シミュレーションの教育利用に関心を持った理由(その1)
僕が物理シミュレーションの教育利用に興味を持ったきっかけは、1年半ほど前に、このYoutubeビデオを見たことでした。
この動画を見たときに、物理エンジンを使えば、3Dバーチャル空間に簡単に「実験室」を作ることができる時代が来ることを予感しました。
そして、「バーチャル実験室」があれば、生徒が自由に仮説を立て、実験装置を組み立て、試行錯誤して、考察して・・・というアクティブな学びができるんじゃないかと思って興奮しました。
物理エンジンを使った教育ソフトを探してみると、
Phun, Algodoo, Interactive Physics
の3つが見つかりました。
まず、PhunとAlgodooを試してみました。これらは、フィンランドにある会社が開発した知育ソフトで、2次元空間にお絵かきソフト感覚で簡単に実験装置が作れるという点ではよいのですが、高校物理に出てくるような装置を作ろうとすると、「軽くて伸びない糸」「滑らかな滑車」などが用意されていないため、うまく作れませんでした。
そこで、Youtubeで見つけたInteractive Physicsを試してみることにしました。
チュートリアルビデオを見る限りでは、こちらもお絵かきソフト感覚で簡単に実験装置を作ることができ、2次元という制約はあるものの、仮説を立てて、実験装置を組み立て、実際に動かして検証するという学習ができそうでした。
早速、購入してみようと思ったものの、日本には購入できる場所がありませんでした。
シンガポールで代理店になっているLさんのホームページを見つけ、メールを送って、チャンギ空港のスタバでLさんに会いました。
Lさんから、シンガポールでInteractive Physicsがどのように教育利用されているのかをうかがい、Lさんから2ライセンスを購入しました。
Interactive Physicsによって、高校物理の設定をどの程度再現できるのか、まずはやってみようと思い、パートナーの浅井さんといっしょに、当時執筆中だった問題集『日本一詳しい物理基礎・物理の解き方』の力学の問題のシミュレーションを作りました。
実際にシミュレーションを使ってみて感じたことは、思ったような動きを作るまでに試行錯誤が必要だということ。そして、そのような試行錯誤が勉強になるということでした。
出来上がった動画を見せるのではなく、生徒が自分で試行錯誤してほしいという思いが強くなりました。
それで、シンガポールのLさんにInteractive Physicsの販売元のアメリカの会社の担当者を紹介してもらい、自分が窓口になるから日本でも購入できるようにしてほしいと交渉し、日本でも購入できるようにしてもらいました。
しかし、ここで課題が見つかりました。
「物理シミュレーションをどのように使えば、教育効果が上がるのか?」
ということが、僕自身、まだつかめていなかったのです。
思い描いているイメージはあります。
生徒個人、または、グループで自由に使える物理シミュレーションがあって、生徒が自由にそれをいじりながら発見的に学ぶ・・・・
これが、僕の描いているイメージです。
先日、アクティブラーニングの小林先生が反転授業のオンライン勉強会で、
「実験装置を置いとくと、生徒が勝手にいろいろいじるんですよ。ときどきそれで壊れるんですが、それでもいいんですよ」
という話をされていて、「まさにそういう使い方をしてほしい!」と思いました。
グループワークとシミュレーションは、非常に相性がよいと思います。
しかし、物理シミュレーションを広めるためには、そこからもう一歩踏み込んで、
「このような使い方をすると、このような理由で、このような教育効果が上がる」
という明確な知見を作る必要があります。
それで、Interactive Physicsの販売元に相談し、一緒にシミュレーションを使った教育ノウハウを作り上げていく仲間を作るために、最初の50ライセンスを半額にしてほしいと頼みました。そして、Facebookグループ「シミュレーション教育利用研究会」を立ち上げました。
IT技術の発展に伴い、インタラクティブな教材がどんどん作られています。
物理シミュレーションだけでなく、数学のグラフソフトや、化学の3D立体模型など、さまざまな分野で「すごいもの」が出てきています。
しかし、それをどう使えば教育効果が上がるのかというノウハウは、まだまだ蓄積されていません。
IT技術に教育ノウハウが追いついていないのです。
10月19日に第1回の「シミュレーション教育利用オンライン研究会」をやります。
まずは、実践例を集めて、ディスカッションし、教育効果を上げるためには何が必要なのかを明確にしていきたいと思います。
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