動画を作ると人生が変わる(4)~動かすと理解できる

反転授業の研究の田原真人です。

10年前に動画を作り始めたことで、人生がどのように変わってきたのかを連載しています。

動画を作ると人生が変わる(1)~自分の分身ができた
動画を作ると人生が変わる(2)~理解速度にシンクロさせる
動画を作ると人生が変わる(3)~学習環境を整える人になった

講義動画を作り、受講生がマイペースで学べる環境づくりを進めていくうちに、自分を取り巻く環境に変化が生まれました。

様々なソフトが販売されるようになり、動画を作る方法にバリエーションが生まれてきました。

ThinkBoardは、「リアルでやっている授業をバーチャルでもできる」ソフトなんです。

でも、もしかしたら、リアルではできなかったような学びをバーチャルならできるのではないかと思い始めました。

物理シミュレーションを動画にする

最初に考えたのは、物理実験をオンラインでやれないかということでした。

Youtubeに「物理エンジンで●●してみた」という動画シリーズが上がっていて、すごく興味深かったのです。

こういう仮説を立てて検証するような学びをするために物理エンジンを使えないかと考え、様々な可能性を探りました。

スウェーデンの教育ソフトであるPhunやAlgodooなどで、物理の問題集に出てくるような設定を再現してみようとしたりしました。

しかし、「軽くて伸びない糸」が、これらのソフトにはないためうまくいきませんでした。

さらに探していくうちに、アメリカの会社が作っているInteractive Physicsというソフトに出会いました。

これは、なかなかの優れもので、運動している物質のv-tグラフを同時に示すことができたり、リアルタイムで変化する速度や力をベクトルで表示できたり、重心から見た光景を表示できたりします。

つまり、リアルの実験では見えないものまで見えるようにしてくれるのです。

リアルの実験の臨場感にはかないませんが、リアルではできないことができるのが物理シミュレーションだと思いました。

ここにも、リアルの代替ではないバーチャルがあったのです。

これはすごいと思い、アメリカの会社に問い合わせ、日本からも購入できるようにしてもらいました。→ Interactive Physics

自著『日本一詳しい物理基礎・物理の解き方』に含まれている力学の問題設定をすべてInteractive Physicsで作り、読者が運動をイメージで捉えやすくしました。

シミュレーションをやってみると、問題設定にない状況が再現されるので、物理現象の全体像が見えてきます。

力学以外のシミュレーションも使いたいと思って調べたところ、コロラド大学がPhET Interactive SimulationsというWebサイトを作っていて、そこに大量のシミュレーションがあり、無料で使用できることが分かりました。

特に電気回路のシミュレーションは優れもので、自由に回路を組み立て、コンデンサーやコイルにどのように電流が流れるのかを見ることができるのです。

説明がしにくかったことを、電気回路のシミュレーションを組み立て、それをカムタジアスタジオなどのスクリーンキャストソフトで録画して動画にして説明すると、一発で理解してくれました。また、リンク先を紹介して、自分でも回路を組み立てて学ぶように勧めました。

動かすことで分かりやすくなるのは物理だけじゃない

2015年に「パソコンで作る!カンタン動画作成」というオンライン講座を実施しました。

そこに30名以上が集まり、白板ソフトでアニメーションを作り、カムタジアスタジオで録画するという方法で動きのある動画を作成しました。

その体験は、僕にとって衝撃でした。

物理や数学の概念獲得に「動き」が役立つのはイメージできていたのです。

しかし、ありとあらゆる科目で、「動き」が理解に役立つのだということを体験し、それまでの常識が崩壊しました。

例えば、これは、講座を受講した内橋朋子さんが作成した古典の敬語を説明する動画です。

教師の工夫次第で、いろいろな分野で「分かりやすさ」を改善できるのだということに気づきました。

また、一度作成してしまえば、生徒がいつでも視聴することができるようになるので、「敬語については、この動画を見てごらん」と指示することで、その場で対面で説明する時間がなくても、生徒の理解を助けることができるようになるのです。

思考の制約が外れる

動く教材を作成するようになり、今まで、黒板やホワイトボードに手書きで書いて授業をするという制約に、思考も制約されていたことに気づきました。

道具が変われば、アイディアも次々と湧いてきます。

アイディアが湧いてきたときに、簡単にそれを形にできる方法を知っていて、そのときに10分くらいの作業で動画を作っていくようにすると、いつの間にか積み重なっていき、1年もすれば、生徒の理解を助けるライブラリができあがり、そのライブラリは、教師の分身として休まずに働いてくれる心強い味方になります。

動く教材を作ってみると、言葉で説明しても理解できなかったのに、視覚的に説明するとすぐに理解できる生徒が存在することにも気づくようになります。

それを見て、今までの授業は、言語的な理解が強い生徒に有利で、視覚的な理解が優位な生徒には不利だったのかもしれないと思うようにもなりました。

動く教材を作って動画化することで、様々な個性を持った生徒が、自分に合った学び方を選択することができるようになればと思います。

動く教材を作る方法は、いろいろありますので、いくつかの方法を試してみて、自分にとってやりやすい方法を確立するのがお勧めです。

長く続けるコツは、隙間時間にカンタンに作れること。

日常生活の中に、上手に動画作成の時間を組み込んでみてください。

 

 

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