動画を作ると人生が変わる(3)~学習環境を整える人になった
反転授業の研究の田原真人です。
10年前に動画を作り始めたことで、人生がどのように変わってきたのかを連載しています。
動画講義が、「リアルの代替ではないバーチャル」であり、受講者が倍速再生や一時停止を使いながら、自分の理解のペースに合わせて動画で学んでいるのを見て、2008年頃には、僕のマインドは大きくシフトしました。
動画で学べるのであれば、教師が同じ授業を繰り返すよりも、動画でいいじゃないかと思ったのです。
僕は、教室で教えるのがとても好きで、生徒たちの注目を浴びて「教師を演じる」ことに快感を感じていましたが、それは、今後、動画に置き換わっていくことになるのだということを実感したのです。
そして、次の時代の教師の役割は、学習環境を整えることになると思いました。
通常、生徒が学んでいく流れは、次のようなものだと思います。
(Step 1) 教師の授業を聴き、内容を理解する。
(Step 2) 問題を解き、理解度を確かめる。
(Step 3) 分からないことがあれば、教師に質問する。
(Step 4) 繰り返し練習して定着させる。
このような学んでいく流れの中の、どこをITによって代替可能なのだろうかということを考えるようになりました。
そして、もしかしたら、代替以上のプラスの効果を生み出す方法はないだろうかと考えたのです。
教える仕事をしている人なら、誰もが感じていることだと思いますが、生徒から来る質問の多くは同じものです。
それは、ある意味、自分の教え方の分かりにくさを反映しているものなので、それをフィードバックとして、教師は説明の仕方を改善しているのだと思います。
でも、誰にでも分かりやすい説明というものは存在しないし、すべてを「説明の改善」で解決できるわけではありません。
だから、「講義動画」+「Q&A」という組み合わせで学べるようにしたらどうかなと思ったのです。
Q&Aと講義動画を紐づけておいて、分からないことがあれば、その講義に関連付けられているQ&Aを読んで、それで解決しなかったらQ&Aに新規投稿して回答してもらう。
このようにすれば、効率よく学べる学習環境が整えられると思ったのです。
この試みは、結構、うまくいって、今、学んでいる受講生は、「動画講義+10年分のQ&A」という学習環境で学んでいます。
自分では疑問に感じなかったことを、他の人の質問を読むことで気がつくことができ、理解が深まるという体験が語られています。
10年前の受講生の質問が、今、学んでいる人の役に立ったりしているのです。
断片的な情報が、適切に蓄積され、使えるように配置されることで、全体として価値を持ってくるという側面に気づくことができました。
動画を作り始めたことで、自己イメージを教師から、学習環境を整える人へシフトすることができたのです。
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