朝日新聞で「反転授業の研究」を紹介していただきました

朝日新聞では、1月2日から「教育2014 世界は日本は」という特集記事を組んでいます。第3弾の1月4日の記事で、反転授業が1面と2面で大きく扱われました。

記事は、朝日新聞デジタルでも読むことができます。(無料登録すると1日3記事まで読めるようです)→こちら

最初に紹介された事例は、米国ミシガン州デトロイトの郊外にある高校で2011年から「反転授業」に取り組み始めたというもの。この学校の特徴は、貧困層の生徒が多く、学力が高くないというところ。つまり、教師の個別サポートを必要とする生徒がたくさんいて、教師のマンパワーを有効利用するために反転授業を導入したということだと推測できます。

貧困層の生徒が多いこの地区では、家庭にネット環境がない、パソコンがないという生徒もいるようで、家でビデオ講義を見られない生徒は学校のパソコンが使えるそうです。子どものいる家庭のネット普及率が80パーセント程度の日本でも、これと同じ方法が導入しやすいかもしれません。日本の場合、先行して反転授業を導入した富谷町立東向陽台小学校の佐藤先生のクラスや、近大附属高校、佐賀・武雄市などですべてタブレット端末が導入されているため、

「反転授業を導入するためには、タブレット端末が必要という間違ったイメージ」

が定着しつつありますが、「動画講義を自宅で見る」ということであれば、端末は何でもよいので、タブレット端末は特に必要ではありません。タブレット端末を全員に配布するメリットは、一人一台が確保され、全員に同じアプリ、同じ設定を施すことによってセキュリティなどを含め管理しやすくなるという点、それと、教室でのグループワークに使うことができる点だと思います。そういう意味ではタブレット端末を導入するメリットはあると思いますが、反転授業実施のための必須条件ではないことを再度、強調しておきます。

次に紹介されたのは、テキサス州ダラスの高校で、こちらは成績優秀な生徒での反転授業の事例。こちらでどのような授業が行われているのか、記事中に記載されていなかったが、一般的に考えると、

・基礎を固めたい場合→動画講義を受けた後、教室で習熟度別に問題演習し、分からない生徒を教師がサポートする「補習型反転授業」

・応用力を伸ばしたい場合→動画講義で学んだ知識をベースにして、教室ではプロジェクトやグループワークなど創造的作業、協働作業を行い、21世紀型スキルの向上を目指す「創造的反転授業」

というように、異なるやり方、目的の反転授業が行われることになると思います。

「この学校のこのクラスはこの型!」というように決まるというよりも、あるテーマを学び始めたころは補習型で知識の定着を図り、ある程度学んだところで、創造的な取り組みをするというように、その場、そのときによって、やり方を変えていくということも必要だと思います。また、便宜的にこのように分類しましたが、はっきりと分けることができない場合、両方の要素が混じっている場合もあると思います。

オンライン勉強会でも何度か指摘していますが、動画講義や教室でのワークにはいろいろなやり方があるので、それらを組み合わせた反転授業のバリエーションはかなり多様になります。授業の到達目標に応じて反転授業を適切にデザインすれば、カバーできる範囲はかなり広くなると思います。

 

米国での事例の次は、日本の動きが紹介されました。

最初に紹介されたのは、現在、注目を集めている佐賀県・武雄市の事例。本格導入に先立って導入された竹内小学校の算数の授業が紹介されました。この事例は、Facebookグループにも参加してくださっている方が動画講義を作成していることもあり、オンライン勉強会でも扱いました。基本事項に限定した短い動画講義を作り、タブレット端末上で確認テストを行い、学校に投稿するとWifi経由で宿題を出せる仕組みになっています。教師は、授業前に宿題の提出状況と出来具合を確認することができ、それを踏まえた授業をすることができます。記事中にもありましたが、「台形の面積公式」などは、動画講義ではあえて教えず、グループで話し合いながら自分たちで発見するように授業をデザインするなどの工夫がされていました。

続いて講義を無料で提供するサービスである「最高の授業net」の紹介。藤原和博さんの呼びかけてスタートした計画で2015年のスタートを目指しているそうです。この計画の強みは、公教育とのパイプがあることだと思います。無料の動画講義配信サービスを作っても、それが、公教育に導入されるためには、さまざまな障壁がありますが、藤原和博さんなど行政と連携できる人がプロジェクトに加わることで、そのあたりの問題が解決できる可能性があるのだと思います。今後、どのようにプロジェクトが進むのか注目したいと思います。

次に紹介されたのは、このブログでも何度も登場している近大附属高校。一人一台のiPadを配布し、数学の芝池先生と英語の中西先生が反転授業を実施しています。芝池先生が会長となり、反転授業研究会を発足させて意見交換、情報交換をされています。先日、反転授業研究会のHPがリニューアルされ、オンラインで申し込み可能になったので、僕も早速申し込みました。

反転授業の意見交換するグループというつながりで、Facebookグループ「反転授業の研究」のことが紹介されました。

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記事を書いてくださった氏家さんは、オンライン勉強会や、デジハリで行ったイベントにも参加して下さり、とても丁寧に取材して下さいました。

ここから、協働学習にICTがどのように役立っているのかという話題に移ります。フューチャースクールの1つである三重県松坂市立三雲中学校では、一人一台のタブレット端末が貸与されています。グループワークでは、タブレット端末を使って作業を行い、その状況がスクリーンに映し出され、他のグループの作業内容を一目で見ることができます。これは、東向陽台小学校の佐藤先生のところでもやっている方法ですが、

「他の人のアイディアをうまく取り入れる」

という協働学習の目的が、タブレット端末を使ってサポートされているのです。アクティブラーニングの普及に努められている小林昭文先生の授業では、「立ち歩き」が奨励されています。これは、グループ以外からもアイディアを持ってくるための工夫だと思いますが、タブレット端末と電子黒板によって、言ってみれば、立ち歩かなくても、小林先生の「立ち歩き効果」が生まれているのです。これは、タブレット端末をグループワークに導入するメリットの1つだと思います。

最後に、フィンランドのヘルシンキ新共学高校の事例が紹介されました。Facebookグループにフィンランドで学んだ方がいて、フィンランドのICT環境について質問したところ、日本に比べてICTの環境がかなり整っていて、それらの活用も盛んに行われているということでした。記事中でも、グループやペアでディスカッションした内容をスクリーンで共有して、全体でのディスカッションに繋げるという使い方が紹介されていました。

氏家さんの記事は、全体を通して、「反転授業ありき」ではなく、教師の教育デザインが最初にあって、それを達成するための手段の1つとして反転授業があるというスタンスが貫かれています。僕も同じスタンスで反転授業を捉えているため、非常に共感できました。

●朝日新聞に紹介していただき、Facebookグループの人数がさらに増えました。現在、714名の方が参加されています。参加資格はありません。参加希望の方はこちらからお願いします。

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