エイミー・レンゾーさんインタビュー(3)
国際的に有名なワールドカフェホストであるエイミー・レンゾーさんにオンラインでインタビューさせていただき、それを記事として連載しています。
インタビューPart 1と2は、こちらから読むことができます。
インタビューをしながら、僕が「反転授業の研究」での活動を通して感じるようになってきた問題意識と、エイミーさんの話とがシンクロしていると感じるようになりました。
社会システムと自然のシステムとの不整合が大きくなってきている中で、その社会システムへ適応していくと、自分の中の内なる自然との乖離が大きくなっていき、そこから生じる矛盾が、様々な問題を引き起こしているのではないかという問題意識を共有しました。
では、どうやって、その不整合を解消し、より調和した状態を回復していくことができるのだろうか?
そのためのカギを握るのが「Beauty(美)への反応」だとエイミーさんは言います。
美に触れたとき、人は、深いものへ触れることができ、自分の中の内なる自然や、他の人との繋がりを見出すことができるのではないでしょうか?
「Beauty(美)への反応」は、どのように社会システムと自然システムとの調和へ繋がっていくのでしょうか?
さらに、お話をうかがってみました。
私たちは、調和して生きることができる
―― 社会の変化は、どのようにして起こるとエイミーさんは、考えていますか?
今、ヨーロッパでは、難民の人たちがたくさん流入してきました。それは、ある意味では、本当にひどいことです。生きていく場所をうばわれたり、恐ろしい目にあうからです。
ただ一方では、このことに対して、人間らしい反応が多くみられています。人々は、その困っている人たちをみて、自分に何ができるのだろうか、と考えて反応しています。
そこにbeautyがあると、私は感じています。利己的な考えよりも、他の人のことを考えることができるようになるのです。それをみることは、大変すばらしいことだと思います。
―― 先日、友人とシリアからの難民について話していたんです。ヨーロッパの人たちの中には、問題の原因がヨーロッパにあると考え、だから、難民を受け入れるべきだと考えている人たちがいるという話を聞いて、希望があるなと思いました。
狭い範囲で考えている人がいる一方で、システム思考で考えて、遠くの因果関係を見て行動できる人たちがいるということに大きな可能性を感じました。
このように考えることは、生態系的で、自然とのつながりを感じました。
本当にそうだと思います。私たちは、自然と自分たちとを分けて考えたがりますが、実際には、私たちは他の生き物たちとも同様に、自然のなかに生きているのですからね。
人間であることはある意味で、とてもすばらしいことだと思うのですよ。私たちは調和して生きることができるのです。いくつかの文化では、より自然とともに生きていますよね。重要なことは、私たちが、自然の一部であることを忘れないことなのです。
―― 私は、自然農法からたくさんのヒントを得ています。福岡正信さんという有名な自然農法家をご存知でしょうか?
はい。知っています。
―― 彼は、たくさんの種類の種を中に入れた粘土団子を撒くんですね。彼も、どの種が発芽するか知らないのです。でも、Natureが、どの種が発芽するのかを知っているのです。彼は、ただ、たくさんの種類の種を入れるだけなんです。
それは、面白いです。パーマカルチャーと似ていますよね。
―― はい。考え方はとても似ていますよね。違いは、パーマカルチャーは人間がデザインしますけど、福岡さんの場合は、デザイン自体もNatureに任せてしまうことですね。
僕は、少し前に「クラウドに粘土団子を撒こう」というブログ記事を書きました。
→ クラウドに粘土団子を撒こう!ペイフォワードの循環が意識革命を起こす
僕は、どのアイディアが発芽するか分からないですよね。なぜなら、僕たちはシステムの中にいて、システム全体を見渡すことができませんから。だから、僕ができる唯一のことは、粘土団子の中にたくさんのアイディアを詰め込んで大量に撒くことだなって思ったんです。
興味深いですよね。そのときには、どんな結果が出るかは、先に計画しているわけではないのですよね。人がすることは、見る、気がつくということなのです。どうなっているか、気にしてみているだけなのです。それは、一つのアナロジーですよね。たとえば、アイデアがあったとします。私たちは、それをただ置くのです。でも、どのアイデアが芽を出すかは分からないのです。
ワールドカフェでは、私たちは、入れ物をつくっているのだとよく言います。そして、関係性の土壌を耕すのです。それがワールドカフェで行われていることの一つなんです。relational fieldを耕すことをしているのです。なぜなら、私たちは、いろいろ余計な手出しをする必要がないからです。私たちが準備するのは、場所なのです。そこでは、人がお互いに話をして、反応して、人のいうことを聞きあうのです。お互いに学びあって、興味を持ち合うのです。私たちは、そこに立ち止まり、会話をはじめる場所を用意するのです。違った考えを持っている人たちも、安心して意見が言える場所です。
――以前は、成功するか失敗するかということを気にしていたんです。でも、最近は、結果はNatureによって選ばれているって受け入れられるようになったんです。これは、僕にとってはとてもよいことです。ファシリテーションをしているといろんな予想外の結果が出てきます。今は、すべての結果を受け入れることができて、ただ、場で起こっていることを見ることができるようになりました。僕の予想と結果が異なることはあり、以前は、その結果を拒絶していたこともあって、自分の予想通りになるようにコントロールしようとしたりしていたんですけど、今は、「ほぉ、この種が発芽したか。」みたいに見守ることができるようになりました。これは、僕にとっては大きな変化でした。
それは、とてもよく分かります。
新しい関係性を生み出すためのalternativeなやり方
―― 僕は、どうやって「仕事」の概念を変えられるかということを考えています。仕事って、すごく狭い範囲で捉えられていることが多いと思います。最近、仕事について違った種類の経験をしました。昨年、有料のオンライン講座をやったときに、みんなが僕のことを「お金が欲しい」って思っているんじゃないかって気がして、自分が孤立している感覚があったんです。活動を持続可能なものにしていくためにはお金も必要なんですけど、自分にはビジョンや使命感があってやっているんですね。それで、そういう自分の気持ちをオープンにしたんです。「Why」の部分を語ったんです。そしたら、お金を払って申し込んでくれただけじゃなく、オンライン講座の受講生を集めるためのビデオを作ってくれたんです。
それは、すばらしい例ですね。
―― それは、僕にとって「美しい経験」でした。自分にとってすばらしい瞬間というのは、お金を得たときじゃなくて、一緒に仕事を創った仲間にお金を払う瞬間なんです。だから、もっと仕事をコラボレーションによって創って、仲間にもっと「美しいお金」を払いたいんです。
すごくよく分かります。私は、本当に、他の人と一緒に仕事をすることが大好きなんです。私たちがやっていることだと、先生と生徒といった固定化した関係ではないので、互いに学びあい、影響しあうのです。私たちも、グループから学んでいます。同じ立場を共有するエネルギーがあるのです。
私は、alternativeのやり方をしているのです。もちろん、運営していくのに資金は必要です。でも、私がやっていることは、たとえば、お金の分け合い方に幅をつけたり、また、資金が少ない人にでも、その人にやってもらうことで参加できるようにすることです。
あなたがやっているように、人がうまくいくように支援するということはとてもすばらしいですね。
エイミーさんのインタビューを終えて
2年前にエイミーさんがフィールズ大学で行っていたワールドカフェホスティングのオンライン講座に出たことがきっかけで、目の前に新しい世界が広がり、自分自身もオンライン講座を開くことができるようになりました。
オンラインのダイアログについて2年間で考えてきたことを、エイミーさんに直接ぶつけることができ、エイミーさんの考えをうかがったことで、理解をさらに深めることができました。
物理的には遠く離れていても、顔を見て、相手の存在を感じながら話すことで、ハートレベルの対話をすることができます。
ハートレベルの対話の中で「美」に触れる瞬間を生み出すことができれば、対話に加わっている人たちは、意識の深い部分に触れることができ、自分の中の内なる自然ともっと繋がることができるのではないでしょうか。
自分の心をオープンにすれば、異なる文化的背景を持った人たちとの間でも、ハートレベルの対話をすることができ、それが、お互いの意識のキャパシティを大きく拡張し、世界に対する当事者意識を高めていくことにつながると思います。
エイミーさんと話をする中で、人と人との繋がり方や、お金の回り方が変わっていけば、社会における「行動ルール」が変化していき、社会システムが、自然システムと調和する形へ移行していくというイメージを持つことができるようになりました。
今やっていることを、確信を持って進めていこうと、改めて思いました。
2015年10月にワールドカフェ20周年記念でエイミーさんがゲストファシリテーターとして来日します。
エイミーさんによるワールドカフェを体験するチャンスですので、興味のある方は参加してください。
10月25日には、全国9箇所をつないでワールドカフェを行うそうです。
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