パフォーマンス・インプルーブメント・アソシエイツ代表の米島博司さんにインタビュー

1月27日に反転授業オンライン勉強会でお話いただく米島博司さんにお話をうかがいました。

反転授業を設計するために、現状分析と目標、目標への到達を測定する方法を決め、システマチックに学習をデザインするインストラクショナル・デザインの知識は、非常に有効だと思います。

そこで、長年、インストラクショナル・デザインに関わっていらっしゃる米島さんに登壇をお願いしました

米島さんは、前職のNEC時代に、日本の企業で最初にインストラクショナル・システム・デザイン(ISD)やインストラクショナル・デザイン(ID)を導入し、それらを用いて社員や技術者のトレーニングを設計されていた方です。IDの概要をお話いただくのにぴったりの方なので、勉強会の一番最初にお話いただく予定です。打ち合わせを兼ねて、お話をうかがいました。

はじめに、インストラクショナル・デザインの概要からうかがいました。

(米島さん)人のパフォーマンスを実現・改善するためには、いろいろなやり方があります。スキルレベル、人レベル、組織レベルといった3つの階層があって、インタラクショナル・デザインはスキルレベルのパフォーマンスを改善する一つの手段です。組織レベルではトータルマネージメント、人レベルではパフォーマンステクノロジーなどがパフォーマンス改善のために使われます。

教育は人のパフォーマンスを実現・改善するためのいくつもある手段の中の1つです。

IDは、いつごろから始まったものなのですか?

(米島さん)10数年前に日本でeLearningブームがあり、それに1年くらい先立ってIDのワークショップなどをはじめていました。eLearningブームっていうのは、「ネットを使ってWebベースの教育やトレーニングをやろう」というもので、どちらかというとe-learningのプラットフォームを売ろうというベンダー主導型のものだったんですが、実際に使う場合、コンテンツ、すなわち教材の中身の設計をどうするかと言った、ソフト的なノウハウに注目が集まり、IDとかISDとかが普及し始めるようになりました。

米島さんは、どのようなきっかけでIDと出会ったのですか?

(米島さん)お恥ずかしい話で、私が見つけたわけではなく、お客さんに教えてもらいました。20年ほど前に、NEC時代に、電話の交換機を海外に輸出していて、そこで海外の技術者さんに対してオペレーションのトレーニングをやっていたんです。

そのころ、取引していたお客さんから、「ISDというものがあるんだけど、NECさんは知りませんか?」と言われてあわてて調べたのがきっかけです。

それで、自分たちのやっているトレーニングを見直して、ISDで設計しないとまずいだろうということになり勉強し始めた訳です。

日本では、ISDを取り入れているところは他に見当たりませんでしたので、海外からISDの専門家のコンサルタントを呼んで学んだり、米国のコンサル会社と提携してISD教材を日本語化したりしました。

そのころ、アメリカン・ホンダでは、全米ディーラー向けのトレーニングをバリバリのISDで開発していて、「東京本社ではISDでトレーニングやらないのか?」ということを言われていたらしいんです。私たちがISDの教材を日本語化しているという情報を、私たちの提携先の米国のコンサル会社からアメリカン・ホンダが聞きつけて「日本ではNECがISDをやっているらしいよ」ということを言ったらしいんですね。それで、ある日突然、日本のホンダのトレーニング部門の方から電話が入り,「ISD教材を日本語化されていると聞いたので、早急にワークショップをやって欲しい。」と言われ、「ええっ、何でホンダさんが知ってるんだ?」と皆で驚いたというエピソードがあります。

そういうことがあり、それじゃ、私たちのところだけでやっていたらもったいないから国内の他の企業のみなさんにも自分たちがISDを紹介しようということで、ワークショップを初めました。

日本でISDやIDは、どの程度広まっているのですか?

(米島さん)企業レベルだとある程度は広まっているけど、大学では部分的に、高校以下はまだほとんどといった状況ではないでしょうか。

日本での唯一のオンラインの大学院である熊本大学の教授システム学専攻教授の鈴木克明さんは、当時からのおつきあいですけど、「日本には、あまりにもIDがない。」と嘆いていました。

現状は、eLearningは企業も大学も学校も当たり前みたいになりましたが、実際に教育の中身、ソフトの設計は、企業も大学もまだまだです。

個人的には、日本の教育システムは硬直化していて、このままでは欧米にとてもじゃないけど追いつかない。

そういうときに、田原さんとかが一生懸命取り組まれていて、反転授業というものが入ってきて、学校の先生とか、みんなが興味を示している。反転授業は1つの形態であって目的じゃないけど有効なツールだと思います。

これをきっかけに授業をどのように設計するのかを考え、ISDに興味を持って入ってきてほしい。反転授業が、そのためのよいきっかけになるんじゃないかと、喜んでいるところです。

僕も反転授業はきっかけで、この機会に良いやり方がないか探求してみようというよい機会だと思っています。僕自身も、これまで教授法などについて勉強してこなかったのですが、反転授業に興味の持ち始めて、いろいろ調べていったらIDに行き着きました。授業をどのようにデザインしたらいよいのかを考えると、自然とIDと出会うんじゃないでしょうか。

(米島さん)日本からアメリカなどを見ていると、表面的には、eLearningとかflipped learningとかが、海の上の波の動きとして見えるのですが、文化的なこととかを言うと、キリスト教、実存主義、プラグマティズムという文化の底流のところにIDという基本的な考えがしっかりある。

表面の波の動きだけを見ていると、底流のところが見えないのですが、底流を踏まえて教育をシステマティックに考えなくちゃいけない。

フォーマルラーニングをきちんと作るのであれば、IDとかISDで設計しなくてはならない。

インフォーマルトレーニングとか、最近流行の状況的学習論とか、そういうものもあるし、そういうのは、別のプロセスで考えるから、複合的に捉えなくちゃならない。

僕のように現場で教育をやってきた人間にとっては、そもそもIDという考え方を持っていない。反転授業を考えるときに、思考のツールとして、IDの考え方があるということを共通認識として持ってたほうがよいと思うのですが、どうでしょうか?

(米島さん)ISDは万能なツールではないけれど、目標とか目標に達したかどうかとか、教育や研修の本当に基本的な重要な概念が入っているので、ISDを勉強することは役立つと思います。

 

米島さんにお話をうかがって、ISDやIDが、なぜ、重要なのかが分かってきました。反転授業オンライン勉強会が楽しみです。

 

米島さんは、1月27日(月)の反転授業オンライン勉強会でお話してくださいます。

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