北九州市立大学の山崎進さんにスカイプインタビューしました
1月、2月の反転授業オンライン勉強会のテーマは、インストラクショナル・デザイン(ID)です。
インストラクショナルデザインとは、「ニーズの評価と分析」「デザイン」「開発」「実装」「導入後の評価」の、5つの手順をサイクルとして、学習が効果的に行われるように設計することです。
動画講義や、アプリなど、様々な教育ツールがありますが、学習を考えるときには、予習、授業、復習などのサイクルや、学期単位のサイクルがあり、全体として学習が効果を上げるように考える必要があります。
「動画講義で予習して、教室でワーク」
といった表面的なことではなく、その背景にある「学習が全体としてどのように効果的に進むのか」ということを考えて、その上で、どのように予習中心の授業を構築するのかということを考えていきたいと思います。
1月6日に、2月の勉強会で登壇していただく予定の北九州市立大学の山崎進さんにインタビューさせていただきました。
山崎さんは、「ソフトウェア開発をどうやって学ぶのか」ということを考えられていて、インストラクショナルデザインを元にカリキュラムを設計しています。
一般的な概念は、書籍等で学べると思い、山崎さんが実際にどのような授業をされているのかを詳しくうかがいました。
小さな成功の積み重ね
現在の山崎さんの授業ができるまでには、いろいろな実験的な試みがあり、そこでつかんだ手応えを、また、別の実践で試してみるといった繰り返しだったそうです。
(1)プログラミングの経験が乏しい学生(大学院生)にどうやったらソフトウェア開発をイメージさせるのか。
→ 卒業研究とソフトウェア開発とは、「プロジェクト」という点で共通。
→ ソフトウェア開発を、卒業研究に例えて説明して、うまくいった。
→ メタファーを使い、直感的にイメージさせるとうまくいきやすい。
(2)ソフトウェア工学概論(大学院生向け)のレポートで概要と質問を課した。
→ 素朴だが本質を突く質問が多かった。
→ 質問のフォローアップをしたら好評だった。
→ この仕組みを授業の中核に取り入れられないか!
(3)技術は日進月歩なので、学生に調べる技術を身につけさせたい。
→ 実際の開発で使う資料を使用し、最低限の読み方を教え、資料を調べてプログラミングをする課題を与えた。
→ 資料の読み方について、もっと指導を求める声が多かった。
このような経験を通して、山崎さんの中で、次第に方向性が定まり、現在の授業スタイルになってきたとのことでした。
自律的に深く学べる能力の習得を目指す
ソフトウェア開発を学ぶため、山崎さんが考えていることは次のことだそうです。
問題意識
– 技術は日進月歩で,すぐ陳腐化する
– 技術の調べ方を学ばせたい
アプローチ: 自習と発問を中心とした学び
1. 教師が概要をガイドする
2. 学習者が内容を自習する
3. 学習者から問いを発する
4. 教師が調べ方をガイドする
5. 学習者が問いの答えを調べる
6. 学習者が研究成果を発表する
山崎さんの講義内容は、ソフトウェア開発ですが、上記の問題意識やアプローチは、反転授業に興味を持っている多くの方と共通のものだと思います。
では、このようなことを実現するために、山崎さんは、どのように授業をデザインしているのでしょうか?それが、MSQRPアプローチです。
MSQRPアプローチ
MSQRPとは、下記の頭文字をとって並べたものです。
M : Metaphor 身近なたとえを使って、直感的に理解させる。
S : Summarization 教科書の要約を宿題として課す。Wikipediaよりも分かりやすい解説を目指す。
Q : Question 学習者に質問を考えさせることで、深い学びにつなげる。
R : Research 自分が考えた質問についてリサーチする。教師が、リサーチするためのガイドや、必要に応じて参考資料を提示する。
P : Presentation 学習者が研究成果を発表し、教員や他の学習者と議論する。また、その後、議論のまとめと研究成果を解説する記事を書き、理解をさらに深める。
これを見ると、山崎さんが実践を通して得た手応えが、随所にちりばめられているのが分かります。
最初にたとえを使って直感的に理解させることや、質問を生徒が自分で考えることで学ぶこと、そして、その質問に対する答を自分でリサーチすることで、技術の調べ方も学べるようになっているのです。
お話を聞いていると、山崎さんの口からは、「来年は、これを試してみたい!」という話が、何度も出てきました。
山崎さんのように、授業のやり方について仮説を立て、それを検証しながら進めていくと、授業をするのが楽しいだろうなーと思いました。そして、同時に、この授業を受けている学生も、きっと楽しいだろうなと思いました。
ここには、教員と学生の好循環が生まれているように感じました。
学生はちゃんと課題をしてくるんですか
山崎さんの授業は、「サイクル」なので、「予習」という言葉を使うのが適切ではない気がして、「課題をしてくるのかどうか」を質問してみました。
山崎さんによると、最初からちゃんとやらせるのは難しく、時間をかけて浸透させるのだそうです。
上記の講義は、大学院生の講義だったので、それまでの経験を通して、山崎さんのやり方が浸透していたため、ほとんどの学生が課題をやってきたそうです。
とても印象的だった、山崎さんの言葉。
「授業に晴れの舞台を作るんです。」
山崎さんは、カリキュラムを考えるときに、最初に、晴れの舞台を設置し、そこで活躍できるためにどんな準備が必要なのかを考えていくそうです。そうすると、学生は、高いモチベーションで準備してくるのだそうです。
まだ、そのような関係性ができていない場合は、どうするのか?
山崎さんの返事は、とても興味深いものでした。
「そのときは、最初に、ワークショップをやってしまうんですよ。反反転授業です。」
最初にワークショップをやると、直感的に全体像がつかめ、さらに、何ができなかったのかも分かるから、これからやるべきことが何かも、学生自身が理解できるのだそうです。
このようにすると、カリキュラムの構造としても、最初に直感的な理解を与え、授業の構造としてもMSQRPアプローチで、最初に直感的な理解を与えることになります。僕の予備校の授業もそうですが、最初に全体像を見せておいて、何をやったらよいのかが分かるとモチベーションが上がりやすいんですよね。
山崎さんの授業設計は、いろいろなことが細部にわたって考えられていて、本当に参考になりました。
予習課題に動画は使用するのか?
山崎さんの授業では、予習課題は、
「教科書を要約し、質問を考えてくる」
というもので、補助的に参考資料として動画を紹介することはあっても、基本的には動画を使わずに行っているそうです。
その理由をうかがうと、
「動画は、効率が悪いので、用途によって限定して使いたい。」
という返事が返ってきました。
山崎さんの授業では、予習してくるモチベーションは、「晴れの舞台で活躍するため」で高められているため、予習では、むしろ、要約させたり、質問を考えさせたりといったことで、文献を深く読み込む力を育成することに重きが置かれているのだと思いました。
どんな用途が動画に向いているのか、例を挙げてもらうと、
・式の展開、ソフトウェアの操作方法のように、手順を示すもの。
・道徳教育のように、場面を示して説明するもの
という返事が返ってきて、その後、衝撃的な言葉が。
「目的に応じて、どんなマテリアルが適しているのか研究されていて、フローチャートになっていますよ。」
ええええ。そんなものがあるとは!ぜひ、教えてください!
ということで、熊本大学大学院 社会科学文化研究科 教授システム学専攻の公開講座を教えていただきました。
→ 公開講座はこちら
この中の基盤的教育論の中で扱っていて、無料で受講できるそうです。
この講座を担当されている鈴木克明教授は、日本のインストラクショナルデザインの第一人者で、『授業設計マニュアル』などの本を書かれているのだそうです。
山崎さんからお話をうかがって、反転授業を考える際に、インストラクショナルデザインの考え方は、非常に有効だと感じました。これをきっかけに、僕も学んでいきたいと思います。
山崎さんからお勧めの本
教育に従事している人が最初にIDを学ぶのに適した本
教育に従事していない人が、最初にIDを学ぶのに適した本
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