒もLOVEしよう!みたいなものってあるじゃないですか。こんなに先生がLOVEになっている数学って、きっとおもしろいんだろうなっ て。

生徒は、面白がりたいとか、感動に震えたいとか、そういう部分をもともと持っているはずなんですよね。その ニーズを掘り起こしていない先生が多いのかなと思います。多くの先生は、生徒のニーズに応えるために大学の過去問を一生懸命にやるんだと言うんですけど、 ドラッカーが言っていますよね。スマホやタブレットはニーズがあってできたんじゃなくて、できたことによってニーズが生まれたんだと。だから、生徒はもと もと心の中に持っていて、それを掘り起こすような授業をやってこなかったということなんじゃないかなと思うんです。工夫した授業をやろうとか、生徒がもっ と活動する授業をしようとかやろうとすること自体に生徒が共感を覚えて、がんばろうということになるんじゃないかと思います。

生徒は素直なんですよ。先生の言うことを一生懸命聞くんですよ。

僕が運営しているフィズヨビで、今年の7月からオンラインの学び合いを始めました。はじめのころは、受講生は「問題が解けるようになる」ということを目指していたんですが、素朴な疑問をお互いに投げかけあって協力して考えているうちに、みんなで考えること自体が楽しくなっていきました。そして、「問題を解ける人」ではなく、「疑問を発する人」が学び合いをリードするようになりました。その結果、答を導くことよりも、疑問を手掛かりに、みんなで深く理解することのほうが大事だという価値観が自然と生まれてきました。僕も物理の面白い話に繋がるように疑問を投げかけていきました。学び合いは深まっていき、ついに僕の手を離れて自分たちで自主的に学び合いを始め、3時間も、4時間もビデオチャットで夜な夜な自分たちで議論し始めるようになりました。

それは、「勉強」から「学問」に変わった瞬間でした。

そのときに、受講生も僕も、成績を上げることではなく、いまやっているこのこと自体に大きな価値があるということに気づきました。そして、疑問からはじまる探究は、テストの成績とは全く関係なく楽しめるのだということも実感しました。

それぞれが個性を生かしてリーダーシップを発揮して学び合いに貢献していくと、チームメイトの思考を利用しながら自分がぐんぐん学んでいけるということを体験しました。そうすると、参加者たちは、自己肯定感が高まり、どんどん元気になっていくんですね。

この体験を通して、大げさな言い方ですが、こうやって生きていけば、みんなが幸せになれるのだと腹落ちしたような感覚がありました。

このような経験は、教師と生徒の人生を根底から変えてしまうような強力なものだと思います。下町さんに導かれた生徒さんたちも、きっと「参加型授業」を体験して、人生を変えるような衝撃を感じたのではないかと思いました。

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総合的な学習から始めたのがうまくいった

―― 盛岡三高の参加型の取り組みをビデオで拝見したんですが、生徒がすごく頭を使って取り組んでいる様子が伝わってきて驚いたんです。あそこまで来るには段階があったと思うんですが、どのようなステップを踏んだのですか?

盛岡三高の改革の特徴は、授業改革なんですけど、総合的な学習の時間からいじったんですよ。

そのときの校長が、「ディベートをとにかく入れてくれ」ということだったんです。

授業を改善するとなると、ややもすると形だけになるんです。「全員がグループ学習を入れること」とか、「必ず学習課題を黒板に書きなさい」とかね。

先生方のマインドが育っていないのに、形式だけ変えるというのは、結局、一方通行型の授業と同じなんですよね。

なので、総合学習を変えるという視点は、すばらしかったと思いますね。生徒も教師もそういう授業を作るための土壌をならすために、総合的な学習の時間を変えるということをしました。

それで、1年間、調べ学習をし、グループを作ってディベートをするということをしっかりやったんです。そういうことをやってきたのが、普通の授業にも効いてくるというのがあるのかなというふうに思います。

―― それは、興味深いですね。総合学習の経験をきっかけにアクティブラーニングの可能性に気づいたという話を、いろんな方から聞いたことがあります。小林昭文さんも、総合学習のときのグループワークを入れてみたらすごく盛り上がって、こんなに盛り上がるのだったら物理の授業にも導入できないかということで、アクティブラーニングを始めたとおっしゃっていたんですよ。近大附属の江藤由布さんも学園祭の活動などでアクティブラーニング形式をやっていて、それで手応えをつかんで英語の授業に導入したというふうにおっしゃっていました。今は、1年生のマインドセットを耕すためにオーガニックラーニングというのを提唱して、地域創生プロジェクトに関わっているようです。

盛岡三高は、SSHの指定校で、SSHのクラスというのがあるんです。このクラスは、とにかくグループ作って、話し合いやって、課題研究をやるんですね。そうすると、もともと学力が高い生徒が集まっているわけではないですし、模試で表されるような成績が高いというわけじゃないんですけど、恐ろしく育つんですよ。

おまけに、体育大会の優勝までかっさらっていくんです。チームワークのよさがいろんなところで発揮されるんですよ。

だったらSSHのテイストを、他の授業にも導入したらいいんじゃないかということになりました。

校長を中心に組織的にやったというのはあるんです。良い先生の授業を共有しようということで、私が先生の授業を見てビデオを撮って、それを元に「盛岡三高の参加型授業はこうあるべき」みたいな定義をしようとしたんです。定義をして、リーフレットを作って、先生方に「こんな授業が参加型です」と示したんです。

先生方も疑問があって、「参加型って何だ?」「グループ作ればいいのか?」という声があったり、「成績伸びればどっちだっていいじゃないか」という意見もあったり、いろんな意見があったんですよ。だから、まず、きちんと定義しよう。その上で、全員が必ず公開授業をすることにしました。授業案までは作らずに、もっと緩やかな「授業公開シート」というのを作るんです。必ず一人1回以上公開授業をして、その他に、いろんな先生方が訪問に来たときには、スペシャルな授業を企画してやろうということにしていました。

そんなふうに1年間やることを決めて、少ししばりをつけて、いい授業があったら、片っ端から動画を撮って通信で流して共有していました。5分くらいのダイジェストにすると、だいたいどの授業もいい授業になっちゃう(笑)。

それをきっかけに、紹介された先生の授業を見に行く先生が出て来たりしました。先生方のほうから、「私はこんなことを考えています。ビデオを撮ってください」という依頼が来たりもしました。そういう相乗効果が起こりました。

――「反転授業の研究」で、いろんな人にインタビューをしているんです。もともとは、オンライン勉強会の登壇者紹介として記事を書くために、接続テストを兼ねてお話をうかがって、紹介記事を書いていたんです。そしたら、インタビューされたことがよい振り返りになったといって、それをきっかけにして行動がアクティブになってくる方が出てきたんです。インタビュー記事を読んだことをきっかけにしてその人に他の人がつながってコラボレーションが起こるということも出てきました。やる前は分からなかったんですけど、やってみると、いろんな副産物が出てきたんです。ビデオで撮って紹介することでも、いろんな副産物が出てきたのではないでしょうか?

私が編集すると、その先生にLOVEになりますよね(笑)。本当にいい授業だよーって。

溝上慎一さんが、全国の講演会などで盛岡三高の参加型授業のビデオを見せているらしいんですが、そこで紹介されている世界史の先生の授業が、一番多くの人に見られているようです。

参加型の授業のビデオを職員研修で見せて、先生方でビデオについてコメントしあうんです。同僚の先生に見せると「自分も真似する」と言うんですが、全く同じようにするのではなくてプラスアルファをするんですよ。一工夫するんです。

ビデオは初任者研修でも使われています。大野高校にも初任者がいるんですけど、そのビデオを見て、参加型の授業をやってみたいと言ってやっています。

盛岡三高のビデオは、結構いろんなところに回って、いろんな先生に影響を与えているなと思います。ですから、ビデオに撮られる側も、やりがいがあるんじゃないでしょうか。

私は、自分で授業ができなくなった分、今は、人をプロデュースするのが楽しみですね。「いいよ。」とほめると、やる気を出してやるんですよね。

―― それは、分かりますね。僕も、プロデュースする楽しみを覚えてから、そちらにはまっています。僕は、「反転授業の研究」に関わるようになってから、承認の力ってすごいなということを感じています。アクティブラーニングをやっている人って、かつての下町さんもそうだったように、孤立無援でやっている人が多いんですが、SNSで繋がって、その人がやっていることをよく理解した上で、そこに価値を感じているということをお互いに伝え合うと、それによって、勇気が湧いてきて、ものすごく力を発揮できるようになるということを経験しました。下町さんが先生方にやっていることも、正にそういうことですよね。

私は、昔は、「自分はこんな実践をやっています!」という感じだったんですけど、孤立無援の状態だったんですよね。今は、それに周りが追いついてきたという感じがあって、今がんばっている人たちを、もっと前に出していくことが今の自分の役割かなと思っています、見てみると、「反転授業の研究」もそうですけど、全国にいるんですよね。これって、全国とどんどんつながって、実践を共有したり、いろんな情報をキャッチしたりというようなことをこれからやっていくべきだなと思っています。

自分だけの利益を追求していくと、個人能力の限界が自分の限界になり、孤独が生まれ、自信を失っていきますが、チームで協力できるようになると個人能力の限界を突破できるようになり、無限の可能性が生まれます。苦手なことに意識を向けるのではなく、得意なことでチームに貢献できるようになり、自己肯定感が高まっていきます。総合学習を通してそのことを体験した盛岡三高の生徒たちは、協力することの意味を理解し、協力するためのスキルを身につけ、それが、参加型授業へと繋がっていったのではないかと思いました。

また、総合学習は、教師にとっても多くの気づきを与えるものだと思います。体験しないと分からないものを理解するときに、総合学習は生徒にとってだけでなく、教師にとっても、良いきっかけになるものだったのではないかと思います。その後、下町さんがファシリテーターとして教師を繋ぎながら、ビデオでお互いの授業を参考にしあいながら授業改善していく仕組みができたとき、各教師の授業改善は、自分だけのものではなく、他の教師への貢献にもなったはずです。そのことは、盛岡三高の教師のモチベーションを高め、自己肯定感を高めることに役立ったのではないでしょうか。

数学教師として教室で生徒の心に火をつけていた下町さんは、盛岡三高の副校長になったとき、フラクタル構造のスケールを1つ上げて教師グループの心に火をつけるようになり、さらに、大野高校の校長として、さらにスケールを1つ上げて、地域を巻き込んだグループの心に火をつけているのではないかと思います。そこでは、参加型授業を通して長い時間かけて蓄積してきたプロデュース力が、より広い枠組みで発揮されているのではないかと思いました。

 

参加型共生社会の心を育てるような授業をすることが大切

――社会変容ファシリテーターのボブ・スティルガーさんの本『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう』を読んだときに、そこに社会変容が起こる道筋というのが書いてあったんです。最初のステップが、コミュニティの内部の普通の人がリーダーシップを発揮して自分たちの力で動き出して、自分たちの物語を語っていくというもの。次のステップが、各地のコミュニティが時代性によって共鳴して、1つの大きなメタストーリーが生まれるというもの。そうなったときに社会変容が起こるという話だったんです。「反転授業の研究」には、学習のパラダイムシフトを願う人たちが集まってきていると思います。今のブームの前からやっている下町さんのような方たちと、最近、興味を持った僕みたいな人たちとが一緒になっていくと、太い流れが生まれていくような気がしています。

そうですね。盛岡三高の授業というのも、言語活動というのが学習指導要綱に謳われる前からはじめていたので、偶然なんですよね。社会の動きが逆に後押しになって、盛岡三高の参加型授業と言うのがうまく動いてきたのかなと思っています。

私がやったことというのは、それに意味づけしたことだったんです。「参加型共生社会の心を育てる」だとか、「生きる力につながる学力というものを培う」だとか、そういう意味づけをすることで、単なる授業の一工夫から脱皮して、もう一つ上のことを目指そうと言うことをやっていました。

――それは、ビジョンを作ったということでしょうか。盛岡三高の先生方は、どんなリアクションでしたか?

アクティブラーニングって、ラーニングピラミッドとともに出てきたじゃないですか。学習定着率を高めるためのメソッドという側面でしか捉えていなかった部分があって、「アクティブラーニングをすれば、模試の成績も上がるんだから」みたいな見方をしている人も多かったんです。

そうじゃないところに価値があるんだと思って、学力の3要素というところから始めて、その3要素を伸ばしていくような授業を考えなくてはならないんだということを話して、先生方はそれを分かってくれたんですね。だから、形だけのグループワークではなくて、グループワークをやる価値があるような授業を組んでやってくれて、その結果として、生徒の態度がこう変わったよとかって行ってくれる先生方が多かったです。

あとは、生徒のリアクションがいいですよね。授業の後にインタビューをすると、言葉でしゃべりあうことによって、自分も理解できたし、他の人の違う意見も聞けて、すごく良かったみたいな声が返ってきます。

後もう一つ、盛岡三高って100校近い中学校から生徒が来ているんです。中学校からたった一人というのが40校もあるんです。だから、普通は、同じ中学から来た人が自分しかいないってさびしいじゃないですか。でも、授業では、中学校で固まるんじゃなくて、安心の場で、いろんな人たちとたくさん話すので、結果として、いじめのない学校にもつながるんじゃないかなと思います。

この下町さんの指摘は、非常に本質的なものだと思いました。アクティブラーニングや反転授業が、学習の旧パラダイムの下で学習定着率を上げたり、模試の成績を上げたりすることを目指しているものであるならば、それは、現実には崩壊している工業化社会のパラダイムへの適応を促すものであり、目先のことしか考えていない無責任な教育だと思います。下町さんは、その問題点に早くから気づき、時代を先取りして、盛岡三高の参加型授業を「様々な人々の多様なあり方を認め合う全員参加型の共生社会を築くための準備の場」と捉えて、学校が社会へ果たす責任というものを考えて取り組んできたのです。

これは、すごいことです。

下町さんは、既存の社会に子どもを適応させるために学校が存在するのではなく、今はまだ存在していない未来を創る子どもを育てるために学校が存在するということを明確に掲げ、その理想を学校全体を巻き込んで推し進めていったのです。そのことに気づいたとき、鳥肌が立ちました。

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教師の学習コミュニティについて

――両国高校に見学に行ったときに、教師の学びあいコミュニティができていたんです。教頭先生が教師の学びあいのコミュニティを後ろから支援しているんです。教師の学びあいコミュニティが大事なんだな、先生が学んでいる人になるから教室で生徒の主体的な学びを促せるんだなって思いました。盛岡三高では、下町さんが、教師の学び合いコミュニティを作るための中心になっていたのではないかと思うのですが、いかがですか?

そうですね。読売新聞で両国高校が紹介されたときに、アクティブラーニングの学校ということで、他の高校と一緒に盛岡三高も紹介されたんですよ。

全く同感で、昔は、教師の力量の集まりというのが学校だったんです。「下町の数学」「田原の物理」みたいな感じだったんです。それはそれで大事なんだけど、コーディネートする人が大事だなということを感じています。雰囲気を作る人とか、裏に回ってセットする人とか、そういう人は今までなかったかなと思います。個人の力量の集積ということだと、一人の先生がいなくなると弱くなったり、いい先生が来ると上がったりということがあったけど、意識してみんなで授業を変えていこうとか、そういうコミュニティの中心になる人というのは、もっぱら授業をしていない人がいいのかもしれないですね。副校長とか、教頭とかがちょうどいいのかなという気がします。

―― 僕が「反転授業の研究」をやったときに思ったのは、グループワークとか21世紀スキルとか言葉として入ってきたときに、自分たちはこれをやったことがないなと思っていたんです。僕は、予備校講師としてやってきたので、コラボレーションもしたことなかったし、よく分からないから伝えられないなと思ったんです。それで、オンラインの場でみんなで21世紀型スキルを発揮するような実践をして、コラボレーションをして、そこで気がついたことを教室に持ち込んでけばいいんじゃないかというのがビジョンみたいなものになったんです。学びのコミュニティの経験は、それぞれの先生の役に立ったということはあるんでしょうか?

動画を視聴して、授業改善に役立ったと言うことはあるんですが、学校の中という狭い範囲でやっているので、コラボレーションってもっと広い範囲でやったほうがいいのかなって思います。

話は変わるんですけど、「反転授業の研究」ってすごいなって思うんです。みんながあったかいじゃないですか。受け入れてくれる感じで。僕らの知らない人たちっていっぱいいるんです。民間の人とか、海外の経験を持っている人とか。そういう人たちの見識って、すごく勉強になるんです。私ができるのは、「反転授業の研究」に関わったことを、自分の学校に行って、咀嚼して伝えるということなんじゃないかなと思っているんです。

反転授業の本質は、教師が教室で権威にならずに、主体的な学習の支援に回ることにあると思います。教師が権威になると、生徒が自分で考えるのを止めて、教師から答を求めるようになるからです。

「反転授業の研究」は、教室と相似形のフラクタル構造を持つグループです。グループの中に権威を作らず、全員の関係をオープンでフラットにすることで、誰もがリーダーシップをとって主体的に振る舞えるようにしていくということを目指し、グランドルールを設定しています。

しかし、このようなフラットな関係は、ヒエラルキー型の社会システムに慣れた人、ヒエラルキーを登った人にとっては、必ずしも居心地の良いものとは限りません。全員が力を発揮できるペイフォワードの関係性を作っていこうというビジョンを共有し、それを体現できたことに喜びを感じるマインドセットを持っている人だけが、フラットな関係に居心地の良さを感じるのではないかと思います。

下町さんがずっと取り組まれてきた「参加型組織」のスピリットと、「反転授業の研究」のスピリットは強く共鳴していると思います。そんな下町さんだからこそ、グループに参加して、様々な投稿をしていただいたときに、新しい視点を加えてくれる強力な同志が加わったという喜びがグループ内に溢れたのだと思います。

 

 大野高校は、未来の学校を先取りしている

―― 大野高校は、生徒数が少ないということなのですが、それが逆に強みになるような部分というのがあるんじゃないかと思っているのですが、いかがでしょうか?

これは、今の私のテーマなんです。こじつけかもしれませんが、反転授業だったり、アクティブラーニングだったりが世の中に出てきているというのは、30年後、40年後の教育を考えたときに、今みたいな普通の講義でやっていけないからだと思います。

2060年ころに60歳以上の人口が40%になるとか、2100年には日本の人口が三分の一になってしまうとか言われているわけです。だから、大野高校は未来の先取りをしているのだって言っているんです。今、僕らがやっていることは、日本が将来、都会でさえも少子化が来たときに、30年後の教育の一つのモデルになる可能性があるわけです。同じ学年にこだわらずに、小学生と高校生とがコラボしていっしょに授業をするというのもありだし、地域の人と混じって何かをやるというのもありだし、もっともっと自由な発想を出していこうというのが私のテーマなんです。

・子どもの未来を考える
・未来へのビジョンを持つ
・自由な発想を持つ

これをテーマにしてやっていこうと思っています。

人口が少なくなるのが当たり前なわけですが、だからこそ、単に統廃合ではなく、頭を使っていろんなことを考えていくことが必要だと思っています。

―― 4月に赴任して4ヶ月間がたちましたが、手応えを感じている部分はありますか?

大野高校は20年前にも6年間いましたので、2回目の赴任なんですよ。地域の人たちと仲がいいので、毎日のようにいろんな人たちが来て、地域の人たちとのコラボができるんですよ。そして、もしかしたら学校がなくなるかもしれない。学校がなくなれば、地域がなくなるんじゃないかと、地域の人たちはすごく危機感を持っているんです。先生方は学校がなくなっても、違う学校に行くだけですけど、地域の人たちは死活問題です。だから、いろんなことを作戦会議してアイディアを出し合っています。

1年間じゃなかなか実行に移せませんが、来年度にやろうというアイディアが結構あります。

――僕は、オンラインの可能性を追求してきたので、いろんなアイディアが頭に湧いているんです。去年は、シンガポールの高校と奈良教育女子大のサイエンスクラブとをつないでプログラミングのコラボをやったりしました。でも、都会だとリアルでいろんなことができるから、オンラインに気持ちがいかないんですね。でも、地方だとリアルでチャンスがないからインターネットを利用できないかということで、話を聞いてもらえることが多いです。

大野みたいな田舎こそ、オンラインの授業が可能性があると思います。田原さんや江藤さんと私の決定的な違いは、ICT機器を使いこなすことと語学力の部分なんです。キーコンピテンシーってありますよね。コラボする力だったり、ICTとか、コミュニケーションする力とか。田原さんや江藤さんの活躍を見ていると、キーコンピテンシーというのは、全くその通りだなって思ったりしています。私には、ICTと語学力のところがネックになっているんです。

――僕の語学力は、江藤さんとは比べ物にならないです(笑)。でも、強みが違うとコラボしやすいですよね。僕は、一般的なICTではなく、コミュニケーションにICTを使うというところに、かなり特化して力を入れてきたんですが、その一方で、リアルの現場を持っていないというのが僕の弱点なんです。だから、現場を持っている人とコラボしないと現場と現場を繋げないんです。異なる強みを持った人が3-4人組み合わさると面白いことができると思っているんです。強みがうまく和集合になるような組み合わせを作ると面白いですよね。

それはそうですね。いろんなコラボがこれから生まれてくるといいですね。

下町さんの頭の中には、常に「全員参加型の共生社会という未来を創るための教育」というものがあるのだなと感じました。全員参加型の共生社会では、どんな違いも「独自の視点」を加えることて社会に貢献していくことを可能にする個性であり、価値を持ちます。

生徒数が少なく統廃合の危機にある大野高校の状況は、全員参加型の共生社会の視点からすると、「将来やってくる少子化社会における学校が直面する問題に先頭を切って取り組む」ことにより、社会に貢献することができ、大きな価値を持つわけです。

また、そのようなビジョンで取り組むことにより、大野高校の事例を、未来の教育を考えるモデルケースとして多くの人を巻き込んでいくことも可能になるのだと思いました。

インタビューを終えて

楽しみにしていた下町さんのインタビューを終え、この原稿を書きながら、下町さんの言葉の力強さはどこから来ているのだろうかと考えました。

考えた末にたどり着いた結論は、「実践知から得た確信は強い」ということでした。

僕も、2年前から、「21世紀型スキル」とか、「集合知」とか、いろんな言葉を使っていたのですが、頭で分かっているというレベルと、体験して腹落ちするというレベルとの間には大きな差があります。

学び合いにおいて「共創」と呼べるような状況が生まれることを体験したときに、「ああ!これのことだったのか」と初めて腹落ちして、目から鱗が何枚も落ちました。

下町さんは、教師生活の中で何度もそのような経験をされて、その経験をもとに思考を重ね、「全員参加型の共生社会」こそが未来の姿であり、それを創っていくために学校があるのだという確信を得たのではないかと思います。

下町さんの言葉には、実践知に裏付けされた力があります。

そして、それを伝えるために練られてきた論理があります。

ぜひ、下町さんのこちらの記事も合わせて読んでみてください。

僕には、教え込みの教育から、生徒が自分で学び未来を創っていく教育へのパラダイムシフトは、周辺部から起こるという確信があります。

中央集権型の旧システムの機能不全が顕著になり、変わるか、さもなければ滅びるかという切迫した状況が最初に生まれるのはシステムの周辺部だからです。

大野高校に下町さんのような支援型リーダーが校長として赴任し、地域を巻き込んだ全員参加型の共生社会へ繋がる学校運営が実現したとき、それは、学びのパラダイムシフトを引き起こす、周辺部からののろしになるのではないでしょうか。

 

 

白板ソフトを開発!坂本勝さん・保代さんインタビュー

「反転授業の研究」の田原真人です。

動画講義を作成する方法には、いくつかのやり方がありますが、PCの画面に手書きで文字を書きながら、同時に音声を吹き込んでいくスクリーンキャストという方法が、その手軽さゆえに、カーンアカデミーをはじめ、多くの動画学習サイトで利用されています。

録画する画面の背景に置くのは、ペイントソフトなどでもよいのですが、スクリーンキャストタイプの動画講義を作っている人たちの間で、ひそかに熱烈なファンを獲得しているのが白板ソフトです。

例えば、動画学習サイトeboardの動画は、白板ソフトを使って製作されています。

なぜ、白板ソフトが熱烈なファンを獲得しているのかというと、手書きの文字や絵を部品として自由に動かすことができるという他のソフトにはない特徴があるんですね。

部品をアニメーションのように動かすだけでなく、マウスでつまんで動かしながら録画することもできます。表現の幅が、パワーポイントのアニメーションなどよりもずっと広いんですね。

「反転授業の研究」が主催して実施した「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座では、白板ソフトとカムタジアスタジオを組み合わせて動きのある動画を作ることに取り組みました。

受講者は、白板ソフトの自由度の大きさに創作意欲を刺激され、たくさんの楽しい動画を夢中になって作っていました。

僕自身も、白板ソフトを使った動画作成に取り組みましたが、アイディアが次々に湧き、それが形になっていくところに興奮しました。

いったいどのような考えから、このような独特なソフトが開発されたのかを知りたくて、白板ソフトを開発している(株)マイクロブレインの坂本勝さん、保代さんにスカイプでお話をうかがいました。
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電子黒板プロジェクトからはじまった

まずは、開発担当の坂本勝さんにお話をうかがいました。

―― 白板ソフトは、どのようなきっかけで開発したのですか?

勝)農工大といっしょに始めた電子黒板のプロジェクトに以前からやっていたビジュアルシミュレーションのソフトを応用する形で参加したのがきっかけです。

―― そこから、白板ソフトの開発へどのようにつながっていったんですか?

勝)その後、もう一度、電子黒板のプロジェクトを中学校と一緒にやったんですけど、声がかからなくなって、塩漬けになりました。プロジェクトを始めたときには、電子黒板自体が流行っていなかったんですが、これを埋もれさせていくわけにはいかないかなということで、みんなに使ってもらおうということで再びやり始めたんですよ。やりだすと使ってくれる人が増えてきて、それに応じて改善してということになってきました。今はそのサイクルが回って加速していっている感じです。

―― 電子黒板に表示させていたソフトが、白板ソフトとしてパソコンやタブレット端末で使えるようになってきたということなんですね。

勝)はい。そうです。電子黒板というのは、結局はパソコンと繋がって画面に表示させているというものなので、基本的には同じものです。

白板ソフトに感じた独特の感覚は、もしかしたら、「教師が自分で動く教材などを自由に作って電子黒板を使って生徒に教える」という元々の設定から来ているのではないかという思いが頭に浮かびました。そんな思いを抱きつつ、さらにお話をうかがいました。

最初は独特の操作に戸惑うが、慣れると直感的に操作できるようになる

――白板ソフトの一番大きな特徴は、どういう点なのですか?

勝)ウチは、教材が作れたり、動かせたりということが簡単にできるというところがウリなんです。

あれができる、これができるということになると使い方が難しくなるんですけど、それが簡単にできるということと、自由度が高いというところですね。

決められた型にはまった使い方じゃなくて、工夫すればいろんな使い方がやれるぞというところですね。

―― オンラインでワークショップをやったときに感じたのは、使い始めるときの敷居は少し高いんですよ。独特の使い方があるような感じがあって。でも、保代さんが熱心に説明してくださって最初の壁を乗り越えたら、みんな、すごくはまるんですよ。創造性が刺激されて、自分が思い描いていたものがこれを使えばできそうだというイメージが湧くみたいなんです。教師経験10年みたいな方が子どもみたいにはまるのを見て感動したんです。

「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」の受講者の内橋朋子さんの動画(白板ソフトを使って作成)

勝)他のソフトとユーザーインターフェースが違っているところもあるんです。ひらめきとか思考を妨げないような形にしています。

ボタンも、状態を表すボタンじゃなくて、行為(アクション)を表す作りにしています。

だから、他のソフトと同じように入っていくと違和感があるんですけど、やっていくと、考えていることがビジュアル的にスムーズに表現できるので、いいんじゃないかなと思っているんですけどね。

―― 「ドラッグして外から入る」とか、他のソフトにない操作があるじゃないですか。

勝)それは、苦労したところなんですよ。あれは、現場の意見から出てきたもので、選択したときに枠が出ると枠のほうに気を取られるんです。グラフィックに注意を向けたい訳じゃなくて、動かして考えを深めたいということなので、枠が出ない形で動かしたかったんです。サイズのほうは枠が出るんですけど、移動のほうは枠なしでできるようにしたんです。そうすると、選択は「外からドラッグ」になってしまったんですよ。

―― 解説動画を見たら、ちゃんと説明してくれているのに、僕を含め、参加者の多くは、説明見ないでやりたがるんですよね。それで、よくありそうな操作を手当たり次第にやってみたときに、試行錯誤の中に「外からドラッグ」が入っていないんですよね。(笑) それで、操作を見つけられなくて動画を見ると、そこではじめて「外からドラッグ」という操作だということを知って、そこで覚えたんですよ。それで、白板ソフトのやり方になれると、あたりがついてきて、「こうやればよさそうだ」という感覚でできるようになってきました。直観的にできる感覚がありました。

勝)それが、「ドラッグしてコピーできる」という操作にもつながってくるんですよ。

人が使っているのを見ると、「あぁーー」と思うんですけど、紙ベースだとなかなか伝えるのが難しいところもありますね。

インターフェースや、ボタン、操作などに、開発者の様々な試行錯誤や思いが込められているという話を聞くと、白板ソフトに親しみが強まりました。操作説明には、紙ベースではなく動画が向いているなと思いました。実際、保代さんが、動画で操作を説明してくれたものを見たり、スクリーンシェアしてリアルタイムで操作を見せてくれたりしたのを見ると、すごく分かりやすくて、「できそうだ!」という気持ちになりました。

手書きの部品を、思った通りに動かすことができる

―― 手書きで描いたものを部品にして簡単に教材が作れるものって、考えてみたら他にあまりないですよね。

勝)パワポとかフラッシュでもできないことはないですけど、どちらも編集モードとスライドショーが別々なんです。白板ソフトはそれをミックスしているんですね。編集する行為自体で動画を作ることができるんです。そのへんが、あまりないかなと思います。

―― 部品をつまんで動かしながら、「これがねー」なんて話している様子を、そのまま録画できますもんね。

勝)あれも、小学校で実際に使ってもらって、あの形であれば準備もあまりいらずに簡単に使ってもらえるんじゃないかということで、現場の意見を反映してできたんですよ。

僕たちがやったワークショップの参加者の中には、パワポを使いこなしている人も結構いて、「パワポにできなくて、白板ソフトにできることは何なのか?」という関心の持ち方をしている人が多かったんです。手書きのものが部品としてすぐに使えるということと、手で部品を動かして、それに注目させながらしゃべることができるというところが、パワポじゃできないなーという感想でした。

人工知能の研究が開発に生きている

―― 勝さんが人工知能の研究をしてきた経験は、白板ソフトのどこに生かされていますか?

勝)いくつかあるんです。

1つは、動きがあることが考えることに有効だということです。それで、アニメーションとかが簡単にできるようにしています。あとは、2つ動かしたりとか、3つ動かしたりとかできるというのも教材作成の可能性を広げていると思います。

あとは、図と文字を左右どちらに置くかで、感じ方が違うというのがあるんですよ。だから、位置関係を変えてみて試してみるということが簡単にできるようにしてあります。

思考の流れに沿って部品を移動させたり、部品のサイズ変えたりしながら進めていくと分かりやすくなるので、そういうことを簡単にできるようにしています。

――人工知能の研究をしていたということは、ソフトウェア開発に生かされているだけじゃなく、子どもがどのように学習するのかという学習プロセスに対して学習理論などを背景として考察できるということなんですね。それは、大きな強みですね。

勝)もともとは、人間の学習を研究してきて、機械に何とか同じことをやらせたいというアプローチだったんですけど、機械になんとか学習させようというのをずっとやってきたノウハウを、逆に人間に生かすことになるとは思ってもいませんでした。

――なるほど。おもしろいですね。「文字と画像を左右どちらに置くか」という話も、勝さんが学習理論を学んできたことが背景になって出てきたと思うんですが、そういう面白い話って、他にもあるんですよね。

勝)見せたり、隠したりというのも、そこから来ています。

ボタンを隠すとか、マウスを動かしたときに手のひらを隠すとかというのも、「刺激を減らす」という考えから来ているんです。

小学校の先生といっしょに開発しているので、小学生がどこでつまづくのか、どうしたらいいかという話が上がってくるんですよ。それで、AIの理論に基づくとこうしたほうがいいんじゃないかと言うと、小学校の先生も「それがいいというのは、経験上知っていた」という話になったりするんです。現場の先生の経験と、私が本を読んで勉強したことが結びついたりするので、面白いんですよ。

―― 理論と実践とが結びついて、勝さんが勉強してきたことが、現場の検証されていく感じなんですね。何か具体例はありますか?

勝)学習が苦手な子どもに対して、どんなアプローチをとるかというのが良い例かもしれません。

学習が苦手な子どもに「集中して勉強しなさい」と言ってもうまくいかないんですね。むしろリラックスさせるほうがいいんです。

あとは、不要な情報を極力減らして、必要なものだけにする。

電子黒板に映したものを、生徒がノートに書いたりするときに、最初は、真っ白なところに文字を書いて、「ノートに書いてね」という感じでやっていたんですけど、それよりも、もっとリラックスして書ける方法として、話をしながら出てきたのは、ノートの実物をスキャナーとかカメラで撮って、それを電子黒板に映して、その上に書き込みをするようにするというアイディアです。自分が見ているノートと同じものが電子黒板にあるので、黒板を見て、ノートを見てというときにストレスが減るんじゃないかと考えたんです。

これは、それなりに効果が出た感じでした。

その流れで、ボタンなども隠せるものは極力隠したほうがいいんじゃないかという話になってきたんです。

関係ないものがあると活動のエネルギーがそっちに取られちゃうんですよ。

言ってみれば、勉強しているときに、そばにおいしいショートケーキがあるみたいなものですね。それは、隠しておいて、終わった後に冷蔵庫から出すという形じゃないと集中しにくいと思います。

関係ないものも、情報として入ってきてしまうんです。

だから、情報を減らしつつ、集中を無理やりさせるんじゃなくて、いつも見慣れているものがそばにあって、安心できるような環境づくりが必要だと思います。

――そういうアイディアは、どんなときにでてくるんですか?

勝)先生とざっくばらんに話し合いながら、ああしたらどうか、こうしたらどうか、という話が出てくるんですよ。

思い付きみたいなのも多いんです。その中で行けそうかなというものは試してみています。

試してみるというのが、わりと簡単にできるソフトなんです。

試してみてよければ、もうちょっと先に進めてみたらどうでしょうという感じで。

そういうことをやっているので、余計に時間がかかっちゃうんですよ(笑)。

遠大な目標が、情熱の源

――改善を繰り返しているということは、ソフトの開発に情熱が溢れているということですよね。

勝)そうですね。まだまだ情熱がありますね。やれることは、あるぞという感じですね。

――僕は、今、オンラインの場創りとか、対話などには、どんどん情熱が湧いているんですけど、物理の授業動画作成については、ある程度完成してしまったという感じがあって、情熱が少し下がってきているんですよ。

勝)それは、新しいことが増えていないからじゃないですかね。新しいことが講座の中に入ってくると、ワクワク感が出てくると思うんですよ。

完成してくると、もういいやという感じは私もあるんですけど、新しいチャレンジをして、他のところがやっていない何かを入れた講座にしてみて、その反応を聞いてというアプローチをすれば、きっとワクワクするし、もっと工夫してみようという気になると思いますよ。

――確かにそうかもしれないですね。勝さんの場合は、チャレンジが尽きることなく続いているわけじゃないですか。どうやって情熱が続いているんですか?

勝)目標を高くしすぎたので、そうなったんだと思います(笑)。

――目標は、何に設定してあるんですか?

勝)「人は、どうやって学ぶのか」ということを突き詰めるということを目標にしてきたんです。

その流れの中で発展していくと、どうしても、こう試してみたらどうだ、ああ試してみたらどうだ、というのが次々と出てくるんです。

今の環境は、試してみたフィードバックが得られるので、ありがたいです。

それが、大目標にあって、学習効果がどうすれば上がるのかというのも、その流れの中で繋がっているんですね。

いろいろ試してみて、これは効果があったというものが見つかると、大目標に向かって一歩進んだということが感じられてうれしいですね。

―― いやーー、それは、遠大な目標ですね。

勝)そんなことをやっているからダメ!っていう人もいるんですけどね(笑)。

保代)それにずっとかかりっきりですからね(笑)。

―― でも、それが情熱の源ですよね。それがあるから、情熱が尽きることなく続いているんですよね。

勝)それをやるために会社を作ったんです。人工知能の研究を目標にして「マイクロブレイン」という名前の会社を作ったんです。

大目標の話をうかがうと、すべてのことがそこに繋がっているというのが分かりました。そういうお話をうかがうと、応援したい、一緒に仕事したいという気持ちが湧いてきました。

白板ソフト開発者の目から見た反転授業&アクティブラーニング

―― アクティブラーニングや反転授業というのも、学びを改善していこうという一つのアプローチだと思いますが、勝さんの観点からすると、どのように見えているんですか?

勝)いろいろ試すのはいいことだと思っています。

アクティブラーニングや反転授業がどこまでいいかというのは、なかなか結論を出せるようなことではないと思うんですけど、工夫の余地はいっぱいあると思います。

動画で受けた後、ドリル的なことをやって理解を確認できたり、結果に応じて、合格したら次へ進めて、不合格ならもう一度取り組むというような仕組みがあると効果が上がりそうです。

既存のアナログの授業のノウハウからも学べることがあると思うので、それをミックスしていくといいんじゃないかなと思います。

どちらかというと、ハードとかシステムのほうが話題になっていますが、それよりも、学習効果が上がったかどうかを議論しなければいけないと思います。でも、今は、クラウドを使ったかとか、そういう話のほうが前面に出てきているので、まだまだ入り口なのかなと思います。

反転授業をやっている人の中には、いろんな考え方の人がいます。旧来の教育の延長線上で、ICTを使って知識を効率よく習得させることを目標にしている人もいます。でも、僕は、決められたことを正確に処理していくということでやっていける時代は終わりに近づいていると感じていて、教えられたことの前提を問い直して、それを自分たちで乗り越えていける人を育てたいというように思っています。

目標に向かってドリル的に学んで習得するというプロセスは知識の土台として大事なんですが、それだけじゃなくて、他の人の考え方に触れて、自分の考え方を見直して幅を広げていくような学習もしてほしい。そのために、学習者が自分の考えていることをお互いに表現して学び合うということも大切になってくると思います。考えていることを表現するためのツールとしても、白板ソフトは非常に有効なのではないでしょうか。

白板ソフトで思いを伝える

――この間やった「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」で、ラーンネット・グローバルスクールに通う中学2年生の青木航平君が参加してくれたんです。この学校では、探究学習をやっているんですが、モーターを失敗しながら作っていて、「これは、6号機です。ようやく回り始めました。」なんて言っているんです。講座に参加した動機が、モーター作りについての動画を作って、Youtubeで公開して、この面白さを周りに伝えたいということだったんですね。

勝)コイルのものを見せていただきましたけど、素晴らしかったですね。あれは。

まさに、動画で伝えるということをやっていましたね。

――青木君は、説明動画を白板ソフトで作れるんじゃないかと思って、それをモチベーションにして動画作成に取り組んでいたんですよ。

自分のアイディアを誰かに説明したいということで、それを動画にして、公開して、フィードバックをもらうという活動を考えたときに、白板ソフトの自由度というのが、すごくこの活動とフィットするなと思ったんです。

勝)私も、コイルの動画を見て思いました。若い人はすごいなというのは変だけど、プレゼンのルールに囚われていないですからね。線が太くても細くても、それがバラバラでもいいという感じで、ダイレクトに思いを伝えるじゃないですか。それが、すごいなーと思ったですよ。

――こういう学び方は、日本ではまだまだ一部でしかやっていないですけど、これが広がっていくと面白くなるなと思っているんですよ。

勝)あれは、面白いですよ。

あれは、あのやり方じゃないと伝わらない部分があると感じたですよ。新たなコミュニケーションの道具として使われていましたよね。

――そうなんですよ。一種のコミュニケーションですよね。

勝)人とのコミュニケーションと言うのもありますけど、作ったものを自分で見て感じるというやり取りもできますよね。

文章で書いたりするのとも共通しますけど、自分で作ったコイルの動画を見ると、それを見て感じることがあって、自分に対するフィードバックになってくると思いますね。

コミュニケーションツールでもあり、思考のツールにもなり得ると思います。

青木君が作成した電磁石の動画はこちら

人工知能の研究者の視点から見た教材作成

――オンラインのワークショップなどで、白板ソフトを使うと面白いと思っているんです。そのときに、ソフトの使い方を説明するのを手伝ってもらったり、ワークショップのアイディア出しを一緒にしてもらったりしてコラボレーションができるといいなと思っているんです。

単に白板ソフトを使わせてもらうというよりも、勝さんの経験とか知恵を貸してもらったほうが、価値が高いんじゃないかという気がしてきているんです。

勝)それは、あるかもしれませんね。教育の専門家ではないんですけど、違う切り口で、お役に立てるかもしれませんね。

――講師をやれる人というのはたくさんいると思いますが、勝さんのような視点を持っている人はほとんどいないので、アドバイザーなどで入ってもらって、発表の動画などに対して、「ここを動かしたほうが、注目してもらえますよ」みたいなコメントをしてもらったりすると、作る側としても面白くなると思うんですよね。「動かす」ということの意味とか、効果とかが分かれば、もっと工夫ができるようになりますよね。

勝)物理とかは、動かすと頭に入りやすいみたいですよ。

たとえば、ねじ回しを使っててこを説明するときに、握りの部分は太くて、先は細いから、下の部分は動く量が少ない代わりに大きな力が出るんだよということを、矢印で説明するだけじゃなくて、動かしてやると理解がしやすいんですよ。

止まっているものを、何枚か用意して、1番、2番、3番・・と見せられて理解するよりも、動いているものを見て理解するほうがストレスが少ないと思うんですよ。

――そうですよね。考えてみれば、僕の授業って、黒板の前でジェスチャーで示していることが多かったんですけど、これで、どこまでイメージが伝わっているだろうかって心もとないですよね。腕も2本しかないから、3つ以上のものを同時に動かせないし。

勝)地球と月なら、地球と月の絵が描いたものに棒をつけて動かすだけでもずいぶん違うんですよ。でも、そういうモノを準備しなければならないのでたいへんなんですよ。でも、白板ソフトなら、あまり準備しなくても同じようなものができるんです。

ジェスチャーよりも伝わる量が多いと思います。

――教材作成に対する新しいチャレンジができそうな気がしてきました(笑)。

勝)やっている本人が楽しいと思ったら、それが伝わりますよ。

――教師が教材作成を楽しんでいると、「これを見せてやろう!」という勢いが出てくるから、授業にワクワクが溢れてきますよね。

勝)理科の授業で、教科書を読んで学ぶよりも、実験を見せたほうがおもしろかったりするじゃないですか。それと同じように、シミュレーションを作って、どうなるのか考えさせてから見せたりすると、楽しさが伝わりそうですね。

「動く絵本」のワークショップで、白板ソフトの楽しさを広げていく

坂本保代さんは、「動く絵本」のワークショップを3年前から実施していて、昨年からは、子どもたちをチームに分けてアクティブラーニング形式を導入しているそうです。ワークショップについて保代さんに伺いました。

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――動く絵本のワークショップはどこからはじまったんですか?

保代)シミュレーション&ゲーム学会というものに入っているんですけど、そこで声がかかって、慶応大学で行われたワークショップコレクションというものに参加したのがきっかけです。

子どもでも使える白板ソフトの使い方って何かなと思ったときに、「動く絵本」だったら簡単にできると思ったんです。

でも、すごい人数だったので、一人20分くらいで、その時間内に、使い方の説明と制作をやらないといけなかったので大変でした。

子どもたちが楽しんで作ってくれて、しかも、Youtubeに動画をアップできるということで、とても喜んでくれました。

その後、稲城市の広報誌でボランティア講師というのを募集していたので、「動く絵本」をやりましょうかと言ったら、ぜひやってほしいということで、稲城市城山学習館でやることになりました。今年で3年目です。

――もう3年も続いているんですか。どんな風にやっているんですか?

保代)小学3年から6年を対象にしていて主にWindows版タブレットを使った動画コンテンツを作成する体験学習です。タブレットでお絵かきをして、その絵を切り取り、切り取った部分を動かしながらお話を録音することで、簡単な動く絵本が出来ます。

去年は、「学びのイノベーション」フォーラムで東京大学にて行われた、アクティブラーニングのワークショップに参加し、一部分ですが、小学生でも有効であると思われる「学びあい」の要素を取り入れました。

子どもたちに担当を決めて、教え合いをしたんです。子たちのアクティブラーニングの感想は「人に教えるのって難しいけど、分かってくれたら嬉しかった」「最初は難しくて、恥ずかしかったけど、楽しかった」と好評でした。

今年は、はじめて親子参加のワークショップをやろうと思っています。

今まで、トータルで5回やっていて、補習もやったりしています。

――補習というのは、子どもがはまってしまって、完成させたいって頼んだりするんですか?

保代)そうなんです。 作品の完成後の発表会で自信を持たせるために練習の時間にも使いました。

――子どもは、どこにはまるんですか?

保代)自分の書いた絵が動いて、自分の声で物語が進んでいくのがうれしいみたいです。本当に、できた瞬間は、自然とにっこりしちゃうんですよ。

Youtubeにアップするとか、ということよりも、自分が思っているものができたという喜びが大きいみたいです。ちょっとしたものづくりの喜びですかね。

――動いているのを見ると、この動きを、表現の中のどこに使おうかって考えるじゃないですか。あの思考は、面白いですよね。機能と表現をどう組み合わせるのかを考えるというのは。「こんな動きをするんだな」というのを他の人の動画とかで見て、「さて、これを、自分の表現のどこに使ったら面白いかな」って考えるんですよね。僕は、重なっている波が3つに分かれるというところにアニメーションを利用で来たら、「おぉぉ、自分が思った通りに表現できた」と思ってうれしかったんです。機能と表現がうまくはまったときに、頭の中に喜びの化学物質が出る感覚がありました。

保代)そういう楽しみを感じてほしいと思って、一番簡単なのが、動く絵本だったんですよね。

子供向けの外に、主催:関東経済産業局及び八王子8Beat「認知症&ITのハッカソンで、チームでアプリでは白板ソフトを使って自分史を作るという提案をしました。(チームで特別審査員賞受賞)

認知症があまり進んでいない方を対象にして、覚えた方が、やり方を他の高齢者の方に教えていくようなシステムを作りたいと思っています。

子どもでも高齢者の方でも使えるということで、そういうこともできないかなと思っているんです。

――それは、おもしろいですね。自分の大事なエピソードを語るときに、自分の描いた絵が動いてセリフがつけば面白いですよね。

保代)はい。高齢者向けのほうも、これからやっていきたいんです。

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白板ソフトを使った創作の楽しさの正体

白板ソフトを使った創作の楽しさについて、勝さんが説明してくれました。

―― 自分が創ったものが動くと、何が楽しいんでしょうね。

勝)不思議なのは、自分がシナリオを考えて、その通りに動いても、その通りに動いたものを見て感じることは、自分が思っていたものと違っていたりするんですよね。こんな風に見えるのか!って。

作った本人がびっくり!みたいな感じのところがあるので、それでさらに、こう変えたらどうだろうかって繋がっていくんですよね。

―― そう考えると、プログラミングとも似ていますね。

勝)ああ、似ていますね。最初にこんな風にしたらこんな動きをするだろうと思ってやってみると、その通りに動いたんだけど、ちょっと自分が思っていたのとは違う見え方をするなみたいな感じで、変えてみたりするので、似ていますね。

白板ソフト開発のゴール

――白板ソフト開発のゴールは、どこに設定されているのですか?

勝)会社の目標である「人は、どうやって学ぶのか」を理解することは、遠大なので終わらないのですが、白板ソフトのほうは、「白板ソフトを使って、みんなが教材を自分の考えで作って、その教材がお互いに流通し合う」というところまでを目指しています。

――そうすると、コミュニケーションという側面もありますね。みんなが作って、使い合うということも含まれるんですね。

勝)教師だけじゃなくて、子どもたちも自分たちで作ったり、ある程度出来上がったものに対して、自分の考えを追加して作ったりとかできるようにしたいなと思っています。

そのためには、まず、いろんなマシンで動かなきゃということで、動くマシンを増やしているところです。それは、時間だけの問題なので、時間かければ終わると思います。

動くマシンが終わった段階で、どうやってコミュニケーションツールとして使うかというところの工夫をしていくと思います。

対話が未来を創る可能性

――僕が好きな言葉に「使い方の発明」というものがあるんですよ。ユーザーが、白板ソフトのいろんな使い方の発明をしてくれると面白いんじゃないかと思うんです。ソフトの機能としては時間をかければ完成しますよね。でも、それが理想とされているような使われ方をするためには、そうやって使ってくれるユーザーが増えてくる必要がありますよね。そのあたりは、どのように考えているのですか?

勝)セミナーなどをやりながら、使った人の声を聞いて、コミュニケーションツールとしてどのような機能が必要かというのを、動きながら、考えながらやれたらなと思っています。

――今思ったんですけど、白板ソフトのファンのコミュニティとかがあればいいですよね。

二人)それは、よく言われるんですよ。

――コミュニティの中で、いろんな使い方のノウハウが溜まってくるし、学び合いで、みんなが真似し合って進化していくというのも起こると思うんですよね。

勝)ただ、その分、いろんな質問とかも飛んできて、それに対応できないんじゃないかという恐れもあるんです。

――ああ、それは、よく分かります。僕も実は、フィズヨビ生のコミュニティをやるといいなと思いつつ、でも、同じように質問とか要望とかがどんどん来るんじゃないかというのを恐れて5年くらい躊躇していたんですよ。

勝)分かります。特にエンジニアタイプの人は、そういうの得意じゃないんですよね。

――「ウチは小さい会社で、開発者一人でやっているので、質問などになかなか対応できないので、学び合いで解決してください!」って先に言ってしまうというのはどうでしょうか?そうやって、オープンにしてしまえば、「坂本さんにお手数かけるわけにはいかないから、自分たちで解決しようよ!」という流れも出てくるんじゃないかと思います。マニュアルとかも、お二人はやること一杯で手が回らない状態だと思うので、コミュニティで「忙しいので、誰か作ってください!」って頼んで、自発的に作られていって、作った人がコミュニティの中で感謝されていくというようになるといいですよね。

保代)そこまで言っちゃってもいいのかなって思ったり。でも、それができたらいいですね。

――お願いしたら申し訳ないんじゃないかというのが、一番のメンタルブロックなんですよね。でも、白板ソフトの動画マニュアルを作ることを通して、白板ソフトの使い方をマスターしようと思っている人もいるはずだし、「動画マニュアル作成チーム」みたいのができてきたりするかもしれませんよね。そのときの坂本さんの役割は、

「うぁー、すごい!」

「助かりますーー」

とか、喜んでくれることで、そうすると、作る側もうれしいから、やりがいが出てきますよね。全部自分のところで抱えなくちゃいけないと思うとできなくなってしまうことを、逆回しにしていくと可能性が出てきますよね。フィズヨビでは、それを乗り越えるために、受講者との対話から始めたんです。コアな白板ソフトユーザーと対話してみると、今まで無理だと思っていたことに、意外な解決策が出てきて、未来へ繋がっていくような気がします。

ペイフォワードが生まれたコミュニティは、どんどん拡大していくという現象が世界中で起こっていて、僕の周りでもそういう現象がまさに起こっています。

「白板ソフト」のビジョンに共感して応援してくれる人が集まり、ペイフォワードの文化がコミュニティ内に生まれるといいですよね。

二人)そうなると、いいですね。

インタビューを終えて

坂本勝さん、保代さん夫妻へのインタビューは、非常に楽しく、笑いが絶えませんでした。あっという間に90分が過ぎました。

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この楽しさは、いったいどこから来るんだろうかと思いながら、お話をうかがっていたんですが、勝さんが、

「人は、どうやって学ぶのか」ということを突き詰めるということを目標にしてきたんです。

とおっしゃったときに、その理由が分かりました。お二人の「志が高い人が発する独特のオーラ」に僕の心が反応していたんだと思います。

いろいろなマシンで白板ソフトで動くようになった後は、それをどのように使って学ぶのかという「使い方」の開発フェーズに入ってくると思います。

学び方には、教師から教えてもらうということの外に、自ら学ぶという学び方があります。

コミュニティ内で、各メンバーが自分の考えを表現すると、それをお互いに参照し合って自分の考えを磨き、さらに理解を進めていくという学びの渦を生み出せるようになります。

考えを表現することによって、暗黙知を外に出して共有することができるようになり、共有することによって集合知が生まれるようになっていきます。

白板ソフトは、考えたことを簡単に自由に表現できるツールなので、言葉による学び合いを超えた学び合いができるのではないかと思いました。

そのような学び合いを理解することは、「人は、どうやって学ぶのか」を理解することへ繋がっていくと思います。

白板ソフトを使った学び合いコミュニティを作るための障害は、

・ユーザーが抱く恐れ「ソフトの使い方が分からなくて、使えなかったらどうしよう」

・開発者が抱く恐れ「たくさんの問い合わせが来て忙殺されることになったらどうしよう」

という両者の怖れかもしれません。

でも、これらを、対話によって乗り越えると、ユーザーと開発者は信頼をベースとした協力し合える関係になれると思います。

坂本さん夫妻とお話して、未来へ繋がる大きな可能性を見ることができました。

(株)マイクロブレインのホームページはこちら

※今回のインタビューで触れることができなかった様々な機能については、「スナック・ネル第29回営業」のグーグルハングアウトで坂本勝さんが解説している動画がとても参考になります。驚くほどいろいろなことができます。

マスラボ代表 古山竜司さんインタビュー

インターネットがもたらした変化の中で一番大きいのは、

・個人が情報発信できる

・個人が直接たくさんの人と繋がることができる

という2つではないかと思います。

それぞれが、自分の考えていることや、課題だと感じていること、他人に対して役立てることなどをアウトプットしていき、多くの人がお互いのことを知るようになると、お互いにどうやって貢献できるのかが分かり、協力できるようになります。

そのような協力の輪が広がっていくことで、共創(Co-Creation)が起こっていくのではないでしょうか?

マスラボ代表の古山竜司さんは、大阪で小さな塾を経営しながら、毎日、講義動画を作り続けています。その数は、1400本を超えます。

古山さんの頭の中には、ワクワクするような教育の未来のイメージがあって、それを実現するために、コツコツと進んでいるのだそうです。

古山さんは、どんな未来を創ろうとしているのでしょうか?

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成績を気にしたことはなかった

―― 古山さんはマイペースで自分の道を進んでいる人だなという印象を持っているのですが、どんなふうに育つと自分の道を進めるようになるのか興味があるんですよね。子どものころは、将来どんな仕事をしたいと思っていましたか?

小学生の頃は、「ダチョウに乗って走る」ことが夢でした。仕事という価値観がその当時なく、何か 海外にいっていろんな人と仕事ができたらいいなぁと思ったりしていました。とにかく、明確にこの 職業というのはなく、どんな仕事もしてみたい。すごいなぁという感じでした。小学生の頃からよく 本を読んでいたので、そういったいろんな仕事に対する大人の想いというのは感じていたんだと思い ます。

―― 仕事という価値観がなかったというのは面白いですね。大人になることをポジティブに捉えていたんですね。古山さんは、音楽や数学が好きだということなのですが、音楽や数学に興味を持ち始めたきっかけは?

音楽は小さい頃からピアノやエレクトーンを習い事としてやっていたことと、数学は単純に解くのが 楽しかったからですね。どっぷり使ったのは、高校になってからで、高校は吹奏楽部で中学はサッカー 部だったので、経験で負けても、音楽の聴く耳だけは負けないでおこうと毎日ラジオやCDを使って曲 名とフレーズを覚えたりしていました。数学の方は自分で定理を証明するのが好きで、どんどん自分で 進んでいきました。すると、教えてもらうより断然自分で学んだ方が楽しいことに気づいたんです。た とえ、それが間違いであっても自分のペースで自分で考えることって幸せだなぁと感じました。

―― 問題を解けたという結果ではなく、「問題を解いているのが楽しい」というプロセスに気持ちが向いているんですね。教えてもらうよりも、自分で学んだほうが面白いというのは、今の古山さんの活動に繋がる考えがすでに出てきているのが興味深いですね。

数学と音楽は、古山さんの中では別々のものなんですか?それとも、共通している感じなんですか?

私の中では、別々のものですね。たまたま大学で学んでこの2つが関係があるんだということを知ってすごいなと思ったんですけど、もともとは、音楽は習い事でやっていて、数学は教科の中で好きということだけでした。勉強に疲れたら音楽を聴いたりとか、ラジオを聴きながら作業をするのが好きだとか、そういう感じでした。大学に入って音響学を学んだときに、今まで音楽が気持ちいいと思っていたのは理由とか、歌詞が思い出される理由だとか、そういうのが分かってくると面白くなりました。

―― それが何の意味を持つのかとかが確定していないものを、面白そうだということだけで広げていくと、モヤモヤした中で好きだとかが決まってきたり、うまくなってきたりしますよね。そして、後からそれが理論化したりすると、「あああー、おもしろーー」となるんですけど、理論を先に教え込んじゃうと面白くなくて、自分のものにならない気がしているんですよ。数学も、自分なりにやった領域があって、後から理論が来るとおもしろいですよね。受け身の人は、このモヤモヤの領域が小さいんですけど、古山さんは、モヤモヤの広がりが広いということを感じるんですよ。言語化されたときに感動する準備ができていて、なんとなく好きだというだけで、広げていける。

そうですね。裾野を広げておくことが自分にとってプラスになるということを、子どもたちにも教えておかないといけないですね。塾で教えていると、「それはテスト出ますか?」「覚えておかないといけないですか?」とプラスかマイナスかで判断しているけど、それは将来どうなるかわからないから、楽しいと思えるのであれば広げていったほうがいいと、ずっと子どもたちにも言っているんですね。

―― それは、古山さんの中で実感があるんですね。

そうなんです。よく「無駄な科目」とかいうじゃないですか。古文はいらないよ!とかね。でも、勉強していると、全く初めての古文を自分の力で読めるときが来るんですよね。そのときの感動ってすごいですよね。そういう感動まで連れて行ってあげるというのが大事だと思っています。

大学で芸術工学科に入って、その理念が「技術の人間化」というものだったんですけど、それを学ぶためには幅のある人間にまずなって、そこからとんがっていくということなんですよ。

何に役立つのかが分からなくても幅広く学ぶのが大事というのは、古山さんの大事な考え方になっていると思いました。役立つかどうかよりも、「面白い」と感じることが大切にされています。

そのような考え方は、どのようにして生まれてきたのか、さらに探っていきました。

 

偏差値って見ていなかった

―― 大学で音響学を学ぼうと思った理由は?

高校の頃、近くにある阪大、京大がいわゆる賢い子がいく学校で、高校も地元の進学校に進んだので すが、その理由は自転車で通える距離だったからで、成績もあまり気にしたことはありませんでした。

一応、どこか決めないと行けなかったので、全国大学図鑑で色々とみていると、九州芸術工科大学 (現九州大学)という単科大学を見つけました。芸術工学という珍しい学問でしかも音響設計という 音に関することを学べるということで、日本に唯一の学部ということで志望しました。

高校で吹奏楽 部や合唱部でコンクールなども出ていたのですが、プロになるには経験年数がないし、自分は理系で 数学や物理が好きだから、そういう人たちの役に立つ仕事をできればいいなぁと思って、志望したと 思います。

―― 成績のような他者評価がそんなに気にならずに、自分の気持ちに従って行動されていると思いますが、そういう 行動ができる人は少ないと思います。どうして、そのように行動できるのですか?

むしろ自分の人生なのに他人の評価や相対評価で人生決めるのはなぜでしょうか?

たぶん親から~しなさい と言われたことがほとんどないからだと思います。学校も自由に休みました。ちょっと哲学考えたいのでし ばらく学校休みます。みたいな感じで、それを絶対あかんとは言わなかったんですね。なんでだろう?

だから、僕の中では自分のやりたいことをやるっていうのが普通のことで、あまり他人の評価を気にしても しゃーないなと思ったんです。自分で自分が好きであればそれでいいと。完全にナルシストですね。

―― 僕は、団塊ジュニア世代で、少しでも偏差値のいい大学へいくために競争しているような文化の中にどっぷりつかっていたから、今は、偉そうなことを言っているけど、当時は、偏差値のいい大学を目指して競争していたわけですよ。そういう時代背景を考えたときに、「面白そうだ」という理由で大学を選んでいくって、珍しいですよね。

珍しいと思います。大阪にいて、九州の大学を受けるというと、みんなから、ふつう、「えーー」って言われますよね。どうして大阪大学とか、京都大学じゃないの?って。でも、進学校だったから、めっちゃ賢い子とかいるじゃないですか。たとえ受かったとしても、勉強でこの人たちに到底かなわないなって思うことあるんですよ。運よく音響学というものにであったので、そちらに行くことになりました。

私は高校進学のときも、偏差値って見ていなかったんですよ。近所にあるからってことで行ったら、進学校だったという感じだったんですよ。

親が自由にやらせてくれる人だったので、自分で大学選んで、ここに行くからと言ったら応援してくれたので、ありがたかったですね。

自分の気持ちに従って行動すると、感情と行動が結びつくから、「面白い」と思える状況が生まれやすいんですね。そうすると、ワクワクしながら学ぶことができるから、好奇心に従って世界が広がっていきます。一方で、感情を抑えて、外からの指標に従って選択すると、感情を抑えているのでワクワクが起こりにくいし、最低限の労力で最大の他者評価を獲得するように行動していくので、「無駄な勉強」をしなくなります。ワクワクに支えられた「無駄な勉強」が、古山さんに幅を与えているんですね。

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多様性が進路の決め手になった

―― 音楽を学んだことは、古山さんの今の生き方にどのように影響していますか?

音響設計で学んだことは、まずはアウフヘーベンの考え方を大切にしなさいという建学の精神でし た。技術の人間化や芸術と工学の融合なんてめっちゃ面白いですよ。多様な価値観があるなかでそれを うまくミックスさせて考えるというのは今とても役に立っています。固定観念に縛られることがない僕 にとってはぴったりの学部でしたね。

ワオコーポレーションに入社したいきさつは?

就職活動は、特に業界をこだわることなく色々とみて回りました。工学系、システム系から金融系、 出版などみていったときに、大阪に本社があって、色々な事業を展開しているワオに縁がありました。自分のキャリアを考えたときに、色々な部署を回って仕事の幅を広げることができて、スキルも身 につけることができるという多様性が決め手になりました。

―― 複雑系の研究をしていたときに、僕の恩師が「自己組織化は異なるものが接するインターフェースで起こる」と言っていて、あるとき、地球の写真を見せながら、「どこにインターフェースがありますか?宇宙と地球の間にある薄い大気層がインターフェースです。生命はこのインターフェースで自己組織化したんです。」と言っているのを聞いて感動したんです。それ以来、異なるものが接するところに様々なものが自己組織化していくというイメージがずっと頭の中にあるんですよ。だから、異なる考えの人が話し合いをしながら学ぶというのも、すごくピンと来たし、面白いなと思ったんですよ。

反転授業や、マスラボでやっていることは、大学時代に学んだアウフヘーベンと結びついているのですか?

最近考えているのは、「教える」ということと「学ぶ」ということの境目というのは、それに近いものがあるということなんです。以前は、先生は「教える」ばかりだったけど、最近は、「学ばせる」ということが言われるようになってきたんですけど、どっちかじゃないんですよね。教えるときと学ばせるときがあって、そこの境目をうまいとこ見極めてあげるということが教師の役割になってきたら、子どもたちが自発的に学べるようになるんだと思います。

学べるということも伸ばさなければいけないんだけど、そればかりをやると、教わるということがなくなっちゃって、自分で何とかしようとか、調べれば何とかできるとか言っちゃうけど、隣の人に聞いて教えてもらったり、逆に教えてあげたりすることもできれば、さらに上のステップに行けるのかなと思います。

―― 学び合うことができる力というものがありますよね。

自由に学べるというのはある意味理想だけど、武雄の反転授業を見ていると、小学生の学び合いと中学生の学び合いとでは段階が違っているんです。言語能力が違うから、小学生の場合は、動画で学んできたことを確認し合うのがメインになるけど、中学生になると、「動画ではこう言っていたけど、俺はこう思うぜ!」みたいなところまで踏み込めるんですよ。「それは、どういうことなの?」ってさらに問いが生まれたりもするんですね。

武雄みたいに学び合いの文化が小学生時代から段階を踏んで育っていったら、この子たちが大学生になったときには面白くなるだろうなと思いますね。

教育に関わるようになったきっかけ

―― 教育に関わるようになったきっかけは?

ワオの配属先が集合授業部門の能開センターというところだったんですね。僕自身は、e-learningを志 望していたので、これは始めがっかりしましたね。パソコン好きなのになぁと思ったんですが、まぁ将 来やるときに、現場の感覚をもっていることは大事だなと想ったんです。こういう切り替えが僕の強み でもあります。

うちの母方の家系は代々、教師の家系だったんですが、学校の先生はしんどいから ならんほうがいいよと言われていて、結局塾の先生になったわけですから、教育と古山家は切っても切 り離せない関係なのかもしれませんね。

―― 能開センターでの仕事というのは、ワオが経営している塾で講師として生徒に授業をするということ ですか?

はい。2005年に入社して、年長から小6の中学受験の算数や理科を指導していました。どちらかという と最難関クラスの担当が多く、好奇心旺盛で、いつも目をキラキラさせている子達の指導でした。

特に低学年の指導は、ふるやまんとして保護者からも絶大な支持を得ていました。

→ 低学年プロジェクト責任者 古山竜司

―― その後、新規事業の部署に移動したのですか?

講師として何年もやっていたのですが、自分としてはスキルを広げたいというのがあったので、まずは アプリ開発の部署に移動しました。そこでプログラミングなどを学び、英語のアプリなどを企画する 中で、もっとICTを入れた教育をしたいと思ってたんです。アプリでいろんな人と出会っていたら、も う確実にその時代がくるよね。って思っていたらカーンアカデミーに出会ったんです。そして教材開発 をしながら新しい時代の教育を考えるというミッションを会社から与えてもらいました。

―― 多様性と言うのが、芸術工学を選んだときも、ワオを選んだときも共通の要素になっているような気がするんですけど、いかがですか?

就職活動のときは、これを一生の仕事にするというのが正直見えていなかったので、幅広く学べるということは自分にとって財産になると思いました。

ワオは、教育だけど、eLearningとかに力を入れていたりとか、映画を作ったりとか、塾じゃないじゃんみたいな感じでいろいろやっていたんですね。ワオに話を聴きに行ったときに、「いろいろな部署を経験できるよ。」と言われて、まだ20代だったから、自分の幅を広げていけそうだと思って決めました。

幅を広げることが大事だという考え方があると、自分の希望通りにいかないときに、「幅を広げる時期」というふうに切り替えて、ポジティブな受け止め方をすることができるのだと思いました。そして、その場で一生懸命に取り組むから、力が蓄えられて、それが後から生きてくるんですね。

反転授業との出会い

―― 反転授業に興味を持ったのは?

ワオで新規事業の部署でしたので、新しい教育について色々と海外も含めて研究していました。その中 でカーンアカデミーの存在をしって、次の教育はこういう教育になっていくんだろうなと想ったのがき っかけです。ただ、その頃はアプリの企画などもあったので、心の中で温めていて、自分の子どもに動 画をつくって試してみるということになったのです。

―― 会社の中で新規事業の部署というのは、試行錯誤をしながら将来的に収益を上げられそうなところを探していくというところだと思います。古山さんは、ワオの中でどのように評価されて、新規事業の部署に配属されたのだと思いますか?

自己評価で来年度の目標というのを人事に出さなくちゃいけないんですよ。そのときにずっと「今、来ている波に乗り遅れると、起業としてやばいっす」みたいなことを言い続けてきたので、「言うんだったら、やってみれば」みたいな感じになったんですよ。

ワオには「やりたい」と言うと、すぐやらしてくれるという企業風土があるんですよ。評価が出なかったら、「ダメねー」ということになるんですけど、社員が自ら手を挙げれば、「やってみれば―」ということになるんですよ。そういう風土があるなということをアプリの部署にいたときに感じていたので、私も手を挙げ続けていれば、なんとかなるんじゃないかなと思って、手を挙げ続けていたんですよ。

―― それで、新規事業として何かできないかということで、試行錯誤する中で、動画を作ってお子さんに学ばせ始めたということなんですか?

はい。そうなんです。

カーンアカデミーを知っていたから、動画が絶対来るぞと思っていました。受験サプリとかが出ていたけど高校生対象だったので、小学生対象のものを出していったらどうかと考えていました。通塾するのは中学生くらいからが多いんですけど、親は小学生にも勉強させたいと思っているので、そこを対象にしていけるんじゃないかと思っていたんです。家にいながらにしてトップ講師の授業が受けられれば仕事になるんじゃないかというざっくりしたイメージがありました。それで、自分の子で試してみたんです。

―― 自分の子どもに動画を作って試してみていかがでしたか?

子供は大喜びでした。むしろ、私が教えるよりもいいと言われました。カーンさんのプレゼンに出てきた話と同じですね。それで、ホンマだなと思ったんです。

分からなかったところをもう一回教えてと言ったら、親だったらイラッとするじゃないですか。でも、動画だとマイペースで分かるまで繰り返して聞いたりとか、分かっているところをフンフンと聞かずに飛ばせるわけですね。

当時、小学1年生だった娘が、「これは、もう分かったから解説聞かないで飛ばそう」ということを判断してやっているのを見て、これは、マイペースで学べるからいいなと思いました。

―― 古山さんは、佐賀県、武雄市の反転授業用の算数の動画のほとんどを作成されていますが、どのようなきっかけで古山さんが作成することになったのですか?

武雄の教育委員会の方が「反転授業」にもっておられて、教育の会社であるワオを訪問されたことが きっかけです。

それまでは、東進のように、黒板の前で先生がたっていてカリスマ講師が教えるという 風に考えていたのですが、チャプタの動画をみて、そして、我々が考えている教育の未来像を話すこと によって明確にイメージすることができたと想います。その時は、小3の「円と球」でプレゼンをしま した。そこから先は、武雄動画物語がかけるくらい壮大です。

―― 武雄動画物語を短くまとめると、どうなりますか?

短くまとめると、

塾講師が学校教育を変えようと意気込んでプレゼンしにいく

⇒公教育の現実を知っ て凹む

⇒それでもスピード感をもって進む

⇒公開授業で子ども達の表情をみてこれは教育を変えていけ ると確信する

⇒お正月返上で夜通し作業する

⇒一斉にスマイル学習(武雄式反転授業スタート)

⇒概ね 好評でほっとする。

みたいな感じです。

―― そのプレゼンを古山さんがすることになった理由は?

もともと新規事業のプレゼンで、娘にしていた映像授業で低価格帯で販売し、親のコンサルタント をすることで収益をあげていくということを役員の人にプレゼンをしていました。その中で、古山はキ ャプチャ動画で面白いことをしようとしていると考えてくれていたみたいで、その場に呼ばれ、すぐに プレゼンできるか?と言われたんです。

いつでもカードを持っておくことは大事で、はい。できます。 といってすぐにプレゼンできました。

いつも考えていることだったので、プレゼン自体はそんなに苦労 することなくできました。

―― 手を挙げ続けていたら、そこに武雄が繋がってきたじゃないですか。それは、古山さんが人生をイメージするときにどういう影響を与えましたか?

自分から動いていると、チャンスは必ずやってくるなというのは常々思っていたんです。やらされている仕事というのは、自分で視野を広げていけないですよね。

新規事業をやるのであれば、広く知識を蓄積しておくと、どこかでつながる人が出てきて、そのときに引き出しをどんどん開けて、「これもあります、あれもあります」というように見せられるとチャンスが広がるから、引き出しは増やしておかないといけないなと常々思って仕事をしていました。

古山さんのお話をうかがい、自分で考えて、世界に対して仮説を立てて、そこに対してたとえ無駄になってもいいから試行錯誤をしてくからこそ、いろんなものが蓄積して、チャンスが来たときにそれを掴むことができるのだなと思いました。

反転授業型の塾、マスラボを設立

―― マスラボをはじめようと思った理由は?

ずばり自分の力でどこまでできるかやってみよう!です。

講師としては、飯が食べていけるくらいのレ ベルはあると自負しているので、人生一度チャレンジしてみようと思いました。色々と理由はあるんだ ろうけど、やっぱり雇われ講師だと、生徒は選べないし、生徒も先生を選べないわけです。

それって すごくおかしいなぁと思ってて、今の時代だから世界のどこにいても先生の授業が受けられる。これっ て当たり前なのに、塾にいくとクラスによって先生が違う。教え方も違う。昔の寺子屋みたいにそこ に行けば大好きな先生がいて学ぶことができる。教えてもらうのではなく、学べる場にしたいなと思 ったのです。

そして、自分自身もただ、塾の講師としてだけではなく、自分の成長もできる環境に身を おいてみたかったんですね。

会社は安全だけれども、その安全さ故に自分のしたいことができないんで すよね。これからの時代はそんな時代じゃないと思っている先生が安全に仕事してたらあかんと思った んです。もっともっと貪欲に学び、変化できる場にできればいいと思っています。

―― 「自分の成長もできる環境」というのが、古山さんらしいですね。

娘も中学校進学で環境が変わるので、自分も環境を変えてみたいなというのがありました。

先生として生きていきたいなと思っていて、ワオの新規事業を進めていって5-6年のスパンで大きくしていくという道もあったんですけど、ワオは企業として大きいので、ワオが考える時代のスピードと、「反転授業の研究」で感じる時代のスピードとがずれてくるんですね。

それで、大きく温めてきて、別のところでもっといいサービスとかが出てきたら、きっと後悔するなと思ったんですよ。自分の中で試してみて感じることを世の中に発信していって、子どもたちにも伝えていけたらいいなと思いました。そのほうが、自分の生き方に合っていると思って選択したんです。

―― 自分の感覚と行動を一致させる方向に動いたってことですかね。

そうですね。ワオで過ごした時間が成長の源だったのでワオには感謝しかないんですけど、次の人生のステップということを考えたときに、自分の一番やりたいことをやれるのが一番輝けると思いました。

それが失敗したとしても、「失敗したな、また、次のことやればいいか」って思えるはずなんですよ。子どもたちには、「そう思えるようになろう」って言っているのに、自分自身が企業の中に入って発信するのはちょっとちがうかなって思ったんです。

―― ああ、それは分かりますね。自分で「こういうのがいいんだ!」って発信していると、それが自分に返ってきますよね。それで苦しくなってきて、矛盾を解決する方向に動くんですよね。

そうなんです。言っていることは、自分でやらなきゃだめだよっていうのがありましたね。

――これからの時代というものを明確にイメージしたときに、そのイメージと自分の現実とを一致させる ように動いたんですね。時代をイメージする力というのも古山さんの特徴だと思います。それは、どの ようにして養われたと思いますか?

時代を明確にイメージする力はあるかどうか分かりませんが、これからの時代はこういう時代だから こうしなくちゃいけないという形で動いていないということだと思います。

パソコンの時代だから、英 語の時代だから、という風に動いたら、形だけで終わってしまいますけど、たとえば、反転授業の研 究でもおなじみの井上さんにプログラミングに興味があるならCouseraでMachineLearningがあるから やってみるといいよ。と誘いを受けました。結構忙しい時期だったんですが、できる限り、自分の可 能性のあるチャンスは広げたいと思っています。そうして受けてみると、MOOCsとは何かが分かるんですね。

僕の場合はこういう風に具体的に教えてくれるメンターみたいな人が、もちろん田原さんもそ うですがたくさんいます。こういう場合はこの人に聞いてみようかなぁとか、この人の活動はどういう 背景があってしてるのかなぁとか考えながら接していると、これからの時代はこういう時代になってい くんだなぁという実感があります。と同時に、なっていくんだなぁという想いではなく、そういう時代 に僕たちがしていくんだ!という強い気持ちをもっているのも事実です。だから、人や情報が集まって くるんでしょうね。

自分自身が成長していくと、自分のありたい姿と現実が重ならなくなってきます。そのときに、古山さんは、自分のありたい姿に現実を合わせていくんですね。でも、これまでの古山さんの選択の仕方をうかがっていると、それがすごく自然なことのように感じました。

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マスラボの特徴

――マスラボはどんな塾ですか?

塾は会社と一緒で生き物だと思っています。だから、その年、その年で塾の印象も変わっていくんじゃ ないのかなって思ってます。ただ、設立の理念としては、

マスラボの理念

にあるように原点 は自灯明です。仏教用語らしいのですが、この言葉が書かれた掛け軸をみて、あぁこれだなぁと思ったんです。自らを拠り所として生きる。自ら灯を明るくできるって素敵ですよね。

塾としては積極的に 反転授業スタイルを取り入れています。新しい概念導入は事前に動画をみてきてもらって、塾では演習 ばかりを行っています。基本、パソコンやスマホがないとできないんですが、マスラボは募集をホーム ページからしかしていないので、そういうのが元々できる人が集まってきているとも言えますね。

学年も教科もバラバラです。自由に学んで、自由に質問してという形です。昔の寺子屋はそうだったと思 うんですよね。効率的に学ぶことあまり良しとせず、自分で納得できるように学べばいいと思います。

私も分からなかったらその場で動画を調べたりしてキュレーターの役割を果たしています。世界には何 万人という先生がいます。すぐにいい動画が見つかります。 テキストを使って教えることもあります が、きちんと生徒たちと話をしながら、理解度や習熟度に合わせて個別のカリキュラムをつくります。 このあたりは個別指導のいいところですね。

マスラボ最大の売りは勉強って楽しい!って思えること です。ピリピリした緊張感がなく、ふるやまんせんせいが一人でやってる個人塾なので保護者との距離 も近く、すぐに授業のフィードバックができます。 何より私が一番教えること、学ぶことを楽しんで います。

―― 反転授業の教師の役割の話になると、放置と管理のジレンマみたいな話になって、その間のモヤモヤの部分に「支援」というのがあるというような話になりますよね。古山さんは、マスラボでどのようにしているんですか?

できる子とできない子を組み合わせたりとかして、理解度の差を利用して学び合いが起こるようにしています。理解している子は説明する力をつけさせて、理解していない子は、人から教わるという力を学ばせています。問題を与えて、分かっている子はどうやったらより分かりやすく説明できるかということに取り組ませています。

分からない子は、先生相手だと、「分からん」とか「もう無理」とか言うんですけど、友だち相手だともうちょっと細かく言うんですよね。友だち同士だと、先生に対するときとは違って、発問がうまくいくというのはいいことかなと思っています。

両方グダグダになるときもあるんですけど、そういうときは、前で白板使って説明しますね。そうすると、途中で、「もういい、分かった。自分でやらせて」と言い始めますね。こっちは、説明する気満々なんですけど・・みたいな。(笑)

―― マスラボでは、動画を使って一人で勉強する時間と、学び合いの時間とは、どのように分けているんですか?

基本的には一人なんですけど、同じことを勉強している子たちが集まっているときには、90分授業の半分くらいを学び合いにしたりしています。

―― 生徒の学習進度のばらつきが大きくなってきたときは、どうなるんですか?

そうですね。今は、重なりが大きいからいいですけど、バラつきが大きくなったら、どうするかを考えなくちゃいけないですね。

――「分かりやすく教えてくれる先生」というのをウリにするのは価値を伝えやすいですが、「自分で学 べるようにする」ということをウリにするのは価値を伝えるのが難しいですよね。どんな風にして生徒 募集をしていますか?親御さんの反応はいかがですか?

まずは、ほとんどの人が私のブログを見られて私の人となりを知って問い合わせを頂きます。ブログも 件数は3500件ほどあるので、全部みるのは大変ですが、それなりの数を見られて問い合わせ頂きま す。なので、基本的には成績よりも生き方(考え方)を大事にする塾だということは理解していてもら っています。

募集については、ホームページだけで募集しています。あとの多くは、口コミで来られま す。高槻の田舎で隠れ家的な塾ではあります。メイン通りではないので知る人ぞ知る塾ですね。

親御さんの反応は、とてもいいです。マスラボにきて、保護者の方が口をそろえておっしゃるのが、勉 強の優先順位がまずあがっていくことです。勉強が楽しいということを伝えるのもそうですが、きちん といろんな生活の中での優先順位をはっきりとさせて、勉強の順位をあげてあげることってすごく大切なことだと思うんですよね。それだけで、成績も自然と上がって来ます。当たり前のことです。

自分で学べるってすごく難しいことなので、すぐに成績をあげたい人はうちの塾はあっていませんと 正直にいいます。受験生なんかは、みんな頑張るから、魔法のように成績をあげることなんてよっぽど 努力しないと無理です。単純に暗記をさせて、点数をあげることができてもそれは点数をあげただけ で、あなた自身の学力があがったわけではないですよね。というような話を体験授業の後、保護者の方 と本人にします。それでも、学びたいならぜひマスラボにきてくださいといっています。そうはいっても、体験授業をした後の入会率はほぼ100%です。マスラボの考え方に共感し、満足して いただいていると思います。

―― 自営業になると、将来が不安定になるじゃないですか。ワオにいたときに比べて、そういう不安を引き受けてやっていくことになると思いますが、それについてはどのように考えていますか?

確かに、収入面で生きていくための不安というのは、自営業だったら必ず出てくるなと思っているんですけど、ダメになったときは、ダメになったときだなと覚悟を決めてしまったら、意外と大丈夫だなと、そこを緩く考えていて、いつも家族に怒られるんですけど(笑)。

自分の中では、生徒が来てくれているので、そこでちゃんとした教育をやっていれば必ず結果が出てくるはずだと思っています。自分に自信があるということと、やっていることが未来につながっている教育だから、これがもし失敗しても、その失敗を共有すれば未来へ繋がっていくはずだと思ってやっています。

公教育を変えるのは、校長先生が変わったら元に戻ったりして難しいですけど、私塾なら自由にチャレンジすることができます。自分のやっていることは、間違いなく未来の教育だから、そこでノウハウを蓄えて、動画を共有して、他へも広げていくことができたら、すごいことになるじゃないですか。そう考えると、ワクワクしてきます。

―― 塾に対して学校の成績を上げてほしいと思っている親御さんが多数派だと思います。塾経営者は、自分がやりたい教育と、親御さんの期待に応えるという2つの狭間で悩みながら、期待に応えるという選択をするケースが多いんじゃないかと思います。古山さんがやりたい教育をおもいっきりやっているマスラボがうまくいったら、「それをやっても、ちゃんと暮らしていけるんだ」という希望が生まれると思うんでうしょね。マスラボはスタートして半年ですけど、体験授業をした人が100%入塾したりとか、親御さんからも支持されていますよね。その秘密は何なんですか?

チラシを配ったりしていないし、家の前に看板があるんですけど、田舎すぎて誰も見ないので、募集はホームページとブログだけです。体験授業に来る前に、「こういう思いで教育をやっています」と言うところを、かなり読んできてくれて、いいなと思った人が来てくれています。

集合塾だと自分の子どもが埋もれてしまうとか、詰め込みが嫌だとかという思いを持った親御さんが来ていますね。そういう方たちはニッチなんですけど、必ずいるなと思っていたので、そういう人たちとうまく合致すればいいなと考えていました。

やっている内容は、学校の内容を子供に合わせて動画を自由に学ばせているだけだから、親にとって適当にさせられている感じというのはないんですよ。家に帰って復習したときに「分からん」となるよりも、「もう一回、古山先生の動画見よう」ということになると、親も、自分の子どもが勉強する意欲があるんだなと思って満足してくれますね。

―― ビジョンを最初から明確にしているからマッチングがうまくいくんですね。普通の塾だと思った人がマスラボに来て、普通の塾でやっていることを期待されると苦しくなりますもんね。

そういう人も来られるんですけど、「やれません」と言うんです。「学校の成績を上げて下さい」と言われたら、それは、そういう塾に行ってくださいって言っています。その場の点数を20点あげる教育と、その子が一生勉強に前向きに取り組めるようになる教育とは違う教育だから、それを理解した上でウチを選んでくださいねってはっきり言うんですよ。

―― それをはっきり言うのは大きいですね。

はい。成績すぐには上がりませんよってはっきり言いますから。ただ、3カ月とかというスパンで考えると、必ず上がってきますよとも言います。自分で学べるようになっていくという塾なので、動画を使っていますけど、考え方としてはすごくシンプルかなと思います。

――Facebookを見ていると、古山さんはどんだけ仕事しているんだーと思うんですけど、古山さんの1日のタイムスケジュールを教えてください。

6:00 起床 犬の散歩

7:00 帰宅 家事(風呂掃除とか洗濯物とか)

8:00 セーフティーボランティア(交通安全のおじさん)

8:30 帰宅 家事(掃除)

9:30 動画作成(武雄とか授業で使う予習動画とか)&教材作成

13:30 昼食&昼休憩

16:00 授業準備!

17:00 授業(小学部)

20:00 授業(中学部)

22:00 夕食&風呂

23:00 犬の散歩

24:00 一日の振り返り

25:00  就寝

自分のやりたいことがはっきりしているから、一貫したアウトプットをしていくことができて、それを見て「いいな」と思った人が集まってくる。まだまだニッチだけど、来てくれた生徒の力をつけていくことで確実に未来が創られてくる。古山さんの活動を見ていると、木が養分を吸い上げながら育っていくような力強さを感じました。

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様々な活動に取り組み、未来を探る

―― 数学コーチャーとしての活動は?

公益財団法人である日本数学検定協会認定のプロA級の数 学コーチャーです。数学を解く力だけでなく、人に教えることができる資格です。それなりにハードル は高く、課題も大変でした。

活動としては、本の執筆、コラムの作成など書き物系、出張講座、勉強 会、映像授業などの講座系、そしてサイエンスカフェなどの講演系です。これらはもちろん、数学検定 協会からの推薦もありますが、数学コーチャーは日本全国にいるので、その繋がりで仕事が生まれた りします。

数学を学びたいけれど、どこで教えてくれるかわからないという層は一定数いますので、 まだまだ活動の範囲は広がりそうです。

―― 数学コーチャーの活動というのは、古山さんの活動の中でどのような位置づけですか?

数学コーチャーの活動をすればするほど、数学というのは魅力のある科目だなと思うので、将来的 には、数学の講座や講演をいろんな場所(オンラインやオフライン問わず)でやってみたいと思って います。活動の中での位置づけは、自分の立ち位置、現在地を示してくれると思っています。

数学コー チャーは全国にいて、年に一度、コーチャーの研修会が東京と大阪で開催されます。そこで、それぞれ 塾の先生や学校の先生だけでなく、普通の会社員の人や主婦の方も参加されています。そういう中で数 学という可能性を知ったり、他の先生の授業をみることによって、自己満足になることなく、もっと もっと高みを目指そうと頑張れるんですね。!  「数学で人を幸せにする」というのが私のミッションなので、そういう活動の原点となれる場所で す。毎年研修会には参加しています。同窓会みたいな感じでとても盛り上がって楽しいです。

―― オンライン講座もやっていますけど、あれは、古山さんの中では試行錯誤の1つということですか?

WizIQを使って、高校生の数学を指導しています。問題は事前にLINEで教えてもらって、それを元に授業をします。基本、マンツーマンで家庭教師の位置づけです。

一人で数学を学べない高校生って、結構いるんですよ。オンラインなら夜でもできるので、塾に通えない生徒でも教えることができます。一緒に学ぶこともできるし、ノウハウを溜めていくといろんなことができそうです。

また最近は、twitterなどでもオンライ ンで大学生に授業をしています。講座の要素によって使い分けている感じですね。 将来的には一対多 でチャレンジしてみたいです。

―― どうしてオンライン講座をやろうと考えたのですか?

田原さんがWizIQを使って、オンライン会議をされているのをみて、これは普通に授業でも使えるな と思ったのがきっかけです。もともとワオにいた頃から、オンライン家庭教師という部署があって、そ こでも同じようなことをしていました。しかし、コスト面で実現は難しいかなと思っていましたが、 WizIQは驚くほど安く、しかも録画機能もある。

英語だったのですが、操作も簡単だし、Mac& Windows問わずできるという利点もあり、迷わず契約しました。初めは、質問対応に使っていたので すが、オンラインでもいいから先生の授業が受講できないかという問い合わせが何件か入って来たの で、それなら試しにやってみようということでやっています。現在は、高校生と大学生が中心です。

―― 生徒は、どのようにして古山さんにたどり着いたのですか?

どの生徒もネット経由です。あとは、人の紹介です。「高槻 数学」で検索1位とSEO対策も上手く いっていると思います。特に募集はしていなかったのですが、オンラインやっているというのをブログ にかいていて、うちの子もできますでしょうか?という感じでした。

―― 古山さんは、『これだけ!微分積分』という本を出版されましたが、書籍の執筆をしてみていかがでしたか?

本を書くというのは自分の勉強にすごくなります。そして、やはり大変でした。もともと書くのは好き だから大丈夫かなと思ったんですが、教えるのとはまた違う、本ならではの難しさがありました。

 

―― 本ならでは難しさとは?

授業だったら、途中で修正が可能ですけど、本はその順番が何より大切で、どのように伝えて行くの が一番読者にとって分かりやすいかというのに苦労しました。ポイントを何度も繰り返して、重点的に 教えるということが授業ではできますが、本だと、「それ、さっき書いてたやん」ってなりますから ね。

なので、今回の書籍は、そういう意味では数学の体系化を考えるきっかけになりました。

でもいい経験です。またチャンスがあれば出版してみたいですね。 何より、自分の想いをきちんと読 者に伝えられる機会があるってすごく幸せだなぁと思って、幸せを毎日噛み締めながら書いていまし た。出版社の方の校正にも助けられて、非常に分かりやすい本になったと自負しています。

―― 今後、どのような活動をしてみたいですか?

本当の学びの楽しさを感じながら成長できる環境の塾を目指します。成績があがる塾を目指さず、マス ラボってなんか良いよねっていう塾を目指したいです。 今は独立して毎日必死に働いている状況です が、落ち着いたら、ライフワークとして幼児から社会人まで学べる、算数、数学の学習サイトをつく りたいです。今は動画を貯めていて、1400本を超えたところですが、まだまだ足らないんで、これから もつくり続けます。

―― ここでも明確な未来がイメージされていて、そこに向けてコツコツと作業を進めているんですね。新 しいサイトができたら、どんなことが起こりそうですか?

新しいサイトができたら、数学が好きな人、学びたい人がもっともっと増えると思います。好きな人 が増えると雇用が増えるので(学びたい人はお金をはらっても学びたい)、経済効果もありますね。

そこで人と人がであって、コラボもできるかもしれないですし、何が起こるかは分かりませんが、今ま でそういう場所っていうのはサイエンスカフェみたいなところにいかないとなかったから、そういう環 境をつくれたらいいなぁと思っています。そして、世の中から数学が苦手な人、嫌いな人を少しずつな くして、日本の教育に貢献すること。これが一番のミッションです。

古山さんは、収益化している仕事の外に、いろいろな試行錯誤を同時にやっています。これは、いつも様々な可能性を探っているからだと思います。

お話をうかがって、古山さんのように、未来を見据えて目の前の現実に取り組んでいる人たちが、お互いに共鳴しながら繋がっていくことで、大きな動きが生まれてくるはずだという確信が生まれました。

マスラボのHPはこちら

共創(Co-Creation)はパワーを生み出しながら広がっていく

「反転授業の研究」の田原です。

ずっと個人で仕事をしてきた僕が、「反転授業の研究」に関わるようになり、生まれてはじめてコミュニティの運営をしたり、オンライン勉強会を企画したり、インタビュー記事を書いたり、それが何を意味するのか分からないままに、手探りでいろいろやってきたんですけど、その中で、

「もやもやしたところから、自分一人で伸びていくのは難しいけど、他人が媒介になってくれると、それを足場にして伸びていけるようになる」

というパターンと、繰り返し、繰り返し、いろんなレベルで出会いました。

僕の中では、これが、

「共創(Co-Creation)」が起こるメカニズム

なんじゃないかという確信が、日々高まっています。

 

共創が起こると「1+1=美」になる

意味が分からないままに直観に基づいてやっていることに対して、あるとき、誰かが、

「あなたのやっていることは、このような価値がありますね。」

「あなたのやっていることのおかげで、私は助かりました。」

などと教えてくれるときがあります。そのときにはじめて、自分のやっていることの価値を信じられるようになり、その方向に力強く踏み出せるようになるのです。

 

このことに気づいたきっかけの1つが、インタビュー記事でした。

もともとは、オンライン勉強会の登壇者を紹介するために、インタビューをして記事にまとめていたんです。

相手の話を傾聴し、その人のやっていることがどのような価値があるのかということを自分の視点で書いていきました。

すると、インタビューされた側から、「田原さんからインタビューされたことをきっかけに、行動できるようになりました」という声をいただくようになりました。

僕のインタビューが、相手にその人が持つ価値を知らせることになり、

さらに、インタビューされた相手が、僕にインタビューすることの価値を教えてくれたんです。

 

このように、お互いに引き出す関係は、

1+1=2

じゃないんです。

1+1=美

だと思います。

U理論の翻訳者で、Co-Creation Creatorsの由佐美加子さんは、

「美に触れると元気になる」

と言っています。お互いがお互いの力を引き出しあう共創が起こると、心の底から元気が出てくるんですね。

実際、僕は、「反転授業の研究」で、たくさんの人が、意味が分からずにやっている行動に対して「価値」を与えてくれたおかげで、どんどん伸びていくことができるようになり、本当に元気になりました。

 

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共創が起こる「場」には、美が溢れる

1対1の関係ではなく、「場」の中に、お互いがお互いの媒介になるようなつながりが無数に出来上がるとどのようなことになるでしょうか?

自分以外の誰かの媒介となり、その人が伸びていくのを助けようというマインドがコミュニティに溢れたら、すごいことになるのではないでしょうか?

いたるところから、ものすごいエネルギーが溢れてきますよね。

最近、杉山沙奈さんが考えた「後押しシステム」が動き始めました。

これは、自分の周りの誰かに「あなたのやっていることには価値があるからみんなにシェアしてください」と推薦する仕組みです。

お互いが誰かの媒介になっていこうという仕組みです。

自分のやっていることの価値に確信が持てなかった人に、外から価値を伝えることによって、次々と出てくれるようになる後押しシステムは、コミュニティのいたるところで「共創」を引き起こしていくと思います。

「反転授業の研究」に「美」が溢れて、一緒に元気になっていくというイメージが湧いています。

 

共創(Co-Creation)の輪は、エネルギーを生み出しながら広がっていく

「反転授業の研究」を始めた2年前、こんなことを考えていました。

21世紀スキルや学び合いを広めていこうという僕自身は、学び合いの経験を持っていない。

まずは、オンラインコミュニティで学び合いをして、その体験を通して分かったことを、それぞれが教室に持ち込んでいこう

団塊ジュニア世代の僕が受けた教育は、おもいっきりトップダウンの一斉講義型の授業ですし、仕事も予備校講師と自営業だったので、協力する、コラボレーションするということがどういうことなのか、当時は分かっていなかったのです。

でも、体験を通して「共創(Co-Creation)」の原理に出会った今は、確信を持って、その価値を発信できるようになりました。

 

トップダウン式に管理する場合、管理者がパワーを独占し、管理しやすくするために被管理者のパワーを削いでいきます。

被管理者の数が増えると、管理者はもっとパワーが必要になります。

管理者が持つことができるパワーの限界がボトルネックになり、組織を維持できる限界になります。

さらに、パワーを管理者に集中させて組織を維持するために、情報格差や機会格差が利用されることもあります。

 

しかし、コントロールを手放して共創が起こるようにすると、各メンバーからパワーが溢れだします。

百花繚乱に咲き乱れたメンバーの多様性が、組織の創造性の源になります。

このような組織にはボトルネックが存在しないので、シンクロしながら横へ横へ広がっていきます。

「反転授業の研究」に共創が起こり、「美」に触れて元気になった教師たちが、それぞれの教室で共創を引き起こして生徒を元気にしていくと、どんなことが起こるでしょうか?

3000人を超えるメンバーが、それぞれの現場で共創を引き起こしき、それが、さらに派生していったら、どんなことが起こるでしょうか?

夢が広がっています。

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反転授業と民主主義

「反転授業の研究」の田原です。

今日は、ずいぶん大きなタイトルをつけてしまいました。

僕の手にあまる大きなテーマなので、稚拙なことしか書けませんが、このブログ記事をきっかけにして様々な意見が出てきて、よりよいビジョンが生まれることを信じて投稿します。

 

私が「反転授業の研究」で経験したこと

これまでも何度も書いていますが、「反転授業の研究」に関わる前は、私は予備校講師として、自分の成功と、自分が担当している生徒の合格を願って生活していました。

そんな私の考えが大きく変わったきっかけは、「集合知」という考えに出会ったことでした。

もともと大学院で生物物理を学び、複雑系や自己組織化という考えに親しんできた私にとっては、

「対話によって、グループの中に集合知が創発する」

という考えは、とても魅力的なものでした。

それが可能なのであれば、ぜひ、体験してみたいと思って、好奇心に火が着いたのです。

自己組織化現象が起こるための原理は「正のフィードバック」なので、「反転授業の研究」の中で生まれる小さな動きにフィードバックをかけて増幅していくということをひたすら繰り返していきました。

具体的には、

・自己紹介をしてもらう。

・自己紹介に出てきた内容に対して、好奇心を持って質問していく。

・関連性の強そうなメンバーと繋いでいく。

ということを、毎日毎日続けていました。

グループ内での活動量が多い人にオンライン勉強会で登壇してもらい、さらに光が当たるようにしました。

すると、グループの活動がどんどん活性化してきて、グループの人数も、毎月100名を超えるペースで増えていきました。

ある程度、活動の方向性が決まってきた段階で、グランドルールを設定しました。

このグループは、テクノロジーを利用することによって学習者中心の学びを作り出していこうと考えている人が、対話を通してアイディアや理解を深めていこうというグループです。

多様性のあるメンバー間の対話により、自己組織化的に集合知を得ることを活動の目標にしています。

また、メンバーが協力し合って集合知を得ることを体験することにより、21世紀型スキルを磨くための自己研鑽の場でもあります。

「究極の反転授業」のような唯一の解を目指すのではなく、活発な対話が繰り広げられることによって、それを養分とした豊かな生態系が生まれ、「多様性のある森」が育った結果、それぞれにとって有益な果実が実るというイメージで運営しています。

【グランドルール】

自由でオープンな対話が行われるために、最低限のルールを設定します。(ルールについての意見もお願いします)

・知識レベルや社会的地位などによらず、平等に対話すること
・相手を誹謗中傷しないこと(意見の違いはOK)
・他の部分のコメントと関連するときは、リンクを張ること
・できるだけ対話に参加すること

※相手の意見に対して違う意見を述べるのはOK。その意見を言っている相手の属性について批判するのはNG。
NG例:「学生のあなたには分からないと思いますが・・」
※話の前提を確保するために、必要な情報はリンクを張って共有してください。
※対話の量と質が閾値を超えたときに、自己組織化が起こります。

【メンバーに求められるスキル】

・自己と他者のメンタルモデルの違いを認識し、その違いによって断絶するのではなく、そこから多角的な視点を獲得し、創造へつなげること。

・相手の話をよく読み、良質の問いによって、相手の言いたいことを十分に引き出すこと。

参考「どんぐり教員セミナー」
http://www.linkandcreate.com/#!untitled/cl5d

【主な探求テーマ】

・動画授業の作り方
・授業設計
・アクティブラーニング
・探究型学習
・参加型組織、学習する組織
・ファシリテーション

誰もが、お互いを「●●さん」と呼び合うようにし、自由に対話が起こるようになると、様々なコラボレーションが起こるようになりました。

そして、あることに気がつきました。

自分の長所は分からないが、人の長所は良く見える

ということです。

オンライン勉強会の登壇者にインタビューをするようになり、相手の話を傾聴し、それをインタビュー記事にまとめ、そのときに、私が気づいた相手の長所や、実践に対してどんな価値を感じるのかということを書いていったところ、それが相手にポジティブな影響を与えるのだということに気づいたのがきっかけでした。

また、他の人からのフィードバックによって、自分自身も自分の強みに気づくことができ、行動力がどんどん増してきました。

そのことに気づいてから、積極的に気づいたことを相手に伝えるようになりました。

私だけでなく、グループの多くのメンバーがそのような行動を取り始め、グループ内の活動に参加する人が、どんどん元気になっていくという状況が生まれてきました。

信頼関係のネットワークが広がると、

自分には苦手なことがあるけれど、それが得意な人もいるから、協力すればやりたいことができる

と考えられるようになりました。

そして、実際、何かやるごとに、多くの人が手を挙げてくれてチームができ、協力し合って学び合いのコミュニティが出来上がるようになりました。このような経験を繰り返すごとに、協力すれば価値を創造できるという自信が生まれ、希望が湧いてきました。

「対話によって、グループの中に集合知が創発する」ということに好奇心を抱いて始めた活動でしたが、実際にやってみると、予想以上のものでした。

単に集合知が創発するだけでなく、そこに関わった人たちが元気になり、場合によっては生き方に大きな影響を与えるようなインパクトを与えたのです。私は、この経験によって人生観が大きく変わってしまいました。

『U理論』の翻訳者である由佐美加子さんは、次のように言っています。

「美に触れると元気になる」

これは、私たちの経験を端的に表しているものではないかと思います。

 

教室に集合知を創発させれば元気になるのではないか

このような人生を変えるような強烈体験をしたことで、1つの考えが浮かぶようになりました。

教室に集合知を創発させれば、子どもたちが元気になるのではないか

そのために必要なことは、次のことだと考えています。

(1)教師が権威を手放し、生徒の主体的な活動にフィードバックを与え支援していくこと

 

学校→教師→生徒 というトップダウンに管理が降りてくる状況では、生徒はお互いに孤立し、主体的に行動したり、協力したりすることができません。

管理を強める教師が恐れるのは、生徒の「勝手な行動」であり、生徒の力を弱めて、教師が思うとおりに行動するようにしているわけです。

第7回反転授業オンライン勉強会でお話しくださった組織コンサルの鈴木利和さんは、次のように言っていました。

「このときに、フラットな関係というのが大切。権威がいるとその意見を聞いてしまうんだけど、フラットな関係で権威がいないと、『えー本当?』となって、自分で調べてみようということが起こるんです。だから、その可能性に期待しているんです」

「フラットな関係という前提がないと、集合天才はおきないんです。」

教師が管理を手放し、生徒の主体的な学びを促すファシリテーターになって学び合いを起こしていくのがアクティブラーニングであり、アクティブラーニングを効率的に行うために知識のインストールを教室外に置く方法が反転授業です。

ここでは、教師の役割が教室を管理する「壇上の賢者」から、生徒の主体的な学びを支援するファシリテーターへと変化するのです。

(2)暗黙知→形式知→集合知

一人では解けない問題をチームで協力することで解くことができたり、一人では実現できないプロジェクトなどを、チームで協力して実現できたりという経験は、生徒の生き方に大きな影響を与える強い経験になるはずです。

そのために必要なのは、一人一人の試行錯誤を共有することです。

共有するためには、言語化して説明する必要があります。

たった一人で技能を磨くだけであれば、暗黙知を蓄えるだけでも十分かもしれませんが、集合知を発生させるためには、それぞれが蓄えた暗黙知を、言語化して相手に伝わるような形(=形式知)にする必要があります。そうすることで、それぞれの気づきが共有され、お互いにヒントを与え合って学び合いが促進されていきます。

暗黙知を言語化するために有効なのは、好奇心を持ってお互いに問いかけることです。

そして、集合知を創発させるために必要なのは、自分と違う考えの人から学ぼうとする姿勢です。

アクティブラーニングや反転授業を通して、このような経験をした人は、意見が異なる他者を競争相手と考えるのではなく、協力して価値創造する「共創相手」と捉えるようになります。

ここに根本的な視点の転換があります。

孤独から解放され、元気になるメカニズムがあるのです。

 

「競争・民主主義」から「共創・民主主義」へ

鈴木利和さんにインタビューしたときに、印象に残る言葉がありました。

集合天才があると信じるということは、民主主義を信じるということです。

反転授業の話をしていて、「民主主義」という言葉が出てきたのが意外だったので、強く印象に残っています。

団塊ジュニア世代の私が、「民主主義」という言葉を聞くとすぐに連想されるのが「多数決」という単語です。

小学生のとき学級会があり、机をコの字にならべ、何かの議題について話し合い、時間が来ると議長が多数決を取るという記憶が蘇ります。

そして同時に、反対意見に決定して文句を言うと、議長役の学級委員から、

「民主主義なので、多数決に従ってください!」

と言われた光景が思い浮かびます。

これは、同世代の多くの小学校の教室で繰り広げられた光景なのでしょうか?

しかし、鈴木さんの口から出てきた「民主主義」とは、これとは異質のものです。

学級委員長が言っていたのを「競争・民主主義」、鈴木さんが言っていたのを「共創・民主主義」と呼んで区別することにすると、この2つは、同じ「民主主義」という言葉を使っていますが、ベクトルの方向性が全く逆向きです。

 

「共創・民主主義」は、集合知を創発させることを目標とし、多様性を創造の源にします。

お互いが自分の考えの土台となるメンタルモデルを動かす覚悟を固めて、お互いの意見を傾聴していくとカオスが起こります。

そのカオスの中で、各メンバーが暗黙知を蓄え、それを言語化して共有し、集合知を創発させていったとき、すべてのメンバーの力が集約し、一人一人では到達できないゴールへ到達することができます。

このとき、異質な考えは、アウフヘーベンを起こしていくためのエネルギーになるのです。

 

一方、「競争・民主主義」では、「共創」ではなく「競争」の原理によって動きます。

意見が異なる相手は戦うべき敵であり、自分の意見を通すことが目的になります。

話し合いの目的は、相手を言い負かして、迷っている人を味方につけていくことになり、すでに多数を占めている側は、話し合いの最後に行われる多数決によって勝利を得るのを待つのみです。

話し合いは、少数派に対して「民主主義なので、多数決に従ってください!」と結論を押し付ける単なる儀式になり、少数意見に属するメンバーには無力感が漂います。

 

私たちが望んでいるのは、どちらの「民主主義」なのでしょうか?

「共創(Co-Creation)」は、そこに関わったすべての人に自信を与え、元気にしていきます。

自分たちに価値があると信じられるようになり、自分たちが生み出すものを共有することで生きていけるという実感を得ることができます。

私は、アクティブラーニングや反転授業が広まり、多くの教室で共創により集合知が生まれるようになり、教師や生徒のマインドセットが変わっていったときに、「共創・民主主義」が生まれるということを信じています。

変容型ファシリテーターのBob Stilgerさんは、『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう?』の中で、「トランスローカル」という概念を紹介しています。

これは、

ローカルのコミュニティが物語を紡ぎ、それがお互いにつながったときに社会変容が起こる

というものです。

教室は1つのコミュニティです。

学校も1つのコミュニティです。

それぞれの現場で学び合いが起こり、共創によって集合知が生まれるという体験を共有し、それを自分の言葉で語っていったとき、インターネットがそれらの物語を繋ぎ、メタレベルでの物語を生み出していくはずです。

メタレベルの物語が生まれ、それが共有ビジョンになったとき、「競争・民主主義」から「共創・民主主義」への相転移が起こるかもしれません。

私は、「反転授業の研究」に関わるようになり、教育に関わる多くの人と接し、一緒に協力して活動し、多くの素晴らしい体験を共有し、自分たちの力を信じることができるようになりました。

 

共創によって未来を創っていく人たちの輪が広がっていくことを信じています。

 

 

 

Bob Stilger著『未来が見えなくなったとき、僕たちは何を語ればいいのだろう』が社会的変容への地図となる

「反転授業の研究」の田原真人です。

NPO法人home’s viの嘉村賢州さんがFacebookでこの本を紹介していたのを見て、直観的にこの本は読まねばならない本だと感じて手に取りました。

 → 嘉村さんのインタビューはこちら

本を読み始めてすぐに、自分の直感は正しかったことが分かりました。

東日本大震災から4年、僕たちのグループ「反転授業の研究」で起こってきたことを、コミュニティ再生という視点から見直すことができました。

この本から得られた多くの気づきをまとめて、みなさんとシェアしたいと思います。

311後の世界に「反転授業の研究」は生まれた

本を読み始めて、「反転授業の研究」は、311後の世界に生まれた、新しい世界の創造を目指すコミュニティの中の1つだということに気づきました。

今まで、そのように捉えたことはありませんでしたが、311後の様々なコミュニティ再生の物語を読み、僕たちがやってきたこととの数多くの共通点を見出したことで、「僕たちの物語」を、もっと大きな枠組みのメタストーリーとの関係で捉えられるようになりました。

2011年の3月末、仙台で友人たちと食事をとりながら、自分の口から出てきた言葉を今でもはっきりと覚えています。

本当に残念なことだけど、311を境に世界は変わってしまった。311以前の世界は、もう存在していない。

 

そのことを認めて、今から何ができるのかを考えようと思う。

311以前に思い描いていた将来設計は、311以前の世界を前提に成り立っていたものだったので、世界が変化したことによってすべて放棄することになりました。

そして、未来が見えなくなってしまいました。
 
表面的には311以前と連続している世界が目の前にありましたが、世界を成り立たせていた土台が大きく揺らぎ、同じものを見ても、同じ解釈コードでそれを解釈することができなくなりました。

それから数年間は、経済的にも精神的にも、「未来へ繋がる何か」を探す日々が続きました。

誰かと話したいという欲求が、これまでにないほど高まりました。

そんな中で出会ったキーワードが「反転授業」でした。

そして、オンラインで繋がっていた友人たちに声をかけ、少人数でオンラインの読書会を始めたのです。

311がなければ、反転授業と出会っていなかったかもしれないし、仮にであったとしても自分から動いて読書会を始めようと思わなかったかもしれません。

未来が見えなくなって、未来を探しているときだったからこそ、自分から動いていかなければならないという気持ちが生まれ、行動につながったのだと思います。

311以前は、僕は、ほとんどリーダーシップを発揮するようなことはなく、集団から少し離れて自分のペースで安定した生活を送っていました。 自分が3000名を超えるコミュニティの主宰者になっている今の状況は、そのときの自分には全く想像ができなかったものです。

この本の中では、たくさんの「リーダーシップをとる普通の人」が登場します。

未来が見えなくなると、人はカオスの中に投げ込まれます。

そのときに、安定した日常の中では眠っていたものが呼び起こされ、未来を探して行動し始めるのではないでしょうか?

それは、僕にも起こったことだし、時代認識を共有する多くの人にも起こったことだと思います。
 
この本を読みながら、震災から4年たって、僕自身や、僕の周りで起こったことについて多くの経験が、言語化されないまま放置されていたことに気づきました。

そして、ボブさんの言葉を借りながら、少しずつ言語化されてきて、より大きな枠組みの中で現在地を知ることができました。

 

自己組織化のプロセス

ボブさんが、自分自身のコミュニティの仕事の原則をリストアップしていました。

●あらゆるコミュニティはリーダーに満ちている

●何であれ、コミュニティの中に答えはある

●誰も待たなくてよい。いま改善するための資源はすでにあるのだから

●明確な方向感覚が必要だ。エレガントで最小限のステップで進むために

●一度に一つずつ進める。歩むことで道を創りながら

●局地的な仕事は、世界の同種の仕事とつながれば社会的変容と深化する

このリストは、「反転授業の研究」が歩んできた2年間を思い浮かべると、うなづけることばかりです。

「反転授業の研究」に「多様性のある森を育てる」というビジョンを掲げ、どうやって自己組織化が起こるのかということを考えていたときに、「外部から有名な人を連れてきて話を聞くというようなことを当分やめよう」と思いました。
 
自分たちの学び合いを促進していこうとしているときに、外部の権威の存在が邪魔になると思ったのです。

それで、コミュニティの中で活動的な人に光を当ててオンライン勉強会のスピーカーになってもらうことにして、活動がより活発になるような仕組み作りをしていきました。誰もが一歩踏み出してリーダーシップを取れる状況を作り出していこう。最初からリーダーが存在するのではなく、誰もが一歩踏み出せばリーダーになるという状況が大事だと思ったのです。
 
それが、どこへ向かうのかは全く見えていませんでしたが、直感を信じて、少しずつ未来を創っていきました。
 
はじめはなんとなく始めたことが、やっていくうちに価値に気づくということもたくさんありました。
 
そのようなものの一つが勉強会のスピーカーを紹介するためにはじめたインタビューです。インタビューされた人が、もともと潜在的に持っていた力に気づき、力を発揮するようになるという経験をしたことで、インタビュー記事を書いて応援することに大きな価値を感じるようになりました。2年間で40本以上のインタビュー記事を書きました。
 
グループの運営にかかる費用も、グループ内のコラボレーションによる有料ワークショップから捻出できるようになりました。コミュニティ内の参画型の学びが価値を生み出せるようになり、「有名講師」が存在しなくても、受講者が集まるようになってきました。
 
まさに、コミュニティ内に答がありました。
 
自分たちの力を信じて、一歩一歩行動しながら未来を創っていったのが、よかったのです。
 
僕たちがこれからやることは、「反転授業の研究」の物語を語り、他のコミュニティの物語と繋がることかもしれません。

ボブさんの原則が正しいのなら、それは、さらに大きなうねりを生み出し、社会変革につながる道になることでしょう。

新しいパラダイムの創造

ボブさんが、東北地方で行った様々な対話の中で生まれた見解は、次のようなものでした。
 

東北地方にとっても、そして日本全体にとっても、古い価値観を復興するのではなく、新しいパラダイムを創造することが絶対に必要だ。

そして、新しいパラダイムの創造のために必要な5つの実践が述べられていました。

●静かにする。
●つながる。
●聴く。
●共感する。
●混乱しておく。

この中で、最も印象に残ったのは、「混乱しておく」ということ。本当の明瞭さが湧きおこるまでそのままでいるということが大切だということ。未来が見えないモヤモヤの中で、知的保留をしながら未来が訪れるのを待つことの重要性を感じ続ける日々だったので、「混乱しておく」という言葉には勇気づけられました。
 
ボブさんは、また、次のように言います。

持っているものを探せ。

これも、大変示唆に富む言葉です。
 
グループの中にはたくさんの知恵がバラバラに散在していて、使われるのを待っていると感じています。
 
それが行動として現れるためにコミュニケーションが必要で、お互いの状況を話して、お互いに貢献できそうなこと、協力できそうなことを見つけようとすると、散在していた知恵を使うことができるようになり、未来が見えてきます。
 
未来はどこかにあったのではなく、組み立てられていないジグソーパズルのように自分たちの中に散在していて、お互いがどんなピースを持っているのかを話し合うことで組み合わされて大きな絵を共有できるようになるのではないかと思います。
 
協力できるという実感は自信につながり、
手を挙げれば誰かが手伝ってくれるという安心感が行動への閾値を下げていきます。
そのような安心・安全な場が出来上がれば、次々にコラボレーションが起こり、未来を創る動きが加速し始めます。
 
未来を創るために必要なものは、自分たちの中にあったのだという実感があります。
 
ボブさんがコミュニティ再生のために使用する変容型シナリオ・プランニングやアート・オブ・ホスティングなどの手法に、大変興味が湧きました。これらは、僕たちのコミュニティが未来を見つけるために役立つものになると思います。

未来は相互に耳を傾けることで創られていく

 
ボブさんは、「未来は相互に耳を傾けることで創られていく」と言います。
 
これは、311以前に聞いても、まったくピンと来なかったでしょう。

なぜなら、311以前、僕は、人の話を聴くということをあまりしていなかったからです。

自分の頭から論理的に導き出された答に従って行動していたため、人の話を聴く必要性を感じていなかったのです。
 
しかし、311の後、論理を成り立たせる大前提が崩れたことで、本当に混乱しました。
 
何を信じて、どうやっていけばよいのかが分からなくなったのです。

だから、人の話に耳を傾けられるようになりました。
 
いろんな人から学びたいと思ったのです。
 
他の人が、どんなことを感じたり、考えたりしているのかを知りたいと思ったのです。

たくさんの人の話を聴いていくうちに、次のことに気がつきました。

自分の判断を保留して、好奇心を持って人の話を深く聴き、自分の感じたことを素直にフィードバックしていくと、相手の中で暗黙知だった部分が言語化され、物語化されていくことを支援できるのです。そして、それは相互に起こることなので、僕自身の暗黙知も言語化されていき、形式知として他人と共有できるようになりました。
 
対話を重ねることによって、何をすればいいのかが明瞭になり、誰と協力すればいいのかが見えてきました。
 
まさに、「未来は相互に耳を傾けることで創られていく」ということを実感しました。

自分らしさが他者とのつながりから生じる

 
この本を読んでいると、心を大きく動かす宝物のような言葉に頻繁に出会います。
 
旧世界では、既存のヒエラルキー構造のポジション争いをするための競争を行っていて、その競争で勝利することが、成功の定義とされていたのではないでしょうか。そこでは、自分らしさとは、競争に勝つために集めたアイテムやトロフィーによって他者と差別化することによって手に入れるものだと考えられていたと思います。
 
しかし、その世界が成り立たなくなることをリアルに感じ、自分たちのコミュニティの中から共創(Co-Creation)によって未来を作り出していこうとするとき、自分らしさの捉え方が180度変わります。
 
ボブさんの言葉は、そのことを鋭く言い当てています。

これまで何度も、人々が自分の「色」を見出す必要性について話すのを僕は聞いてきた。それは他者から自分を切り離す手段としてではない。むしろもっと、信頼できるつながりの手段としてだ。世界は時に言葉ではとらえにくいパラドックスに満ちている。自他の区別や自己完結への欲求を手放すことができたとき、我々は我々自身のユニークな自己に出会うことがある。自分らしさというものが、他者とのつながりの中から生じるのだ。

この言葉に感銘を受けて、次の記事を書きました。 → Co-Creation(共創)によって自分を輝かせる「森」を作る
 

並列する旧いものと新しいもの

ボブさんは、災害後の社会は、次の典型的な三段階を通ることが多いと言います。

1)緊急事態と救出

2)レジリエンス

3)長い道のり

「反転授業の研究」は、レジリエンスの段階で生まれました。
 

人々が集まりはじめ、変化を起こすためにそれぞれの知識や資源を持ち寄り利用する。誰もが参画する

ボブさんは、2013年末から2014年はじめにこのような動きが日本各地で生まれていたと言います。僕たちも、まさにそのような動きの中で生まれてきた活動の一つだったのだと思います。
 

ボブさんがこの本の中で示してくれた図が、僕たちの現在地を把握するのにとても役立ちました。

変容のパターン

20世紀のパラダイムはピークを過ぎて下り坂に入ったときに311が起こりました。
 
それをきっかけに旧世界のパラダイムに別れを告げた人たちが現れ、お互いに磁石で引き寄せられるように集まりはじめ、新しいことを始めました。僕も、まさにその中の一人でした。
 
オープンでフラットな関係を土台にして「多様性をもった森」を育て、そこでの実りを収穫して分かち合っていくことをビジョンに掲げたところ、毎月、100名以上を超える人たちがグループに参加してくれるようになりました。その増加のペースは今でも止まっておらず、増え続けています。
 
member

そこでの体験を通して、「共創するためにはどうすればいいのか」という知恵が、少しずつ蓄積して、共有されてきました。

個々のビジョンが共鳴して、共有ビジョンに近いものが生まれつつあります。
 
僕たちのコミュニティは、ボブさんの図でいうと、旧パラダイムと新パラダイムの間の橋が架かる手前の状況にいるのではないかと思います。

未来を創ろうとしている皆さん、繋がりましょう!

 
この本を読んで、僕たちがやってきたことを大きな流れの中の1つとして位置づけることができました。
 
そして、同じようなビジョンを持って自己組織化している多くのまだ出会っていないコミュニティが存在するということに気づきました。
 
それらと出会うために、「反転授業の研究」の物語を語っていきます。
 
 → 「反転授業の研究」の物語はこちらから順に読むことができます。

他のコミュニティの物語も聴きたいです。

コミュニティ同士が出会うことで、次のレベルの自己組織化が起こり、それが社会変容へと繋がっていくという道筋が、ボブさんのおかげではっきりと見えました。

ボブさんの本は、日本に散在している新しい未来を創るコミュニティに地図を与え、それらを結び付けるものになるはずです。
 
未来を創るために動いているみなさん、繋がりましょう。

ボブさんの声も、ぜひ、聞いてみてください。

TEDxTokyo スティルガー、バーニグ 15/15/10 日本語

英語版はこちら

Learning Resilience

 

小林昭文さんの『アクティブラーニング入門』を読んで

アクティブラーニングの実践者であり、伝道者である小林昭文さんの著書『アクティブラーニング入門』を読みました。

active-learning

小林さんと出会って、アクティブラーニングに目覚め、小林さんのやり方を参考に実践を積んできた僕としては、改めて自分がやってきたことを理論的な枠組みの中で位置づけるよい機会となりました。

小林さんとの出会い

小林さんとの出会ったきっかけは、僕が反転授業のやり方を模索していた2013年の夏、小林さんのブログ

授業研究AL&AL

を見つけたことでした。そこに書いてあったメールアドレスにメールを送り、スカイプでお話をすることができました。

さらに、小林さんが「反転授業の研究」に参加して下さることになりました。

小林さんのブログには、日本の教育システムが工業化社会の労働者を育成するためにどのように機能しているのか、学校教育の中の様々な「ヒドゥンカリキュラム」が、従順で忍耐強い労働者育成にどのように関わっているのかということが分かりやすく書いてあり、21世紀の知識基盤型社会においては、誰もが自分で考えていくことが必要で、21世紀に生きていく力をつけるためにアクティブラーニングが必要なのだと主張していました。

それまで予備校で物理を教えてきた僕は、そのようなことを考えてこなかったので、大きな衝撃を受けました。同時に、自分自身の中にも日本の教育を受けてきた中で刷り込まれたマインドセットがあり、その存在を明らかにしていくことで、マインドセットを変えて、自分をもっと自由にしていきたいと思いました。

アクティブラーニングや反転授業に取り組む本当の意味を理解したことで、この活動に対する軸が定まり、それが、今の活動へと繋がっています。

小林さんとの出会いは、「反転授業の研究」の活動の起爆剤にもなりました。第1回のオンライン勉強会で、

小林昭文さん(産業能率大学教授)

横山北斗さん(関東第一高校教諭)

芝池宗克さん(近大附属高校教諭)

の3人にお話しいただくことにして準備を進めていたところ、佐賀の武雄市での反転授業が始まり、NHKなどで「反転授業」が報道されたことで、オンライン勉強会に110名の方が参加して下さいました。それをきっかけに、活動が盛り上がり、2年たった今では3000名を超える活動的なグループへと成長しました。

kobayashi-hanten

 

とりあえず真似しやすい「小林流」アクティブラーニング

小林さんのアクティブラーニングの方法の特徴として、「とりあえず真似しやすい」という点が挙げられると思います。

それは、授業形式がいつも一緒で、その形式の中のいくつかの要素が、どのような役割をしているのかを明確にしてくれているからです。

第2章 AL型物理授業の概要

で図示しているように、小林さんの授業構成は次のようになっています。

①学習内容の説明(15分間)

(1)パワーポイント&プリント配布

(2)インタラクティブ・インストラクション

②問題演習(35分間)

(1)問題と解答・解説プリントを配布

(2)ピア・ラーニング

③振り返り(15分間)

(1)確認テスト

(2)相互採点

(3)リフレクション・カード記入

授業の最初には、必ず次のことを確認します。

目的 ・・ 科学者になること

目標 ・・ 科学的対話力の向上

態度目標(ルール) ・・ しゃべる、質問する、説明する、動く(立ち歩く)、チームで協力する、チームに貢献する

僕の実践は、小林さんのやり方を真似するところから始まりました。

最初は、それぞれの要素がどのような意味を持つのか、なぜ必要なのか腹落ちしないままで進めていったのですが、そうするとうまくいったり、いかなかったりしました。

自分なりにアレンジして、目的、目標、態度目標を、毎回言わなくてもいいだろうと思って省略したりもしました。
 
しかし、その頃読んでいたワールドカフェの本に、場を創る上でグランドルールが重要だということが強調されていたのを読んで、

「あぁ、目的、目標、態度目標は、対話におけるグランドルールの役割を果たしていて、教師が権威をふるって生徒をコントロールする代わりに、グランドルールがあることで授業が成り立つ仕組みになっているんだ」

と気づきました。

グランドルールの重要性に気づいたことによって、それ以降、グランドルールの確認を省略することは無くなり、グランドルールの設定の仕方を自分なりに工夫するようになりました。
 
こんな感じで、実際にやってみて、失敗して、気づいて、それぞれの要素の意味や機能についての理解が少しずつ深まっていったという感じです。

小林さんの授業の構造は、長年の実戦によって実践的に生み出されているものなので、それぞれの要素に意味があって、そのような形になるまでの試行錯誤の歴史が背後に蓄積しています。

それは、すぐには分からないのですが、自分が実践をしながら、各要素の意味を考えていくと、自分の理解度に応じて、後からじわじわと理解が深まっていく感覚があります。

小林さんの授業を変えた3つの感想

「先生に教えてもらうよりも自分で分かる方がうれしい」

「友達になら質問できる」

「友達に教えるともっとよく分かる」

は、僕の授業でも出てきました。

自分の生徒から聞くと、大きなインパクトがありました。それによって、自分の中での確信が深まり、この3つの活動がもっと活発になるようにするにはどうしたらよいのだろうかという工夫が始まりました。

今回、何かヒントはないかと思って、この本を読むと、ちゃんとヒントが書いてあるのです。

この本は、自分の理解度に応じて、様々なものを返してくれる本なので、一度読んで終わりというタイプのものではなく、傍らにおいて、時々読み返していくような本だと思いました。

 

授業改善の意義と背景

第3章では、スタンフォード大学メディカルスクールの「講義は時間の浪費ではないか?」という意見が紹介されていました。

小林さんは、「生徒同士の話し合いの時間」を確保するために、パワーポイントのスライドで説明時間を15分に収め、プリントを配って板書を書き写す時間をゼロにしてきたので、この意見に賛成だと書いてありました。

長年、予備校講師として講義を「商品」として生活してきた僕にとって、それが時間の浪費であるということを認めるのは、数年前であれば難しかったかもしれませんが、講義を動画化し、アクティブラーニング型の授業を実践してきた今となれば、知識のインストールは動画で行ったほうが合理的だなと感じています。

反転授業は、小林さんがパワーポイントを使って15分間で行ってきた説明を、動画によって授業時間外に出して、さらに「生徒による話し合いの時間」を増やそうという試みです。

それらは、「生徒による話し合いの時間」に最も大きな価値を置くという点で、同じ考えに基づいています。

反転授業では、教師の役割が、「壇上の賢人」から「学習者に寄り添う導き手」へと変化します。

生徒が教師の顔色をうかがっていては、生徒が主体的に学ぶことが難しくなります。そこで、教師が権威を手放して、関係性をフラットにしていく必要があります。しかし、教師が一方的に説明し、生徒が黙って話を聞くという関係は、教師が生徒を上からコントロールしていくという関係性と結びつきやすいわけです。

アクティブラーニングが機能するために、「教師が権威を手放す」というのは大きなカギを握っていて、反転授業では、講義を動画にするというのは、知識のインストールと権威とを切り離すという効果を持ちます。

小林さんは、パワーポイントとプロジェクターを使い始めたときにリモコン付きのプロジェクターを使っていて、これによって自動的に「教壇から降りた」のだそうです。その結果、生徒たちとフラットで対等な関係に近づくことができたのだそうです。

小林さんが、「生徒たちとのフラットな関係」ということを大事にしていたということを読んで、改めて、反転授業におけるグランドルールと動画の役割を見直すことができました。

 

アクティブラーニング型授業の始め方

第4章 アクティブラーニング型授業の始め方 を読んで、小林さんが4種類の研修会プログラムを開発していたということを初めて知りました。

A 入門講座 = 始めるきっかけを作る

B 技術向上講座 = 授業の質を上げる

C 組織開発講座 = 組織的に取り組む方法を知る

D アクションラーニング研修 = 個人の学習力を高め、学習する組織を作る。新しい概念に基づくリーダーシップ・スキルのトレーニング

 

実は、昨年、「反転授業の研究」が運営、小林さんが講師で「アクティブラーニング実践者のためのスキルアップ講座」というワークショップ型のオンライン講座を実施しました。

この本を読んで、それが、

B 技術向上講座 = 授業の質を上げる

の研修会をオンラインで実施したものだったのだということを、今回、知ることができました。

ということは、まだまだ、A、C、Dが残っているぞ!ということで、ワクワクしました。

小林さんの活動を拝見していて、いつも思うのは、実践と理論のバランスの良さです。

理論に現実を当てはめていくのではなく、まずは、実践で試行錯誤を行い、そこで生まれた気づきをもとに、さらに発展させていくために理論にヒントを求めていき、そのヒントをもとに実践していくというサイクルが、そのバランスの良さを支えていると感じていました。

今回、「コルブの経験学習モデル」のことを知り、謎が解けたような気がしました。

能動的な試み → 具体的な経験 → 内省的な観察 → 抽象的な概念化 → (再び能動的な試み)

というサイクルを回していくことが「学習」であり、その継続が「成長」だというのです。

小林さんの実践は、生徒の頭の中でこの学習サイクルが回りだすようにするのと同時に、小林さん自身の中でも同じサイクルが回り、授業に対する理解が深まっていくというものなのではないかと思いました。

コルブの経験学習のサイクルを回すという具体的なイメージを持ち、それを中心に据えることで、授業の工夫がしやすくなると感じました。

安心安全の場つくりの重要性については、この2年間、失敗を通していろんなことを体験的に学んできました。

・自己紹介の重要性

・穏やかに話すことの重要性

・年齢や性別にかかわらずフラットな関係性を確保すること

などが本当に重要だなーと感じていていたところ、小林さんの本の中でもこれらが登場し、やってきたことは間違っていなかったのだと確認することができました。

 

「科学者になる」との対話

第5章では、小林さんの高校物理の実践が具体的に紹介されています。

物理以外の授業にも応用が利く、一般的な工夫が散りばめられていて、まさにノウハウの宝庫になっています。

アクティブラーニングを実践し始めた人が、この章を読むと、そのときの理解度に応じて、いろんなヒントが得られると思います。

僕も、授業実践でヒントがほしいときは、第5章を中心に読み直すつもりです。

 

小林さんの実践を真似てアクティブラーニング型の授業を始めたときに、「科学者になる」という目標が、どうもしっくりきませんでした。

それで、この目標を自分の授業に掲げることができませんでした。自分の中で消化できなかったものを、生徒に掲示することが出来なかったのです。

でも、それから2年間、ずっとこれが気になっていて、「どう捉えたらよいのだろうか?」ということを、折に触れて自問自答していました。

理解を深める1つのきっかけになったのは、立命館守山高校の倉本龍さんに「科学史を学ぶ意味」というテーマでイベントをやっていただいたことです。

倉本さんは、やはり、「科学者になる」ということを掲げていて、

「科学者になるためには、科学者の思考を知る必要があるから、歴史を学ぶことが大切だ。」

「科学者の思考ができれば、問題だって解けるはずだ。」

ということをおっしゃっていました。

これを聞いて、受験勉強に動機づけられている生徒に対して、「科学者になる」という目標を掲げる1つのきっかけを得られたと思いました。

今回、『アクティブラーニング入門』を読んで、さらに大きな気づきがありました。

このように書いてありました。

ここでいう「科学者」とは職業のことではありません。科学的な考える力を持った大人になって欲しいという願いです。

では科学者は何をしているでしょうか?

(中略)

分からないことを本などで調べる

他の科学者に質問する

難しいことを分かりやすく人に教える

入門的な講義をする

チームで研究する

世界中の科学者と協力する

だから・・・

私たちもこれを見習いましょう!

科学者がやっていることを授業中にやりましょう。

それを通して物理の知識を身につけましょう。

これを読んで、小林さんが、どのような思いで「科学者になろう」を目的に掲げているのかがようやく分かりました。

キャリア教育、生きていく力を育てることと、授業とがどのように結びついているのか、疑問が氷解しました。

教育や授業について、様々なことを考えて、試行錯誤した末にたどり着いた結論を、「科学者になろう」という一言に象徴させているのだということが分かりました。

僕が、同じ言葉を使うかどうかは分かりませんが、このくらいパワフルな言葉を目的として掲げたいです。

教師が上に立つのではなく、生徒と教師が共通のビジョン「科学者になろう」を掲げることで、いっしょに協力していくことができるのだと思いました。

 

質問による介入

小林さんのファシリテーションの特徴の1つが、「質問による介入」だと思います。

この方法を知ったとき、ちょうどワールドカフェについて学んでいて、「パワフルな問いを作るためにはどうしたらよいか?」ということを考えていたため、質問をすることって大事だけど、難しいなと感じました。

オンライン講座の準備実験として、オンラインで小林さんをコーチとしたアクションラーニング(質問会議)を実施してもらい、この方法が、気づきを促す質問によって、心の奥を掘り下げていくことができるのと同時に、質問スキルを磨くことができるすばらしい方法だと感じました。

それ以来、質問による介入を、試行錯誤しながら取り入れているのですが、 グループワークについて③「質問による介入」の効果 の節を読んで、大きな気づきがありました。

それは、コルブの経験学習モデルにおいて振り返りのきっかけを作るのが質問だということです。

教師が、生徒の頭の中の学習サイクルをイメージしていて、サイクルが止まっているときに「質問による介入」を行って、「体験する」→「振り返る」とステップを1つ進めて、学習サイクルを回してあげることができるのだということが分かりました。

これも、学習サイクルのイメージが土台にあるからこそ、適切なタイミングで、適切な効果を生み出せるのではないかと思います。

 

振り返りのタイミングで『アクティブラーニング入門』を読む

この本を手に取る人の多くは、教師なのではないかと思います。

一度、この本を読んだら、部分的でも、5分間でもいいから、何かのチャレンジをしてみるとよいと思います。

僕も、5分間だけ学び合いの要素を授業に入れたことがきっかけでした。

体験をしたら、もう一度、この本を読んで振り返ってみてください。多くのことに気づくと思います。

そしたら、その気づきをもとに、もう一度計画して、チャレンジしてみてください。

僕たちも、コルブの学習サイクル

体験する → 振り返る → 気づく → 再計画する → 再び体験する

を回しながら学んでいきましょう。

この本は、振り返りをするときに、傍らにおいておくのに最適です。

そのとき、そのときで、異なる顔を見せて、何かを気づかせてくれると思います。

 

専修大学附属高校日本史教諭 皆川雅樹さんインタビュー

アクティブラーニングを実践したいと考えているみなさんは、すでに実践している方のやり方を参考にすると思います。

そのとき、グランドルールの設定や、介入の仕方など、教科を超えて共通する部分もありますが、教科ごとに工夫が必要なところもあると思います。

今回、インタビューさせていただいた専修大学附属高等学校教諭の皆川雅樹さんは、日本史の授業にアクティブラーニングを導入するにあたって、様々な工夫をされてきたトップランナーの一人です。

その実践は、河合塾ガイダンスでも紹介されています。

皆川さんが、どのような理由で日本史の教師になり、アクティブラーニングを始められたのかをうかがいました。

教師になろうと思ったきっかけ

―― 皆川さんは、どのようなきっかけで教師になろうと思ったのですか?

中学生の頃、数学の勉強が好きで、数学が活用できる職業につきたいと思いました。当時は、数学が活用できる職業=数学の先生をイメージすることしかできませんでした。

―― 日本史を選んだ理由は?

高校生の頃、萱野茂『アイヌの婢』(朝日文庫)を読み、アイヌの歴史に興味を持ちました。アイヌは「日本」の歴史の範囲内なのか/そうではないのか、そんな問題意識を契機に、日本の対外関係史研究、特に日本古代史を中心に取り組むことになりました。

―― 教師になりたいという思いは、興味が数学から歴史に移っても持ち続けていたのですか?

いいえ。歴史に移ってからは、研究者を視野の中心に入れていました。

―― 数学に対する興味は、その後も続いたのですか?

数学の先生になる夢は、大学院生時代にバイトで塾講師(数学専門担当)をやって実現しました(笑)。最近も勤務校で卒業間近の生徒に公務員試験に出題される数学の問題を解いてみようという講座を開いたことがあります。

―― アイヌの歴史のどこに惹かれたのですか?

もともと「日本」という枠組みには存在しなかったアイヌの人々が、ある時から「日本」という枠組みに押し込まれてしまったことに違和感を持ちました。そもそも「国境」とは?それぞれの地域の人々にとってのアイデンティティとは?などの疑問や課題意識を持ったことがアイヌの歴史に興味を持った理由です。

―― アイヌの歴史から、日本の対外関係史研究へ、どのように結びつきましたか?

上述の通り、「日本」とは?が大きな課題でしたので、まずは視野を広げて「東アジア」「東ユーラシア」からみた「日本」を考えて見ようと思い、対外関係史研究に足を踏み入れました。

――博士号を取るところまで歴史を学ばれたら、研究者への道もあったのではないかと思いますが、教師を選んだのはどうしてですか?

今でも研究者の端くれだと思っていますが(笑)。2006年度に提出した博士論文をもとに昨年、『日本古代王権と唐物交易』(吉川弘文館、2014年)という単著(研究書ですので1万円以上しますが…)を出版しました。
ただ、前任校(2005~2006年度)に就職したことは非常にラッキーだったと思っております。歴史学と歴史教育を同時に考える社会科教員の伝統的な雰囲気がありました。だから、この時期に働きながら博士論文を完成させることができました。高校教員を経験することで、歴史学を日本古代史という狭い範囲で考えるだけではなく、広い視野で考えるようになりました。また、歴史教育という分野にも興味・関心や貢献でき、歴史教育におけるアクティブラーニングを専門的に考えることができる希少な存在であることに最近気づきました。

研究をすることを考えたときに、大学に所属しているのに比べて、高校教師をしているのは不利なのではないかという考えもあると思います。しかし、私自身の経験でも、大学院を中退して予備校講師になったときに、様々な専門分野を持った同僚から学べるようになり、大学にいては学べなかった広い視野を獲得できたと感じました。自分自身が好奇心を持って取り組めば、自分の置かれた環境を自分の糧として前進できるのではないかと思います。皆川さんの言葉からは、主体的な学習者が持つ、自分を前へ進めていく力のようなものを感じました。そして、その学習者・研究者としての態度が、アクティブラーニングを実践していく上での土台になっているのではないかと思いました。

 

一斉講義型からアクティブラーニングへ

―― 皆川さんは、はじめは一斉講義型をされていたとうかがっていますが、その頃は、どのようなことを考えて授業をされていたのですか?

「歴史に興味がある生徒にきちんと伝わればそれでいい」「歴史に興味がない生徒はきちんとノートを作っ てくれればそれでいい」程度しか考えていませんでした。

―― 一斉講義型の授業にも、教師としての楽しさというものがあると思いますが、いかがですか?

自分が好きなことを語ることができるので、ある意味楽しい(というよりは自己満足ができる)のかもしれません。一斉講義型ですと、大きな声を出せる生徒の意見や質問しか受け取ることができないデメリットがあります。アクティブラーニング型にすることで、生徒の声を拾うパターンがたくさん増える(グループワーク時、振り返りシートへの記入など)ので、「この生徒はこんな発想を持っているのか」「こういう見方もできるのか」などの意見を通じて、授業という場を創る楽しさを味わうことにつながります。

―― 一斉講義型の授業を行うスキルは、今のAL型授業に役立っていますか?

声の出し方や板書は、一斉講義型の場合はきちんとできないといけないので、必要なスキルだと思います。
一斉講義型の授業では専門的な知識や考え方を、ノンストップで予定通り説明しなければなりません。AL型ですといつどのタイミングで専門的な知識を必要とする質問がくるかわかりません。勉強の仕方が予定調和で説明するだけではなく、いろいろな引き出しを持つ形にしなければなりません。

――アクティブラーニングに授業スタイルを変えることになったきっかけは、どのようなことだったのですか?

2010 年 2 月、私の日本史の授業を見学した教職志望の大学4年生が「先生の授業は完璧ですね。板書も きれいで、説明も丁寧でわかりやすいです」と感想を言ってくれました。褒められているのだから素直に喜 べば良かったのですが、私は違和感を持ちました。「完璧な授業」なんていうものがあるのか。そもそも生徒 にとって「良い授業」とは何か。このことをきっかけに、授業方法について考え直す必要性を強く感じまし た。2010 年 5 月、小林昭文氏(当時埼玉県立越ヶ谷高等学校)の高校物理の授業を知り、授業スタイルを 変えることを決意しました。小林氏の授業実践との出会いは、生徒が授業に主体的に参加することが明確な 目標となっている能動的な学習の場としての授業=アクティブラーニング型授業を意識させるものとなりま した。このことは、私の日本史の授業において、生徒が能動的に学習する場をつくることが意識できていな かったことに気付くことにつながりました。

―― 「完璧な授業」という言葉が、授業のやり方を変えるきっかけになったのは、面白いですね。完璧という言葉から、教師が自己完結しているというように感じたのでしょうか?

そうだと思います。私という教師がただ生徒に「何かそこそこ良いもの」(=板書内容や簡潔な説明)を与えているだけなのでは?という疑問をむしろ持ちました。

―― 生徒にとって良い授業とは、どのような授業だと考えていらっしゃいますか?

わかりません。どのタイミングで「良い」と思うのか?授業中なのか、その後なのか、もっと後なのか…。教師の印象ではなく、授業の印象が残ることが「良い授業」のように感じております。「先生の名前は忘れたけど、日本史の授業は良かったな~」と思ってくれたらうれしいです(ファシリテーターとしての教師になっていればOK)。

「完璧な授業」と言われたのが、アクティブラーニングに取り組むきっかけだったというのは、とても興味深かったです。でも、とてもよく分かる気がしました。研究熱心で常に前進し続けている人たちにとっては、あるやり方が「完成」するということは、それを壊して次のことを始めるということを意味するからです。私がアクティブラーニングに取り組んだのも、一斉講義型の授業に工夫を重ねて、自分なりにやりつくしたと感じていたときに出会ったということが大きかったと思います。これをやったら、新しい世界が広がるんじゃないかとワクワクしたのです。

 

深い学びについて

―― 深く歴史を学ぶというのは、簡単に言うと、どのようなことですか?

現段階では、授業で学んでいる内容(大学以上であれば史料解釈や理論・概念の(再)構築)とそれを学んでいる自分自身をメタ認知することができることだと考えております。

―― 深く思考するということについて、皆川さんの考えを教えてください。

「難しい」問題に取り組み、それに対して自分の思いや考えを持ち(そしてその思考に自信を持った時に)、まわりの誰かにそれを説明したい!聴いて欲しい!という感情が生まれたら、深く思考しているのではないかと現段階では思っています。

―― 実際にAL型授業を導入して気づいたこと

一番の気づきは、私自身が授業に悩み始め、悩み続けていることです。生徒の思考を働かせる場を作り深 い学びの場を生むためには?生徒が自分に合った学び方を自分で見つけられるようにするためには?など、 日々の授業実践を重ねれば重ねるほど悩みが尽きません。

―― 教師が悩むというのは、教師に「学習者の要素」が入ってきているということでもあると思いますが、教師の悩みが生徒に影響を与えていると感じることはありますか?

教師自身がアクティブラーナーになっていることに間違いはありません。そうでなければ、生徒にアクティブラーナーになることをうながすことできないと思います。ただし、教師の悩みが良くも悪くも影響すると思います。悩みが生徒に不安・不満を持たせると、授業が悪循環に入ります。「こんなに苦労して授業準備したのに、生徒たちはまったくやってくれない」という気持ちを生徒にわからせても仕方なく、常に目の前の生徒たちの最善の学びの場、学び方を気づかせる場をつくっていこうという意識が必要だと思います。

歴史を深く学ぶということが、歴史を学んでいる自分自身をメタ認知することだという話は、非常に興味深かったです。私は、メタ認知へ至るプロセスとして、内部を探索し尽くすことでそれを成り立たせている前提にたどり着くということと、ことなる前提を持った他者と出会うという2つの方法があると考えているのですが、歴史を深く学んでいくことで、それを学んでいる自分という前提が浮かび上がってくるという皆川さんの話をうかがって、高校の歴史の授業でそれができるのであればすごいことなのではないかと思いました。

グループワークを改善する工夫

―― 皆川さんは、グループワークの重要性を伝えるために、日本史と関係のないこともやっているそうですね。

グループワークの必要性を説明するために、マシュマロチャレンジやコンセンサスゲームのような「みん なで考える」アクティビティを学期始めなどに実施することで、自分の授業が何のための授業なのか?を伝 えることができます。先生が説明・提示することのみを理解するだけではなく、様々な意見に耳を傾けて(聴 いて・訊いて)、深い思考につながることの必要性を伝え続けています。

―― マシュマロチャレンジでの経験と、歴史の授業でのグループワークとを、生徒は結びつけることが出来ていますか?

昨年度後半から、グループは作りますが、グループ「ワーク」を強制することはなくなりました。マシュマロチャレンジは、チームでやらなくても実は成立するゲームで、チャレンジの過程でチームメンバーそれぞれの特徴・考えや集団内での振る舞い方がわかるものです。この質問を受けて、そのことに気づきました(笑)。

教師の学び合いのための学習コミュニティ

―― AL型授業を進めていく上での仲間作りはどのようにしていますか?

勤務校では、アクティブラーニング型授業の研修(2011・2013 年度:講師小林昭文先生)をしかけ、それをきっかけに、授業改善を意識する教員が増加し、さらにお互いに授業を見合い情報交換・共有をする機 会も増えています。国語・数学・英語・理科・地歴・公民など様々な教科で、考えをまとめたり、問題を解 いたり、答え合わせをしたりする際に、ペアワークやグループワークなど、生徒主体の学習の時間がとられ ている場合が多くなってきています。 勤務校外でも、FB などの SNS やリアルの勉強会の場に参加し、情報交換を積極的に行っています。

博士号を持っている教師であり、アクティブラーニングの実践経験も豊富な皆川さんが周りを巻き込んでいくことで、アクティブラーニングの実践の輪がさらに広がっていきそうです。

 

歴史教育の国際交流

―― シンガポールでの学会発表はいかがでしたか?

2015 年 5 月、アジア世界史学会(AAWH)で、「日本の歴史教育」のパネルに参加し、高等学校日本史の 授業におけるアクティブラーニング型授業について、理論と実践を簡単に説明しました。中国・韓国やイギ リスの研究者・教育者からは、日本の文部科学省が今後どのような学力論や教育システムを構築していこう としているのかなどの質問が出ました

―― 隣国と歴史教育について交流することは、国際平和に対して意義があることだと思いますが、教える内容は教科書で定められているという現実もあると思います。歴史を教える教師の立場から、何かできそうなことはあると思いますか?

それぞれの国の歴史教育の現状を、現場の教員や大学の歴史学・教職課程の教員などが把握することが必要だと考えております。教育の違いの背景には、これまでの歴史があることは間違いありません。そういう視点を教育学(教育史)の研究者だけではなく、現場レベルでも持つことで歴史教育のあり方も変化するのでは?と思っております。それが結果的にグローバル・異文化理解にもつながるかと。「日本史」「世界史」という現状のくくりではなかなか難しいですが…。

歴史を学んでいる自分自身をメタ認知していくためのもう一つの方法が、異なる前提の他者と出会うことだとすると、歴史的事実を共有する隣国の教師と「歴史教育」について交流することは、非常に有益なのではないかと感じました。そして、そこで感じたことを教室に持ち帰ることで、生徒にも「他者性」を伝えられるのであれば、生徒が歴史学習をメタ認知することに、大きな助けとなるのではないかと思いました。
 
これも、皆川さんのように、研究と教育の二足の草鞋を履いている方だからこそできることなのではないかと思いました。
 
皆川さんは、6月23日に実施する第19回反転授業オンライン勉強会で、授業実践についてお話してくださいます。
 
お申込み&詳しい内容はこちら

第19回反転授業勉強会「深い学び・思考につながるアクティブラーニング型の歴史の授業とは?

「反転授業の研究」の田原真人です。

反転授業やアクティブラーニングを行う目的は、どこにあるのでしょうか?
 
専修大学付属高校の皆川雅樹さんは、日本史の授業でアクティブラーニングを実践しています。皆川さんの目的は、生徒に深い学び、深い思考をしてほしいというところにあるのだそうです。
 
アクティブラーニングが、どのように深い学び、深い思考と結びつくのでしょうか?
 
また、歴史という科目において、どのようにアクティブラーニングが効果を上げるのでしょうか?
 
皆川さんにお話しいただきます。

日時:6/23(火) 21:30-23:00

場所:オンラインルーム WizIQ

参加費:無料

登壇者:皆川雅樹さん(専修大学附属高等学校教諭)

タイトル:深い学び・思考につながるアクティブラーニング型の歴史の授業とは?

※第2部では、ビデオチャットを使ったグループワークを行いますので、ビデオチャットの用意をお願いします。ビデオチャットの用意をされていない方は、メインルームでテキストチャットによるグループワークとなります。

深い学び・思考につながるアクティブラーニング型の歴史の授業とは?

(プロフィール)
専修大学附属高等学校教諭。
専修大学大学院文学研究科歴史学専攻博士後期課程修了(博士・歴史学)。
法政大学第二中高等学校特別教諭を経て、現職。
高校日本史のアクティブラーニング型授業に取り組む。同時にチームビルディング・ファシリテーションス
キル教育にも取り組み、勤務校の選択授業「チーム・組織を考える」のほか、校外での講師も担当。
歴史研究者として、著書に『日本古代王権と唐物交易』(吉川弘文館)がある。

(内容)
高等学校の日本史の授業における「深い学び」「深い思考」について実践・研究しております。
現場の教師たちが創意工夫をこらした歴史の授業が、「深い学び」「深い思考」につながるようにするために
はどうすればよいか?大学入試という“壁”を念頭におきながら、みなさまと議論できれば幸いです。

お申し込み方法

(1)このページからお申し込みください

お申し込みはこちら

(2)自動返信メールに参加方法が書いてありますので、指示に従って参加してください。

※自動返信メールの内容

【入室準備】
Windowsの場合は、下記のページからデスクトップアプリをダウンロードしてインストールしてください。
http://www.wiziq.com/desktop

iPadからの参加の場合は、WizIQのアプリをインストールして下さい。

Macの場合は、ブラウザで直接ルームのURLにアクセスしてください。うまくつながらない場合は、ブラウザを変えてみてください。

自動返信メールに書いてあるルームのURLをクリックすると、「Launch Class」というボタンが現れますので、それをクリックしてください。

Screen Nameの記入を求められますので、お名前を入力してください。

【入室方法】

上記の準備を終えた後、自動返信メールに書いてあるURLをクリックすると、自動的にWebルームにつながります。

初めて参加する方は、以下の動画をご覧ください。

「オンライン教室の開き方」の無料オンライン説明会

みなさん、こんにちは。

オンライン教育プロデューサーの田原真人です。

今日は、無料のWebセミナーについてのお知らせです。

僕がオンラインで教える仕事をするようになってから10年が過ぎました。

今までどんなオンライン教育に対する取り組みをしてきたのか。

なぜ、このような無料イベントをやろうと思ったのか。

順を追って説明させてください。

 

僕が10年間オンライン教育をやって気づいたこと

10年前にオンラインで物理を教え始めた当時は、河合塾などの予備校で予備校講師をやっており、副業としてネットで物理を教える仕事を始めました。

最初は、動画を使って教えて、質問掲示板で質問に対応していたんですが、会員数が200名を超えるあたりからシステムを導入する必要が出てきて、Moodleをカスタマイズした独自のシステムをシステム会社に受注して使い始めました。

ネット予備校を運営するにあたって、一番頭を使ったのは、いかにしてボトルネックになる部分を作らないようにするのかということです。人数が増えるにつれて、運営の労力が増えてくるようだと、サービスの質を維持するために受講生の人数に上限が出来てしまいます。

逆に人数が増えても、運営の労力が増えないということは、人数が増えてもサービスの質が下がらないということです。ネット予備校のシステムを構築するために、そこを常に考えていました。

ネット予備校は、質問対応をしてくれるアドバイザーの方と二人だけで運営しています。にもかかわらず、僕には、自由な時間をたくさんあって、その時間を未来を切り開くための実験的な取り組みに使うことが出来ています。

ネット予備校をスタートして5年くらいたったころから、年間の受講生の数が400-500人で安定するようになりました。収入も安定してきたので、副業のネット予備校を本業にすることにしました。

この決断により、働く時間と場所の制約がまったくなくなりました。人生経験をより濃密に積むことができるようになり、実験的な取り組みの質と量が上がり、それを仕事にフィードバックできるようになりました。

そのようにしてはじめたチャレンジの1つであったFacebookグループ「反転授業の研究」は、2年半で3000人を超えるグループになりました。

そこでは、WizIQを使ったオンライン勉強会を毎月実施し、Breakout room機能を使ったオンライングループワークも行っています。こんなことをやっているところは、他に聞いたことはありません。誰もやっていないことにチャレンジしています。

また、MoodleとGoToMeetingを組み合わせた社会人を対象とする有料のオンラインワークショップも6回実施しました。オンラインに主体的に学ぶ場を作る手法についても理解が深まり、4回連続、脱落率が10%未満を続けています。MOOCsの脱落率が93%程度であることを考えると、オンライン教育としては驚異の数字です。

これらの取り組みを通して分かったことは、オンラインのコミュニティをファシリテーとすることで自己組織化を起こすことができるということです。ここに質と量に対する大きな発想の転換がありました。

第1段階 講師のマンパワーで教える → 会員数(量)が増えるとサービスの質が落ちる。

第2段階 動画とシステムで講師のマンパワーを増幅する → 会員数(量)が増えても、サービスの質が同じ。

第3段階 学習コミュニティに自己組織化を起こす → 会員数(量)が増えるほど、会員にとってのコミュニティの価値(質)が高まる。

第3段階が見えてきたことで、オンライン教育の可能性が僕の中で大きく広がりました。

大学院時代に専門的に学んできた生命系の自己組織化についての知識を、コミュニティ運営に生かせるようになりました。

以前は知識をインストールような教え方をしていたのですが、主体的に学び、生きる力を強めていくことを支援することへ役割を変えることができつつあります。

10年たって、最初は予想もしていなかったところへ来たなというのが実感です。

 

次々とリリースされるWebツールによって可能性が広がっている

スカイプが誕生したことで何が可能になったのかを考えてみてください。

フィリピン人講師を使ったオンライン英会話教室だけでなく、様々な教育サービスが誕生しました。

現在は、Web会議室や、オンラインホワイトボードなど、様々なWebツールが次々にリリースされています。

それらを組み合わせることによって、新しい価値を創造できる可能性があります。

僕自身は、特にWeb会議室の教育利用について大きな可能性を感じていて、いろんなシステムを試して特徴を比較したり、オンラインワールドカフェ、オンラインアクションラーニング、オンラインダイアログ、オンライン居酒屋・・など、いろいろな使い方についても研究しています。

また、MoodleなどのLMSや動画とWeb会議室を組み合わせた学びの場つくりにもチャレンジしています。

頭の中にはいつも「それは、オンラインでできないのかな? 何を使えばできるかな?」ということを考えています。

みなさんからアイディアをいただけば、頭の中のデータベースを検索し、様々なソリューションを提案できると思います。

 

オンライン教育の知識をシェアしようと思ったきっかけ

自分が経験してきたことをシェアしたらどうだろうかと思ったきっかけは、ちょっとしたことでした。

先日、ヨガ教室をやっている友人が、

「引っ越してもヨガ教室をやりたいんだけど、どうやったらいいのか何か月も悩んでいる」

というので、どのシステムをどのように使えば実現できるのかということを教え、オンラインでヨガ教室ができるようにしました。

ヨガ教室を生きがいにしている彼女の顔がみるみる明るくなったのを見て、こちらまで嬉しくなりました。

彼女のやっているヨガの場合、音楽のクオリティが重要だそうです。
そういうのも聞いてみないと分からなかったので、いろんな条件を考えながら、オンライン教育の経験の引き出しの中から知識を取り出して実現方法を考えていくことになりました。これは、僕にとって、とても楽しい作業でした。

この経験を通して、僕の知らないいろんなジャンルで、

「自分がやっていることをオンラインでできないか?」

と思っている方は、結構、たくさんいらっしゃるのかもしれないなと思いました。

・オンラインでヨガ教室をやりたい
・オンラインでバイオリンを教えたい
・オンラインで英語教室をやりたい
・オンラインでロボット教室をやりたい
・オンラインでプログラミングを教えたい
・オンラインでアクセサリーの作り方を教えたい

でも、ゼロからスタートする場合には、いろんな「分からないこと」があると思います。

・どうやって生徒を集めればいいのか?
・どんなシステムを使えばいいのか?
・集金はどうすればいいのか?
・忙しくなりすぎないためには、どうしたらいいのか?
・具体的な作業は、どんなことをしているのか?
・どこにコストがかかるのか?
・どんなトラブルがあるのかな?
・パソコンが苦手だけどできるかな?

これらは、すべて僕が実際に乗り越えてきたことなので、体験をもとにお話することができます。

また、それぞれの事情に合わせたアドバイスもすることができます。

もし、僕の経験してきたことを生かして、新しいことにチャレンジしてくれる人がいるのなら、いっしょにやりたいなと思いました。

・みなさんが、どんなことに困っているのか。

・それに対して、自分が何をできるのか。

それが、まだ、よく分からないので、まずは、自分の話をすることから始めたいと思います。

その後、みなさんから質問をいただければ、進むべき道が見えてくるのではないかと思います。

 

オンライン説明会では、WizIQとGoToMeetingという2つの異なる特徴を持ったWebシステムを使います。

これらのシステムを体験することも、「オンライン教室」をイメージするために役立つと思います。

第1部では、WizIQを使い、僕自身がどのようにしてオンライン教室を運営しているのかというお話をします。

第2部では、GoToMeetingに移動し、皆さんとオンラインでダイアログをしたいと思います。皆さんの声を聞きながら、それぞれの事例について「どうやったらオンライン化できるか」ということを一緒に考えていきましょう。

興味のある方は、ぜひ、参加してみてください。

あなたの予想もしなかった可能性が広がるかもしれません。

そして、そのときには、同時に、僕にとっても予想もしなかった未来が訪れるでしょう。

日時 : 6/16 21:30 – 23:00 (日本時間)

場所 : Webルーム

参加費 : 無料

準備していただくもの : マイクとWebカメラ(iPadからでも参加可能です。)

お申込みはこちら

電子書籍「動画作成にチャレンジ!」シリーズの誕生秘話

5月に電子書籍「動画作成にチャレンジ!」シリーズから、2冊の本が出版になりました。

動画作成にチャレンジ!カムタジアスタジオ(横川淳 著)

yokogawa-ebook

動画作成にチャレンジ!著作権(福田美誉 著)

fukuda-ebook

この2冊の電子書籍が発売になるにいたったプロセスを、ぜひ、みなさんとシェアさせてください。

それは、水沼明子さんの行動力から始まった

Facebookグループ「反転授業の研究」のメンバー数が1000名を超えたころ、グループ内の自己組織化のプロセスをサポートするようなシステムができないかと考え、2014年に

「反転授業の森」

というSNSを作りました。

そして、そこに、少人数の研究グループを作れるようにしました。

 

Facebookグループの人数が多くなってきたので、テーマを絞った小グループが自発的に生まれて、オンラインでプロジェクトを実行できるようになったらいいなと思ったのです。

早速立ち上がった研究グループの中の1つが、「動画作成にチャレンジ!」でした。

グループを立ち上げて下さったのは水沼明子さん。

もう、感謝の気持ちしかありませんでした。

よくぞ、立ち上げてくれたという感じ。

この小さな芽を育てていかなければいけないと思いました。

水沼さんが立ち上げたグループに23名が加わり、動画作成に必要な内容をまとめた初心者向けの電子書籍を作っていくというプロジェクトがスタートしました。

その時点で、水沼さんのことを良く知らなかったので、水沼さんにスカイプミーティングを申し込み、お話させていただきました。

水沼さんが考えていることをうかがい、自分が感謝していることと、このプロジェクトが成功するように全面的に応援することを伝えました。

このころ、萩商工の松嶋渉さんと話していたときに、松嶋さんが、

「誰かが手を挙げたときは、手を挙げていかなければならないと思った」

とおっしゃっていて、松嶋さんのような考えを持った人が大勢いるからこそ、中心になる人が手を挙げていけるし、そこから、いろんなドラマが起こっていくのだと思いました。

動画作成にチャレンジ!プロジェクトは、手を挙げた水沼さんと、それに呼応して手を挙げた23名によってスタートしたのです。

 

1年間かけて出版まで漕ぎつけた

動画作成には様々なやり方、著作権などの関連知識があるので、水沼さんのリーダーシップのもと、それらを列挙して、執筆担当を決めました。

しかし、そこから最初の2冊が出版になるまでは、なんと1年間もかかりました。

Facebookのチャットを立ち上げ、そこでやり取りをしながら進めていくのですが、執筆者の人数が多く、なかなか計画通りには進みません。

これは、水沼さんには、とてもストレスがかかる状況だったと思いますが、水沼さんが粘り強くプロジェクトをマネージメントしてくださったおかげで、2015年5月に最初の2冊の出版にこぎつけることができました。

この後、3冊目、4冊目・・・とこのプロジェクトからの出版が続いていくと思います。

電子書籍プロジェクトでの出版は、編集者がいるわけではないので、epub形式に直したりするのも自分たちで行うことになります。その編集作業についても水沼さんを中心に手探りで進めることになりました。

先頭に立った横川淳さんと福田美誉さんも、やり方を開拓してくれました。

表紙は、パステル画のインストラクターでもあるギュンター知枝さんが描いてくれました。

電子書籍というデジタルのものでありながら、とてもぬくもりのある、手作り感あふれるものとなりました。

 

この電子書籍のよいところは、必要なことだけをコンパクトにまとめて、動画作成を始められるようにしてくれるところだと思います。

カムタジアスタジオって、むちゃくちゃ高機能なので、チュートリアルとか見ていると、いったい何から始めればいいのか分からなくなってくるんです。でも、横川さんの電子書籍では、まず、これをやれば最低限のことができ、さらに工夫したいときは、これをやればよい・・というように情報に優先順位をつけてくれているので、カムタジアスタジオをインストールしたその日に、とりあえず録画ができるようになるわけです。

著作権も、法律の話なので、詳しくやっていくときりがないわけです。でも、福田さんの電子書籍では、動画を作る人がぶつかりそうな事例を具体的に上げて、解説してくれるので、確信を持って資料を利用できるようになります。

情報が詳しいという価値ではなく、必要な情報をピックアップして伝えてくれるというキュレーションとしての価値が、お二人の電子書籍にはあります。

 

動画講義作成のオンライン講座とのコラボレーション

「動画作成にチャレンジ!」プロジェクトを応援したいけど、よい方法はないかなと思っていたときに、「反転授業の研究」のオンライン講座とのコラボレーションを思いつきました。

カムタジアスタジオの講師役に横川淳さん、著作権の講師役に福田美誉さん、さらに、白板ソフトを開発・販売されている株式会社マイクロブレインの坂本保代さんに講師をしてもらい、水沼さんと田原が運営を担当して講座を進めていくことにしました。

横川さんとは、これまでに何度もオンライン講座を一緒にやっていて、100%の信頼を置いています。横川さんに任せておけば、いつも、僕の期待以上のことをやってくださるんです。今回の講座でも、受講者へのかゆいところに手が届く細やかなフィードバックが素晴らしく、横川さんがいることで、講座全体に安心感が溢れていました。

福田さんと坂本さんは、今回、講師役が初めてということでしたが、僕は、これまでにお二人と話したことがあって、講師役を立派にやり遂げてくれるという確信がありました。

福田さんとは、スカイプでお話したり、大阪でお会いしてお話したりしたことがあるのですが、少し話しただけでも、ウチに秘めたエネルギーの大きさを感じることができました。ちょっとしたきっかけで、これが噴出したらすごいことになるんじゃないかと思っていました。今回の電子書籍の出版と、オンライン講座の講師が、そのきっかけになったのではないかと思っています。

坂本さんとは、反転授業の研究を立ち上げたころからの付き合いです。白板ソフトは、世界でも類を見ない超個性的なソフトで、動画作成の創造意欲を書きたててくれるすばらしいソフトウェアなんです。会社を夫婦で経営していて、開発者が職人肌で予算の90%を開発に使ってしまい、広告や販売に予算が回ってこないと嘆きつつ、白板ソフトの普及のために奔走している坂本さんを応援したいと思っていました。今回の動画作成オンライン講座を通して、僕自身が白板ソフトに取り組み、その魅力を深く実感することができたので、自分の言葉で魅力を伝えていくことができると思います。坂本さんは、チャレンジ精神に溢れていて、今回の講座でも白板ソフトの魅力を伝えるために全力を尽くしてくださいました。数えきれないほどの解説ビデオを作ってくださり、その熱量に圧倒されました。

電子書籍プロジェクトを進めてきた水沼さん、横川さん、福田さんの活躍の場を作ることができ、坂本さんが白板ソフトの魅力を伝えるチャンスを得られるということで、僕のモチベーションはかなり高まりました。

 運営ボランティアの役割が見えてきた

「反転授業の研究」のオンライン講座では、運営ボランティアの方に参加していただいています。

今回は、動画作成にチャレンジ!プロジェクトのメンバーと、過去のオンライン講座の受講者から運営ボランティアを募集し、7名の方が運営ボランティアとして参加して下さいました。

オンラインでの場創りは、リアルの場と比べて、ファシリテーターが場をコントロールする力が弱いので難しいです。

しかし、「反転授業の研究」の活動を理解し、講座を経験した方たちが運営ボランティアとして加わってくださることで、オンラインの場をポジティブな空気で満たすことが簡単にできるようになりました。
 
「ここでは、こうやって学べばいいんですよ。」というのを、背中で示してくれる人が7人いることで、これまでやって来る中で生まれてきたオンライン講座の文化を、この講座にも受粉することができました。

今回、講座に参加して下さった方の中からも、今後、運営ボランティアや、運営スタッフ、講師として参加して下さる方も出てくると思います。また、別の方が企画するオンライン講座に、僕が運営やボランティア、講師などで加わっていくこともあると思います。

オンラインで、交流しながら主体的に学んでいくという経験を共有し、いろいろな形で助け合いながら活動を広げていくという循環が確実に生まれてきました。

 

受講者の同窓会コミュニティができた

オンライン講座の最後のリアルタイムセッションが終了した後、受講者の長沼啓一さんの発案で講座の同窓会コミュニティがFacebookにできました。

これは、とてもうれしかったですね。

僕たち運営チームが作ったオンラインの学びの場に価値を感じて下さって、ここで生まれた関係を継続して、自分たちで学び合いをさらに発展させていきたいということですから。

こうやって、水沼さんが手を挙げたことをきかっけに、プロジェクトがスタートし、1年後に2冊の電子書籍の出版と、オンライン講座の開催という成果が生まれました。

この動きは、さらに、動画作成の学び合いのコミュニティの発生へとつながりました。

電子書籍の出版は3冊目、4冊目と続いていきますし、学び合いのコミュニティからも何かが生まれそうな気がします。

白板ソフトのコアなファンも増えましたので、ここからも何かが生まれていくでしょう。

 

豊かな土壌には、豊かな生態系が育ちます。

そこに撒かれた種が発芽して樹木へと育っていくように、お互いにサポートし合える環境があれば、いろんな人のアイディアが次々と形になっていきます。

アイディアが形になる度に、そこに参加したすべての人が自分の力に対して自信を深めることができ、さらに育てる力を強めていきます。

動画作成プロジェクトは、参加したすべての人に自信を与えてくれました。

このようなプロジェクトが、もっともっと生まれてくるような土壌を作っていきましょう。

そして、そこにたくさんの種を撒いていきましょう。

 

動画講義で学ぶ方法(6)~知識ではなく学び方を教える~

「反転授業の研究」の田原真人です。

はじめてインターネットに触ったことを今でもはっきり覚えています。

大学4年生のときに研究室で先輩がインターネットというものがあるということを教えてくれて、MOSAICという今は存在しないブラウザで大学のホームページにアクセスしました。

研究室の研究案内などを読みながら、すごい時代になったんだなと思いました。

でも、そのとき、自分がその20年後に、サーバー上に動画講義をアップロードして配信するネット予備校を運営したり、Web会議室システムを使ったダイアログをやったり、Youtubeを使って学ぶ方法をアドバイスしたり・・・そんなことをするなんて、全く予想できませんでした。

当時は、Youtubeも、Web会議室システムも存在していませんでしたから、予想することは不可能です。

今から20年後は、どんな社会になっているのでしょうか?
 
20年前に現在の社会の様子を予想できなかったように、これから20年後を予想することは非常に難しいです。

量子コンピューターや、人工知能、再生医療などに革新的な進歩があって、社会の様子が大きく変化してしまうかもしれません。

今、10歳の子どもが30歳になったときの社会を予想できない状況で、子どもたちに何を教えていったらよいのでしょうか?

社会の変化が小さいのであれば、その社会に対する「成功マニュアル」を作り、それを身につけさせていくということも有効かもしれません。

しかし、様々な知識があっという間に陳腐化してしまう変化の大きな時代には、「成功マニュアル」もすぐに使い物にならなくなってしまいます。

また、情報はどんどん増える一方なので、学校で教えられるのは、それらのほんの一部ということになります。

学校を出ても、各自が自分で学び続けることが必要になってくるのです。

魚を与えるのではなく、魚の獲り方を教える

という考え方が重要になってくるのだと思います。

学び方を教えることの可能性

インターナショナルスクールに通うS君の数学のサポートをし始めてしばらくたったとき、別の友人から相談を受けました。

IBカリキュラムのインターナショナルに通っている高校3年生の息子のFが、化学が苦手で困っている。イギリスの大学の医学部に行かせたいので、なんとかしたいんだけど、どうしたらよいか分からないので、助けてほしい。

IBカリキュラムの化学は、ギブスの自由エネルギーやエンタルピーなども登場し、日本の高校化学の範囲を超えた内容を含んでいて難しいです。

スケジュールの関係で月に1度くらいしかサポートできないという条件でしたが、「自分で学べるようにする」ということをサポートできるかもしれないと思い、引き受けました。

最初にF君に状況を聞くと、

化学の先生の授業が分かりにくくてついていけない。質問に行ったら、それは教科書に書いてあると言われて回答してもらえなかった。

IBカリキュラムの化学を教えてくれる塾の先生や、家庭教師の先生を見つけることが難しい。

とのこと。

それで、どうやってこの課題を解決しようと思っているのかを質問すると、

I don’t know.

という返事が。

それで、まずはじめに、IBカリキュラムの化学の動画講義をYoutubeにアップロードしている先生がいるかどうか、Youtubeで検索するところから始めました。すると、幸運なことに、すべての内容をアップしている先生を発見!

F君に、「Youtubeにアップしているような先生は、やる気のある先生ばかりだから、分かりやすく説明してくれる可能性が高いよ。」と伝え、Moodleに「IB Chemistry」というコースを作り、その先生の講義を並べていきました。

自分で学べる環境を作ったことで、F君は動画を見ながら勉強を進められるようになりました。

1か月に1度のセッションで、F君は僕に動画を見ても分からないところを質問します。たいていの場合、僕も分かりません。それで、いっしょにYoutubeを使って検索します。

光合成の反応が複雑すぎて覚えられない。→ アニメーションと歌で光合成のプロセスを説明している動画を発見!

有機化学の反応で電子がどのように遷移するのか分からない。→ 電子の遷移を詳しく説明しているインド人教師の動画を発見!

といったように、探していくと、たいてい何かを見つけることができるものです。

そして、一緒に探した後に、「今日は一緒にやったけど、F君一人でもできるよね。」と言うようにしていました。

それまでは、音楽やスポーツを見ることだけに使っていたYoutubeが問題解決のために使えることに気づき、F君は、次第に自分だけでも学べるようになってきました。

1か月に1度しかサポートできないということで、知識を教えることをあきらめ、学び方を教えることに集中した結果、「化学を分かりやすく教えてくれる先生がいない」と思っていたのが、「世界中の化学の先生に教えてもらえる」ことに気づいたのです。

魚を与えることができないから、魚の獲り方を教えることにしたのです。

21世紀型スキルを教えられるのか?

変化の激しい21世紀を生きるのに必要なスキルとして、21世紀型スキルというものが言われています。

国際団体である「21世紀型スキル効果測定プロジェクト」(ACT21s)は、21世紀型スキルを次の4つのカテゴリーに分類しています。

(1)思考の方法……創造性と革新性、批判的思考・問題解決・意思決定、学習能力・メタ認知
(2)仕事の方法……コミュニケーション、コラボレーション(チームワーク)
(3)学習ツール……情報リテラシー、ICT(情報通信技術)リテラシー
(4)社会生活……市民性(地域および地球規模)、生活と職業、個人的責任および社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む)

子どもたちには、このようなスキルを身につけていってほしい。しかし、ここに大きな問題があります。

それを伝える大人は、20世紀型の教育を受け、20世紀型の工業化社会の中にどっぷりとつかって生きてきたわけです。

僕自身、団塊ジュニア世代ですから、受験競争の一番激しかった時代に学生時代を過ごし、その後、予備校講師として仕事をしてきたため、チームでコラボレーションをするような機会はほとんどありませんでした。異文化と接する機会もほとんど持たずに40代へ突入しました。

21世紀型スキルを身につけていない大人が、21世紀型スキルを子どもたちに身につけさせることができるのだろうか?

「反転授業の研究」を初めて、しばらくたったときに、このような疑問が湧いてきました。

そこで、

まず、自分たちがICTを学習ツールとして使い、オンラインでコラボレーションをし、主体的な学びについての集合知を創造的に獲得するということに挑戦しようではないかというビジョンが生まれてきました。
 
自分たちが21世紀型の社会を体当たりで体験して、そこで得た気づきを、それぞれの現場に反映していこうではないかということになってきたのです。

動画講義だけでも、全く新しいものですから、気がついていない可能性がたくさんあると思います。それを、自分たちで試行錯誤しながら気づきを深め、言語化し、共有してナレッジ化していくプロセスは、僕たちが今まであまり経験してこなかったものです。

FacebookなどのSNSは、人と人とを結び付け、多くのコラボレーションを生み出しています。

5月9日から「反転授業の研究」が実施するオンライン講座の運営チームは13名。その中には、リアルの場で会ったことのない人もいます。

オンラインでのやり取りの中で、信頼関係を築き、チームとして協力して講座を運営しています。

これは、21世紀の仕事の仕方を体現しているものかもしれません。

自分たちが、そういうことにチャレンジすることで、確信を持って子どもたちに21世紀の生き方を伝えられるようになるのではないかと思っています。

動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~
動画講義で学ぶ方法(6)~知識ではなく学び方を教える~

動画講義の作り方を学ぶオンライン講座

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

動画講義の作り方、動画講義作成に必須な著作権の知識をオンラインワークショップ形式で学びます。

doga-side

動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~

「反転授業の研究」の田原真人です。

インターネットが登場し、Googleなどの検索エンジンが誕生したことで、僕たちの知的活動は大きく変化しました。

かつては分からないことがあれば、本を調べたり、辞書を調べたりしていたのが、今は、検索エンジンにキーワードを打ち込む人が多いと思います。これを可能にしているのは、大量の情報がインターネット上にアップされ、その情報が常に更新され続けているという状況です。

「知りたい」という欲求があれば、知識はいくらでも手に入る時代になりました。

また、インターネットは、英語を学ぶ意味を根底から変えました。

インターネットにおける使用言語分布をご覧ください。
 
english-jinko

こちらのデータを使用しました。

インターネットにおける日本語の使用人口1.10億人に対して、英語の使用人口は8.01億人とほぼ8倍。しかも、日本語の使用者の多くが日本人なのに対して英語の使用者の国籍は多様です。

ある事柄を調べるときに、日本語で検索するのに比べて、英語だと8倍の量を持った多様なソースから調べることができます。

世界の英語使用者の割合は、今後さらに増えていきますので、この違いはさらに拡大していくはずです。

英語のインターネット世界ですでに起こっていること

 
インターネットが「学び」をどのように変えるのか?
 
その近未来を垣間見る経験がありました。

2012年頃、

「日本語だけで情報を入れていてはまずい!」
 
「英語を道具として使えるようになろう!」

と思い、ラングエッジエクスチェンジンジを始めました。14カ国、20人の語学パートナーを作り、英語と日本語を使ってスカイプでいろんなことを話しました。その中で出会った一人が当時18歳のエイン・アネさんでした。

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彼女は、自分をKnowledge Hunterと呼び、貪欲に知識を吸収していました。僕は河合塾で予備校講師を10年以上していたので、東大理3に現役合格するような、いわゆる「優秀な生徒」を見慣れていたのですが、それとは明らかに異質な存在。自分から体当たりで学んでいく勢いがものすごくて、本当にびっくりしました。

エインさんについては、こちらの連載をご覧ください。

彼女は、イギリスの有名なプライベートスクールに通っていたのですが、学校の窮屈さに耐えられなくなり13歳のときに校長室に行き、「学校を辞める」と宣言して学校を辞め、14歳から自分の力で生きています。
 
分からないことがあれば、インターネットで調べ、Khan Academyはほとんどの授業をやり終え、Courseraやedxの授業で学び、自分が学びたいことを自分で次々に学び、体得していきます。

僕が、「こういう面白いものがあるんだよ。」と話すと、「Oh, Exciting!!!」と言って、質問しまくり、次の週までにはいろんなことを調べて、あっという間に詳しくなっているという感じ。
 
また、彼女が「こういう面白いものがあるんだよ!」と教えてくれるものは、ほとんど僕が知らないことばかり。彼女を通して世界がどんどん広がっていきました。

エインさんの存在は、知識が一部で占有されている時代は終わり、知りたいという気持ちがあればいくらでも知ることができる時代がすでに到来しているということを僕に実感させてくれました。

知りたいという気持ちがあれば、本当にいくらでも学べるのだということが、腹落ちしたのです。

アートの才能に恵まれた彼女が、自分にとっての学びとはどんなものかを映像で表現したのがこちらです。

日本語よりも8倍の広さを持つ「英語のインターネット世界」は、知りたいという気持ちに対して十分に答えてくれるだけの広さを持っています。

そこから、エインさんのような人が、これから次々と生まれてくるはずです。

「教える」からキュレーション&コーチングへ

英語の使用人口は、日本語の8倍ですし、英語圏ではインターネットの教育利用が盛んですので、すでに大量の講義動画がYoutubeなどにアップロードされています。
 
講義動画に貼った広告費で生活している教育Youtuberと呼ばれる人たちもいます。

それが成り立つだけのマーケットがすでに出来上がっているのです。

昨年、知り合いのイギリス人からインターナショナルスクールに通う中学3年生の息子のSに数学を教えてくれないかと頼まれました。
 
僕の英語力は、日常のコミュニケーションはできても、数学の講義をできるレベルではないので断ろうかと思いましたが、次のような考えが頭に浮かびました。

英語であれば、Youtubeにありとあらゆる分野の数学の講義動画がアップされているのだから、自分で教える必要はないんじゃないか。

S君に合った動画を選んでコースを作り、それを利用して学べるようにサポートすれば、勉強をサポートできるんじゃないか。

この仮説を確かめたいと思い、週に1度のセッションがスタートしました。

S君のためにMoodleをサーバーにインストールし、そこにAdditional Mathのコースを作りました。そして、シラバスを見て、Youtubeのビデオの中から、分かりやすい動画をピックアップして並べていきました。

1回のセッションは90分間。S君は、僕の隣でノートパソコンで動画を見て、練習問題のところで一時停止して紙に問題を解き、分からないところは僕に質問するようにしました。

しかし、これが、なかなかうまくいきませんでした。

S君が、セッションの時間以外に、自分から動画を見ようとしなかったのです。

数学があまり好きじゃなく、やりたくなかったのです。

この状況で、数学を教えることを続けても、数学ができるようにならないと思いました。そこで、90分のうちの最初の60分を数学、残りの30分をマインドセットに働きかける時間にしました。
 
S君の好きなプロダクトデザインの歴史を一緒に調べたり、有名な会社のロゴの歴史について学んだり、いっしょに楽しみながら学ぶところから始めました。S君はプロダクトデザインについてはすごい情熱を持っていて、好きなことならいくらでも打ち込めるという長所があったので、それをうまく生かせないか、いろんな試行錯誤をしました。

アーティストのスギオカさんや、マスラボの古山さんとスカイプで繋いで英語で対話したり、Wifiの電波を強めるために空き缶で反射板を作ることができるというのを知り、放物線と焦点の関係を説明していっしょに設計図を書いたりもしました。

U理論について動画を見せ、なぜ無駄に見えることをやらなくちゃいけないのかという話もしました。

S君は、だんだんと最後の30分間を楽しみにするようになり、「今日は、何をやるの?」とワクワクした顔で聞いてくるようになりました。

そんなある日、お母さんから、「Sが、自分から友達を誘って一緒に勉強するようになった。これは、今までになかったことです。」という報告が来ました。ちょっとずつ、マインドセットが変わってきているのを感じました。

しかし、ここからが本番でした。S君は、基礎の部分に抜けているところがたくさんあり、ちょっとやったくらいでは点数に反映しない状況でした。

たとえば平方完成とか因数分解とかができないので、微分して最大値や最小値を求めることが出来なかったのです。

サルマン・カーン氏が言っている「スイスチーズのように穴が開いた状態」になっていたのです。

そこで、そういう基礎の部分を補完する動画をYoutubeで探してきて、復習ができるようんなコースを作りました。そして、1つずつ穴を埋めていきました。そうすることで、だんだんと自力で解けるようになってきました。

ここで、S君の行動に大きな変化が生まれました。メールで僕にビデオを追加してくれるように頼むようになったのです。

僕は喜んでビデオを追加していきました。

そして、ついに、苦手分野だった三角関数の章末問題の10問すべてを自力で解けるようになりました。

このときは、むちゃくちゃ褒めました。そして、一番苦手だった分野で全問正解できるということは、全分野をマスターできるはずだから頑張れと励ましました。

質問の質が明らかに変わってきました。

「二項定理の章末問題にあれば、二項定理を使えばいいと分かるけど、テストだとどれを使えばいいか分からないんだけど、どうしたらいい?」

解法選択についての質問が来るというのは、かなり力がついてきた証拠です。

完全に上昇気流に乗りました。

この実験的な取り組みは、ちょっとだけ未来を先取りしている試みだと思います。

英語圏にはすでに十分な量の動画講義があるから、「教える」という行為は動画に任せることができます。

その代り、

・その生徒に必要な動画を選んで並べるキュレーション
・その生徒が自分で学べるようにするコーチング

にエネルギーを注ぐことができます。

エインさんのように自ら学ぶ力が強力な人はよいですが、自ら学ぶ意欲が十分でない場合、うまくそれを引き出してあげる必要が出てきます。

そして、それは、サルマン・カーン氏が言うように、とても人間的な活動なのです。

日本語のコンテンツは、まだ、そこまで揃っていませんから、多くの教師が動画講義を作ってアップロードしている段階ですが、すでに、僕がやっているのと同じような試みもあります。

eboardや、ふるやまんの算数塾、とある男が授業をしてみた、などの動画を使って娘さんの学習サポートをしている小川浩司さんは、フルタイムで仕事をしながら、娘さんに学習の指示を出してサポートしています。

今後は、日本語のコンテンツが増えてきて、可能性が広がっていくのと同時に、英語で学べるだけの力をつけて、英語の学習コンテンツを利用していくという選択をする人も出てくると思います。
 
動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~

動画講義の作り方を学ぶオンライン講座

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

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動画講義で学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~

「反転授業の研究」の田原真人です。
 
反転授業に関わるようになってからしばらくたち、インストラクショナルデザインを学んでいたときに「キャロルの時間モデル」というものに出会いました。
 

キャロルの時間モデル

すべての学習者は、その人にとって必要とされる時間をかければ、すべての学習課題を達成できる。

J・B・キャロルは、知能(IQ)による個人差の固定概念に対して異を唱え、個人差を「学習に必要な時間と学習に使った時間の差」と捉えました。彼は、学校教育における学力の差というものが、「一定の授業時間内に学び終えなくてはならない」という制約によって生み出されているのではないかと考えたのです。

学習課題をやり終えるのにかかる時間には多様性があるのに、授業時間は全員均一で一定。
 
このミスマッチによって、学べない状況が生み出されているのではないかという指摘には、目から鱗が何枚も落ちました。
 
では、このミスマッチはどこから来ているのでしょうか?
 
極端な話をすれば、生徒30人に対して教師が30人いれば、このミスマッチは起こらないわけです。
 
それぞれの生徒が、自分のペースで学ぶことができ、それぞれが学び終えるのに必要な時間をかけて学習課題を達成することができます。

では、なぜ、生徒30人に対して教師が30人いないかというと、それは、生徒30人に対して教師30人の人件費を出すだけのお金を捻出するのが難しいからです。簡単に言うとコストの問題なわけです。

しかし、「生徒30人に対して教師が30人いれば、すべての生徒が学習課題を達成できるのではないか」と考えることは、とても有効です。なぜなら、課題を達成する方法が1つ見つかれば、あとは、ICTなどを利用してコストを下げ、費用対効果のバランスの中で実現可能な方法を探すことができるようになるからです。

カーン・アカデミーが示したこと

僕が動画講義を作って配信し始めたときに感じたことは、

「これは、自分の分身だ」

ということでした。

孫悟空が頭の毛を抜いて息を吹きかけて分身を解き放つかのように、僕が作った講義が、僕の分身としてインターネット回線を通って各家庭を訪問し、それぞれの受講者の理解のペースに合わせて何回でも繰り返し授業をするというイメージが湧いたのです。

これは、いわば、30名の生徒に30人の生徒がついて、それぞれのペースに合わせて学習指導しているかのようです。
 
Khan Academyのサルマン・カーン氏は、動画講義によって、低コストで学習者の多様性に対応できるようになることに気づきました。
 
次のビデオをご覧ください。

Khan Academyの中には、ビデオと練習問題からなるコースがあって、ビデオを見て理解したら、練習問題を解いていきます。
 
練習問題は大量に用意されていて、3-5問連続で正解したら、そのテーマを理解したと見なされてクリアできるようになっています。何回でも気楽に間違えることができ、間違いを繰り返しながら完全にマスターするまで学び続けることができます。分からなければヒントを見ることができ、解説ビデオをもう一度見直すこともできます。

カーン氏は、動画講義の利点として、

教師からのプレッシャーを感じることなく、リラックスした気持ちで、好きなように再生、停止、繰り返しをしながら学ぶことができる。

という点を挙げています。

一斉講義型の授業では、教壇から教師だけが話し、生徒はその話を黙って聞くことが求められます。それは、いわば、生徒の自由な行動を教師が権威などによって押さえつけている空間なのです。カーン氏は、これを非人間的だと言っています。

一方、反転授業にすると、生徒は自宅で教師からのプレッシャー感じることなくリラックスして楽しみながら動画講義で学び、教室でもグループワークなどでコミュニケーションを取りながら学ぶことができます。
 
カーン氏は、反転授業によって、教室を人間的な空間にすることができると言っています。

生徒が主体的に学ぶためには、教師が生徒を管理して押さえつけないようにする必要があります。しかし、一斉講義型の授業は、生徒が黙って話を聞くという態度をすることを前提として成り立つものです。動画講義を導入することによって、教師は生徒を押さえつけなくても良くなり、生徒の主体性を促しやすい環境を作りやすくなるのです。

カーン氏は、決められた時間で授業が進んでいくという従来の学び方に対して興味深い指摘をしています。

従来の教室では、宿題があり、宿題、授業、宿題、授業、それに小テストがあります。理解できたのが70%だろうと、80%だろうと、90%だろうと、95%だろうと、授業は先へと進められます。95%が理解したとしても5%の人はどうなるのでしょう?

0乗が何になるのか知らなくとも、それを基礎とした次の概念を学ぶのです。

自転車の乗り方をそんな風に覚えるとしたらどうでしょう?

はじめに乗り方の説明をして、それから2週間ほど自転車で実習させ、その2週間が終わったら言うのです。

「チェックするぞ。左折に難があるな。きちんと止まれないようだ。君は自転車乗りとしては80点だ。」

そして大きな「可」のスタンプを額に押すと、「じゃあ、次は一輪車だ」と言うのです。

各単元を完全にマスターせずに次の単元に行くと、基礎の部分に抜けている部分がたくさん出てきます。しかし、時間で区切って次へ進むような従来の学び方だと、どうしてもそうならざるを得ないわけです。

また、間違えながら学ぶことの重要性についても、次のように述べています。

私たちのやり方では、数学も自転車と同じように学びます。自転車に乗っては転び、乗りこなせるようになるまで必要なだけ続けます。従来的なモデルでは、実験して失敗したら罰を与えられますが、それは上達への道ではありません。私たちは実験すること、失敗することを勧めています。そしてマスターできると信じてます。

ここには、キャロルの時間モデルにも通じる学習者への信頼があります。

失敗を繰り返すことができ、必要なだけ学ぶことのできる安心・安全な環境を与えれば、学習者は必ず課題に到達できるという信念があります。

カーン氏が示す個別化学習の学習データのグラフは、キャロルの時間モデルの正しさを示しているように見えます。

マイペースの学習というのは、みんなに有用なものです。教育用語では、個別化学習と呼んでいますが、実際教室でやるとすごいものがあります。私たちがこれをやるたびにどの教室でも見られるのは、5日もすると競って上がっていく子どもたちと、もっと遅い子どもたちに分かれます。今までは、ある時点で評価をして、「この子はできる子だ、この子はできない子だ」と言っていました。「別々に扱うべきかもしれない、クラスを分けたほうがいいかも。」でも自分のペースでやらせると、これは何度も目にしていることなのですが、最初のいくつかの課題を学ぶときに時間のかかっていた子どもたちが、それを理解した後、急に上昇を始めるのです。6週間前にはできない子だと思っていた子が、今やできる子になっているのです。そういうことは、なんどもあります。私たちが恩恵を受けている肩書のどれ程が、実際は、偶然にもたらされたものかと思います。

動画講義と、何回でも繰り返せる練習の場を作り出すことができれば、30人の生徒に一人の教師であっても、一人一人の生徒がマイペースで学ぶことが可能になります。そのときに、教師の役割は、生徒の学習状況を把握し、つまづいているところに対して適切なサポートをしていくことになります。

30人の生徒に対して30人の教師がつかなくても、学習を改善できる可能性が見えてきたのです。

カーン・アカデミーは、動画講義がもたらす可能性の1つの例を具体的に見せてくれました。ここには、教育の未来に対するヒントが隠されていると思います。

 
動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~
 

動画講義の作り方を学ぶオンライン講座

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

動画講義の作り方、動画講義作成に必須な著作権の知識をオンラインワークショップ形式で学びます。

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動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~

「反転授業の研究」の田原真人です。

伝統的な一斉講義型の授業風景を思い浮かべてみましょう。

教師が教壇に立ち、説明しながら黒板に文字や図を書いていますね。

生徒は、それをノートに書き写しています。

生徒にとっては、教師の説明を聞き、黒板に書いてあることを書き写すというのが、長い間、授業を受けるということだったと思います。

動画講義で学ぶようになると、授業を受けるということは、どのように変化するのでしょうか?

記録するためのノートは必要ない

教室でノートを取るのはなぜでしょうか?

一度きりしか受けることのできない授業を書き留める「記録」がノートの一番大きな役割だったと思います。

しかし、動画講義の場合は、何回でも視聴することができるので記録する必要はありません。

学習時間の中で、記録するための時間を取らなくても良くなると、勉強の仕方はどのように変化するのでしょうか?

このことは、僕の運営しているネット予備校、フィズヨビで何度も話題になりました。

「ノートを作るのに時間がかかり、60分の授業を終えるのに3-4時間かかってしまう」ということに悩んでいる受講生に対して、他の受講生からいろいろなアドバイスがありました。

「ノートを作るよりも2倍速で何度も繰り返し見たほうが理解が深まるので、自分はノートを作っていない」

「例題のところで一時停止して、いらない紙に計算して解けるかどうかやってみてから、動画を再生して計算プロセスが同じかどうかを確認しているけど、計算した紙を保存したりとかはしていない。」

「動画講義の要所要所をスクリーンショットを撮って印刷しておいて、そこに、先生の話していることで重要なポイントなどを書き込んで保存しておき、時間があるときに見直している。」

「節の見出しとキーワードをメモしておいて、それを手掛かりに紙に授業を再現していく。再現できないところは、理解していなかったり、覚えていなかったりするところなので、もう一度動画を見て確認し、その後、もう一度、動画を見ないで再現できるかどうかやってみる。」

この他にも、様々なやり方があると思います。

ここに挙げたのは、受講生のそれぞれが、自分なりに工夫したやり方です。

それぞれに個性があるので、ある人にとって良いやり方が、別の人にとってもよいとは限りません。ですので、それぞれが、自分なりに工夫すればよいと思います。

しかし、工夫するときに、考えるべき重要なポイントがあります。

「書き写す」と「アウトプット」の違いは何か?

ここで、テーマになっているのは、「書き写す」と「アウトプット」の違いなのではないかと思います。

この違いは、インプットした情報を、どの程度、自分の頭の中を通して、他の記憶と結び付けたり、再構成したりするなどの加工をしてアウトプットしたかによるものだと思います。

output

理解の速い生徒は、授業時間内に教師の話を聞いて理解し、自分の頭で考えてノートを作ります。このようにして作ったノートは「書き写し」ではなく「アウトプット」に近くなります。必要に応じて気づいたことや、重要なポイントなども書き込まれ、その生徒の理解を反映したものになります。

 

しかし、理解の遅い生徒は、授業時間内に理解することが出来ず、しかたなく、黒板をそのまま書き写します。

もちろん、理解の速さだけでなく、学習態度、意欲なども関係してきますので一概には言えません。

 

授業で理解できなかった生徒は、自宅に戻って、教科書と、意味も分からずに書き写したノートを手掛かりにアウトプットを試みるのですが、理系科目ではこの作業が失敗に終わることが多々あります。
 
動画講義を使うと、このプロセスを大きく改善できます。
 
まず、2倍速などでどんどんインプットだけを行います。納得いかない場合は、納得できるまで繰り返します。

 

次に、動画を見ないでアウトプットします。動画の中に出てくる例題を解いたり、式変形を再現したりしてみます。最初からうまくいかないこともあるでしょう。見て分かったと思うことと、自分でできることとは違うことに気づくと思います。

 

再現できないところがあれば、再び、その箇所の動画を見て理解し、再度、動画を見ないで再現できるかどうか挑戦します。

 

ポイントは、

 

見ながら書くという行為をしないようにすること。

動画講義があることで、授業を記録する(=見ながら書く)ことをする必要がないのです。

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見るときは見る。書くときは書く。この行為を分けることで、動画を見るときの集中力を高め、アウトプットに負荷をかけることができます。

アウトプットする量をどの程度で区切るのか、アウトプットのためのヒントをどの程度自分に与えるのかといったことを調整することで、自分自身でアウトプットの負荷を調整することもできます。

 

このように、動画があることによって、脳への負荷が大きいアウトプットを中心に据えて学習することができ、学習効果を上げやすくなるのです。

アウトプットを中心に据えると、インプットのときに「この後、これを自力で再現するんだ!」と思いながら視聴するので、集中力も高まります。学習によい循環が生まれやすくなるのです。
 
動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~

動画講義の作り方を学ぶオンライン講座

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

動画講義を使った実践者が20-30名集まることで、多くのノウハウのシェアが行われると思います。

それによって、動画講義を使った学びに対する理解もさらに深まっていくと思います。

「リアルの代替でないバーチャル」の探求は、まだまだ続きます。

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動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~

「反転授業の研究」の田原真人です。

僕が動画講義を始めたのは2005年。

当時、スクリーンキャストソフトなどといった便利なものがあることを知らなかった僕は、何とかして自分の予備校の講義をネットで配信する方法はないものかと考えて、「実況講義」というPDFファイルを作りました。

語学春秋社の「実況中継シリーズ」のようなものをすべての講義について作って配信しようと思ったのです。

そして、毎週1講義配信という無茶な計画を立ててスタートしました。

当時は、河合塾などの予備校で講義をたくさん担当していましたから、「実況講義」を作るのはもっぱら深夜。

睡眠時間を削って削って作っていました。

「実況講義」をWebにアップロードをすると、その日のうちに感想のメールが山ほど届くので、それに支えられてなんとか全50講義を作り終えることができました。

ちなみに、「実況講義」とはこのようなものです。

02sample

※画像をクリックすると「実況講義」のサンプルが表示されます。

フラフラになりながら、毎週、「実況講義」を作っていたとき、受講生の一人が「いいソフトがありますよ」と教えてくれました。それが、PCレター(今のThinkBoard)でした。PCの画面をキャプチャーして、そこに音声を加えながらペンタブレットで文字や絵を書きこんでいくことができるもので、それを見たときに、

「これを使えば、簡単に講義を録画してネット配信できる!」

とワクワクしました。そして、「実況講義」50講義を作り終えた後、PCレターですべての講義を作り直していきました。

リアルの代替じゃないバーチャル

僕がThinkBoardの旧バージョンであるPCレターを使い始めたときは、PCレターは、まだ試験販売中で正式リリースする前でした。HPでサンプルを見て、開発者の三栄堂の三上博正さんにメールを送り、その日のうちに契約しました。

メールを送ると、三上さんからは、いつもPCレターで返事が来て、ファイルを起動すると、

「えーー、田原さん、こんにちは。北海道はまだ寒く・・・・」

というように三上さんの声が聞こえてきて、画面に手書きの絵が描かれていたのを、今でもよく覚えています。

その三上さんが、いつも口癖のように言っていた言葉があります。それが、

リアルの代替じゃないバーチャルを目指す。

という言葉。

三上さんのこの言葉に導かれるように、リアルではできないことは何だろうかと考えるようになりました。

理解の速さと動画の再生速度をシンクロさせる

開発者の三上さんと、実践者の僕は、対話を重ねながら、動画講義の可能性について探っていきました。

三上さんがこだわっていたのが倍速再生。PCレターには、2倍速、4倍速の機能が最初から実装されていました。

でも、僕は、最初、倍速再生を使う意味がよく分からず、どちらかというと、自分の講義が倍速で再生されるということに抵抗感があって、その機能をOFFにしていました。

すると、三上さんから、

「田原さん、倍速再生の機能、ぜひ、使ってみてください。」

というお願いと、どんな思いで倍速再生を実装したのかという長いPCレターが届きました。

それを聞いて、はっとしました。

「これは、今まで自分が経験していない初めてのものなのだから、勝手に判断せずに、やってみてどうなるのか試してみよう。」

と思いました。

それで、受講者に倍速再生の機能のことを説明し、試しに使ってみるように呼びかけました。

フィズヨビの年間受講者の数は、100、200、300と増えていきました。彼らがどのように倍速再生機能を使っているのかということを調査してみると、驚くべき結果が出てきました。

・ほとんどの受講生が最初から2倍速で聞き、等速はあまり使わない。
・最初に4倍速で通して視聴して、全体像をおよそ掴んでから、最初から2倍速で聞き直す人もいた。
・受講を始めた最初に、すべての講義を通して2倍速で聞いてから、第1講からじっくり学び始める人もいた。

オフ会で会った受講生の一人から、「田原先生が等速で話しているのを聞くと違和感があります(笑)」と言われたほどです。それほど、ほとんどの受講生が、2倍速で視聴していました。

実際、僕自身も、動画を視聴するときは、ほとんど2倍速再生で視聴します。

みなさんもやってみていただけると分かると思いますが、2倍速は、慣れてくると普通の速さで聞こえてきます。

4倍速だと速すぎて聞き取れないですが、一度勉強した内容であれば、画面の動きと音声を手掛かりに記憶が再生されて内容を辿ることができます。そして、理解が甘いところを見つけて、その部分だけ2倍速、または、等速に再生速度を落として繰り返して聞くということができます。

10年間で、数千人の受講者がフィズヨビで学び、様々な試行錯誤をした結果、自然と次のような学び方が浮かび上がってきました。

  • 1回目は講義を2倍速で視聴し、理解しにくいところは等速に落とし、さらに分からなければ繰り返して聞く。
  • 2回目以降は、講義を4倍速で視聴し、理解が出来ていないと感じたところを2倍速に落として注意深く視聴する。

動画講義を学習に使うようになるまでは、全く想像ができない学び方でしたが、リアルの教室では実現できない、動画だからこその学び方が確かに存在するということを、今では自信を持って言うことができます。

動画は最長でも15分の理由

僕が動画講義を使った実践をスタートして6-7年ほどが経ち、いつしか

「動画講義は5分以内が理想。長くても15分まで」

ということが言われるようになってきました。

その理由として、動画に集中できるのは5分くらいが限界だからということが言われています。

おそらく様々な実験をやって検証された結果だと思いますが、僕は、そんなことを知らずに60分~120分の動画講義を使っていて、受講者は、それを2倍速や4倍速でじゃんじゃん見ていくという使い方をしていたので、「5分以内が理想」に違和感を持ちました。

それで、この違いはどこから来るのだろうかということを考えました。

三上さんとも意見を交換しました。

その結果、出てきたキーワードが

シンクロ

でした。

 

このキーワードに出会うきっかけになったのは、次のような疑問でした。

「小説は1時間でも読み続けられるのに、動画はなぜ5分で集中できなくなるのか」

 

そして、たどり着いた仮説は、

「小説が自分の理解の速度に合わせて読む速度を調整できるのに対して、動画は理解の速度と関係なく情報が一方的にやってくるため、ストレスを感じるから」

というものでした。

 

このように考えると、フィズヨビの60-120分の動画講義をストレスなく視聴できる理由は、

「自分自身で理解の速度と再生速度とをシンクロさせられるため、視聴ストレスが少ないから」

というように説明できます。

 

そ理解の速度と再生速度との間にシンクロが起こると、内容に集中しやすくなり、さらに、動画の内容に魅力があれば没頭しやすくなり、そこから、フロー状態に入りやすくなります。

 

人間は、分かっていることをゆっくり説明されると飽きてしまうし、ついていけない速さで説明されると聞き続けるのが苦痛になります。人間にの脳には、顔ニューロンなど、人間を認識して注意を引きつける機能がありますので、対面で授業を受けているときのほうが、多少のズレがあっても耐えられるのでしょう。しかし、動画の場合は、そのズレが際立ってきてストレスを感じやすいのかもしれません。

 

ストレスを感じながらも動画を視聴するのを我慢できる限界が5分・・・ということなら、動画の長さを5分以内にする理由も理解できます。

 

このように考えると、

・等速再生だけなら、動画をできれば5分以内(最長15分程度)にする。

・15分以上の動画であれば、倍速再生機能を付け、受講者が自分の理解速度とシンクロできるようにする。

というようにまとめられるのではないかと思います。

 

これは、きちんとした検証をしたものではないので、研究者の方にぜひ、検証していただきたいです。

 

Youtubeの動画を倍速再生で視聴する方法

みなさんは、Youtubeの動画を倍速再生で視聴する方法をご存知ですか?

この機能がついてから、Youtubeの動画を視聴するのがとても楽になりました。

やり方は簡単!1分で終わります。

こちらにアクセスして、「HTML5試用版を有効にする」設定をするだけです。

詳しいやり方を知りたい方は、こちらを参考にしてください。

iOSのでも、Swift Playerや、SpeedUpTVなどのアプリを使うと動画を倍速で再生できるようになりますので、試してみてください。
 
 
動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~

動画講義ならではの学び方の特徴をシェア

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

動画講義を使った実践者が20-30名集まることで、多くのノウハウのシェアが行われると思います。

それによって、動画講義を使った学びに対する理解もさらに深まっていくと思います。

「リアルの代替でないバーチャル」の探求は、まだまだ続きます。

doga-side

動画講義で学ぶ方法(1) ~動画講義の長所と短所~

「反転授業の研究」の田原真人です。

ビデオカメラで教室を撮影したり、PCの画面に音声を加えて録画するソフト(スクリーンキャストソフト)を使用したりして、簡単に動画を作れるようになり、さらに、Youtubeなどの動画投稿サイトが誕生したことで、大量の動画がインターネット上にアップロードされる時代になりました。

動画を教育に利用しようと考える人たちが表れたのは必然的な流れだと思います。

アメリカでは、Khan AcademyやMOOCsが誕生し、小学生レベルから大学院レベルまで、様々な講義を無料で学べる環境が揃いつつあります。また、教育Youtuberと呼ばれる教師たちは、日々、多くの動画講義をYoutubeにアップロードし、広告費を得ています。

日本でも、eboardやmanaveeといった動画学習サイトが登場し、動画講義を使って無料で学べる環境が揃いつつあります。また、「とある男が授業をしてみた」のはいちさんのような教育Youtuberも出てきました。マスラボの古山竜司さん(1000本以上の算数・数学動画を作成)や、どんぐり教員セミナーを作成している福島毅さん(200本以上の教員研修動画を作成)のように、個人で大量の動画を作成し、Youtubeなどにアップロードする人も出てきました。

この流れは、これからも加速し続けることは間違いなく、インターネット上に大量の動画講義が蓄積されていくことになります。

では、そのような動画講義を、どのように利用することができるのでしょうか?

私は、動画講義を使った教育実践を2005年から始め、受講生からのフィードバックによって多くの気づきを得てきました。

教室で授業を受けるのと、動画講義で学ぶのとの間には違いがあり、それぞれに長所と短所があります。

動画講義の長所と短所を理解することで、工夫によって短所を補い、長所を生かすことが可能になります。

6回シリーズの記事によって、学習者の視点から動画講義で学ぶ方法を整理していきたいと思います。

動画講義の短所

まず初めに、「動画講義の短所」から考えたいと思います。短所を理解することで、それを改善する工夫も見えてくると思います。

(1)学習から脱落しやすい

動画講義は、いつでもどこでも好きなときに受講することができます。これは、メリットであるのと同時にデメリットでもあります。

教室に通う場合は、その時間は、否応なく授業を受けることになるため学習を継続しやすいですが、動画講義の場合は、いつでも脱落できるため、学び続けるためにモチベーションを維持する工夫が必要になってきます。

(2)その場で質問できない

リアルタイムで教師から学んでいるときは、疑問点が生まれたときに教師に質問して解決することができます。しかし、動画講義ではすぐに質問が出来ません。疑問が解決できないことで先へ進めなくなることもあります。

(3)メンタルサポート

途中で分からなくなっても、教師がサポートしてくれるという安心感があるから学ぶことができるという側面もあるでしょう。しかし、動画講義を使って独学している人の中には、「自分だけで解決できない問題にぶつかって脱落してしまうんじゃないか」という不安を感じる人もいます。そして、その不安から足が止まってしまって脱落してしまうというケースもあります。

動画講義の長所

では、「動画講義の長所」とはどのようなものでしょうか?

(1)何度でも繰り返して視聴することができる。

授業を理解するための前提条件を満たしていない場合、生講義を一度聞いて理解することは難しくなります。しかし、動画講義なら、一度聞いてみて分からないときに、そこに登場する用語や考え方について学び、再び動画講義に戻ってくることができます。

また、全体像が見えて文脈が指定されたことで、部分が理解できるということがあります。繰り返して聞くことで部分の理解と全体の理解とがお互いに補い合って理解が進んでいきます。5-6回繰り返して聞いたら腑に落ちたということもよくあることです。

(2)主体的に学ぶことができる。

モチベーションの問題をクリアしている学習者にとっては、動画講義はいつでも好きな時に学べるので、とてもありがたいツールです。スマホやタブレットで隙間時間に学ぶこともできます。自分自身で学習計画を立て、自分が学びたいという気持ちに従って学ぶので、主体的な学びにつながります。

また、動画を視聴しながら、どこが分かっていないのかを自己チェックすることもでき、理解を深めるためのアクションを自分で起こしていくこともできます。

(3)記録のためのノートを取る必要がない。

教室での授業ではノートを取ります。その目的の大部分は教師の授業を記録し、あとで思い出せるようにするためです。

しかし、動画講義の場合は、いつでも繰り返して視聴することができるので「記録するためのノート」は必要ありません。ノートを作るのであれば、「理解する行為を助けるための活動」としてのノートになります。

具体的には、例題演習のときに、一度解説を聞いてから、それを再現できるかどうかを確認するために、問題だけが表示されているところまで戻って一時停止し、自分でノートに解答を再現してから動画を再生してチェックし、気がついたことを書きこむといった具合です。

動画を一通り視聴してからマインドマップを描くのも良い方法です。理解できたところとできなかったところ、覚えているところと覚えていないところが明確になるので、その上で、もう一度、動画を見て、マインドマップを完成させると頭に入りやすくなるでしょう。

かなり負荷が高い方法ですが、キーワードだけを書き止めておいて、授業を白紙に再現していくという方法もあります。

このように、記録するためのノートではなく、理解を深めて定着させるためのアウトプットとしてのノートを作るというのが動画講義では可能になります。

(4)再生速度と理解速度とをシンクロさせる

理解の速度は、人によって様々です。教室での授業は、平均よりも少し理解が遅い学習者に合わせて授業を進められることが多いです。でも、その結果、自分の理解の速度に比べて授業の進み方が遅くて退屈してしまったり、自分の理解の速度よりも授業進度が速くてついていけなくなったりする学習者がどうしても出てきます。

それに対して、動画は、自分の理解速度に合わせて再生速度を調整することができます。

Youtubeのhtml5プレーヤーを使えば1.5倍速、2倍速で再生することができますし、ダウンロードした動画をアプリを使って再生速度を変えることもできます。

2倍速再生でどんどん進んでいって、「ん?どういうこと?」と思ったところは、等速に落として反復して視聴するというようなこともできます。

このように再生速度を変化させて、自分の理解速度とシンクロさせていくとストレスが少なく受講することができます。
 
動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~
 

動画講義の作り方を学ぶオンライン講座

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

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動画で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度をシンクロさせる~

第18回反転授業オンライン勉強会「エビデンスに基づく教育とは何か」

「反転授業の研究」の田原真人です。

新しい教育実践を積み重ね、学会や研究会のようなコミュニティ内でその結果をシェアして、そこから何かしらの結論を導き出していくためにはどうしたらよいでしょうか?
 
実践者が仮説を立て、実験によって検証する場合、その結果の信頼性はどの程度だと見積もることができるのでしょうか?

このような問題に取り組んでいるのが、Evidence Baced Education研究会代表の森俊郎さんです。

反転授業のような新しい試みを進めていくときには、学習効果や費用対効果についてのエビデンスを出していくということが重要になってきますし、実践者の研究能力も必要になってくると思います。

今回の勉強会では、森さんに「エビデンスに基づいた教育」についてお話ししていただき、その後、みんなで話し合いたいと思います。

日時:5/15(金) 21:30-23:00

場所:オンラインルーム WizIQ

参加費:無料

登壇者:森俊郎さん(Evidence Baced Education研究会代表)

タイトル:エビデンスに基づく教育とは何か

※第2部では、ビデオチャットを使ったグループワークを行いますので、ビデオチャットの用意をお願いします。ビデオチャットの用意をされていない方は、メインルームでテキストチャットによるグループワークとなります。

エビデンスに基づく教育とは何か

(プロフィール)
広島大学大学院博士課程前期修了、児童自立支援施設夜間指導員、広島大学附属東雲小学校講師、岐阜県公立小学校教諭を経て、現職。2014年〜ロンドン大学(IOE)客員研究員を兼ねる。
エビデンスに基づく教育研究会代表

森さんのインタビュー記事はこちら

(内容)
エビデンスに基づく教育に関して、これまで自分がやってきたことをお伝えします。
ICT利用については、費用対効果を示す必要性を感じています。
エビデンスに基づく教育、教育の費用対効果など興味ある方は是非ご参加下さい 。

お申し込み方法

(1)このページからお申し込みください

お申し込みはこちら

(2)自動返信メールに参加方法が書いてありますので、指示に従って参加してください。

※自動返信メールの内容

【入室準備】
Windowsの場合は、下記のページからデスクトップアプリをダウンロードしてインストールしてください。
http://www.wiziq.com/desktop

iPadからの参加の場合は、WizIQのアプリをインストールして下さい。

Macの場合は、ブラウザで直接ルームのURLにアクセスしてください。うまくつながらない場合は、ブラウザを変えてみてください。

自動返信メールに書いてあるルームのURLをクリックすると、「Launch Class」というボタンが現れますので、それをクリックしてください。

Screen Nameの記入を求められますので、お名前を入力してください。

【入室方法】

上記の準備を終えた後、自動返信メールに書いてあるURLをクリックすると、自動的にWebルームにつながります。

初めて参加する方は、以下の動画をご覧ください。

Evidence Based Education 研究会代表 森俊郎さんインタビュー

「反転授業の研究」の田原です。
 
僕が専門的に学んできたのは、自己組織化のプロセス。「反転授業の研究」でも、ICTを使って主体的な学びについての知恵が、対話を通して自己組織化されていくことを目指しています。
 
ところで、自己組織化的なプロセスが起こって集合知が生まれていくために必要な条件は、

(1)グループ内のコミュニケーションがオープンでフラットになっていること。

(2)実践を共有し、公平に評価していく仕組みがあること。

の2つではないかと思います。
 
グランドルールを定め、多くの方がそれを体現してくださっていることで(1)オープンでフラットなコミュニケーションは、かなり実現されていると感じています。
 
しかし、(2)実践を共有し、公平に評価していく仕組みという点では、どこから手を付けたらよいのか見えてきていないという状況です。

様々なバイアスがかからないようにして、公平に評価される仕組みがあってこそ、どんな実践が本当に効果があったのかを知ることができ、改善につながっていきますし、正当な評価がされることが、実践者のモチベーションを高めていくことにつながると思います。

この部分をどのようにデザインしていくのかというのは、集合知を得ていく上でとても重要なポイントだと思います。
 
Evidence Based Education 研究会代表の森俊郎さんは、一貫して「エビデンスに基づく教育」に取り組んでいらっしゃいます。森さんの取り組みは、「実践を共有し、公平に評価していく仕組み」を作るために大きなヒントになるものだと思い、お話をうかがいました。

エビデンスに基づく教育とは何か

―― 森さんがやっていらっしゃる「エビデンスに基づく教育(Evidence Baced Education) 」とは、どのようなものなのですか?

自分は、エビデンスと教育を結び付けるということをやっています。同じような問題意識を持つ仲間と研究会をやっています。

日本の教育界ではEvidence-Basedということは、ほとんど言われていません。『教育とエビデンス ―研究と政策の協同に向けて』という本が2010年に出版されたのが始まりで、教育におけるEvidence-Bacedとは何かということで、実践と研究を進めています。

個人の勘や経験だけじゃなく、数字や質的調査、研究に基づく授業分析だとかを行って、どういう風にしたら、より広がりが持てる客観的な知見を得られるかということに取り組んでいます。

I think型の授業研究会じゃなくて、私がこう思うからという思い込みじゃなくて、本当に子どもにとって何だろうなというところでやっていくようなものです。

なかなか言い表しにくいのですが、研究の研究みたいなものでしょうか。

森さんの授業研究会に対する発言から、研究と実践の場が連携していくことで、もっと教育全体がよくなっていくのにそうなっていないという歯がゆさのようなものを感じました。

森さんは、研究と実践の連携というテーマにどうして関心を持つようになったのでしょうか?

そのきっかけをうかがいました。

理論と実践の両方が大事

―― 森さんがエビデンスに興味を持ち始めたきっかけは?

大学生のときに遊びすぎて教員採用を受け忘れてしまって、もっと勉強してから教師にならなければ出会うことになる生徒に申し訳ないという思いで大学院に進んだんです。大学院生のときに不登校やいじめの問題をテーマに研究をしていました。

午前中は所謂荒れている学校に派遣されて、午後は大学院に戻って研究するという生活でした。大学院でカウンセリングやアクティブラーニング、協同学習などを学ぶという生活をしていたんです。

午前中に通っていた学校は、生徒から首元にナイフを突きつけられるようなところで、大学で教育理論を学ぶよりも護身術を学んだほうがいいんじゃないかというような状況でした。

その経験から、教育における理論と実践とは何なのかということを考えるようになりました。

そして、実践だけじゃなく、理論だけじゃなく、実践と理論の両方が連携していくことが重要だと考えるようになりました。

学校現場に出てからも、理論と実践の両方が大事だという大学の先生も現場の先生も両方いるんですけど、その具体がなかなか見えてこなかったんです。

それで、行きついた先が「エビデンスに基づく教育」だったんです。

その経緯から、EBMを勉強したりとか、海外はどのようになっているのかなということでアメリカやイギリスの教育について学ぶようになりました。今は、ロンドン大学の客員もやらせていただいています。

―― エビデンスに基づく教育は、海外ではすでに行われているのですか?

はい、そうです。例えばイギリスでは、いろんな教育実践の文献とかがありますけど、英語圏ではそれこそ山ほどあるわけです。

いろんな情報が飛び交う中で、システマティックレビューと呼ばれるすべての情報を集めて、ある基準を設けて1つのレポートのような形にまとめるというものがあるんです。

教育実践のための情報サポートシステムとして提供している会社があったり、政府機関があったりするわけなんです。

医療の分野では、「エビデンスに基づく医療(Evidence Baced Medicine :EBM)」というものがあります。「科学的に証明された根拠に基づいて医療を行う」というものです。EBMが誕生した背景には、勘や経験、精神論に基づいて医療を行ってきた歴史があって、そこから脱却していくためにエビデンスの重要性について言及されるようになってきました。

同じことが教育にも言えると思います。「エビデンスに基づく教育(Evidenced Baced Education : EBE)」は、EBMのフレームワークを利用して、科学的に証明された根拠に基づいて教育を行うことを目指しています。

医療のほうでは、Evidence Bacedでやるためにはどうしたらよいかということで、5ステップという手順があって、この5つのステップで組んでいくといいよというものがあるわけなんです。

今、研究会では、5ステップに基づいて実践を各自が繰り返して、作り上げているという段階です。

―― 5ステップとはどのようなものですか?

5ステップは、PDCAサイクルによく似ていると言われています。

これは、「エビデンスに基づく医療(Evidence Baced Medicine :EBM)」の5ステップです。

Step1 問題の定式化

1.患者の問題をカテゴリに分類
2.患者の問題をPatient, Exposure,Outcomeの3要素に定式化
3.患者中心のOutcomeの設定

Step2 情報収集

1.情報源の種類と特徴
2.適切な情報の検索

Step3 批判的吟味

1.治療の論文の批判的吟味
2.治療効果を表す指標と特徴

Step4 患者への適応

1.論文と実際の医療環境の違いを指摘できる。
2.論文の内容を患者に説明できる。

Step5 中止と継続

1.うまくいかない場合は、そのプロセスを一旦中止
2.中止して、次の問題に取り組む。

このフレームで、患者→生徒、治療→教育、というように読み替えていったものが、EBEのフレームになります。

―― 5ステップとPDCAサイクルとの違いは、どこにありますか?

5ステップは簡単です。あと、5ステップにには、第3者からの評価があるというところが特徴です。

自分自身の評価、自分の実践への振り返りですね。こちらの参考文献が参考になると思います。

大学院生のときに感じた問題意識から、エビデンスに基づく医療(EBM)や、アメリカやイギリスの状況についての調査へと広げていったのですね。そして、森さん自身が、研究能力を備えた教師として授業実践を積み重ねていきます。森さんが信じる「これからの教師のあるべき姿」を自分自身が体現していくところが素晴らしいです。
 
森さんの活動は、そこからさらに広がり、同じ問題意識を持つ仲間を巻き込んで研究会を立ち上げます。

Evidence Based Education研究会を立ち上げる

―― Evidence Based Education研究会を森さんが立ち上げられたのですか?

はい。6年前から。こんどで第12回です。

―― 研究会をやっていく中で、どのようなことが起こっていますか?

まだ、成果よりも課題のほうが多いです。

アメリカ、イギリスだと教育情報を提供する機関が山ほどあるんですけど、日本の場合だとと個々人や、民間の団体が実践方法を出しているということはあるんですけど、科学的な情報に基づいて共有されているということはないです。

12月に国研のほうで教育情報ポータブルサイトというものができましたけど、あれも科学的というレベルではなく、教育委員会が掲載しているものをのせているという段階なので、システム的にも個人的にもまだまだ足りないという感じです。

森さんから、アメリカやイギリスでは、研究能力のある教師と、それと連携する研究者、教育情報をサポートする機関(行政・民間)の3者が連携してエビデンスが積みあがっていく仕組みが出来ているのだということをうかがい、日本がこの点で大きく後れをとっているのだということがよく分かりました。
 
教育システム全体に関わる大きな問題に対して、信念を持って出来ることをやっていくという姿勢に大変共感しました。

教育実践からエビデンスを出していくためには

―― 「反転授業の研究」のメンバー約3000人のうち、半分くらいが教師だと思います。実践をシェアして、そこから集合知を生み出していきたいのですが、そのための仕組みが不十分だと感じています。教育実践における仮説を検証するためには、どうしたらよいのでしょうか?

様々な方法があり、実験の仕方によってエビデンスの質をランク付けする指標があります。

もっとも質が高いとされているのが、無作為統制実験(randomized-controlled trial, RCT)や系統的レビュー(systematic review, SR)によるエビデンスです。これらは、エキスパートの意見などよりも上位に置かれます。

エビデンスの質に階層があるという見方は、エビデンスに基づいて教育を行う上で本質的なパラダイムだと思います。

実践のシェアについて考えるときに、I thinkをいくら集めてもI thinkにしかならないので、みんなで協力して科学的に証拠を出すための実験デザインを考えて組み込んでいくのですが、その1つがRCTという手法なんです。

実践をする群、しない群にしっかりわけて比較する、大規模、無作為抽出実験法です。

反転授業も、科学的エビデンスをしっかり出していくのが必要だと思います。もちろん誰の何のためのエビデンスなのかにもよりますが。

科学性の高いエビデンスを出すと同時に、費用対効果も出さないといけないと思います。

―― タブレット購入などの費用に対して、他の方法に比べて費用に見合う効果があったのかということを検証するということですね。

はい。教育効果測定に留まらずに、費用対効果、教育経済分析まで入れたいと個人的には思います。

ICTを使った実践の場合は、効果とコストを縦軸と横軸にして分析する方法があるんですけど、ICTは必ずしも費用対効果が高くないんです。

ペア・コーチングのほうが、お金がかからずに効果がいいという結果が出ていたりします。

僕はICTを推進しているわけでもないですし、嫌っているわけでもないですけど、もし、自分が反転授業とかICTの立場であるならば、経済的なコストも踏まえてやっぱりいいんだということを言っていくことが、推進、啓発をしていくときのポイントになってくるのかなと思います。

―― 僕は、アクティブラーニングや反転授業を通して、21世紀型スキルを獲得していくこと、学習者が自分のメンタルモデルに気づき、それを作り変えていく学びに興味があるのですが、テストで測定できるようなものではないので、どうやって測定していけばいいのかなと思っているのですが、よい方法はありますか?

学習に対するメンタルモデルなのか、仲間と学び合う価値なのか、何を明らかにしたいのかということを詰めなくてはいけないのですが、僕が3年ほど前にやったのは、協同学習における協働認識の変化を実践論文にまとめました。子どもは学び合うんじゃなくて、学び合わさせられているんじゃないかという問題意識から、この意識がどう変化していったのかという論文を1つ出しました。

単一実践においては、そういうのも1つ参考になるかもしれません。どうやったのかというと、1時間1時間の中で学習活動と、子どもの学びの質の内容と、学び合いがよかったと思うのを数的に1-5点法で出して、変化の割合に応じて子供がどんなことを感じ取ったのかというのを細かくインタビューしていったんです。

このように実験デザインと測定すべきものをしっかり決めていくと、もう少しクリアに話が出来るようになると思います。

いくらでもやりようがあります。研究法は山ほどありますから。

短期的に見れば、教育実践の中に実験を入れていくのは負担だと感じるかもしれません。しかし、教師と研究者からなるコミュニティという枠組みで見れば、個々の教師の工夫を比較検討してエビデンスを出す仕組みがあることで、コミュニティに知恵が蓄積していき、それを共有している教師の実践の質が上がっていくことになります。
 
研修などによってトップダウンに教え方を学ぶのではなく、自分たちで工夫して、共有して、エビデンスを出していくというあり方は、教師自身が主体的な学習者、研究者であろうとすることだと思います。それは、何度もテーマとして上がっている「学びが学びを促す」ということにつながり、、主体的に学ぶ教師の背中が、生徒の主体的な学びを促していくことになるのではないでしょうか。

研究能力を持った教師を増やしたい

―― 測定の仕方のような知見は、教師の中で共有されているんですか?

全然されていませんね。啓発の一つに、我々は教師のエビデンスリタラシーと呼んでいるんですけど、研究能力が必要だと思っています。今求められている教職大学院だとか、研究的実践者だとか、そういう言葉と一緒だと思うんですけどね。

―― そのような能力は、今まで、必要がなかったんですか?

必要なかったですね。日本の教師は教育効果を出すことを求められませんし、一生懸命やればクビになることはないですから。海外だと、説明責任が問われるようになるので、効果がないということになると学校がつぶれてしまいますし、教師もクビになってしまうので、なんとか成果を出そうと必死なんでしょうね。

―― その違いは、環境の違いから来ているんですか?

一番は、環境の違いだと思います。アメリカには落ちこぼれ防止法という法律が2000年にできたので、落ちこぼれを出しちゃうと法的にダメなんですね。それを防ぐために一生懸命頑張っていく。日本だとそれはなかったわけなので、環境の違いというのは大きいですね。

―― 森さんの場合は、環境からの要請ではなく、森さん本人の問題意識からスタートしていますよね。その根底にあるものは何なのですか?

授業に100点も0点もないという考え方が常にあります。初任者が公開授業をやったらたいていダメ出しを受けて終わるとか、ベテランの先生がやったら褒めちぎって終わるとか、そういう授業研究会を実際に経験してきたわけで、それはおかしいだろうと思うんです。

教育というのは終わりがないと思うんです。常に向上していかなければいけないと思います。自分の実践が本当に子どものためになったのか、本当に良かったのか、ということをきちんと考えるようにしてきました。

―― なるほど。それは、すごくフェアですよね。権威などのバイアスを外して、本当に何がよくて、何が悪かったのかということを見ていくということですね。

基本は、そういう気持ちです。

でも、教育現場では、全員が一緒になって実践を検証するというよりは最後にご指導をいただくといった授業研究会スタイルが多く、エビデンスベースドというのは、ある意味、反抗的な立場にあるかもしれません。

―― 実際にEBEが反抗的だというように捉えられることもあるんですか?

ありますよ。教育はエビデンスで表されないだろうとか、勘と経験は大事だとか、よく言われますね。どれも僕は正しいと思っていますが。

エビデンスに基づいて議論するというのは、ベテランも新人も関係なく公平に議論できるということです。これは、メンバー全体の力を生かしていく上でとても重要なことだと思います。多くの組織では、ピラミッド構造の下層に組み込まれる新人は、正当に評価されずに意欲を失っていきます。それは、結果として組織全体の活力と創造性が失われることにつながっていくと思います。
 
21世紀は社会が大きく変化し、教育を取り巻く環境も激変しています。その中で、ベテラン教師の取り組みが必ずしも最適解である保証はありません。常に様々なチャレンジがなされ、検証されていく仕組みが不可欠だと思います。その取り組みを保証するのが「エビデンスに基づいて」という姿勢なのではないかと思います。

森さんが思い描く教育の未来

―― 森さんは、今後、何を目指して活動されていくのですか?

教師のエビデンスリタラシーとか、教師にとって役立つ科学的情報を提供する環境が整えばいいかなとかと思っています。会を大きくしたいとか、立派になりたいとか、そういうことはないです。エビデンスとかえらそうなことを言っていますけど、すべてをエビデンスに基づけるわけではないんです。EBMのほうでも15%くらいといわれています。それなら教育だと数%だろうと思っています。でも、振り子の理論でいうと勘や経験という振りだけじゃなくて、科学的情報という方向にも振れて、もう少し環境面でも、教師のエビデンスリタラシーという面でもパーセンテージを良くしていけたらと思っています。

――ICTが出てきて、学習データを取りやすくなったのは、EBEにはプラスに働くのではないですか?

はい。時代がエビデンスベースドに向かう方向になっていると思います。研究者と実践者のマッチングが大事だと僕は思っていますけど、今まではできなかったんです。繋がることもできないし、データの蓄積なんかもできなかったんです。でも、今は、できる時代になってきました。だからこそ、今までいいとされてきたことが本当にいいのかとか、そういうことを検証していくようなことが出てくるんじゃないかと思います。

それが、教育界を少しは良くしていくんじゃないかなと思います。

―― 今は、学習のビッグデータも取れるし、Webシステムの開発も比較的安価でできるようになっていますが、それらを使って、こんなことをやったらおもしろいと思っているものはありますか?

研究者と実践者のマッチングサイトを構想中です。あとは個人の実践がデータを揃えて市町村単位でエビデンスを作り上げていくというシステムができればいいですね。

道なき道を切り開いてきた森さんのことですから、きっとアイディアを形にしていくはずです。お話をうかがって「エビデンスに基づいた教育」について、もっと学びたい、そこから取り入れられるものを取り入れたいと強く思いました。また1つ、自分にとって重要な研究テーマができました。
 
5月15日(金)に実施する第18回反転授業オンライン勉強会で、森さんが登壇します。
詳しい内容はこちら

パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方

コラボレーションによって生まれたオンラインワークショップ

こんにちは。Facebookグループ「反転授業の研究」を主宰しています田原真人(たはらまさと)です。

「反転授業の研究」は、ICTを利用して学習者が主体的に学べるようにすることに関心がある人たちが、約3000人も集まっているアクティブなオンライングループです。

グループ内から、動画講義を作るための様々なツールの基本的な使い方や、著作権の知識をまとめて電子書籍として販売する「動画作成にチャレンジ!」プロジェクトが生まれました。電子書籍は4月末から、順次、発売していくことになっています。

今回のオンラインワークショップは、電子書籍の執筆者のうち、カムタジアの執筆を担当している横川淳さん、著作権を担当している福田美誉さんの2人、さらに、白板ソフトの開発元である(株)マイクロブレインの坂本保代さんが講師を担当し、「動画作成にチャレンジ!」プロジェクト代表の水沼明子さんと「反転授業の研究」の田原真人が運営を担当します。

さらに、8名の運営ボランティアの方も加わっています。

学習者中心の学びを広げていこうという共通する思いによって、13名のコラボレーションが実現しました。

私は、10年以上前から動画を使った教育実践をしており、動画講義というのは、教育のあり方に革命を起こす可能性を持っていると思うようになりました。

なぜ、動画講義が教育に革命を起こすことができるのか、少し長いですがお読みください。

 

教育におけるコペルニクス的転回

コペルニクスの地動説により、世界の中心は地球から太陽へと移動しました。中心が移動したことにより、世界観が根底から変化しました。

これと同じような変化が、教育の世界で、今まさに起こりつつあります。

教育の中心を、教師中心から、生徒中心へと移動させていこうというのです。

教師が何を教えたのかではなく、生徒が何を学んだのかを中心に据えると、これまでとは全く違った景色が見えてきます。

この中心の変化は、教育に対する考え方を根底から変えてしまうかもしれません。

 

教師中心で考える問題点と解決へのヒント

300年前から、教室の中では、教師が教壇から一方向的に話し、生徒はそれを黙って聞くという授業が行われてきました。

そこでは、生徒の個人差とは関係なく、全員に対して同じ講義が行われ、理解の速い生徒は時間を持て余し、理解に時間がかかる生徒はついていけなくなるという状況が生まれます。

このような授業で生徒に問われるのは、決められた時間内で学習課題を達成することです。教師の話を時間内に理解できる生徒は知能の高い生徒、理解できない生徒は知能の低い生徒と見なされます。そして、疑問を持って深く考える態度よりも、要領よく課題を片付けて次々と進む態度が求められます。

このような知能(IQ)による個人差の固定概念に対して異を唱えたのが、J・B・キャロルです。

キャロルは、個人差を「学習に必要な時間と学習に使った時間の差」と捉え、学校学習モデル(時間モデル)を提唱しました。

キャロルの時間モデル

すべての学習者は、その人にとって必要とされる時間をかければ、すべての学習課題を達成できる。

つまり、生徒一人一人の学習に必要な時間の個人差に対して、それぞれに適した学習時間を与えることができれば、「担当するすべての生徒が、学習課題を完全に習得できるような授業」を実現できるかもしれないのです。

「落ちこぼれ」や「吹きこぼれ」は、教師中心の一斉講義というスタイルが作り出していたのかもしれません。

生徒中心の学習にすることで、それらを解消して完全習得学習への道を開いていくことができれば、それは、まさに、教育の「コペルニクス的転回」と言えるのではないでしょうか?

生徒中心の考え方+ICTが完全習得学習の道を開く

教育の「コペルニクス的転回」を可能にするのICTです。

一人一人の生徒が理解できるまで学ぶのを支援するためにはどうしたらよいのでしょうか?

30人の生徒に30人の教師がついて、1対1でサポートすれば可能かもしれません。でも、学校という場では、現実的には無理ですよね。

そこで注目されているのが「動画講義」です。

教師が自分の「分身」である動画講義を作成すると、どんなことが可能になるでしょうか?

課題達成までに必要な時間には個人差がありますが、各自が自分のペースで理解できるまで動画を繰り返して視聴すれば、学ぶ時間の個人差を解消することができます。

もし動画講義だけですべてを理解できなくても、どこが分からないのかをチェックテストなどで確認できれば、授業中に学び合いや、教師の補足説明をすることによって、クラスの全員を完全習得に至らせることができるかもしれません。

生徒を中心に据え、ICTを組み合わせることで、生徒全員が完全習得学習を行う可能性が生まれてきたのです。

 

あまり知られていない動画学習の威力

動画を使った学習には、あまり知られていない2つのメリットがあります。

1つ目は、教師からのプレッシャーを逃れてリラックスした空間で、自分で動画の再生や停止を操作しながら学ぶことで、生徒が能動的に学びやすくなることです。

カーンアカデミーの創始者であるサルマン・カーン氏は、いとこにスカイプで家庭教師をしていたときに、補助的に動画講義を作成してYoutubeにアップロードしていました。

そして、いとこから、「直接教わるよりも、動画のほうがいい」と言われてしまいました。

動画だと、分からないところをもう一度説明するのを頼む必要もないし、「分かった?」と急き立てられることもないので、落ち着いて学べるのだそうです。

2つ目は、倍速再生や、繰り返しの再生によって、理解のスピードと動画再生のスピードをシンクロさせて、集中力を高めることができることです。

私は、10年前から動画講義を使った学習に取り組んできました。生徒の学習状況を見ると、ほとんどの生徒が講義を倍速再生で視聴していることに気がつきました。

4倍速で全体像を掴んでから、2倍速で最初から聞き直し、分からないところは等速で反復するというように、リアルの講義ではできない、動画ならではの学び方というものがあり、学習者が自分の理解度をモニターしながら動画再生を操作することで、「分からないで取り残される」「分かっているところを説明されて飽きる」といったことがなく、常に集中できる状態を保つことができます。

このような動画学習のメリットを考えると、動画を使うことで、通常の学習よりも課題達成までに要する時間を短縮できる可能性を秘めているのではないかと思います。

 

動画講義作成ができると、授業デザインの可能性が大きく広がる

このように、授業に応じて、臨機応変に動画講義を作ることができると、授業デザインの可能性が大きく広がります。

・動画講義で予習し、教室で学び合いや、完全習得に至る問題演習を行う反転授業

・動画講義で予習し、教室で21世紀スキルの獲得を目指す反転授業

・前提知識の足りていない生徒のために、補習動画を作ってサポート

・理解の速い生徒のための発展的な内容を解説するサプリメント動画

動画を手足のように使いこなすことができれば、その応用範囲は、工夫次第でいくらでも広がっていきます。

 

パソコンを使って簡単に動画講義を作る方法

動画講義には、いろいろな作り方があります。

スタジオでビデオ撮影したりしたり、クロマキー合成したりするような方法もありますが、一番簡単にできるのは、パソコンの画面を録画するスクリーンキャストというソフトを使用するものです。

有名な動画学習サイトであるカーン・アカデミーや、eboardでも、スクリーンキャストを使った動画が作られています。

Khan Academyの動画講義 (カムタジア+ペイントソフト)

eboardの動画総集編(カムタジア+白板ソフト、Web素材など)

探究学舎のtanQcinema(カムタジア+keynote)

 

カムタジアなどのスクリーンキャストソフトを使うと、ペイントソフトなどに手書き文字を書き込みながら説明する様子を録画したり、パワーポイントなどのスライドを使って説明する様子を録画したりすることができます。白板ソフトやパワーポイント、Keynoteなどのアニメーション機能などを使えば、動きのある動画を作ることもできます。また、グラフソフトや3次元描画ソフトなどを使って解説する動画も作ることができます。

パソコンの画面に表示されているものなら何でも録画できますので、Webサイトを背景にしたり、グラフソフトを使ってグラフを表示させたりすることもできます。

本講座では、eboardの動画で背景に使用されている白板ソフトの外に、パワーポイント、Keynote、Webサイトなどを背景にして動画を作成する方法を説明し、それをもとに各自が実際に動画を作っていきます。

講師、運営ボランティア、受講者がアイディアを出し合い、それを共有して学び合うと、4週間で参加者全員が大きくスキルアップするはずです。

 

動画講義作成には、著作権の基礎知識が不可欠

スクリーンキャストを使った動画は、パソコンの画面をそのまま録画できますので、様々な資料を使って動画を作成することができますが、そのとき問題になるのが著作権です。

資料などを動画に使用するときに、どのようなことに注意しなければならないのか。

動画を公開するときにどんなことを守らなければならないのか。

著作権についての基礎知識があることで、トラブルを避けることができます。

本講座では、動画の作成と公開に必要な著作権の知識もお伝えします。また、動画作成に利用できる著作権フリーの画像、Web素材などもご紹介します。

著作権の知識があることで、安心して動画を使った実践を進めていくことができるようになります。

 

これまでになかった新しいオンラインの学び方

本講座は、はじめての人でも、簡単にPC画面に音声を加えるやり方で動画講義を作ることができるようになるための4週間のオンライン講座です。

講座開講中の土曜日にビデオ会議室を使ったリアルタイムセッションを行います。リアルタイムセッションでは、講師がビデオチャットで登場して課題の説明を行った後、受講者のみなさんも一人一人ビデオチャットで登場し、自己紹介や、前の週の課題の感想を話し、他の参加者からのフィードバックを受けます。

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※写真は「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」のときのものです。

課題の詳しい内容は、動画講義で説明されますので、受講者はそれを見ながら、各週の課題に取り組み、動画を作成し、Youtubeにアップロードします。

※Youtubeに動画をアップロードしたことのない方も大丈夫です。アップロードの仕方も詳しく解説します。

※Youtubeの公開ステータスと「限定公開」にすれば、URLを知らない人はアクセスできないので、練習のために作成した動画は「限定公開」でアップロードします。

Youtubeにアップロードした動画を、MoodleというLMS(Learning Management System)の掲示板に貼り付けて、参加者同士で共有します。

Moodle内では、受講者と運営ボランティアの5-6名の混成グループをいくつか作り、グループ内でお互いの動画に対してフィードバックを送り合ったり、参考にしあったりします。他のグループの動画も参考にすることができます。

Moodle内のグループは、毎週メンバーをチェンジするワールドカフェ形式で行います。

その他に、週に1度、オンラインの雑談部屋を開きます。まじめなリアルタイムセッションとは違って、飲み物を用意して、リラックスした気分で参加する雑談部屋では、笑い声が溢れ、本音トークが飛び交います。授業実践に取り組む中で生まれる悩みを雑談部屋でシェアすることで、意外な解決策が見つかることもあります。
 
雑談部屋があることで、参加者同士の交流が深まっているようです。

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※写真は「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」のときのものです。

様々な運営上の工夫を重ね、「反転授業の研究」が主催するオンライン講座は、オンライン講座としては奇跡的に脱落者が非常に少ない講座となってきています。

それは、オンラインであっても、「会っている」「参加している」という実感を感じることができるからかもしれません。

その結果、これまでの講座では、講座終了後も受講者同士の関係性が継続し、多くのコラボレーションや、オンラインの学習コミュニティが生まれています。また、また、オンライン講座の受講者として参加した方が、講師、運営、運営ボランティアになっていくという循環も生まれています。

まとめ

  • 教師中心から、学習者中心の学びへのパラダイムシフトが起こっている。
  • 学習者中心の学びをデザインするのに、動画講義は役に立つ。
  • 動画を臨機応変に作成できるようになると、授業デザインの自由度が増す。
  • 動画は、生徒の学びの個人差に対応するのに役立つ。
  • スクリーンキャストソフトを使うと、簡単に動画講義を作ることができる。
  • 動画の作成と公開には、著作権の知識が不可欠である。
  • 動画講義の作り方をオンラインで学び合うことで、一緒にスキルアップできる。
  • 動画講義の作り方を継続して学び合うオンラインコミュニティを作る。

 

講師紹介

スクリーンキャストの使い方を担当!

yokogawa

横川淳(コムタス進学セミナー 物理・化学講師)

(プロフィール)
京都大学大学院理学研究科博士課程修了(専攻:X線天文学)。博士(理学)、気象予報士。広島県呉市の学習塾「コムタス進学セミナー」で物理と化学を担当。自分が担当するクラスへの予習・復習用の動画を作成し、提供している。動画はもはや授業のインフラ。

ブログ「カガクのじかん」http://d.hatena.ne.jp/inyoko/
著書「気楽に物理」http://www.amazon.co.jp/dp/4860643070
  「身につく気象の原理」http://www.amazon.co.jp/dp/4774172278/

(メッセージ)
誰も出勤してこないうちに教室の隅っこで初めて動画を撮った日のことを、昨日のことのように思い出します。そのときはまだ「スクリーンキャスト」という概念も知らず、聞ける人もいない状態でした。ただ自分の授業に横たわる問題を解決するには動画しかないと思い、iphoneのカメラでパソコン画面を撮影するという奇抜な方法で動画を撮り始めたのです。

その動画は画質は悪く、音声は貧弱で、しかもファイルサイズは大きいという、どうにも使いにくいものでした。今ではもうお蔵入りとなっていますが、それでも当時は「授業を担当する先生が作った動画」ということから、生徒は特に違和感を表明することもなく利用してくれていました。

その後、「カムタジアスタジオ」というソフトの存在を知りました。最初は独特の操作感に戸惑いましたが、慣れると急激に動画作成の効率が上がり、動画を実戦投入するケースが増えてきました。今では動画を特別扱いすることなく、多数ある授業ツールの一つとして自然に活用できるようになりました。

本講座ではスクリーンキャスト(パソコン画面をそのまま録画するソフト)の使い方のサポートを担当します。カムタジアスタジオは、30日間無料試用ができる上、録画後の編集機能も強力で手軽に使えますので、お勧めします。私が最初「とっつきにくいな」と思ったポイントは全てマニュアル(文書と動画)にしましたので、受講される皆さんにはスムーズに動画作成に取り組んでいただけると思います。むしろ皆さんがスクリーンキャストのことなんてすぐ忘れてしまって、動画本体の方に意識を集中できるよう、サポートしていきたいと思います。

このオンラインワークショップの特徴として、「受講生と講師の垣根が低く、一方通行ではない学びが得られる」ということが挙げられると思います。私は今まで受講生として2回、アシスタントとして1回、運営ボランティアとして1回参加してきました。そのたびに参加者の間で起こる「学びの渦」に巻き込まれて楽しい思いをしてきました。今回は何が起こるんでしょう。とても楽しみにしています。

白板ソフトの使い方を担当!

坂本保代

坂本保代(株式会社マイクロブレイン)

(プロフィール)

1990年人工知能を得意とする株式会社マイクロブレイン(白板ソフトの開発会社)を夫と友人の3人のメンバーで設立。簡単操作でコンテンツが作成できるツールの開発を行う。2000年頃は、携帯電話で動画が見られるようになり、子供でも簡単に動画作成できる時代が来ると思い、第3回ベンチャー甲子園にて「子供からコンテンツ配信~研究」で、アイデア賞受賞。しかし、当時はまだパソコンも遅く快適な環境ではなく、夢を語った時より約15年ワークショップや個人活動での稲城市子ども体験塾等の講師経験を経て、現在の「スーパーキッズ」代表に至る。
○教え子の子供作品「稲城の観光PR動画」夢の実現の第一歩です。
https://www.youtube.com/watch?v=UxL0_14LBkU

昨年、ICT活用の苦手な先生に、白板ソフトを教える機会があり、自分で教材作成出来るようになると「坂本さんのおかげで夢が叶ったわ!」と笑顔で感謝されました。動画と一緒に教材作成や問題も作り、参加した皆様の笑顔が見たいと思います。

白板ソフト http://www.mbrain.com/wb/index.htm
ブログ http://hakuban.blog19.fc2.com/
株式会社マイクロブレイン http://www.mbrain.com/

動画講義の作成&公開に必要な著作権の知識を伝授!

福田美誉

福田美誉

(プロフィール)

1976年生まれ。東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻修了後、千葉幕張の気象情報会社や仙台市内のITベンチャー企業に勤務し、約10年間システムエンジニアとしてWebシステム、サイトの制作に従事。2011年より大阪梅田の教育サービス系企業に勤務。2013年4月に教材開発者に転向後は、情報教育や統計・データ分析の教材開発、テキスト執筆、オンラインサービス運営を中心に取り組んでいる。
 
今回の講座では、「著作権の知識を覚える」というよりも、「著作権を意識して教材制作を行う」ことを目標としています。講師を務める私も、受講する皆さんとフラットな関係で一緒に学び、スキルアップしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

「動画作成にチャレンジ!」プロジェクトを主宰

水沼明子

水沼明子

(プロフィール)
ラーニングデザイナー(日本eラーニングコンソシアム)

日本女子大学理学部数学科を卒業後、地元で就職。4年ほど会計関係のプログラムを組む仕事をしたのち、実家の母が亡くなり退職。その後10年間は、家族が次々と病気で入院・手術、自宅療養、亡くなるということの繰り返しでした。知識や物事を吸収するのに適した、 頭も感性も柔らかい20代から30代を家ですごさなければならなかったのは、他人から見れば勿体無いと思うかもしれません。確かにもっと勉強したかったという気持ちはありますが、他人が得られない経験をしたことをプラスだと考えたいです。(でも、そうですね、若いうちに修羅場をくぐったのが良かったのか悪かったのか。。) 次に、塾を開き10年ほど塾教師の経験を積んだのち、自分で勉強がしたくなり塾をやめ、 この間に始めたインターネットでの活動から、TwitterやFacebookでのグループ活動に参加。2011年後半からはFBグループ「みんなのデジタル教科書教育研究会」広報担当として、活動を始めたばかりのデジ教研のお手伝いをしました。ここで様々な貴重な、でも面白い経験をさせていただきました。 また、Twitterで知った「DAISY」をTogetterにまとめたものを、日本で一番最初に電 子書籍として編集し公開。このTwitterでのつぶやきを本にすることを許可してくださった河村宏さんは、今も夢を追って世界を飛び回っている私の尊敬する方です。   

『DAISY』河村宏さんの呟きのまとめ http://p.booklog.jp/book/35908

そして今私は、放送大学大学院情報学プログラムに在籍。研究テーマはeラーニングや学習コミュニティなどです。

最後に、去年5月にメンバーを募りスタートさせた「動画作成にチャレンジ!」プロジェク トですが、「反転授業の研究」FBグループから多才なメンバーが集まり、それぞれの才能を活かした本作りが現在進められています。 今回のコラボ企画で多くの方が動画作成の著作権の知識を持ち、楽しく動画作りの技術を身につけられることを、心より願っております。

オンラインでの学習コミュニティ創りに挑戦中!

tahara

田原真人(オンライン教育プロデューサー)

(プロフィール)

早稲田大学理工学研究科物理学及び応用物理学専攻博士課程中退後、物理の予備校講師に。河合塾などで10年以上教える。『微積で楽しく高校物理が分かる本』など著書9冊。2004年から物理ネット予備校(フィズヨビ)を立ち上げ、動画講義やMoodle、Web会議室を使ったオンライン教育に取り組む。オンラインでの反転授業、ワールドカフェ、ワークショップ、ダイアログなど、オンラインでの場創りに取り組んでいる。

(メッセージ)

Facebookグループ「反転授業の研究」を主宰し、反転授業の多くの実践者にインタビューをしてきました。その中で動画講義の意味や、授業設計やファシリテーションを学ぶ重要性などに気づき、オンラインのワークショップを実施してきました。学習コミュニティを広げていくために、オンラインワークショップの運営ノウハウも積極的に受講生の皆さんにシェアしていきたいと思います。また、動画講義を使った実践は10年以上続けていますので、そこから得た気づきも積極的にシェアしていきたいと思っています。この講座では、運営と全般的なテクニカルサポートを担当していますので、ご不明な点があれば、田原までお問い合わせください。

運営ボランティアのみなさん

今回の講座では、前回に引き続き、授業に協力してくれるボランティアを募集しました。この講座は、講師陣と運営ボランティアとが意見交換しながら作っています。運営ボランティアが入ることで、「教える側」「教わる側」という固定化した枠組が崩れ、講座にダイナミズムが生まれると思います。

運営ボランティアの皆さんは、自らの成長を大切にするマインドセットを持っている方ばかりです。運営ボランティアの皆さんとの交流も、この講座の価値の1つだと思います。

江藤由布(近大附属高・教諭)

kuramoto

LEAFモデルで英語教育を変える、江藤由布です。LEAFとは、教科書に依存しない、生教材、オールイングリッシュ、アクティブラーニング、反転学習の頭文字をとったものです。わたしにとって動画は二つの役割を持ちます。一つ目はLEAFモデルを支える屋台骨として。動画があるから、反転学習が可能になり、動画として一斉講義部分を押し出すことで、教室でしかできない学習形態が可能になります。もう一つは、自分の情熱を不特定多数の人に伝える手段として。現在ブログを配信していますが、人の心に訴えることができるのは、やはり動画の方です。ですから、「こんなことを伝えたい!」という強い想いが沸いた時は、動画で語りかけます。今回は、ボランティアスタッフとして関わっていますが、体験的に学んで来た事を、体系立てて学べるということで、ワクワクしています。みなさんとお会いするのを楽しみにしています。Let’s learn together!

LEAFモデルで英語教育を変える

遠藤良仁

遠藤良仁

看護大学の教員をしています。看護師の基礎教育や免許取得後の継続的な教育のあり方や方法に興味があります。模擬的に臨床場面を再現して学ぶシミュレーショントレーニングからインストラクショナルデザイン、そして反転授業へとたどり着きました。現代の看護職の生活や状況にあった学習支援の方法を模索しています。今回動画講義ワークショップへボランティアで参加し、少しでも多くのことを吸収したいと考えております。よろしくお願いします。

 

倉本文子(日本語教師)

倉本文子

みなさま、こんにちは!ボランティア参加の倉本と申します。
カイ日本語スクールという日本語学校に勤務していて、昨年7月から反転授業の研究のグループに参加させて頂いています。
 1年の間、田原さんやグループの皆さんの精力的な実践や日々の有益な情報から多くのことを学び、刺激を受けました。「Explain Everythingで作る動画」と「反転授業のためのインストラクショナルデザイン」のオンライン講座にもお世話になって、仕事や授業のやり方が想像以上に大きく変化していると感じています。
 バージョンアップした動画作成講義がまた実施されると聞いて、日頃の恩返しになればと思って手を上げました。昨年の学びの成果として、職場で本格的に動画を使った反転授業プログラムの開発に入りますので、一緒に学びを広げていけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!

塚原 大輔

塚原 大輔

今回ボランティアをさせていただきます塚原大輔です。私は看護師で現在はより専門性の高い看護師を養成するための学校で専任教員をする傍ら社会人大学院生としてICTと対面型のブレンド型授業をテーマに研究を行っています。まだまだ駆け出しで分からないことばかりですので皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。よろしくお願いします。

ギュンター知枝(徳島大学共通教育センタードイツ語講師)

ギュンター知枝

京都市立芸術大学音楽学部卒業(声楽専攻)
卒業後ドイツに留学するも入学前に結婚、出産。
そのまま7年間ドイツに住む。
ドイツ在住中から通訳としての活動を開始。

1995年どうしても日本に住みたかった主人に説得されて家族で日本へ。
それ以来、派遣などで会社員をしながら細々と通訳の仕事を続けていたのが認められて2011年より徳島大学共通教育センターにてドイツ語の非常勤講師に就任。

2013年秋に「反転授業の研究」Facebookグループに参加してから、仲間の活動やオンライン勉強会にインスパイアされて自らの授業改善を始める。

2014年度は物語や詩を書く、ドイツ人とクリスマスカードを交換など、output中心の授業に挑戦し、ウェブ単語帳Quizletや、ウェブ掲示板サイボウズLiveなどICTを取り入れた自宅学習を導入。時々簡単な動画を作成したりもし始める。

2015年度は、学生に、変化が急速化する社会に対応して学び続ける人になってもらうために「 学ぶ事を学ぶ」授業を計画中。

2014年度に続き33名と、語学にしては人数が多めのクラスなので、何とか動画で説明時間を短縮したいと考えています。

私も、水沼さん率いる「動画作成にチャレンジ!」プロジェクトのメンバーです。

皆さんと一緒に試行錯誤しながら大いに悩む、学びの同志的ポジションから講座を盛り立てていきたいと思っています。

松嶋渉(山口県立萩商工高等学校 情報デザイン科長)

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山口県の公立高校で教員をしています。教科は商業で主に情報系(プログラミングやWebデザイン)の授業を担当しています。

反転授業は昨年2月に始めて科目や単元に合わせて数回実施しています。授業動画作成ではPCではCamtasiaやThinkBoard、Screencast-O-Maticなどを使用し、タブレットではiPadのExpiainEverythingを使用して作成しました。2月に行った反転授業の感想は生徒同士のインタビュー形式にして撮影しiMovieで編集しました。
現在は萩商工高校の情報デザイン科で「キャリア教育×ICT×地域活性化」をテーマにしたPBLを行っており、今年度はkintoneを利用した「学校を越えた強いチーム作り」を目指して取り組んでいますが、その取り組みのまとめもiMovieで編集しようと考えています。

今回はボランティアスタッフとして参加いたします。受講生の皆さんの助けになれるように取り組んでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

松本梓

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(プロフィール)
病院勤務薬剤師

長崎出身。薬学部の大学院を卒業後、福岡の病院で薬剤師として勤務。
専門分野は緩和医療で、緩和薬物療法認定薬剤師取得済み。

「臨床から私が経験して学んできたことを、必要としてくれる人の元へ届けたい」
そんな想いから、教育に興味を持ち始め、FBグループ「反転授業の研究」に出逢い、過去2回オンライン講座を受講。
時間や場所の制約を受けにくいオンライン講座の魅力にはまる。

また、オンライン講座で出逢った素晴らしい先生方に触発され、2015年、自身が学んだことを、届ける場として「Medical Flat Project」を立ち上げ、医療をもっとオープンでフラットにするための活動を展開していく予定。

(メッセージ)
運営ボランティアは初めての挑戦になります。
初めてオンライン講座を受けるときはとても緊張しましたが、その経験を生かして、今度は学びのサポートが出来る事を嬉しく思います。
動画作成はほとんど経験したことがありません。
みなさんと一緒に1から学べることを楽しみにしています。

Ein Ane

Ein Ane

I am Ein. Masato’s workshops interest me because it connects to learners & educators all around Japan. The atmosphere also interests me because all the learners and educators share Masato’s free spirit. This time, I am connecting with a different motive. I am going to hunt for educators & learners to connect them to a platform so that educators can share their knowledge and learners can learn freely.

自由な考え方はここにいる人たちみんなシェアしてるから、Masatoのワークショップはいつも面白い!日本のいろんなところにいる教育者と学習者たちとConnectして、ただみんなでKnowledge Hunterになることもとっても素晴らしい。今回は作りたいことがあります。教育者たちが自由に自分のKnowledgeシェアできるところ作りたい、いろんなところにいる学者とかKnowledge Hunterたちは自由にSandbox environmentで学ぶことできるため。

ワークショップ形式で学ぶオンライン講座

この講座は、解説動画、Moodleでのフォーラムセッション、Gotomeetingによるリアルタイムセッションを組み合わせて、4週間のオンライン・ワークショップ形式で行います。毎週、動画の作成法や、ソフトの使い方、著作権の知識などを2―3つ学び、学んだことを利用して、短い動画を作成して提出していただきます。

【受講に必要な知識】
  • 解説動画やマニュアルを見ながら、ソフトの操作や、Webサイトの操作などをすることができる。
【受講前に準備していただきたいもの】

(1)Webカメラとマイク

リアルタイムセッションでは、各自がビデオチャットで参加しますので、Webカメラとマイクをご用意ください。

※Webカメラがなくても講座に参加可能ですが、ご用意いただいたほうが、より参加度が高まり、楽しめると思います。

(2)パソコン

Windows、または、Macのパソコンをご用意ください。以下で使用するソフトが動作可能であることを、あらかじめご確認ください。

(3) スクリーンキャストソフト

以下のいずれかをご用意ください。

高度な編集機能を備えたプロ仕様のスクリーンキャストソフトです。30日間の無料体験版(機能制限なし)がありますので、無料体験版を使用してワークショップに参加することも可能です。音声の大きさを後から調整して揃えたり、撮り直すことなく画面の画像を修正したりする機能は、大量の動画講義を作成&管理していくときに役立つ機能です。

※カムタジアスタジオはwin版とmac版があり、機能は似通っていますが、インターフェースが多少異なります。本講座で提供するマニュアルはwin版のものですので、できればwin版をご用意されることをお勧めします(mac版でも機能的にはほぼ同じことができますので、mac版では参加不可能ということではありません)

  • Bandicam(有料/無料体験版・Win)

Bandicamは、低スペックのパソコンでも安定して動作するのが特徴のシンプルなスクリーンキャストソフトです。無料体験版では作成できる動画が10分以内であることや、ロゴが表示されることなどの機能制限があります。編集機能はありません。

Screencast-O-maticは、世界中の多くの教師が反転授業の授業動画に使用しているスクリーンキャストソフトです。無料版は作成できる動画が15分以内という制限がありますが、通常の使用方法であれば、無料版でも十分だと思います。編集機能はありません。

(4)動画の背景に使用するソフト

作成したい動画講義に応じて、各自でご用意ください。

手書き文字や、簡易アニメーションなどを簡単に作成できるソフトです。eboardの動画講義の背景に使用されています。開発元の(株)マイクロブレインがマニュアルを提供し、使い方のサポートをします。Windowsのユーザーは、無料版をインストールしておいてください。

定番のスライドソフトです。スライドをめくりながら解説する動画を作成するときに便利です。アニメーション機能を利用して様々な動画を作成することも可能です。

定番のスライドソフトです。スライドをめくりながら解説する動画を作成するときに便利です。アニメーション機能を利用して様々な動画を作成することも可能です。

  • ペイント(無料・Win)

Windowsに標準で付属しているペイントソフトです。テキストを入力したり、手書き文字を書いたり、絵を描いたりすることができます。

ペイントと同様の機能を持つペイントソフトです。テキストを入力したり、手書き文字を書いたり、絵を描いたりすることができます。

(5)手書き文字や絵を入力するためのデバイス(オプション)

手書き文字や絵を入力したい場合は、ペンタブレットなどをご用意ください。ペンタブレットは、主に次の3種類があります。

※ペンタブレットなどをお持ちでなくても、講座に参加可能です。

  • ペンタブレット・・・PCの画面を見ながら、手元のタブレットに専用ペンで文字や絵を書いていく形式。安価だが慣れが必要。
  • 液晶ペンタブレット・・・液晶画面に、専用ペンで文字や絵を書いていく形式。使いやすいが、やや高価。
  • Windowsタブレットなど・・・画面に直接、専用ペンで文字や絵を書いていく形式。書きやすさなどは、製品によって異なる。
【第1週】自己紹介動画の作成

【目標】

  • 自作の資料を背景にスクリーンキャストソフトの画面録画と音声入力ができる。
  • 出来上がった動画をyoutubeにアップロードできる。
  • 著作権に触れない素材の選び方や引用の仕方を選択できる。
【第2週】操作説明動画の作成

【目標】

  • Webサイトやソフトの操作を解説する動画作成を通じて、スクリーンキャストソフトで動画作成する際の疑問点の有無を明確にすることができる。
  • 著作権に触れない動画の配信方法が選択できる。
【第3週】講義動画の作成

【目標】

  • 白板ソフト、パワーポイント、Keynoteなどのソフトの操作説明を参考に、自分が使用するソフトの基本操作をすることができる。
  • 各ソフトを操作し、それをスクリーンキャストで録画して講義動画を作成し、Youtubeにアップロードできる。

 

【第4週】各自の授業で使用可能な動画講義を作る
  • 講座で学んだことを参考に、各自が授業で使用可能な動画講義を作ることができる。
  • 背景にするソフトの機能と説明内容とを関連させることができる。

 

この講座を受講すると

  • パソコンを使った動画講義の作り方を学ぶことができます。
  • 著作権を守って動画を作成したり、公開したりするための知識を学べます。
  • 講師、他の受講者、授業協力者から動画講義作成のヒントを得られます。
  • オンラインでの学び合いを体験することができます。
  • 動画講義作成について相談し合える仲間を作ることができます。

Q&A

Q Gotomeetingのリアルタイムセッションに参加できない日があるのですが大丈夫ですか?

A リアルタイムセッションは、翌日以降、録画動画が見れるようになりますので、そちらで確認していただくことができます。

Q パソコンが苦手ですが、サポートはしてくれますか?

A 運営の田原がテクニカルサポートを担当します。Moodleの使い方や、Gotomeetingの使い方の説明が分からないときは、いつでも相談してください。接続トラブルについても対応します。ソフトの使い方については、担当者がサポートします。

Q 動画講義を作るのは初めてなのですが、申し込むことはできますか?

A この講座は、はじめて動画講義を作る方を対象としていますので、大丈夫です。

Qリアルタイムセッションには、iPadから参加できますか?

A Gotomeetingは、iPadやiPhoneから参加可能です。あらかじめアプリをダウンロードしておく必要があります。詳しくは、こちらをご覧ください。

受講者へのプレゼント

toku1 電子書籍「はじめてのカムタジアスタジオ」


本講座の講師を務める横川淳が執筆した電子書籍です。プロ仕様のスクリーンキャストソフトの定番であるカムタジアスタジオは高機能ゆえに、初めての人は操作に戸惑う面もあります。初めて使う人がカムタジアを使えるようになるための電子書籍です。本講座のテキストとして使用します。

toku2 電子書籍「動画作成にチャレンジ―著作権―」


本講座の講師を務める福田美誉が執筆した電子書籍です。動画講義を作成する際に押さえておかなければならない著作権の知識をコンパクトにまとめてあります。本講座のテキストとして使用します。

toku3 オンラインワークショップをするためのノウハウ


ビデオチャットとLMSを連携させて、オンラインで勉強会やワークショップをやっている田原真人が、運営のノウハウを資料にまとめてプレゼントいたします。

様々なツールを実際に試した結果、分かったことや、リアルのワークショップとは違ったオンラインの難しさを解消するコツなど、あなたの活動を広げるのに役立つノウハウです。

お申込み

講座名:パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方

申し込み締め切り:2015年5月7日(木)

定員:30名 (定員に達し次第、締め切ります)

開講期間:5月9日~6月6日

※約4週間の講座期間中にGoToMeetingによるリアルタイムセッションを4回行います。

リアルタイムセッションの日程:

5/9(土) 21:30-23:00  オープニング&自己紹介、第1週「自己紹介動画の作成」の説明

5/16(土)21:30-23:00 第1週振り返りと第2週「操作説明動画の作成」の説明

5/23(土)21:30-23:00 第2週振り返りと第3週「講義動画の作成」の説明

5/30(土)21:30-23:00 第3週振り返りと第4週「各自の授業で使用可能な動画講義を作る」の説明

この他に雑談ルームを4回開催します。

受講料:30,240円(税込)

 

お申込みは終了しました
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【書評】反転授業が変える教育の未来

「反転授業の研究」の田原真人です。

今日は、1冊の本を紹介したいと思います。

反転授業の実践のフロントランナーである近大附属高校の芝池宗克さん(数学)と、中西洋介さん(英語)による『反転授業が変える教育の未来』が発売されました。

 

著者の一人である芝池さんには、第1回反転授業オンライン勉強会に登壇していただいたこともあり、「反転授業の研究」の大阪オフ会で芝池さんから直接、この本をいただきました。

この本のタイトルを見たときに、著者のお二人の覚悟みたいなものを感じました。

なかなか、こんなタイトルをつけられないです。

小細工なしで、一番大切な部分に突き進むようなタイトルですよね。

ここに込められている思いを、僕なりに解釈すると、

 

自分たちは、どんな「教育の未来」を思い描いているのか。

反転授業は、なぜ、教育を変えることができるのか。

自分たちは、その未来を実現するために、どのように行動しているのか。

 

という3つだと思います。

 

未来を語るということは、言い方を変えれば、信念を語るということだと思います。

芝池さんも、中西さんも、すごい熱量で信念を語っています。

「反転授業」という話題のキーワードで、この本を手に取った人にとっては、その圧倒的な熱量にびっくりするのではないでしょうか。

2人の教師が、存在をかけて社会に打ち込んだ弾丸・・・・そんな本だと思いました。

内容を、順に見ていきましょう。

目次は、次のようになっています。

 

第I部 反転授業を始める前に≪準備編≫

第1章 反転授業とは

第2章 反転授業の動画の種類

第3章 反転授業で授業はどう変わるのか

第4章 反転授業はあくまで手段である

第5章 反転授業は何を目指すのか

第Ⅱ部 反転授業の実際≪実践編≫

第6章 英語の反転授業でできること

第7章 数学の反転授業でできること

第Ⅲ部 反転授業で変わる教師の役割

第8章 ICT時代においては教師の存在意義が問われる

第9章 ICT時代における学校の未来、教師の未来、教育の未来

第Ⅳ部 反転授業のためのQ&A

 

赤で書いた部分は、著者のお二人の信念が、特ににじみ出ている箇所です。

第4章では、学力をつける3要素について説明しています。

①心的態度(Mindset)

②方法(Method)

③時間(Time)

というMMTの3つを揃えることに意識を向けることで、偏差値や、テストの結果ではなく、学習の課程に目を向けることの大切さを強調しています。

ここで、注目したいのが、①心的態度(Mindset) を取り上げていることです。

実は、僕自身も著者のお二人と同じ時期(2013年)から反転授業に取り組んでいるのですが、たどり着いた結論が「マインドセットをGrowth Mindsetに変えていくことが欠かせない」というものでした。そこで、「21世紀マインドセット」というメール講座を始めました。

お二人が、同じ結論に到達していることを知り、勇気づけられました。

この本は、マインドセットをどうやって構築していくのかというところにも踏み込みます。

そして、「教師と生徒がともに希望を持つこと」が大切だと言います。

これは、ちょっと言葉足らずで、一般には伝わりにくいかもしれません。でも、僕には、ビンビンに伝わりました。ジワジワ来ました。

著者は、「教師が生徒のマインドセットを変える」とは言っていないんです。

これが、本当に大切なポイントだと思います。

教師は、多くの場合、管理と放任のジレンマに陥ります。生徒の進学実績を上げなくてはいけないというプレッシャーに晒されると生徒を管理したくなります。でも一方で、単に放任すると授業が崩壊します。

生徒は、受動的に学ぶのに慣れていて、マニュアルや答を欲しがり、自分で学べと言われるとどうしたらよいのか分からなくなって教師に不満を持ちます。

この悪循環から抜け出すために必要なのは、「教師と生徒がともに希望を持つこと」だと思います。

教師が怖れから管理に走るのではなく、生徒を信じて自由を与える。

生徒も怖れから答を求めるのではなく、教師を信じてチャレンジする。

このとき、希望のサイクルが回り始めて、本当の意味での「学び」が生まれるんだと思います。

反転授業やアクティブラーニングの実践者が、一番苦労しているところでもあり、目指しているところは、まさにここだと思います。

 

第5章 反転授業は何を目指すのか では、目指しているものとして、以下の2つを挙げています。

・協働学習を通して「生きる力を育む」こと

・偏差値に対して、生きる力の礎となる「体験値を上げる」こと

そして、生きる力の要素として、

(1)自分自身を鍛える部分

(2)他人と強調・協働する部分

の2つを上げ、T字型で表しています。

この本は、教育の目的について、本当にぶれていません。

清々しいほどに、言い切る態度に感動します。

 

なぜ、このようなことを教育の目的に据えるべきなのかということについて、第8章でさらに踏み込んでいきます。

この踏み込みの鋭さも、この本の最大の魅力です。

現在の学校モデルが、「工場モデルの学校」であることを、こんなにはっきりと書いてくれていることに拍手を送りたいです。

一部引用します。

それは、例えば工場で9時から5時まで働き、上司からの指示に従う工場労働者たちのように、学校でも生徒にある一定の時間の拘束をし、教師の指示に従順に従う訓練を課す役割を学校が担うことを示す表現です。

さらに、現在の社会状況についての詳しい分析と、その中でどのような人材が求められているのかについての分析が続きます。

豊富な資料の引用から、お二人が、世界の動きに、常にアンテナを張り巡らせて、教育のあり方を根本から考え直していこうとしていることが伝わってきます。

教師自らが変わらなければならないという姿勢は、次の言葉から強く伝わってきます。

変化の激しい今日の時代の波を乗り切るためには、教師としての根本的な問題に立ち返り、その答えを見つける努力を続けながらも、時代に合わせた技能を身につけることが必要になってきます。

第8章の最後に出てくる「教えることを通じて生徒から何を学ぶのか」という言葉に、お二人の姿勢が表れていると思います。そして、そのような姿勢で学びながら教えている教師の背中だけが、生徒の主体的な学びを促すことを可能にするのだと思います。

第9章では、学校の未来、教師の未来、教育の未来について考えていきます。

ここでも、豊富な資料を引用しながら、おもいきった予想を展開していきます。

世界を、現実世界、仮想世界、知的・感情世界の重なりとして捉え、知的・感情世界においてメタ認知を発達させていくことが大切だという意見には、大賛成です。

オンライン学習が発達し、現実世界での学びに対して、仮想世界での学びの割合が増加していくにつれて、現実世界での教師の役割が縮小していくという分析はさすがです。しかし、それは、旧来の役割が縮小していくということであり、新たな役割が生まれてくるはずです。どのような役割が生まれてくるのかは、芝池さんや中西さんのようなアンテナを張り巡らせた教師たちによって発見されていくことでしょう。

 

最後に教育の未来について触れる中で、21世紀の人材育成に戻ります。

ここで、大きな気づきがありました。

手段と目的を間違えちゃいけない。

21世紀の人材育成が目的で、反転授業はそのための手段であるというロジックをさらに拡張すると、

21世紀の人材育成が目的で、学校はそのための手段である・・・ということになります。

このような表現は、本の中にはありませんが、目的に応じて、学校も、教師も、形を変えていくべきだという信念が貫かれていると感じました。

聖域を作らずに、真摯に問題を掘り下げていく姿には、拍手を送らざるを得ません。

 

この本は、口当たりの良い、当たり障りのない表現に慣れている人にとっては、刺激が強い本です。

しかし、教育が直面している問題に対して意識を共有している人にとっては、「よくぞ書いてくれた」と勇気づけられる本です。

芝池さん、中西さん、僕も同じ方向を向いて進んでいきますよ。

 

 

 

 

 

専属コーチのブリッジ代表、田中力磨さんインタビュー

知識はインターネットで検索すれば手に入り、授業もYoutubeにどんどんアップされる時代に、教師の役割、存在価値はどのように変化していくのでしょうか?

変化の激しい社会の中で、知識はあっという間に陳腐化していきます。大切なのは、知識ではなく、学び続けることができるマインドセット。Growth Mindsetを身につけることではないでしょうか。

では、どのようにして生徒にGrowth MIndsetを身につけさせることができるのか?

専属コーチのブリッジ代表の田中力磨さんは、ご自身のアイデンティティを教師ではなく、コーチだと考えているそうです。コーチングとティーチングの割合は、多くても7:3で、段階的にコーチングの割合を増やしていき、最終的には、9:1くらいになるようにしているのだそうです。

僕は、田中さんの取り組みに、21世紀の教師の在り方の1つの可能性を感じ、インタビューさせていただくことにしました。

rikima

子育てをしたいと思っていた中学時代

田中さんが、教育に関心を持ったきっかけは何だったんですか?

中学生のときに「東京大学物語」が流行っていて、それを読んだときに、日本の教育って何なんだろうという疑問を感じていたのを覚えています。それで、漠然と、いい大学に行くとか、いい会社に就職するとかじゃなくて、地元で「子育てをしたい」って思っていたんです。

中学生のころに子育てしたいって思っていたとは驚きですね。その思いは、ずっと続いたのですか?

親が、一部上場企業に就職することが大事だという考えを持っていたんですが、自分は、そういう上昇志向はなくて、地元で就職したいと思っていたんです。それで、親に納得してもらうために、一部上場企業の内定をもらって、それを断って、地元に就職しました。

田中さんは、自分の価値観に対するこだわりがとても強い方だと思いました。まわりに流されず、自分の物差しで自分の行動を測ることができるというところが、すばらしいです。

パニック障害を発症し、職を転々と

地元の企業に就職してからはいかがでしたか?

社会人2年目にパニック障害を発症し、それをきっかけに退職することになりました。それから、職を転々とすることになりました。そうなってしまうと、学歴とか関係なくなってしまうんです。パニック障害で倒れて転職を繰り返しているということを伝えると、就職できないんです。

それは、大変な状況でしたね。そこから、どのようにして立ち直ったんですか?

学歴はなくなったけど、学力=学ぶ力は無くなっていないぞ!と思いました。それで、教える仕事を始めました。

就職活動というのは、社会における自分の「商品価値」を思い知らされるものだと思います。病気によって、外側から「商品価値の低さ」を突きつけられたときに、それに負けずに自分の価値を自分で定義した田中さんに感動しました。

予備校の教室長のときに感じた違和感

田中さんが、今の教育のあり方に疑問を感じたきっかけは?

僕は、以前、東進衛星予備校の教室長をやっていたことがあったんです。映像授業の補足をして教えていたら、「そういうことをするな」と言われて違和感を感じました。それが、人間だからこそできることがあるんじゃないかと思った最初のきっかけでした。

「教師」じゃなくて「コーチ」になったきっかけは?

自宅で塾をやるようになってから、半年前、「名もない小さな個人塾」の小澤淳先生の夏合宿に参加させていただく機会がありました。そこで、慶応大学の学生アルバイトが勉強を教えているのを見て、正直言って、教える力が僕よりもあるんですよね。それで、自分は勉強を教える人じゃなくてもいいんじゃないかと思ったんです。

小澤先生の夏合宿って、参加したいという塾関係者の人がたくさんいるんですけど、参加させてもらったのは僕だけだったので、小澤先生に、「勉強に対する指導力は高くないのに、なんで僕なんですか?」と質問したんです。

そしたら、小澤先生が、

「田中さんは、子どもたちの心の中に入っていく力がすごいんだよね。合宿3日間で子どもたちの見る目が変わったというところでは、敗北感を感じる」

ということをおっしゃってくれたんです。それが、すごくうれしくって、知識を教えるよりも、潜在的な力を引き出すほうが生きていく力を養うことができるというように強く思うようになりました。自分は、教師というよりも、コーチのほうがしっくりくると感じるようになりました。

自分自身で価値をつけていく覚悟

田中さんの塾「ブリッジ」では、どのようなやり方をしているのですか?

少数定員制にして、ほとんど毎日、親御さんに連絡します。めちゃくちゃしっかり、最初に話しますね。

それで、僕は、最初に勉強を取り上げるんです。

「損するのは自分だし、好きにしなー」

って感じで。無理にしろとは絶対に言わないです。子どもたちは、仕方なしにやっているけど、3か月くらいたつと自分でやり始めます。具体的にプランを立てて、親御さんと連携してやります。

親御さんも巻き込んでいくんですね。

はい。それが重要で、親御さんと、子どもと、コーチの3者が連携しないで、1つでも欠けるとうまく回らないので、親御さんに、「このように接してください」とか、お願いしています。

主体的な学びを促すためには、環境を整えて、待つことが大切だと思います。田中さんは、簡単に「3か月」とおっしゃっていましたが、それだけの期間、子どもを信じて待つのは、結構、信念が必要だと思います。

承認のサイクルが回る

最近、承認って本当に大切なことだと思っているんです。自分の良さは、自分ではなかなか分からないので、他人が承認してくれてはじめて気がつくことができますよね。それに気づいてから、本当に「いいな」と思ったことは、素直に表現して相手に伝えようと思っているんです。

お話をうかがって、田中さんの場合、小澤先生に「子どもの心の中に入っていく力」を承認されたことが大きかったと思いました。そして、承認される力を感じたことが、子どもたちを承認していく力にもつながっていると思うんですけど、いかがですか?

本当にそうですね。僕の場合、小澤先生に承認されたことでやっていける自信が湧きました。

子どもを承認する場合、単純な承認じゃダメだと思っています。子どもは、本気か口先だけけ敏感に察しますから。だから、感情をストレートに出すようにしています。生身の人間対人間という関係にします。

田中さんが、東進衛星予備校で感じた違和感の正体は、ここにあったのではないでしょうか。生身の人間対人間という関係が、子どもが育つために必要だという思いが、ビデオで知識を一方向にインストールする学び方に対する違和感につながり、そして、今のコーチという関わり方へ繋がっているのではないかと思いました。

コーチとして子どもを育てるというのは、植物を育てるのに似ているように思います。積極的に何かを施すのではなく、環境を整えて、自分で成長していくのを注意深く見守って、よい兆候を見つけて承認していくというプロセスなのではないかと思います。田中さんの「ブリッジ」では、まさにそういうことが行われているのではないかと思いました。

子育てについて

中学時代から「子育てがしたい」と思っていた田中さんですが、実際に子育てをするようになっていかがですか?

それは、自分の子どもについてですか?それとも、生徒についてですか?

たぶん、どちらにも共通しているものがあるんですよね。

はい。そうですね。笑

僕は、自分で考えて努力できること。自分でやろうと思ったときに頑張れる自分づくりというものを大切にしています。

何かあったときに戻ってこれる芯を作るということですね。

それは、田中さん自身の経験に根差した信念ですよね。田中さん自身が強く信じていることだから、きっと伝わるんですね。

僕は、学歴社会自体は否定していないんですけど、スポーツと同じで勉強に向き不向きはあると思っています。僕の生徒で、チックを持っていて学校にほとんど行っていなかった子がいるんです。最初は15分の勉強もしんどかったんですけど、だんだんと勉強が続けられるようになって、今では平気で10時間くらい勉強できるようになったんです。それで、「苦手なことを、こんなにできるのはすごい」と褒めました。苦手なことにこんなに取り組めるんだったら、将来、絶対に困難があっても生きていけるんじゃないかと思いました。

結果ではなく、取り組み方の変化をほめたんですね。でも、10時間も勉強できるようになったら、結果も出てきますよね。

はい。当然、成績も伸びるんです。元々の志望校よりもよいところに行こうと思ったら行ける状況になったので、「どうする?」と聞いたら、

「最初に志望していたところに行きたい」

と言うので、自分が伝えたかったことが、この子には伝わっているなと思いました。

田中さんは、何を伝えたかったんですか?

世間の評価ではなく、自分自身で価値をつけていく人間になる覚悟を持つということです。

コーチというのは、Beingの果たす役割が大きいと思います。「言っていること」ではなく、その人が信じていること、行動していることが、相手に影響を与えるからです。田中さんは、自分が心底信じていることをストレートに相手に伝えるので、それが相手の心に届くんだなと思いました。

田中さんのお話をうかがう前は、時代の変化により、教師の役割がティーチングからコーチングへ移っていくことで、新しい知識やテクニックを身につけていくというようなイメージをぼんやりと持っていました。でも、そういうことではなく、教師が自分の生き方を振り返り、それを正直に伝えていくということ。つまり、原点に立ち返るようなことなんだなと思いました。

田中さんの家には、生徒がよく泊まりに来るんだそうです。親から「今日、うちの子、泊めてやってくれませんか?」と頼まれることもあるんだとか。お話をうかがって、田中さんから養分をたっぷりと吸って子どもたちが成長していく姿が、思い浮かびました。

キミの力を磨く場所。専属コーチのブリッジ代表・田中力磨のブログ

 

学外の人がどのように授業に関わるのか2 —見学者という役割—

田原です。こんにちは。

2014年の12月に、京都精華大学の筒井洋一さんの授業「情報メディア論」を見学してきました。
 
見学者が、授業に加わっても良いということだったので、ぜひ参加したいと思い、学生のグループの中に加わりました。
 
そのときのレポートはこちら

京都精華大学「情報メディア論」を見学して

筒井さんの授業には、いろんな人が参加していて、小さな社会のようになっているのが特徴的でした。
 
教員と学生という2者の構造が崩れたことで、関係性が緩んで、いろんな動きが生まれる可能性が出てきます。

見学者として参加した僕も、せっかくだから、何かしらの形でここに貢献しようという気持ちで参加しました。
 
このような授業を続けたら、どんなことが起こるのか。

筒井さんの報告がとても楽しみです。

筒井さんからのメッセージです。

【2月勉強会に向けて講師からみなさんへ4.】

学外の人がどのように授業に関わるのか2 —見学者という役割—

3.でお伝えしたように、授業協力者(Creative Team:略称CT)という授業の外部者が入ってくることですべてが変わってきました。CTとは、15週間、教員と一緒に授業を創る学外ボランティアのことですが、彼らを中心に授業が動くことで、これまでの授業という常識が崩壊したのです。実は、CT以外の外部者として、見学者がいます。本日は、その話をします。

私が、CTの活躍を見てもらいたくて、授業に見学にぜひお越しくださいという呼びかけをしたら、実にたくさんの方が見学に来て頂きました。のべ見学者は2013年前期95名、後期65名、2014名前期70名、後期120名でした。一つの授業に、しかも無名の大学の、無名の教員が実施する授業にこれだけ多くの見学者が来て頂けるのです。そもそも大学の授業に見学者がいること自体が珍しいのに、その中でもこの授業には多くの方がお見えになるという事実は、驚くばかりです。

ただ、見学者というと、教室の後ろから学生の動きを見ているオブザーバー的な役割をすると思われがちです。しかし、この授業では、オブザーバーと言うよりも、学生の同伴者か、参加者という位置づけです。

学生がチームに分かれた時には、チームに入って学生に対してファシリテーターを務めることもあるし、場合によれば、学生と一緒になってプロジェクトに取り組むこともあります。つまり、単なるオブザーバーではなく、学生のサポーター的な役割を担っているため、見学者という本来の役割から見学者が逸脱してきました。

見学者なかには、大学教員、大学職員、研修講師、キャリアカウンセラー、高校教員など対人コミュニケーションの専門家が多いため、学生との向き合いに精通し、グループワークやリフレクションの経験が豊富です。こういった専門家が見学に来られるわけですから、単なるオブザーバーにしておくのはもったいない。しかも、大講義だと教員の目の届かない学習者もいますので、個別の学生をフォローしてもらうのはとてもありがたいです。

更に、頻繁に来て頂ける見学者はさらにありがたいです。2013年前期の授業では、3名の見学者が15週中10週来て頂きました。2014年度には、ほぼ毎回来て頂いた前高校教員もおられます。しかし、このような例は特に目新しいわけではありません。学生やCTと深く接点を持つ中で、頻繁に来て頂ける見学者が増えてきました。

見学者がオブザーバー的な役割から、学びの同伴者へと役割が変化してきたこと。それは、学習者にとっては、当初、見学者=見知らぬ人であったことから、見学者=学生の知り合いとなり、やがて見学者の取り組んでいる学外プロジェクトに学生が関わるようになりました。

授業を外に開いた結果、そこから学生が外に広がっていくようになりました。授業と社会との接点を広げて、境界を越えていくこと。そこにこそ授業の学びの意味があると思っています。

2月17日勉強会では、こうした実践について話していきたいと思います。

詳しい内容&お申込みはこちら

学外の人がどのように授業に関わるのか1—授業協力者(Creative Team:略称CT)という役割—学外から授業に関わる人たち

田原です。こんにちは。
 
未来は不確定なものです。

未来に対する不安をベースにすると、リスクを下げるために不確定要素を少なくしようとして管理に走ることになります。

一方、希望をベースにすると、可能性を広げるためにオープンにすることができます。

今、僕が考えているのは、生活の糧を確保して、リスクを管理しつつ、できるだけ希望をベースにしてオープンにしていくことができないのかということ。
 
オープンにしていくことに対して、非難されるのではないかとか、大きな不利益を被るのではないかとか、いろいろな心配が頭をよぎりましたが、実際にオープンにしてみると、助けてくれる人が現れて、自分だけでは解決できなかったことを解決することができました。また、その共通体験を通して、「オープンにしていく」ことに対する価値をシェアすることができました。
 
京都精華大学の筒井洋一さんは、大学の授業をオープンにして、学外の授業協力者を募集したことで、未来へつながる可能性を見えてきたのだそうです。

僕は、筒井さんの取り組みに未来への希望を感じています。

筒井さんからのメッセージです。

学外の人がどのように授業に関わるのか1

—授業協力者(Creative Team:略称CT)という役割—学外から授業に関わる人たち

私の授業では、授業を完全に公開しています。同時に、学外の方に、教員と一緒に、15週間ボランティアで授業を創る役割を担ってもらいますが、彼らのことを授業協力者(Creative Team:略称CT)と呼んでいます。いろいろ文献を調べてみましたが、授業内に教員と学生以外に、教員から独立した役割を導入した事例は他にはないようです。

私の授業でCTさんは何をするのかと言えば、教員がやっていることのほとんどをします。たとえば、授業準備として翌週以後の授業指導案(コマ・シラバス)を作成し、当日準備をしてから授業を担当し、授業後の振り返り会に参加し、翌週の授業準備をします。授業では、複数いるCTさんの誰かがメインファシリテーターとなり、他のCTさんがそれ以外の役割を担います。私は、授業始めに今週の授業の位置づけを説明し、新しく来られた見学者を紹介しますが、それ以外は教壇から降ります。かといって、授業を担当するのは、正式に承認を受けた教員でないといけないという規定があるので、かれらがやろうとすることは私がすべて把握して、私の承諾を得ています。

簡単に言うと、教員とCTさんがチーム・ティーチングで教えています。しかも、CTさんは最低でも3名ですから、4名のチーム・ティーチングです。大学の授業は、教員一人の聖域であって協働することはまずありませんから、その中では異色の取り組みです。
 
2013年前期からCTさんの募集を始めましたが、13年前期3名、後期4名、14年前期6名、後期4名の方に担当していただきました。職種としては他大学学生・院生10名、社会人7名、年代は20歳〜30代半ばです。男性が少し多いですが、女性も毎期必ずおられます。従事時間は、だいたい半日です。

彼らは教員と同じような授業担当者ではなく、学生の学びの同伴者になることが望まれています。教壇で授業を進めることもありますから、学習者からは教員の代わりと見られがちですが、そうではなくどれだけ学生に寄り添えるのかが岐路になっています。

実は、このことを教えてくれたのがこの授業に強い関心を持っていた学生でした。2013年前期授業の第3週頃、授業前に教壇近くにいた私の所にやってきて、「筒井さん、気づいたこと言っていいですか? CTさんは学びの同伴者だと言っていたけど、彼らは学生の近くではなく、教壇の近くにいるので、筒井さんの補佐と見られかねないと思います」と言ってくれた。この意見を聞いて、われわれはCTさんが学びの同伴者になるために、学生のそばにいつもいることを徹底しようと決意しました。

学生とほぼ同世代のCTさんであっても、学びの同伴者になるのはなかなか難しいのですから、教員にとってはさらに難しいと思います(私はあまり得意ではありません)。しかし、これができると、授業自体が劇的に変化します。これからの教育は、大学に限らず、どの現場でも、学びの同伴者になることとそのコミュニティーを創ることが大切なのだと思います。

授業の動画は以下から見られます。

みなさんは、学びの同伴者として学習者に向き合っていますか?

2月17日勉強会では、こうした実践について話していきたいと思います。

詳しい内容&お申込みはこちら