エイミー・レンゾーさんインタビュー(1)
アクティブラーニングや反転授業を行うときに大切なのは、教師が安心安全の場をつくり、生徒が自分の考えていることを自由に発言することができるようにすることだと思います。
それによって多様な考えが場に溢れ、各自が自分とは異なる考え方や物の見方に触れることができ、多面的な理解が可能になるのです。
そして、そのような理解を可能にしてくれた仲間をかけがえのないものだと感じて、協力できるようになるのです。
僕がこのことに気づくきっかけとなったのは、ワールドカフェとの出会いでした。
2年ほど前、多様性を創造性にどのように結びつけたらいいのかを考えていてワールドカフェという手法に出会ったのです。
『ワールドカフェをやろう!』という本を読み、感動して著者の香取一昭さんに長いメールを送りました。
そして、香取さんとスカイプをさせていただくことになりました。
香取さんからお話をうかがって、本では理解できていなかったことを理解することができました。
さらに、ワールドカフェの国際的なオンラインコミュニティの運営者であるエイミー・レンゾーさんを紹介してくれました。
エイミーさんが実施したフィールズ大学の8週間のオンライン講座を受けたことで、僕がオンラインのファシリテーションをすることができるようになりました。
「反転授業の研究」が主催する数々のオンラインイベントは、すべてここから始まったのです。
10月にワールドカフェ20周年イベントがあると言うことを知り、2年ぶりにエイミーさんに連絡を取り、このインタビューが実現しました。
様々な部分で共鳴し、話が長くなりましたので、数回に分けて紹介します。
オンラインの対話に興味を持った理由
―― エイミーさんは、オンラインコミュニティの運営や、オンラインワールドカフェ、ワールドカフェホスティングのオンライン講座など、オンラインでのコミュニケーションに関わる活動を数多くされていますよね。
僕も、オンラインコミュニケーションに大きな可能性を感じていて、いろんな対話イベントやオンライン講座を開いています。
エイミーさんは、オンラインコミュニケーションのどこに可能性を感じていますか?
それは、とても意味のある質問ね。
私はカルフォルニアにいるのに、あなたを、こんなに近くに感じられるわよね。
ワールドカフェの原理は、多様性が大事だということです。
だから、異なる立場の人と会話をすることは意味があります。
オンラインコミュニケーションによって、みんなが、お互いの声を聞くことができて、国境を越えて、飛行機の燃料も使わずに、お金も使わずに自宅にいて、簡単に同じ空間を過ごすことができます。
多くの人は、他の国の人と話すために、その国に行かなければならないと思うけど、実際には会話することができるし、それだけじゃなくて、オンラインで深いつながりを作ることができます。
私は、いろいろなオンラインの試みをホストしてきました。
ワールドカフェとか、トレーニング、セレモニーなどをしてきました。
セレモニーでは、何かを讃えるということもできます。
オンラインイベントをホストするときには、自分が学んでいることに驚きます。
オンラインの活動を始めてから今まで学んできたのは、対面で話すのと同じように、オンラインでも心の交流ができるということです。
それは、大きなギフトだと思いました。
それで、オンラインホスティングに興味を持ち始め、オンラインホスティングのスキルも伸ばしてきました。
オンラインでは、注意を向けること、集中すること、決定することなどが大事だと思っています。
その目標に注意を向けるならば、あなたは、やりたいことを何でもできる。場をファシリテートして、他の人たちのリアリティとつながることができる。
インターネットは、リアルじゃなくて頭の中だけだと思っている人もいるけれど、それは間違いです。
もちろん頭だけでもつながることもできるけど、ハートレベルで交流することもできるんです。
オンラインでもハートレベルで交流できる
―― オンラインでハートレベルの交流をすることができるというのは、とても大きなキーワードだと思います。
産業革命後、テクノロジーは人間を自然から遠ざけてきたと思うんです。でも、インターネットは、人間を自然に戻していく可能性があるテクノロジーだと思います。
実際、オンラインのハートレベルの交流によって、僕のマインドセットは大きく変わってしまい、2年前とはほとんど別人のようです。
エイミーさんも、インターネットは、マインドセットを変えることのできるものだと思いますか?
私も、同じことを経験しました。
ワールドカフェは、それと同じ方法で私たちのマインドセットを変えています。
なぜなら、私たちは他の考え方にさらされるからです。
もちろん、論文や新聞記事でも、他の人の考えに触れることができます。
でも、もっと深いレベルで話をしたときに大きな変化が起こります。
アラブの春の後、私は、オンラインワールドカフェをホストしました。
1つの小グループには、イスラエル人の若い男性とシリア人の若い男性がいました。
わざと同じグループに入れたんです。
シリア人の男性は、はじめ、自分の生活について話しませんでした。
彼は、イスラエル人は恐ろしくて心無い人たちだと教わってきたのです。
彼のコミュニティはイスラエルと悪い関係だったのです。
でも、話をして、お互いに質問に答えた後は、彼はこう言いました。
「あなたを兄弟のように感じる。あなたの言葉は、自分の言葉のように感じる。」
「私はあなたの言葉の中に心を感じることができる。」
そう言って、彼は泣き始めました。
私は、そのストーリーをハーベストのときに全体にシェアしました。
そうすると、他のみんなも大きく心を動かされました。
私たちは、とても深いレベルで心を動かされて考えが変化しました。
それは、対面でのワールドカフェで起こることと同じことでした。
もし心がオープンになって、他の人の声を聞くことができれば、他の人の考え方に触れることができるのです。
それは、人の心を変えます。
オンラインで他の人の考えに触れる方法はたくさんあります。
SNSやブログもそうですね。
私たちは、大量のものの見方にさらされています。
もし、好奇心を持って会話を始めたら、何が起こるでしょうか?
ワールドカフェでは、安心安全の場を創って、お互いに注意深く話を聞くようにします。
お互いにリスペクトします。
お互いの違いをリスペクトします。
オンラインの会話でそのような態度を取ることができるようになると、全く違った種類の経験をするようになります。
意識の範囲が大きく広がって、自分自身や他の人々を理解するキャパシティが大きくなります。
だから、インターネットは人々の意識を変化させると思います。
私たちは選択肢を持っていると思います。
人類は自分たちの未来を決めることができると思います。
教師の役割は「教えること」から「ガイド」へと変化する
―― 自分たちで決めるのが大事だということについて、最近、面白いことがありました。
僕がやっている物理のオンライン講座で学びあいの夏期講習をやったんです。
僕のビデオ講義を見て、チームで問題を解いていくというものでした。
第1週は、教える側に回っている人たちがグループをリードしていました。
第2週になると、質問をする側がリーダーシップを取るようになりました。
本質的な質問が出てきて、みんながそれに引きつけられたのです。
第3週になると、面白いことが起こりました。パワフルクエスチョンをするために、彼らはビデオを見ることを止めてしまったのです。
それはすごい!!
あなたと話す前に、次のフィールド大学でやるワールドカフェのラーニングプログラムについて作業をしていたんです。
Moodleとzoomを使います。zoomだとグループ全体を一度に見れるんです。
私は、あなたが今言っていることを考えていたんです。ピアラーニングです。
私は先生だけど、「教える人」じゃなくて「ガイド」なんです。
環境を作って、他の人を招待します。
そして、学ぶプロセスをはじめます。
招待された人が自分で学び始めて、他の人たちと学び合うんです。
だから、あなたの取り組みは、すごくいいと思います。
―― 実は、 その後、彼らにMoodleのコースとWizIQのアカウントを開放しました。今は、彼らだけでやっています。(笑)
パーフェクト!
エイミーさんと話をしてみて感じたこと
エイミーさんと話しているときに感じていたのは安心感でした。
この人なら、自分の気持ちを話しても、理解してくれるという安心感が、僕の心を開きました。
ファシリテーターの持つ理解の幅、意識のキャパシティが、相手の心を開かせていくのだということに気づきました。
エイミーさん自身が、心をオープンにして、他の人の考えを受け入れてきたことによって、「意識の範囲が大きく広がって、自分自身や他の人々を理解するキャパシティが大きくなる」という経験を積み重ねてきたんだということが、お話してみてよく分かりました。
エイミーさんがやっているようなオンラインワールドカフェを、僕(田原)がホストになり、9月24日に実施します。
※申し込み締め切り 9/20
ワールドカフェ20周年記念でエイミーさんがゲストファシリテーターとして来日します。
エイミーさんによるワールドカフェを体験するチャンスですので、興味のある方は参加してください。
全国9箇所をつないで行うそうです。
インタビュー記事は、Part2へ続きます。
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