登壇者紹介 福嶋史さん

第7回反転授業オンライン勉強会「対話と集合知、学習する組織」で3番目にお話くださるのは、クマヒラセキュリティ財団の福嶋史さんです。

クマヒラセキュリティ財団は、ピーター・センゲの『学習する組織』のワークショップを開催したり、いじめをなくすためにオランダで開発され成果を上げている「ピースフルスクール」というプログラムを日本に導入するなど、独自の活動をされています。

福嶋さんに、今の仕事をするようになったきっかけをうかがいました。

 

かなりさかのぼってしまうのですが、中学生のときに、女子特有の仲間はずれになったことがあって悩んでいたときに、大学生のボランティアのお姉さんから、環境が変われば、自分の状況も変わるというアドバイスをもらったんです。

高校生になったときに、お姉さんの行っていた通りに、環境が変わったことで自分が変わるという経験をしたので、その自分の経験を、いじめられたり、不登校になったりしている人に役立てようと思ってボランティアをはじめました。

大学生になってからも同じボランティアをやっていたんですが、アクションを起した結果、非行に走ったり、自殺に至ったりしなかったとしても、義務教育をきちんと受けていないことが多いので、進学できないとか、ニートになってしまったり、フリーターになってしまったりするので、自分のやっていることが、対処療法でしかないと痛感しました。

そんなときにTeach for JapanというNPOに出会い、ここであれば、ニートやフリーターになる前にケアができるんじゃないかなと思って、NPOで活動を始めました。

 

福嶋さんのお話をうかがって、自分のことでいっぱいいっぱいだった自分の学生時代と比較してしまいました。また、活動をする中で、問題意識が深まった結果として教育の問題にたどり着いたということに、とても説得力がありました。

Teach for Japanの活動内容について質問しました。

 

Teach for JapanというNPOは、家庭環境など、子どもにはどうしようもないことが理由で生じている教育格差を、学習支援を通して減らすことを目指しています。自己肯定感を上げたり、学習意欲を高めたりすることで、学力を向上させ、自分の選択肢を自分で広げられるような子どもを一人でも多く増やそうという活動をしています。

 

Teach for Japanのミッションについては分かりました。具体的には、どのような活動をされているのですか?

 

学生だったころは、学生教師に申し込んで、面接を受けて通ると、学生教師としてトレーニングを受け、実際に生活保護の子どもや、被災地から東京に非難してきた子どもなど、困難を抱えていた子どもに学習支援を行っていました。

私が担当していた葛飾区では、ケースワーカーさんと協力して、児童館などで授業を行っていました。

 

プロフィールを拝見すると、その後、外資系のIT関連のコンサルに就職したとありますが、このときは、どのようなことを考えていらっしゃったのですか?

 

今の上司である熊平が、Teach for Japanの理事をやっていて、私が学生教師に申し込んだときに研修を担当していたんです。スタッフとして活動するようになってからは、一緒に研修を作ったり、学習する組織のことを教えてもらったりして、とても影響を受けました。

それで、熊平から、将来、教育の仕事をするにしても、最初から財団やNPOに入るのではなく、一度、企業に入って、いろんな世界を見てからのほうがいいんじゃないかとアドバイスをもらいました。

これまで、教育に関することばかりをやってきて、好きなことばかりをやっていたなーと思っていたので、それ以外のことをやったほうがいいんじゃないかと思い、外資系の厳しいとウワサのコンサル会社に入りました。

 

一般企業に就職したことがない僕が言うのもなんですが、外資系のコンサル会社は、厳しかったのではないですか?

 

想像していた以上に大変でした。私が苦手なことの1つがパソコンの作業だったんですが、お客さんのためにきちんとやらないといけないというプレッシャーがあり、それなのにできないということで、精神的につらかったです。

でも、会社の方や、お客さんにとてもめぐまれて、少しずつですが仕事もできるようになり、よい経験をさせていただきました。

 

外資系のコンサルで働いた経験が、今の活動に役立っているところはありますか?

 

学生のころよりも、かなり細かくなりました。学生のときは、何も考えずに勢いでやっていたのですが、今は、データでどう見るか、インパクトがどうか、デリバリーをどうするか、効果は?リスクは?などを考えられるようになったので、これは、社会に出たからかもしれないと思います。

 

その外資系コンサルから、クマヒラセキュリティ財団に移ったきっかけは、どのようなことだったのですか?

 

社会人になって1年ほどたったときに、熊平に呼び出されて、ご飯を食べに行ったら、

「史ちゃん、いよいよピースフルスクールを本格的にやろうと思っているのよ。あなたにとってもやりがいのある素晴らしい仕事になると思うわ。」

と言われました。ようやく仕事を覚えてきたところだったので、いろいろ悩んだのですが、2-3年後に教育の世界に戻りたいと思っても、そのときに戻れるかどうかは分からないし、このタイミングを大切にしようと思って移ることにしました。

 

僕は、クマヒラセキュリティ財団というのは、何十人もいる大組織だと勝手に思い込んでいたんですが、お話をうかがうと、熊平さんと福嶋さんの他に3人の事務の方がいるだけなのだそうです。

この状況で、福嶋さんを誘ったということは、熊平さんからの信頼が相当に厚いのではないかと思いました。そのことについてうかがってみると、

 

熊平がやりたかったピースフルスクールの展開などと、私がやりたかったことが一致していた。

 

という返事が返ってきました。社会人1年目の年代には、まだまだ自分探しをしている人が多いと思います。でも、高校生のときから自分のやりたいことを明確にして、行動を積み重ねてきた福嶋さんにとっては、すでに自分のやるべきことというのが明確にあったので、「やりたいことと一致している」ということが言えたのではないかと思いました。

 

最後に、ピースフルスクールについてうかがいました。

 

いじめを解決したいと思っている方は日本にもたくさんいると思うんですが、日本では、対処療法的なものが多くて、トータルで考えて子どもを育てるというところにいたっていないんです。

オランダのプログラムは、子どもたちが自発的に安心安全なコミュニティーを作るためにどうしたらよいかを学習するもので、成果も上がっています。

こういう環境ならいじめも起きないし、安心安全な環境だと、何かにおびえたりして、自発的、主体的な学びができないということにもならないんだと気づきました。

それで、ピースフルスクールを広めたいと思って活動しています。

ピースフルスクールプログラム

 

 

福嶋さんからは、信念に基づいて行動している人が発している「強さ」を感じました。

いじめの問題からスタートして、それを解決するために教育に関わるようになり、さらに、根本的な解決を目指して、組織教育へ問題意識が次々と深化していったのだということがインタビューを通して、すごく納得できました。

そのとき、そのときで、自分と向き合って真剣に問題に取り組んできた方なのだという印象を強く受けました。

 

福嶋さんは、「学習する組織のリーダーになろう」というテーマで、3月26日の反転授業オンライン勉強会でお話してくださいます。

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