動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~

「反転授業の研究」の田原真人です。

伝統的な一斉講義型の授業風景を思い浮かべてみましょう。

教師が教壇に立ち、説明しながら黒板に文字や図を書いていますね。

生徒は、それをノートに書き写しています。

生徒にとっては、教師の説明を聞き、黒板に書いてあることを書き写すというのが、長い間、授業を受けるということだったと思います。

動画講義で学ぶようになると、授業を受けるということは、どのように変化するのでしょうか?

記録するためのノートは必要ない

教室でノートを取るのはなぜでしょうか?

一度きりしか受けることのできない授業を書き留める「記録」がノートの一番大きな役割だったと思います。

しかし、動画講義の場合は、何回でも視聴することができるので記録する必要はありません。

学習時間の中で、記録するための時間を取らなくても良くなると、勉強の仕方はどのように変化するのでしょうか?

このことは、僕の運営しているネット予備校、フィズヨビで何度も話題になりました。

「ノートを作るのに時間がかかり、60分の授業を終えるのに3-4時間かかってしまう」ということに悩んでいる受講生に対して、他の受講生からいろいろなアドバイスがありました。

「ノートを作るよりも2倍速で何度も繰り返し見たほうが理解が深まるので、自分はノートを作っていない」

「例題のところで一時停止して、いらない紙に計算して解けるかどうかやってみてから、動画を再生して計算プロセスが同じかどうかを確認しているけど、計算した紙を保存したりとかはしていない。」

「動画講義の要所要所をスクリーンショットを撮って印刷しておいて、そこに、先生の話していることで重要なポイントなどを書き込んで保存しておき、時間があるときに見直している。」

「節の見出しとキーワードをメモしておいて、それを手掛かりに紙に授業を再現していく。再現できないところは、理解していなかったり、覚えていなかったりするところなので、もう一度動画を見て確認し、その後、もう一度、動画を見ないで再現できるかどうかやってみる。」

この他にも、様々なやり方があると思います。

ここに挙げたのは、受講生のそれぞれが、自分なりに工夫したやり方です。

それぞれに個性があるので、ある人にとって良いやり方が、別の人にとってもよいとは限りません。ですので、それぞれが、自分なりに工夫すればよいと思います。

しかし、工夫するときに、考えるべき重要なポイントがあります。

「書き写す」と「アウトプット」の違いは何か?

ここで、テーマになっているのは、「書き写す」と「アウトプット」の違いなのではないかと思います。

この違いは、インプットした情報を、どの程度、自分の頭の中を通して、他の記憶と結び付けたり、再構成したりするなどの加工をしてアウトプットしたかによるものだと思います。

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理解の速い生徒は、授業時間内に教師の話を聞いて理解し、自分の頭で考えてノートを作ります。このようにして作ったノートは「書き写し」ではなく「アウトプット」に近くなります。必要に応じて気づいたことや、重要なポイントなども書き込まれ、その生徒の理解を反映したものになります。

 

しかし、理解の遅い生徒は、授業時間内に理解することが出来ず、しかたなく、黒板をそのまま書き写します。

もちろん、理解の速さだけでなく、学習態度、意欲なども関係してきますので一概には言えません。

 

授業で理解できなかった生徒は、自宅に戻って、教科書と、意味も分からずに書き写したノートを手掛かりにアウトプットを試みるのですが、理系科目ではこの作業が失敗に終わることが多々あります。
 
動画講義を使うと、このプロセスを大きく改善できます。
 
まず、2倍速などでどんどんインプットだけを行います。納得いかない場合は、納得できるまで繰り返します。

 

次に、動画を見ないでアウトプットします。動画の中に出てくる例題を解いたり、式変形を再現したりしてみます。最初からうまくいかないこともあるでしょう。見て分かったと思うことと、自分でできることとは違うことに気づくと思います。

 

再現できないところがあれば、再び、その箇所の動画を見て理解し、再度、動画を見ないで再現できるかどうか挑戦します。

 

ポイントは、

 

見ながら書くという行為をしないようにすること。

動画講義があることで、授業を記録する(=見ながら書く)ことをする必要がないのです。

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見るときは見る。書くときは書く。この行為を分けることで、動画を見るときの集中力を高め、アウトプットに負荷をかけることができます。

アウトプットする量をどの程度で区切るのか、アウトプットのためのヒントをどの程度自分に与えるのかといったことを調整することで、自分自身でアウトプットの負荷を調整することもできます。

 

このように、動画があることによって、脳への負荷が大きいアウトプットを中心に据えて学習することができ、学習効果を上げやすくなるのです。

アウトプットを中心に据えると、インプットのときに「この後、これを自力で再現するんだ!」と思いながら視聴するので、集中力も高まります。学習によい循環が生まれやすくなるのです。
 
動画講義を使った学び方(1)~動画講義の長所と短所~
動画講義で学ぶ方法(2)~理解速度と再生速度とをシンクロさせる~
動画講義で学ぶ方法(3)~ノートの役割が変わる~
動画講義を学ぶ方法(4)~学びの個人差を乗り越える~
動画講義で学ぶ方法(5)~「教える」からキュレーション&コーチングへ~

動画講義の作り方を学ぶオンライン講座

動画講義を作成することに興味のある方は、「パソコンで作る!カンタン動画講義の作り方」というオンライン講座を2015年5月9日から4週間で実施しますのでこちらをご覧ください。(申し込み締め切り5月7日。定員30名)

動画講義を使った実践者が20-30名集まることで、多くのノウハウのシェアが行われると思います。

それによって、動画講義を使った学びに対する理解もさらに深まっていくと思います。

「リアルの代替でないバーチャル」の探求は、まだまだ続きます。

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