動画を作ると人生が変わる(5)~コミュニケーションを改善する
反転授業の研究の田原真人です。
10年前に動画を作り始めたことで、人生がどのように変わってきたのかを連載しています。
動画を作ると人生が変わる(1)~自分の分身ができた
動画を作ると人生が変わる(2)~理解速度にシンクロさせる
動画を作ると人生が変わる(3)~学習環境を整える人になった
動画を作ると人生が変わる(4)~動かすと理解できる
反転授業やアクティブラーニングに取り組むようになり、
一人だけがずっと話していて、他の人が黙っている
という状況って、不自然だなと感じるようになりました。
どうしてこの状況が生まれるかというと、教師の頭の中に知が局在しているからです。
教師一人が話し、生徒が黙って聞いているときは、生徒のほうが教師の話す速さに理解の速さを合わせなければなりません。
10%くらいの生徒は、分かり切ったことを繰り返すのに飽き飽きしているかもしれませんね。
30%くらいの生徒は、教師が進むペースが速すぎてついていけなくなっているかもしれません。
このようなことが起こることを防ぐために、生徒をレベル別にクラス分けしたり、できる生徒が先へ進みすぎることを制限したりすることもあります。
このような問題は、教師が一方的に知識を教えるという方法が創り出しているものです。
では次に、動画を使って、教師の頭の中をコピーして増殖させてみましょう。すると、こんな感じになります。
生徒は、それぞれ自分の理解度のペースに合わせて学ぶことができるようになります。
他の人に説明しようとすると、理解が深まり、学習定着率が高くなるので、教師は、学び合いが起こるような組み合わせを見つけて繋いでいきます。
話をしているのは教師だけでなく、生徒も教師も、同じように、必要に応じて話をしながら学んでいきます。
このような学び方の場合、生徒のレベルの違いや、理解の方法の違いは、問題になりません。
違いは学び合いのエネルギーになるからです。
教師の役割は、自分の中の分からなさや、中途半端さを表現して助けを求められるように、生徒のマインドセットを整えていくことになります。
動画は、関係性を良くしていくことに役立つ
教師が一方的に話し、生徒は動かずに聞いているという空間には、ある種の権力が働いています。
そのような権力は、信頼関係を築いていこうとするときにマイナスに働くのではないでしょうか。
呼吸をするときには、息を吸ったり、吐いたりをバランスよく繰り返します。息を吸ってばかりでは苦しくなります。
コミュニケーションも同じで、聴いたり、話したりをバランスよく繰り返すのが、一番楽で自然なのではないかと思います。
動画を使うと、そのような自然なコミュニケーションを通して学んでいく環境を作ることができるのです。
2015年に反転授業の産みの親であるジョナサン・バーグマンさんにインタビューを行いました。
彼が言っていたことで、とても印象的な言葉がありました。
それは、私がバーグマン氏に、「今の活動のゴールはどこにあるのか」と質問したときの返事でした。
私は、ゴールがあるかって分かりません。ただ、一つだけシンプルなゴールがあります。子どもたちは、このやり方で本当に学ぶことができるということです。それと、このやり方は、先生と子どもたちの関係をよくします。もし、ゴールがあるとすれば、人々の関係をよくしたいということです。生徒と先生、生徒同士、先生同士。他にゴールはないと思います。
一方的な関係性には歪みがあります。
動画を使うと、コミュニケーションを改善し、教師や生徒の関係性を改善しながら、よく学んでいける環境を作ることができる可能性が生まれます。
私は、ここに大きな可能性を感じています。
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