「反転授業の研究」物語 第5話 芝池宗克さんとの出会い

「反転授業の研究」の田原真人です。

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第5話 芝池宗克さんとの出会い

2013年の夏休みに小林昭文さんと繋がってから、動画配信を中心にやってきた人たちと、アクティブラーニングを実践してきた人たちとが、
結びついていきました。

そこで、お互いに知っていることを教えあうことで、反転授業についての理解が深まるのではないかと思いました。

それで、まずは、アクティブラーニングを実践している方に、オンラインで話をしてもらおうと思い、WizIQを使ったオンライン勉強会を企画しました。

その当時は、動画だけ、アクティブラーニングだけという人はいましたが、それを組み合わせて反転授業をやっている人は、とても少なく、
高校レベルでやっているところといえば、近大附属高校くらいしか思いつきませんでした。

そこで、全く面識のなかった近大附属高校の芝池宗克さんにメールを送り、オンライン勉強会でお話していただくことはできないかと打診しました。

突然のメールにも関わらず、芝池さんは、快く了承してくださり、接続テストを兼ねて、WizIQでインタビューさせていただきました。

反転授業オンライン勉強会:登壇者紹介~芝池宗克さん

当時、話題になっていたのは、

「反転授業で、生徒に予習させるにはどうしたらいいの?」

ということでした。

芝池さんの数学の授業では、予習していない生徒は、基本的にいないということだったので、どうやってそれを実現しているのかということにみんなの関心が向かっていました。

そして、その秘密を、オンライン勉強会の中で、教えてくれました。

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なんというか、コロンブスの卵というか・・・。

言われてみれば、あっそうか!という感じなんですが、意外と思いつかない方法かもしれないなと思いました。
小林昭文さん、横山北斗さん、芝池宗克さんの3人が登場した記念すべき第1回のオンライン勉強会の録画動画を、無料メルマガの中で公開しています。

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●編集後記

近大附属高校における反転授業は、その後、いろいろなところで取り上げられるようになりました。

芝池さんは、同僚の中西洋介さんとの共著で、

『反転授業が変える教育の未来』

という本を出版されました。

この本は、教育の問題を真正面から取り扱っていて、読んでいてとても爽快な本でした。

僕も、こちらに書評を書かせていただいています。

「反転授業の研究」物語 第4話 横山北斗さんとの出会い

「反転授業の研究」の田原真人です。

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第4話 横山北斗さんとの出会い

小林昭文さんと繋がったことをきっかけに、次々とアクティブラーニングの実践者と繋がり始めました。

毎日、新しい人と繋がっていくという感じ。
何かが起こっているというワクワク感がありました。

そのときにつながったうちの一人が、関東第一高校の数学教諭、横山北斗さん。

それは、2013年夏、東京に出張していたときのことでした。

その日はミーティングが4つありました。
朝食ミーティングからスタートし、午前中にもう1つ、午後にもう一つ、夕食を食べながら最後のミーティングというハードスケジュールでした。

昼食を食べならがスマホをチェックすると、長いメッセージが入っていました。

それが、横山さんとの交流の始まりでした。

小林さんが僕について書いてくださった記事をFaceBookで見かけて、僕のFacebookの投稿をたどっていったら、僕がこのブログ「反転授業の研究」を
書いていることに気づき、驚いてメールを送ってくださったということでした。

横山さんは、反転授業のための動画を作成するときに、このブログの記事を参考にしてくださったそうです。

「ちょうど東京に来ているので、もしよかったらお会いしませんか?」

とお返事し、夕食ミーティングの前に空いていた1時間に、池袋のコーヒーショップでお話しすることにしました。

そこで、横山さんが教育の道に入るまでの経緯、アクティブラーニングをどうやって実践しているか、実践の背景として考えていることは何か、といったことをたくさん教えていただきました。

・予習プリントや、最初の解説で、あえて詳しく説明せずに、グループワークで発見してもらう。

・解答プリントを配布して、グループワークを行う。

といった話は、非常に刺激的でした。

ちなみに、解答プリントを配布してグループワークを行うとどうなるのかは、そのときにはイメージできなかったのですが、ずっと頭の中に残っていて、話をうかがってから2年後に、自分でやってみて、ようやく腹落ちすることができました。

・学習者が自分で難易度を調整できること。
・答案も参考にしながら、話し合って理解を深めることができること。

こういうことを目の当たりにして、これだったのか!と思いました。

また、小林さんの実践例に登場する「セッティング」「立ち歩き」などが、どのような意味を持っているのかを解説してもらいました。

これが、僕にとって、とても役に立ちました。

その後にフィズヨビで行ったオンラインのグループワークでは、小林さんのやり方をベースにして構成したのですが、横山さんが、小林さんのやり方の背景を教えてくださったので、意図を理解することができ、応用させることができたのです。

フィズヨビのオンラインのグループワークには、横山さんも見学に来てくださり、コメントを送ってくださいました。許可を得て引用します。

物理をあまり学んでないもので、すっかり生徒気分で参加できました。

日頃こういう立場の経験ができないので非常に貴重な経験でした。
ありがとうございます。

授業の中で分かっていく過程や、分からない不安さ、追いて行かれそうな焦り、
難しそうな問題を見た時の恐怖(大げさですが)、確信が持てないことを
グループで共有する躊躇い、しかし例えお互い に確信が持てないとしても
同じように考えている人がいることの安心感などを久しぶりに味わうことができました。

読書などで新しいことを学んでいく過程とはやはり違って、良くも 悪くも
ライブならではのドキドキ感がありますね。 改めて、本当にとても貴重な体験を
させていただきました。 今後の授業で生徒の感情を感じ取るのに間違いなく
活かせると思います。

横山さんは、アクティブラーニングや反転授業をやりたくて教師になったとのことでした。

教員2年目の途中から満を持してアクティブラーニングをはじめ、手応えを感じて、3年目は、最初からアクティブラーニングと反転授業に取り組んでいるとのことでした。

熱意溢れる横山さんには、大きな刺激を受けました。

この縁をきっかけに、第1回のオンライン勉強会では、小林さんに続いて、横山さんに実践報告をしてもらうことになりました。

●編集後記

横山さんと知り合って2年がたちますが、その後の横山さんの活躍は、目覚ましいものがあります。

関東一校で、アクティブラーニングやICTに関する提案を次々に行い、周りを巻き込んでいく様子に未来を感じています。

「反転授業の研究」物語 第3話 小林昭文さんとの出会い

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第3話 小林昭文さんとの出会い

2013年の夏、東京へ出張する機会があり、空いている時間に、誰かと会って話をしたいと思いました。

当時の僕は、

動画講義の作り方は分かるけど、教室でのグループワークがイメージできない

という状況でした。オンラインで読書会をやっていたメンバーは、みんな動画講義の経験はあったものの、グループワークをやったことがなかったのです。

それで、日本でグループワークをやっている人、東京で会って話が出来る人を探して、Googleで検索していたんです。

そのとき、初めて「アクティブラーニング」という言葉を知りました。

そして、小林昭文さんのブログ

授業研究AL&AL」
http://d.hatena.ne.jp/a2011+jyugyoukenkyu/

を見つけました。

ブログにはメールアドレスが書いてあったため、そこに「お会いできませんか?」とメールを送りました。

その日の夜、メールに返事が来て、

「日程が合わないのですが、とりあえずスカイプで話しませんか」

ということが書いてありました。

スカイプをすることになり、小林さんのブログ記事を、片っ端から読んでいきました。

そこには、単に効率よくテストの成績を上げるということとは、全く別の次元のことが書いてあり、目から鱗が何枚も落ちました。

そのとき自分が感じていた心の底の深い部分と、「反転授業」が結びつきました。

それまでは、「生身の自分」と「仕事」との間には、少し距離があったのですが、このことをきかっけに2つが一致してきました。

小林さんとスカイプで話をしてから、

アクティブラーニングのことを学びたい。

自分もアクティブラーニングをやってみたい。

そういう気持ちが、沸々と湧いてきました。

小林さんのブログから刺激を受けて、たくさんの記事を書きました。

強い好奇心が湧いて、完全にスイッチが入った状態になりました。

反転授業と生徒の多様性についての考察
http://flipped-class.net/wp/?p=98

●カンニング禁止はテストのルールであって勉強のルールではない
http://flipped-class.net/wp/?p=103

●日本で反転授業を成功させるためには
http://flipped-class.net/wp/?p=108

●「反転授業の効果は試験の点で5%アップ」について
http://flipped-class.net/wp/?p=113

反転授業のデメリット
http://flipped-class.net/wp/?p=118

当時、僕は、予備校講師を辞めていて、ネット予備校でしか教えていなかったので、なんとかオンラインでもアクティブラーニングのエッセンスを取り入れる方法はないかと考えました。

それで、WizIQというWeb教室システムを使って行っている授業に、5分でもいいからアクティブラーニングの要素を入れようと考えました。

小林さんも見学に来てくれ、その中で授業を行いました。

電気回路の授業をやっているときに、受講生から、

「抵抗では、エネルギーが消費されるのに、電荷は消費されないのですか?」

という質問が出ました。

「それはね・・」

といつものように回答しそうになりましたが、

「あ、ここで、学び合いができるんじゃないか」

と思って、質問に対してどのように回答したらいいかを、受講者に問いかけて、チャットボックスに書いてもらいました。

チャットボックスには、たくさんのコメントが並びました。

その中で、水力発電を例にとった分かりやすい説明があり、その説明でみんなが納得しました。

僕は、その説明を書いてくれた人に「拍手」をするようにみんなに呼びかけました。

その授業の後のアンケートでは、ほとんどの人が、その学び合いについて書いていました。

90分間の中でわずか5分程度だった学び合いが、85分間の「予備校講師の授業よりも受講者の心を捉えたという事実が、その後の僕の授業に決定的な変化を与えました。

次回の授業からは、その5分を90分に拡大することにしたのです。

さらには、オンラインでのグループワークにも挑戦しました。

そのときのことを、小林さんがブログに書いてくれました。

●オンライン授業を見学しました
http://d.hatena.ne.jp/a2011+jyugyoukenkyu/20130923/p1

小林さんとの交流が始まり、小林さんがブログとFacebookで僕のことを紹介して下さったおかげで、たくさんのアクティブラーニングの実践者と繋がることができました。

反転授業の研究」で、動画の実践をしてきたメンバーと、アクティブラーニングの実践者とが混じり合いました。

お互いのやってきたことを教えあうことで、反転授業のやり方が見えてくるのではないか。

そんな思いから、WizIQを使ってオンライン勉強会をやることにしたのです。

それが、驚くべき事態を引き起こしました。

(第4話へ続く)

●編集後記

2013年ころに自分が考えていたことを改めて見直すと、知識という面では、今よりもだいぶ少ない状態で記事を書いているのですが、新しいものと出会った興奮というものが文章から出ていますね。

当時、本当にワクワクしていたんです。

「反転授業の研究」物語 第2話 4-5人で集まって読書会を始めた

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第2話 4-5人で集まって読書会を始めた

10年以上続けてきた予備校講師を辞め、副業としてやっていた物理ネット予備校の収入で生活するようになり、収入は半減しましたが、自由に使える時間ができました。

この時間を使って未来へ向かって種まきをしようと思っていたときに、

反転授業

というキーワードと出会いました。

当時、アメリカではカーン・アカデミーが話題になっていて、日本でも、中村孝一さんがeboardを始めたり、花房孟胤さんがmanaveeを始めたりしていて、オリジナル性の高い教え方を動画で配信するという仕事が、近い未来成り立たなくなるのではないかと予想していました。

5年以内に新しい価値を生み出す必要があると考えていたところ、飛び込んできたヒントが「反転授業」だったのです。

また、その頃、Web会議室というものに大きな可能性を感じ始めていました。

リアルの教室とオンラインの教室とでは、ターゲットとする層が異なるのです。

ニッチな分野では、ほとんどの人が教えてくれる人を身近で見つけることができないので、ネットで情報を収集しています。

その人たちがWeb会議室で集まって、講師に教わったり、学び合いをするということができるのではないかと思い、様々な可能性を探っていました。

国内、国外のWeb会議室を片っ端から試して、どんなものが使いやすいのかを体験していたのです。

また、Facebookを積極的に使用するようになったのもこのころでした。

フィズヨビではオンラインでのイベントを定期的に実施していたのですが、このころからFacebookを利用するようになりました。

同じ時間にログインして、画面に問題の画像をUPして、答を3択にして、

1)だと思う人はここに「いいね」
2)だと思う人はここに「いいね」
3)だと思う人はここに「いいね」

などと投稿すると、「いいね」をアンケート機能のように使えるんですね。

Facebookを使うようになり、いろんな人とつながり始めました。

反転授業」+「Web会議室」+「Facebook」

この3つのキーワードが僕の中で結びついてきて、

「Facebookで繋がっている友人に声をかけて、Web会議室に集まって、反転授業の勉強会をやったらどうだろうか?」

というアイディアが生まれました。

・動画配信している塾の方
・動画配信システムを開発している方
・教科書の編集者
・教師

などに声をかけました。

eboardの中村孝一さんや、manaveeの花房孟胤さんにも声をかけ、参加してもらいました。

海外の文献などを読んでディスカッションするような形式で、8回続けました。

当時、勉強会に参加していた人たちの間で共通していた思いは、

「すごい時代になったなー」

というものでした。

未来を先取りして体験しているワクワク感がありました。

勉強会を通して分かったことはたくさんありましたが、教室で何をやるのかというところをイメージするのが難しいと感じました。

「グループワーク」というのが、今一つピンと来なかったのです。

勉強会を8回やったところで、一度、活動停止状態になり、ときどきブログを更新するだけの状況になりました。

それが、あることをきっかけにして、状況が一変しました。

(第3話へ続く)

●編集後記

当時、勉強会に利用していたのはVoiceLinkというシステムで、現在はサービス休止しています。

VoiceLinkのインターフェースのデザインをしたのが、アーティストの杉岡一樹さんで、そのときにFacebookでつながりました。

その後、いろんなことがあり、杉岡さんも「反転授業の研究」に参加して下さり、グループのロゴを作ってくださいました。

「反転授業の研究」物語 第1話 それは東日本大震災から始まった

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第1話 それは東日本大震災から始まった

反転授業と東日本大震災とは、全く関係ないことのように思われるかもしれませんが、僕の中では、これらは一続きの物語として繋がっています。

 

しかし、震災のことを考えるのはとても苦しく、このことについて書けるようになるまでに4年間かかりました。

 

「反転授業の研究」のみなさんと一緒に未来を思い描けるようになってきたことで、ようやく過去と向かい合うことができるようになり、言語化することができました。

 

2011年3月11日のあの時、僕は、仙台市内の用事を済ませ、車で自宅に帰っている途中でした。

 

今から広瀬川にかかる橋を渡ろうかというときに、大きな揺れを感じ車を停止させました。

 

しばらくして揺れが収まり、恐る恐る橋を渡ると、見慣れた景色は一変していました。

 

道路は大きく陥没し、ガードレールは内側に折れ曲がってほぼ水平になっていました。窓ガラスが飛び散って散乱していました。

 

陥没した道路を、穴に落ちないようにゆっくりと蛇行して進み、娘の保育所になんとかたどり着くと、園児たちは広間に集まって布団をかぶって身を寄せ合っていました。その中に娘を見つけることができてほっとしました。

 

自宅に戻ると家の中はめちゃくちゃで、冷蔵庫や食器洗器が倒れて一面水浸しになり、割れた食器やガラスが散乱していました。

 

次の日、インターネットがつながり、原発事故が起こったことを知りました。その後は、情報収集と決断の繰り返しに明け暮れる日々が何カ月も続きました。

 

可能な限りの情報を集めて、自分と家族にとって良い決断は何かということを毎日考え続けました。

 

「ただちに影響はありません」に象徴される報道に不信感が募り、自分を取り巻いていた社会システムに対する信頼が大きく揺らぎました。

 

自分自身の形成に大きな影響を与えてきた教育システムや、自分の中の日本人マインドセットにも批判的な目を向けるようになりました。

 

10年以上勤めていた河合塾を辞め、オンラインでの仕事だけで生計を立てることにしました。

 

このままでいいはずはない。
でも、どうしたらよいのか分からない。

 

そういう人生のカオスの中で出会ったのが「反転授業」というキーワードでした。

 

自分の中にはカオスから抜け出すための答はなく、外側に新しいものを探しにいかないといけないと思いました。

 

それまで、ほとんど一人で仕事をしてきた僕が、一緒に学ぶ仲間を探そうと思ったのは、一人ではこのカオスの中から抜け出せそうにないと思ったからです。

 

そして、友人数名に声をかけて「反転授業の研究」を作りました。

4-5名で、オンラインルームに集まり、読書会を始めました。

 

今、振り返ってみると、このグループが誕生し、大きくなっていった背景には、震災後に新たに信頼し合えるコミュニティを作って再生への道筋を作っていこうという人たちの思いがあったと思います。

 

震災後、多くのコミュニティが新たに生まれましたが、「反転授業の研究」もその中の1つだということに気づきました。

 

そこでは、今までリーダーシップを取ることのなかった普通の人が行動を始めました。
僕も、震災前までは、グループになじまない「行動しない人」でした。

 

このままじゃいけない。
でも、どうしたらいいかわからない。

 

という共通の思いが、このグループの学び合いのエネルギーになっているのではないかと思います。

 

それを、原点として書き留めておこうと思います。

(第2話へ続く)