反転授業で予習率を高める工夫~熊本壺溪塾学園の「配信授業」

反転授業とは、生徒が自宅でE-Learningで予習をしてきて、教室で発展的な学習や、達成度別の補習を行うというものです。

その際、

予習をしてこない生徒がいる場合、どうしたらよいか

ということが課題になります。

僕は、その解決策として3つあると考えています。

 

1つ目は、予習してこない生徒もいるという前提に立ち、「生徒が予習してきたくなる仕組みを作る」という方法です。これについては、「反転授業で全員予習してこなかったときの対策」という記事に書きました。公教育の場合は特に生徒のモチベーションにばらつきが大きいと思いますので、全員予習してくるということを前提にするのは難しいかもしれません。

 

2つ目は、「E-Learningで予習させる」ということをあきらめて、最初の10分~15分で内容の説明をし、残りの時間をグループワークと振り返りに使うというやり方です。E-Learning教材は授業内容の補足として、生徒が自由にアクセスできるようにWebにアップしておくという方法もあると思います。関東一校の横山先生の実践例がこれにあたります。

 

3つ目は、あくまでも全員予習してくることを目指すという方法です。予備校や塾だと、受講生のモチベーションが高いので、この方法が可能だと思います。熊本県にある大学受験予備校、熊本壺溪塾学園の古文を担当されている甲斐 資子先生は、ThinkBoardというスクリーンキャスト型の講座作成ソフトを利用して、非常に興味深い実践をされているので、ご紹介したいと思います。

甲斐先生の反転授業の実践は、熊本日日新聞でも紹介されました。

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甲斐先生が使っている講座作成・配信システムは、反転授業用に開発されたもので、生徒の予習状況が把握できるように工夫されています。

講師は、ThinkBoardという講座作成ソフトを用い、ヘッドセットとペンタブレットを用いて講義を作成します。

その後、作成した講義ファイルをThinkBoard Learning Manager というLMSにアップします。

生徒は、LMSにログインし、講義を受講します。

ここに、非常に興味深い2つの機能があります。

1つは、生徒の受講履歴の時系列がLMSに残るという点です。各生徒が、何時から講義を受け始め、どこで一時停止したか、どこを繰り返したか、といった生徒の学習状況がすべて履歴としてシステムに残り、把握することができます。生徒が一時停止したり、反復したりする場所は、理解しにくかったところなのだというように講師があらかじめ知ることができます。

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もう1つは、講座を見終わった後に感想を講師に送るようになっていることです。どこが難しかったとか、全問正解だったとかといったメッセージを講師に送ることで、自分の状況を講師が分かってくれているという安心感が出るそうです。また、講師側からすれば、授業前に理解度を確認することができます。

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授業では、生徒の受講履歴データと、生徒からのコメントを元に、分かりにくかったところを重点的に解説することができます。

講師は、勘ではなく、データを元に、本当に生徒が分からないことを詳しく説明する授業をすることができるのです。

この授業が、実際にうまくいっているのかどうか、甲斐先生からコメントをいただきましたので引用します。

—- ここから引用 —–

私の講座では、「配信授業」であって、「予習」という言葉は使いません。「予習」であればオンラインの授業を誰も視聴してこないだろうと想像します。

近大付属の「反転授業」の試みがテレビ取材され放映されたとき、司会者が「予習大変そう」とコメントして、すべてが「わや」になった、と思いました。

私は,「配信授業」に特別な意味を持たせます。センター型問題の解説授業のコンテンツなのですが、あらかじめ問題を解かなくてもいい、とにかく視聴して、コメントを返すように。と伝えてあります。「技を盗む、要領を覚える、そして対面授業に出る」ことを徹底させました。

彼らは、「残せる、何回もいつでもどこでも視聴できる、得点に結びつく技の詰まった」配信授業は、特別なものだという意識を持ちます。また、明らかに他とは違う授業を受けている満足感を持ちます。対面授業の時に、「コメントに~質問があったけど…」とコメントに触れるので、「見てくれている」という安心感を持ち、またコメントを返そう、と思うようです。実際に、こっそり先生と秘密のやりとりをしている面白さ感を抱くようです。生徒へのコメントはすべて返します。つぶやきを拾い、ほめて、励まします。

LMSを確認すると、こちらの授業の展開の仕方の、まずかった点も分かります。生徒の躓きもチェックできます。毎回必ず国語科の先生に視聴して頂いています。

対面では要領の生きる演習問題を解き、答えを皆で導くので、生徒は配信授業を視聴していないと「地獄」の一時間になると心得ています。

予備校の授業ですし、センターで高得点を取る必要があり、後がない…切羽詰まった生徒達ですので、効いていると感じます。ただ、センターの実施後でないと、結果が分からず、今後への課題もたくさん出ると思います。恐ろしいです。

—- 引用ここまで —-

ThinkBoard Learning Managerを用いた甲斐先生の実践のように、自宅での予習状況を把握し、さらにコメントのやり取りなどをすることによって予習率を100%に近づけていくというやり方も、十分成り立つという気がしました。

甲斐先生の反転授業の実践レポートをこちらからダウンロードできます。

 

課題が出てくれば、それに対して、解決策も出てきます。

これからも、実践例をできるだけ多く紹介していきたいと思います。

熊本壺溪塾学園の反転授業紹介ページはこちら

 

■10月7日のオンライン勉強会では、反転授業やアクティブラーニングを実践されている先生が、実践例を紹介してくださいます。

オンライン反転授業はこちら

 

■実践されている方、実践を検討されている方、ぜひ、つながりましょう。

Facobookグループ「反転授業の研究」はこちら

※グループに参加希望の方は、田原までメッセージ下さい。

 

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