反転授業に変えて5%成績が上がった本当の理由
以前、「反転授業の効果は、試験の点で5%アップ」という記事についての分析記事を書きました。
この記事は、Twitterなどでも非常に多くリツィートされ、やっぱり反転授業は効果的なんだ!という印象を世間に与えたと思います。
しかし、分析記事に書いたように、元記事を読む限りでは、5%アップという結果はすごいことなんだ!ということばかりが強調され、具体的にどのような授業が行われ、どのように比較したのかが分かりませんでした。
それで、とりあえず判断を保留し、さらなる情報が出てくるのを待つことにしました。
今回、非常に詳しい記事を見つけましたので、その記事を元に考えていきたいと思います。
その詳しい記事とはこちら↓
The Post-Lecture Classroom: How Will Students Fare?
この記事によると、研究対象になったのは、University of North Carolina’s Eshelman School of PharmacyのMumper教授の基礎調剤学のクラスです。
反転授業を行うときに「予習してこない生徒が多いと成立しない」という問題が指摘されることがありますが、この事例では、Pharm.D(米国で6年制薬学教育を終了すると与えられる称号)を取るという明確な目標があるため、学生の学習意欲が高く、予習率を高めるための工夫というものは、基本的にしなくてもよい状況のようです。
調査は、1年生を対象とした調剤学の授業に対して行われました。学生は週に2回、90分の授業を受け、中間試験と期末試験が課されます。
2011年は、参考文献を読んでくることを宿題とし、パワーポイントを使った普通の講義形式で行いました。
Mumper教授の悩みは、教えなくてはならない内容が多すぎることと、パワーポイントだと学生の気が散ってしまうことでした。
2012年は、Echo360というシステムを導入し、反転授業を実施しました。
学生は自宅で短い講義ビデオを見ることと、2011年と同じ参考文献を読んでくることを宿題として課しました。
教室では、まず、パワーポイントで選択式の問題を表示し、学生がクリッカーを使って回答します。
学生の正答率がリアルタイムで分かるので、Mumper教授は、生徒が何を理解していないかを理解することができ、そこを重点的に説明することができます。
次に、学生はペアになり、Mumper教授が、宿題で学んできた内容を応用しなくてはならないような質問をします。
ペアになった学生は質問内容に対して議論し、そこで分かったことは教室で共有されます。
タームが終わるまでに、Mumper教授は生徒の理解度が低そうな部分を、質問で網羅することができました。
最終タームには、学生はグループになり、宿題を通して理解したことを10分間で、他の学生に対してプレゼンテーションし、議論するという授業形式になりました。Mumper教授は、そのときには、問題を出します。
※10分間のプレゼンテーションは、学生が最も嫌がったもので、2013年には変更になりました。
2013年は、自宅で学生に短い講義ビデオを見てくることと、学習内容に関連した臨床研究を宿題として課しました。
※参考文献を読んでくること→学習内容に関連した臨床研究 と変更
授業で行われていたプレゼンテーションやクイズの代わりに、臨床研究について議論しました。クイズは、授業後にオンラインで確認のために行われるようになりました。
2011年と2012年とで成績を比較すると、成績が2.5%上昇し、2012年と2013年とを比較すると、成績が2.6%上昇し、3年間の間に5.1%の成績の上昇が見られたとのことです。
これをどのように捉えるかということですが、一斉講義型だった2011年から、講義部分を動画に置き換えてアクティブラーニングを導入したことによって2.5%の成績アップになったのは、学習時間が増えたことが原因というよりも、受動的な学習から能動的な学習へ変化したことのほうが原因として大きいと思います。単純に予習時間だけを比べると、確かに、「短い講義動画」を見る時間の分だけ長くなっていますが、それよりも、教室での活動の劇的な変化のほうが結果に及ぼす影響が大きいと考えるのが妥当でしょう。
注目すべきは、2012年から2013年にかけて2.6%の成績上昇が見られたということです。
これは、単なる科目として学ぶことと、「臨床研究」という実践的な内容で学ぶこととでは、効果が大きく異なってくるというように理解できるかもしれません。アクティブラーニングの内容を考える際に、非常に参考になる事例だと思います。
この調査は、生徒中心のアクティブラーニング型の授業にし、内容を実践的でエキサイティングなものにすると、学習効果が大幅に上がったということを示していると思います。
授業改善に向けて、非常に参考になる記事でした。
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