全国から約100名が集まった!反転授業オンライン勉強会
反転授業と一言で言っても、そこには多様な取り組みがあります。
先日行われたオンライン勉強会の冒頭で、僕は、次のような図を使って、反転授業の分類について説明しました。
赤字で書いてあるのが塾などの利益を目的とした活動で、青字で書いてあるのが学校やNPOなどの非営利の活動です。
このように整理すると、「反転授業」の目的も手段も様々であることが分かります。
10月7日に行ったオンライン勉強会では、能動学習(アクティブラーニング)を中心にすえて授業をやっていらっしゃる3人の先生に実践例をうかがいました。この図で言うと、左上に位置する方たちです。
この位置にいる方は、生徒に、自分で考え、他人と協働し、自ら新しいものを生み出していけるような社会人基礎力、21世紀型スキルを身につけさせようということを目的とし、そのための手段として能動学習(アクティブラーニング)を取り入れています。
日本の旧来の学習が、情報処理能力を重視してきたのに対して、それを根底から見直していこうという思想に基づいた活動なんですね。
これを、便宜上「グループワーク重視型の反転授業」と呼ぶことにします。
グループワーク重視型は、なぜ、反転授業にするかというと、理由は明確で、
「グループワークの時間を確保するために、講義部分を動画にして教室外に置く」
ということです。
今回お話しいただいた小林先生がアクティブラーニングを始めた頃は、iPadなんてものはなかったわけで、その中で、講義時間を短くするために、
・プリントを配り、生徒が黒板を書き写す時間を短縮
・プロジェクターをつかってスライドを映し、教師が黒板に書く時間を短縮
というような方法を使い、内容を説明する時間を10~15分にして、30分以上のグループワーク時間を捻出して行っていたそうです。
横山先生も、小林先生のやり方を取り入れ、同様のやり方でアクティブラーニングに取り組んでいらっしゃいます。そして、補足解説を動画にし、生徒が自主的にアクセスできるようにしています。
芝池先生は、3年前から協働学習に取り組まれていて、勤務されている近大付属高校に一人一台のiPadが導入されたのをきっかけに、協働学習の時間をより多く確保するために、講義部分を動画にして予習させることにしました。
このように、お話いただいた3人の先生のやり方は、それぞれ異なっていて、「反転授業」の定義に当てはまるのは芝池先生の取り組みだけになりますが、マインド部分は、ほとんど同じなんです。3人のお話をうかがっていて、
アクティブラーニング(協働学習)を通して、社会人基礎力や21世紀型スキルを見につけさせたい!
という気持ちがひしひしと伝わってきて、そのために、与えられた環境の中で、最適な方法を考えた結果、プロジェクターの利用であったり、動画を補習に使うというやり方であったり、反転授業であったりという方法が使われているということなのです。
このことを押さえておくと、「グループワーク重視型の反転授業」の本質が見えてくると思います。
オンライン勉強会は、小林先生のマイクにトラブルがあったため、話す順番を変更して、横山先生、芝池先生、小林先生の順でお話いただきました。
横山先生は、大学院時代に「学び合い」で有名な佐藤学教授の研究室で教育学を学び、最初からアクティブラーニングをやりたいという気持ちで高校教諭になったそうです。
でも、実際にやってみると、うまくいかないことも多く、試行錯誤の連続だったそうです。
横山先生がブログに内容をアップしていますので、そちらをご覧下さい。
次に芝池先生にお話いただきました。数学の授業で生徒に頭を使わせるためにはどうしたらよいかという試行錯誤の中で、発問形式の授業をするなど様々な工夫をしてきて、3年前から協働学習に取り組まれるようになったそうです。そのきっかけになったのは、社会人基礎力をつけることの重要性を感じたからということでした。
芝池先生の授業は、「完全習得学習」を目指していて、そのために、協働学習による演習時間をしっかり確保するために、反転授業の導入に踏み切ったそうです。
「芝池先生が担当するクラスのほとんどの生徒が予習してくるのはなぜか?」というクイズをFacebookページに出して、みなさんに考えてもらい、たくさんの回答が出てきましたが、芝池先生と同じ回答は1つもありませんでした。
芝池先生のやり方は、「予習は直前にやるもの」という固定観念をはずして、何週間も前倒しで、動画を見て予習ノートを作らせるというものです。グループワークで演習している時間にノートをチェックして予習状況を把握するので、授業でやるときには全員が予習してある状況になっているそうです。
これは、目からうろこでした。
また、生徒のやりとりが活発になるように「知識構成型ジグソー法」を取り入れる場合もあるということでした。
芝池先生の、常に授業を改善させていこうという熱意に本当に感動しました。
最後に小林先生のお話をうかがいました。
教師の役割が、壇上の賢人から、学習者に寄り添う導き手に変わるという話を、非常に簡潔に明快に説明してくださいました。
その明瞭簡潔さに、チャットボックスには、「簡潔だ」「分かりやすい」という言葉が流れました。
長年、短時間で明確に説明するということを積み重ねていらっしゃったのだなというのが、その説明からも伝わってきました。
勉強会には、グループワークに実際に取り組まれている先生も多数いらしゃって、
・グループの分け方はどうしますか?
・仲間はずれにされる生徒が出てきませんか?
などのグループ分けに関する質問が多数出ました。
小林先生は、それらに次々と的確な回答をしていきました。
そのやりとりに、圧倒的な経験値を感じました。
最後に僕が、
「僕も、グループワークに挑戦し始めて、ファシリテーションスキルを身につけたいと思うようになったのですが、どのようにすれば身につきますか?」
と質問しました。
小林先生は、
「自分自身はカウンセリングやグループエンカウンターを勉強したりしたが、習得までに時間がかかりすぎるので、あまりお勧めできない。」
「もっと簡単にマスターできるものとして、質問会議(アクションラーニング)がある。」
と教えてくださいました。
講義スキルが分かりやすいのに対し、ファシリテーションスキルは見えにくいです。
先生が何もしていないように見えるからです。
しかし、生徒の学習をコーディネートし、生徒の気持ちや関係性をケアしていくことは、非常にスキルが必要とされることだと思います。
「グループワーク重視型の反転授業」の場合は、教師が、いかにしてファシリテーションスキルを身につけていくのかというのがポイントだと感じました。
小林先生も、オンライン反転授業について、ブログに記事を書いてくださいました。
勉強会に参加してくださった方も、ブログで勉強会の感想を書いてくださいました。
自分とは違った視点で勉強会を捉えていて、非常に勉強になります。
sakana10のエンジョイブログ 「反転授業オンライン勉強会に参加しました」
ふるやまんの算数塾 「反転授業の勉強会大盛況&大成功でした!」
科学のネタ帳 「潜入!全世界から100名を超えた「反転授業オンライン勉強会」での学び」
まなびのブログ 「第1回☆オンライン学習会(2013.10.07)」
木田知廣ブログ 「米国教育の新潮流、反転授業の光と影」
普通の大学生が自分の学校を作る 「反転授業勉強会に参加しました!」
参加者の方のブログは、ご連絡いただければ、順次追加します。
グループワーク重視型の反転授業の目指す21世紀型スキルとは、グループで協力し合って、アイディアを出し合い、お互いにインスパイアしあい、集団智を作り上げるスキルです。
2013年10月7日に、反転授業に関心のある約100名の方が同じ場所に集まりました。
Facebookグループには、144名の方が参加してくださっています。
まずは、このグループに集団智を創発させ、グループからさまざまなヒントを各自が持ち帰り、課題を解決していけるようになることを願っています。
昨日の熱気は、その可能性を十分に感じさせるものでした。
今日もFacebookグループには、さまざまな書き込みがされています。
本当に楽しみなことになってきました。
■実践されている方、実践を検討されている方、ぜひ、つながりましょう。
144名が参加! Facobookグループ「反転授業の研究」はこちら
※グループに参加希望の方は、田原までメッセージ下さい。
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