第4回反転授業オンライン勉強会の振り返り
12月22日に行われた第4回反転授業オンライン勉強会は、年末の忙しい時期にもかかわらず80名以上の方が参加してくださいました。
今回のテーマは、「動画講義」ということで、3人の方がお話をしてくださいました。
最初の登壇者は、東北学院高校・中学の名越先生でした。
名越先生は、教えている生徒にしか公開しないと決めることで動画を作る精神的なハードルを下げることができるのと同時に、著作権などの問題も回避できる、また、生徒にビデオカメラの操作を頼み、授業中に撮影をすることで、動画講義作成の労力を減らすことができるとおっしゃっていました。
これを聞いて、動画講義を作ろうと考えている参加者の方のハードルがかなり下がったのではないかと思います。
また、手元に「動画講義」というカードが増えることで、発想が広がったり、これまでは対応ができていなかった不登校の生徒や科目変更に生徒にも対応できるようになったということを紹介し、「まずは、明日から動画を作ってみましょう」と呼びかけました。
授業をそのまま録画すると冗長になるので使いにくいのではないかと考える方も多いと思いますが、名越先生は、その点についてもよく考えていて、「教科書を読んでいるとき」などは録画せず、「まとめをしているとき」を録画するというようにしているそうです。そうすることによって、授業時間よりも動画講義はコンパクトになるだけでなく、教科書会社の著作権などに触れないというメリットも副産物としてあるのだそうです。
また、説明のレベルを一番理解が遅い生徒に設定して、少々くどくなってもよいから詳しく説明するのだそうです。そうすると理解の早い生徒は飽きてしまうのではないかとい思ったのですが、そういう生徒は倍速で飛ばすから問題ないとのことで、生徒側が再生速度を調整すれば動画講義のターゲットの範囲を広げることができるということが目からうろこでした。
2番目の登壇者は、eboard代表の中村さん。体調が悪い中、無理を押して登壇してくれました。中村さんは、経済的な理由や家庭環境などの理由でちゃんと学べない子供がいることに問題意識を持ち、誰でも学べる社会を作るためにeboardを作ったそうです。アルバイトで生活費を稼ぎながら、一からプログラミングを勉強してシステム開発を始め、動画講義もすべて自分で作っていったということを知っていたので、今後、eboardを誰にどのように使ってほしいのかということにとても興味がありました。
中村さんは、「動画講義だけでは見ない」という認識で、学校や、学習支援団体、塾などがツールとしてeboardを使ってほしいとおっしゃっていました。放課後講習のようなものに使ってもらうのが現実的なのではないかということでした。
中村さんの作る動画講義は、白板ソフトに手書きしたり、タイプしたりして、それをスクリーンキャストソフトで録画する形式です。基本的に15分以内の短めの動画を作り、どこからはじめればよいか、次にどこへ進めばよいのかが分かるように学習マップがシステムに組み込まれています。
なぜスクリーンキャストタイプを選んだのかという質問に対し、製作コストがかからないことと、学校などで使ってもらう際に、講師の個性が出すぎないほうが使いやすいのではないかと回答していました。また、スタジオ撮影したり、授業を撮影したりして作った動画講義が「一斉授業的」なのに対し、スクリーンキャストで作った講義は、「個別指導的」だともおっしゃっていました。
3番目の登壇者は、コムタス進学セミナーの横川さん。横川さんの問題意識は、理科を習得するための学習プロセスを改善したいということで、そのために、動画講義を利用しているとのことでした。
横川さんは、通常の学習では、最初は間違った概念を持っていて、授業で正しい概念に触れるが、しばらく復習しないで日常生活を送っているうちに概念が間違った方向へ侵食され、ノートを見て復習しても正しい概念を思い出して直すことができないのではないかとおっしゃっていました。
そこで、正しい概念に触れる機会を増やすために、動画講義を導入し、予習、授業、復習で動画講義を見れば、正しい概念に触れる機会が増えるので、学習を通して概念を獲得しやすくなるのではないかということでした。横川さんの場合、概念獲得モデルがあり、それを達成するために動画講義を使うという明確な目的意識がある点がとても印象的でした。
横川さんの動画講義の作り方はとても独創的で、電子黒板の代わりにノートPCを使い、ノートPCにパワーポイントのスライドを表示させます。そして、それを手で指差しながら講義をし、その様子をiPhoneで撮影するのです。
どうしてこのような方法を選んだのかと聞くと、スクリーンキャストだとデジタル過ぎるなと感じたので、もう少し、「生」っぽくしたいと思ったのだそうです。また、同じスライドを授業の確認として使うことで、予習と授業と復習とががっちりかみ合うということも言っていました。
最後に、僕(田原)が、様々な動画講義のメリットとデメリットについて表にまとめて解説しました。
しかし、デメリットと思われることでも、実践者の方は、様々な工夫をしてそれを克服しているので、単純にデメリットとはいえない部分もあります。いつも思うことですが、頭で考えているだけの人の思考を、実践者はいとも簡単に超えていきます。改めて実践されている方の生の声を聞くということは大きなメリットがあるということを感じた勉強会でした。
参加者の方がブログにレポートを書いてくださっています。
桑子さん:「実践者は知っている。明日からできる動画授業のノウハウ」
古山さん:「第4回オンライン勉強会で学んだこと 感じたこと 所感」
勉強会に参加してくださった方からの振り返りアンケートです。
●勉強会で分かったこと
動画講義作成については、方法を知るだけでなくそれぞれの特徴を理解して適切な方法を選ぶことが大切と感じました。 いろいろな方法を試すというとハードルが高い感じがしてしまいますが、取り組んでみればそれほどでもないのでは、という気持ちにも慣れました。 どうもありがとうございました。 |
反転授業のメリットが非常によくわかりました。 特に横山先生の「ピンクを増やす」の話は、自身が受験で物理・数学を苦しんでいた頃の自らの感覚を思い出すようでした。 動画により授業の内容が完全に蘇るというのも、いいですね。 |
動画の作り方にも様々な方法があることがわかりました。 また作っている方の思いとか、意図、それによって最適な作り方が へんかしてくることも見ていて楽しかったです。 |
動画作成についてのハードルが下がりました。 |
初心者には とにかく動画を作ることがよい そう思いました やってみよう |
凄く動画作るのが身近に感じられる第四回 自分も作ってみたいと思いました。 ipad買わなきゃ! お疲れ様でした。 |
動画の撮影は思っていた以上にハードルが低いということがわかりました。
また,最後の横川先生の講義をきいて,反転授業の大切さをより痛感しました。(「あれね!」と思わせることもしかり,授業中に生徒への「認め」をできることで,生徒のモチベーションも高めることができると感じました) |
動画制作の7つの類型が非常にわかりやすく腑に落ちました。 動画制作の主体となる人が誰か、その人がどのように動画を使おうとするのかによって作り方が全く変わってくるという点が発見でした。これまで商業ベースに乗る「商品」としての完成度を求めてきたため視野に入ってこなかったことが見えてきました。 |
動画を活用する事が主になっているのかなということ。 |
撮影配信以外にも、さまざまな動画講義があること それぞれ、メリット、特徴があること 具体的なツール、ソフトなど。 |
動画講義の目的と手法のマッピング。 なんのために動画を用意するかをまとめておかないといけないかなと。 そのためのとっかかりとして、まず「自分で動画を作って、自分でみてみる」ということが必要かと思いました。 |
①反転授業,といってもいろいろな形態があること。 ②授業ではなく「予習」「復習」に重きを置いているのか,と感じていた がすべて授業につながる,学びを深めるための手立てであること。 ③基本的にICTの機材の整備が整わないと,またICTを使うスキルを教師も 生徒も高めないとならないこと。 ④それぞれのデメリットを,いかに克服,またはメリットに転換していく かに今後の工夫があること。(ex 冗長である→倍速) |
・ipadアプリ、explain everythingで、プレゼンコンテンツが手軽に作れるということ。 |
授業の撮影などで、機器や技術的な部分はどうしているんだろうと疑問視していたところが氷解しました。 |
授業のための動画の撮り方・見せ方・使い方にはどんな種類があるか。俯瞰的な解説と、個別事例の両方があって分かりやすかったです。 |
反転授業がさまざまな方法で実現可能であること |
名越先生の取り組みは「目から鱗が落ちる」ような思いで聞きました。反転授業のコンテンツは15分以内、実際は5分ぐらいでないと集中できないだろうと思っていたのです。早送り再生には驚きました。 |
これから動画作成をされたい方が多いことがわかりました。 名越先生の明日にでもできる動画講座は実践しやすくて手軽でいいと思いました。中村さんが個性をなるべく出さないで学校の先生のことつまり、使う側のことを考えて作成されていることを知り、ぐっときました。 横川さんも塾ならでは覚えられやすい頭に残るであろうことを常に考えていることがわかりました。グループの方はマックのかたが多いようで、ちょっと残念ですが・・・。 |
・動画講義は多種多様であるということ ・それぞれの状況に応じて様々な動画が作成され、実践されているということ ・動画作成ソフトは数多くあるということ |
動画講義には、いろいろな作り方があり、目的に応じて適したやり方を選ぶのがよいのではないかというメッセージがしっかりと伝わっていてよかったです。名越先生のお話で、動画作成のハードルが下がったというコメントも多数見られました。中村さんの活動に共感された方もいらっしゃいました。横川さんの学習デザインを総合的に考えて、そこに動画を入れていくという考えに納得された方も多かったようです。
●課題だと感じたこと
途中から参加となってしまったのですが、サイトが変更になったことが直ぐに分からず少し苦労した。 |
まだ多くの方法でためしたことがないので、今後は自分も作り方を変えてやってみようと思いました。 |
YouTubeに動画をアップすると,広告や関連動画等の見せたくないものにつながってしまうことがありそうなので,その対策や,他の動画アップロード先があれば知りたいです。 |
動画を作成しようとするとまだまだ スキルとしても 設備的にも課題はある |
動画もいろいろなタイプがあるということ、地歴は図が多いのでPPT型かな |
そもそも、動画を見る事が出来ない家庭、家でまで勉強しないという生徒をどうしていくのかというのが私には見えてこなかった。 もっと、良くできる生徒への動画ならどうだろうかとも考える。 |
著作権、配信、管理システム、、あたりが課題ではないかと感じました。 |
目的を明確にして動画を作ったとして、今の現場でどのように活用するかという、動画の公開(配付)の方法にハードルが高いと感じました。 |
①上記③と同じ。 ②不登校生徒,または収入が少ない家庭の生徒への助けとなるか。 ③公立学校に,どのように導入するか。 予習,復習の場ではなく,授業でどのように活用するか。 |
・幼児期~小学生への英語指導に、一方通行な動画授業はふさわしいのかどうか、検討材料を集めたくなった。 |
「何のために動画を使用するのか」というコンセプトを自分できっちり固めることが第一歩かと思いました(自己分析すると、自分なら予習用に使いたいんだなぁ、という気がします。そのときに授業の展開をアクティブラーニング形式にするのかなぁと。) |
最初の一歩を踏み出すこと。残り時間はあと5分ほどですが、今日から始めます(笑)。 |
理科ではどのように活用していくかということで,素朴概念・誤概念の補正という点,企業のCMのようななんとなく記憶に残らせるという点ができそうで実は,難しいのかなと思いました. |
反転授業ではコンテンツの作成が重要ですが、素人でも簡便に作成するにはどうすればいいのか、それぞれの方法のメリット、デメリットを把握しておく必要があると感じました。 |
最初の落ちた時自分だけだと思い、とても焦りました。再起動したり、時間がかかりましたが、サーバーの都合だとわかり、ちょっと安心しましたが、早い対応が良かったです。 動画がうまく表示されなかったのは、仕方ないのかもしれませんが、・・・ |
今回は、トラブルにより急遽ルームを変更することになり、運営側としては反省点となりました。音声などの調整については、リハーサルのときに、もう少し細かく設定しておいたほうがよいかと感じました。今後の課題として改善したいです。著作権をクリアする方法についても、今後、情報を集めていきたいと思います。
●勉強会への感想
最後に「今後動画の撮り方講座」のようなものをやりたいという話がありましたが、こちらについては当方の方でも協力・支援できることがあるかもしれません。詳細情報、ぜひ共有してください。 |
運営面で大変なことが合ったかと思いますが、田原先生のおかげでほんとうに色々なことが学べています。今後も引き続きよろしくお願いいたします。 |
ありがとうございました。 |
声の調整をもう少し工夫で来たらと思います 英会話のレッスンはどうしているのでしょうか |
お疲れ様でした!凄く楽しかったです。 |
先生方の講義,とてもわかりやすく勉強になりました。 さかのぼり学習をできるというのもデジタルの良いところだと思うので,生徒が迷いなく自分がどこまで戻るべきかわかるように導線をつくる仕組みも考えていきたいと感じました。 |
初めてオンラインで参加させていただきました。プレゼンを聞きながらリアルタイムでチャットが流れ、講師がそれに反応しながら進んでいくのは想像以上にライブ感があることがよくわかりました。ありがとうございます。 |
取り組みとしては面白いと思っています。 |
可能な範囲で、資料を共有いただけると(すでに、できているのかも)助かります。
初めての参加ですが、非常に勉強・刺激になりました。 ありがとうございました。 |
新たな視点、発見がありとても参考になります。 また、チャットでの意見の送受信はとてもアクティブでやりやすいです。 引き続き今後の勉強会にも参加しようと思います。 運営、準備、その他いつもありがとうございます。 これからもよろしくお願いいたします。 |
初参加でした。 たいへん大きな学びができ,刺激をいただきました。 まずは,自分でもつくってみたいと感じました。 先に話題があった「講習会」。 ぜひ,実現を期待しております。 ありがとうございました。 |
新たな世界を見た!という思いです。ありがとうございました。 |
勉強会に参加させていただいてから、いろんな意味で指導の選択肢が広がったような気がします。
【追記:過去の資料や記録がどこかで見られたような気がしたのですが、閲覧できるでしょうか?】 |
何より、この話題に興味関心を持っておられる方がこれほど多いというのを知って、心強く思いました。ありがとうございました。 |
反転授業について,まったくイメージがつかなった3ヶ月前よりも,自ら反転授業について調べることや,オンライン勉強会に参加させていただくことで,反転授業のイメージがつかめたとことと,それにかかわる人が多岐にわたって多くおられることが分かり,近々,身の回りでも反転授業の実践をされる方が出るのではないかと心待ちにしています.(まだ,大学生なので授業は持てませんが,理論を深めていったり動画技術を高めたりしています) このような勉強会に参加できて大変,モチベーションが上がりました.ありがとうございます. |
コンテンツ作成実習の企画が進行中とのこと、とても期待が高まります! |
今日上がった動画作成の水面下のお話ですが、私もとても興味があります。Windowsの方ですが、来年度4月に地域で先生を対象に教えられる講座を開きたいと希望しており、職員さんと相談したいと思っています。ICT活用と動画作成等なのですが、反転授業の活用にもなればと思っています。 |
私は小学生に向けてスクリーンキャスト動画を作ろうと思っていたのですが、その動機は中村さんと似ており、落ちこぼれを1人も作らない教育をしたいからです。そんな思いで動画を作られている方がいらっしゃるとわかったことは私にとってとても収穫でした。
本日はこのような機会を設けて頂きありがとうございました。 |
今回も、たくさんの書き込みがチャットボックスにあり、インタラクティブな勉強会となりました。大変盛り上がりました。
情報共有だけでなく、「熱気」「何かが変わりそうだという予感」も共有できたのではないかと思います。
1月にも予定していますので、また、どうぞよろしくお願いいたします。
過去の勉強会の録画動画は、Facebookグループ「反転授業の研究」内で見られるようにしてあります。
グループに参加希望の方はこちらからお願いします。
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