主体的な学びと「幸せのメカニズム」の関係
工業化社会から知識基盤型社会へ社会構造が変化するに従い、決められたことを正確にこなす人材よりも、新しいことを生み出す創造性を持った人材が社会で求められるようになってきました。
それに伴い、チームワークや創造性を高める教育法として、アクティブラーニングや反転授業が注目されるようになってきています。
しかし、これは、あくまでも社会の要請です。つまり、「こんな人材になれば職を得ることができるから有利だよ。」という話です。
それはそれでよいのですが、視点が、学習者から遠く離れたところにあります。
僕は、そこに違和感を感じていて、もっと違ったフレームでアクティブラーニングや反転授業を考えたいと思っていました。
そのヒントは、インタビューの中にありました。
インタビューでであった主体的に生きる人たち
このブログでは、毎月、2-3人の方のインタビュー記事を掲載しています。
反転授業のオンライン勉強会でお話ししてくださる方が中心ですが、それ以外にもお話をうかがいたいと思った方にお願いしてインタビューさせていただいています。
インタビューを重ねるうちに、多くの方のお話に共通点があることに気づきました。
行動を突き動かす強い思いがあって、それに従って行動し続けているうちに疑問や矛盾を感じる場面に出会い、そこで問題意識がぐっと深まり、さらに高次の問題へ高い意欲を持って取り組んでいく・・・というパターン。
このパターンを、インタビューをさせていただいた多くの方の中に見出すことができました。
みなさん、とてもエネルギッシュで、そのエネルギーを支えているのは、自分のやっていることには意味があるという確信であるように思えました。
インタビューを通して、自分を前に進めていくエンジンの出力が高ければ、困難に出会っても、それを乗り越えていくことができるのだから、子どもや生徒にレールを敷くよりも、エンジンの出力を高めてあげるほうが重要なのではないかと思うようになりました。そのためには、主体的に学び行動する力を育てることが大切だと思い、アクティブラーニングや反転授業がそのために役立つと考えるようになりました。
「やりたいことを思いっきりやればよい」についての考察
インタビューさせていただいた方の話の中には、「やりたいことを思いっきりやればよい」という話も出てきました。これを抑制してしまうと、自分自身の感情や意欲のありかが分からなくなってしまい、主体性を発揮しにくくしてしまうからだと思います。
しかし、ここで疑問が生まれました。
「やりたいことであれば、何でもよいのか?」
「やりたいこと」には、様々なレベルがあり、それを一括りに「やりたいこと」とまとめてしまってよいのかと思ったのです。
そんなときに、鈴木利和さんのFacebookの投稿を見かけました。
ザッポス・ドットコムのCEOのトニー・シェイが、幸せの3原則として、次の3つを挙げているということが紹介されていました。
(1)快楽
(2)情熱
(3)崇高な目標
はじめは快楽を追い求めていたとしても、その中に情熱を注げるものが見つかって突き進んでいくうちに、自分の中のいろいろなものが繋がって、大きな目標が描けるようになり、自分のやっていることに意味を見出すことができ、確信を持って進めるようになるのではないかと思いました。
そこまでいくと、心の底から大きなエネルギーが湧き上がってきて、すごいパワーが出てくるのではないかと思います。
僕がインタビューした皆さんの多くは、まさに、そんな感じでした。
幸せのメカニズム
福島毅さんから、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 前野隆司さんのホームページを紹介していただきました。
「幸せのメカニズム-実践・幸福学入門」(講談社現代新書、2013年12月発売)の説明のページ
このページの中に、とても示唆に富むシステム図がありました。
※画像は、こちらからお借りしています。
前野さんは、幸せの4つの因子として、
1)自己実現と成長
2)つながりと感謝
3)まえむきと楽観
4)独立とマイペース
を上げていて、これを実践することによって幸せの好循環ループが回るというように書いています。
このシステム図を見ながら、自分の子どもや生徒が、「不幸の悪循環ループ」や、「誤った幸せのループ」に陥ることなく、「幸せの好循環ループ」を回せるようになるにはどうしたらよいのかを考えました。
主体的に学ぶということの意味を、「社会から要請される人材」という視点ではなく、「子どもや生徒の幸せ」という視点から考えたのです。
そして、「やりたいことをやればいい」というだけで放置してしまっては、刹那的な快楽を求めて「不幸の悪循環ループ」に陥ってしまったり、金銭欲、物欲、名誉欲に囚われて「誤った幸せのループ」に陥ってしまったりする危険も十分にあると思いました。
その一方で、アクティブラーニングや反転授業を通して、幸せの4つの因子を体験を通して実感させることができれば、自分の大切な子どもや生徒を幸せの好循環ループのほうへ導いていけそうだというイメージが湧きました。
世の中には3S政策のように、大衆をコントロールするためのノウハウがあります。無防備にしていると「やりたいこと」が浸食され、「誤った幸せのループ」に引っ張り込まれて、様々な欲求を刺激されてコントロールされます。
3S政策・・・Screen(スクリーン=映画)、Sport(スポーツ=プロスポーツ)、Sex(セックス=性産業)を用いて大衆の関心を政治に向けさせないようにする愚民政策
今回、主体的な学びと幸せのメカニズムの関係について考察した結果、自分の子どもや生徒に、大衆コントロールに負けずに、主体的に生きて、幸せになってほしい、そのために、自分はガイド役としてのスキルを磨きたいという思いが高まってきました。
主体的に学ぶことが、どのように幸せにつながるのかという道筋が見えてきたことで、やるべきことがクリアになってきたように思います。
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