インターネットをフル活用して家庭学習をサポートする小川浩司さんにインタビュー

現在、インターネットには、様々な情報がアップロードされており、まさに「外付けの脳」のようになってきています。

このような時代には、これまでのように知識を蓄えるような学びではなく、必要に応じて必要なことを学べるように、学び方を学ぶのが重要だという声があちこちから聞こえるようになりました。

海外では、カーンアカデミーのように無料で学ぶことのできるサイトがあり、さらには、講義動画をYoutubeにアップロードし、広告費によって収入を得る教育Youtuberと呼ばれる教師たちもいます。

海外に比べるとまだまだ層は薄いですが、日本でも、「eboard」「とある男が授業をしてみた」「ふるやまんの算数塾」など、無料で使える良質の講義動画が増えてきました。

このように無料で自由に利用できる講義動画がオンライン上に存在することで、どのような学習がが可能になるのでしょうか?

IT会社に勤務する小川浩司さんは、小学校5年生の娘さんの家庭学習サポートにインターネットを上手に利用しています。

小川さんの取り組みは、少し未来の家庭学習のあり方を知るヒントになるのではないかと思い、インタビューさせていただくことにしました。

先へ進むよりも、理解を深める

小川さんは、「ebord」とか、「とある男が授業をしてみた」とか、「ふるやまんの算数塾」とかいろんな動画を使ってお子さんの勉強をサポートされていますよね。僕は、講義動画がYoutubeにアップされるようになると、それを使った家庭学習サポートが可能になると思っていたので、小川さんのお話をうかがったときに、これだ!と思いました。実際にやってみていかがですか?

娘の入学がきっかけで、家で子供の勉強を見るようになったのですが、はじめは、学校の授業の進度は気にせずに、子どもの理解の程度を見ながら家庭学習をするようになりました。

究極の個人授業ですね。

たとえば1年生の頃だと、「この子は足し算を理解したな」と思ったら、次に引き算を学習するといった感じです。

そうこうしているうちに、子どもに「学校のお勉強はどう?」って聞いたら、「つまんない」って言うんですよ。それで、ちょっとびっくりして、「なんで?」って聞いたら、学校の授業は内容がみんな分かっちゃうからつまんないっていうんですよね。

学校では、長い時間を過ごすわけで、授業がつまんないというのは娘にとってはつらいことだろうなと思って、そんなふうに意図したわけではないのですが学校の授業に先行するのはやめておこうと思ったんです。

それで、家庭学習は学校で習った「復習」ということにしたので、娘にとっては学校の授業で習うことが初めて学ぶことになりましたから、「内容がみんなわかってつまんない」という問題は解決したのですが、それはそれで、釈然としない、なんだかもったいないというか、もどかしいな、という気持ちなんですよね。

「反転授業の研究」に参加させていただくと、新しい勉強のスタイルというのがあることを知って、先生方もいろいろお考えになって、新しい取り組みを試みていらっしゃるから、きっと近い将来、学校での授業のスタイルも今と変わるでしょうから、今は過渡期なのかもしれないと思ってはいるのですが、今、娘が置かれている状況のことを考えると、学校に合わせてあげなくちゃいけないかなと思って、娘ではなく、学校にあわせてそのようにしているんですね。

動画授業を利用するようになったのはここ1・2年の事なんです。無料で動画授業を公開しているeboardを知ったり、反転授業の研究でお親しくさせていただいた、ふるやまんの算数塾の古山さんの授業動画を知ったりして、これはいいなと思って利用させていただいているんです。
古山さんにはとてもお世話になっているのですが、私が説明に窮するような算数の問題についてご相談すると、あっと言う間に解説動画を作ってくだるんで、とっても感謝しているんですが、娘は、ことさら自分のために作ってもらった解説動画だということもあって、なおのこと一生懸命に見たりしているんですよね。
自分が分らないことのために作ってもらった解説動画だからよくわかるのは当たり前なんですけど、わからなかったことがわかるというのは本当に楽しそうですね。

いま現在は、動画授業を見てはじめて理解するという使い方よりも、すでに理解していることの復習のほうが多いのですけど、それが未来の学習の姿なのかはわかりませんが、田原さんがイメージされているような学習スタイルだと思いますね。

僕も子供に動画を見せて勉強させていますが、動画を見ないで問題を解くんですよね。それで、分からなかったら動画を見るし、問題ができたら動画は見ないというケースが多いんですよ。小川さんのところはどうですか?

最近、古山さんとお話ししていて、いいなと思ったのは、「動画授業では、本質的な理解を伝えたい」とおっしゃっていたことなんですね。
解法を解説するという授業動画だと、田原さんがおっしゃったような、見ないで問題を解いたり、わからなけれは観るというような使い方になるかもしれませんね。
保護者が先生に期待することは、解法よりも、「なぜ・なに」の本質を教えていただきたいってことなんですね。
これは、動画授業にたいしても同じように思っています。
とくに、小学校で学ぶ内容には、それが大切だなって思うようになりました。

ついこの間も、ある動画をみつけて、それは小学3年生で習う単元のものだったのですが、とてもわかりやすいんですね。娘は今5年生なんではけど、娘にとってはもう学んだ内容なんですけど、今あらためてこれをみせたら、その本当の意味が理解できるだろうなと思うようないことがあったんですね。そのことを古山さんに伝えたら、算数は、文科省が定める学習指導要領にしたがってこの単元は3年生で教えるって決まっているけれども、実は各単元は有機的につながっているんだそうです。
だから、場合によっては、中学生が小学生の単元に戻って学ぶほうが理解が進むということもあるんですとおっしゃっていてなるほどと思いました。

これからは、きっと授業動画もそうですが、学習を支援するようなコンテンツがますます多くなるでしょうから、そのなかから適切なものを選ぶことは難しいことになるだろうなと思っています、そこになにかよいアイディアはないかななんて思っているところなんですね。

動画講義などを使うと、子どもの理解に合わせて進めていくことができます。そうすると、自然と学校の進度よりも家庭学習の進度が進むという状況が生まれてきます。しかし、「学校の授業がつまらない」という娘さんからの声が出てきて、小川さんはジレンマに陥ってしまったんですね。その中で、小川さんは、進度を早めるのではなく理解を深めるという選択をされました。動画は、自分で進めていくのに利用できるだけでなく、理解を深めていくのにも使えるというのは、重要な気付きであると思います。

大量の講義動画から適切な動画を見つける仕組みが必要になる

娘さんに見せる動画は、小川さんが見繕ってくるんですか?

はい、私が見繕っています。

ビッグデータ解析で自分の好みに合わせて動画を推薦していくようなリコメンデーションの仕組みがあったらいいですね、なんてことを古山さんとお話したことがあるんんです。少ない数のコンテンツだとビッグデータ解析にならないのですが、Youtubeに上がっているようなもっとたくさんの増えてビッグデータ解析をして、見合ったものを勧めていくようなことができたら面白いなと思っています。

おもしろいですね。ClassDoという教えたい人と学びたい人のマッチングをする教育サービスでは、AIが使われていて、関係のある講座がサイドバーに表示されるんですが、そういう仕組みに近いかもしれませんね。

高校生までの教育は、教育指導要綱に基づいて、単元ごとに区切られているから作りやすそうですね。例えば、小学校向けの動画で「くりあがり」で検索すると何人かの先生が作った「繰り上がりの足し算」の動画が出てきて、その中で子供に合ったものを選ぶんですが、そのときに、価格.comみたいにランキング化されているなかから選べると、利用者にとっては便利かななんて思ったりしています。先生方からすれば、選ばれることになるので大変かもしれませんね(笑)。教えることは1つのプロフェッショナルな技術だと思うので、教えるのが得意なな先生は、そのようになさってもいいんじゃないかなとも思うんですね。

そのアイディアは面白いですね。

自宅で動画授業を受講して、学校では仲間たちとディスカッションしたり、教え合ったりする反転授業のスタイルに移行してゆくとすれば、先生に求められる能力もきっと変わってゆくのでしょうね。ディスカッションをうまく導くファシリテーション能力だったり、教えることが上手な先生は動画授業の作成を行うとか、先生方も専門分化していくのかなというように思いますね。
反転授業の研究の中で、ある先生がおっしゃっていたのが印象に残っているのですが、たくさんの動画授業のなかからその子にあったものを選び出す、キュレーターのようなスキルも必要になるって。

今、インターナショナルスクールの高校生の勉強を手伝っているんですけど、英語の動画講義は大量にあるので、小川さんのおっしゃっているような状況になりつつあります。自分で学べる環境を作ってあげるために、大量の動画講義の中からちょうど合っているものを見繕って、シラバスに沿ってムードルに貼ってオリジナルのコースを作るんですけど、動画が多いから探すのが大変なんですよ。それが、Youtubeの検索よりも効率よくできるといいですよね。

今までは、この塾に入るとよいとか、そのカリキュラムに乗っかっていけばお勉強は大丈夫、という状況だったのですが、今後は、たくさんの選択肢のなかから、適切なものを選ぶ、なにか良い工夫を考えてゆかないと情報の海に溺れてしまう感じがしています。

小川さんが指摘して下さったように、コンテンツが豊富になってくると、次に必要になってくるのは、その中からユーザーに適したものを選び出して紹介するキュレーションということになるのかもしれません。また、子どもが安心して自分で探すことができる環境というものも必要かもしれません。

日々、娘さんの理解を助けるコンテンツを、Youtubeなどから探している小川さんのユーザー視点からの意見は、非常に説得力がありました。

ITを使えば、子どもの学習に伴走できる

動画を選ぶときの基準はあるんですか?

基準は、娘なんですよね。この子が面白いと興味を持つかなとか、いまの娘理解の程度に見合ったものかな、ということを基準で選んでいます。だから、すべての単元を動画授業で学ばせるわけではないですね。たとえば、娘はそろばんを習っていましたから「足し算の繰り上がり」は、全く問題ないけど、リットルとかデシリットルとかの量の単元はちゃんと理解していないな、量について解説している授業動画は無いかな?というような視点でさがして、見させたりしているんです。

小川さんのやっていることは、フルタイムで働いているお父さんが学習サポートをすることができる可能性を切り開いていると思います。世の父親の中には、忙しいということで育児とか教育支援を諦めている方もいらっしゃると思うんですけど、やりようによっては、手伝えて、喜びもある。それが、どうして可能になっているのかを教えてください。

もともと根底にあるのは、子育てって楽しいんだということ。その子育ても期間限定でその期日はまじかに迫っているという感覚でしょうかね。それと、私の子どもに生まれてくれてありがとうっていう感謝の気持ちも強くありますね。私たちの親の世代では、お父さんが仕事をして、お母さんが家事をしてという時代でしたよね、私の妻もフルタイムで働いていますので、わたしの子育ての関わりは、はじめは保育園に連れていくところからはじまりました。スーツを着て、抱っこをして保育園に連れていくのがすごく楽しかったですよね。

今でも小学校の途中まで送っていったりしていています。娘はパパもう来ないで一人で行けるからって嫌がっていますけど(笑)

それから、一緒に勉強をするようになって、今まで経験できなかったことができる、これってなんて楽しくて幸せなことなんだろうって思っています。家庭学習を子どもといっしょに親がすることをみなさんにもどうぞといっているのははそこにあるんですよ。
こんな楽しいことをやらないと損だよって。
時間が出来たらやろうなんて思っているうちに、タイムリミットはすぐ来てしまうよって。

育児って、そんなに長いことじゃないんですよ。赤ちゃんのときに夜泣きして抱っこしてノイローゼになるなんて話を聞くじやないですか。でも、それはほんの一瞬のことで、あとでやりたいと思ってもできませんものね。

小学校の勉強までなら、通常の教育を受けた親御さんだったらフォローできると思いますよ。でも、いきなり6年生の問題を説明してって言われるとつらいので、1年生のときから少しずつ関わっていくとよいですね。こんなに楽しいことがあるよっていう思いを伝えたいと思っているんですよ。

そんな家庭学習をしているうちに、たまたま私が娘のために作ったてづくりの問題が溜まってきたので、それをそのまま捨ててしまうのもなんだかもったいないな、こんなものでもお役立つご家庭があるのではないかなと思って、よろしければどうぞお使いくださいってサイトをつくって公開したのが「パパしゅく」の始まりでした。

小学生向け手作り問題集―パパしゅく

小川さんの場合は、ずっと娘さんの勉強を継続してみているからこそ、理解しているところやしていないところを把握することができ、それを補うためのコンテンツを探してくることができるんですね。このようなきめの細かいサポートは、親だからこそできることだと思います。そして、我が子の学習サポートをする楽しさを、もっと多くの人に知ってもらいたいということで「パパしゅく」で自作問題を公開するようになったという流れも素晴らしいですね。

これまでは、学習サポートと言えばTeachingしかなかったわけですけど、今は、動画などを使うことで、Coachingとキュレーションによって学習サポートができるわけです。これなら、仕事が忙しいお父さんでもできるし、お父さんの社会経験や情報収集力も生かせるんですね。

「パパしゅく」のタイムスケジュール

お仕事をしていて、そんなに時間がないと思いますが、「パパしゅく」は、どのようにしているんですか?

パパしゅくの問題自体は、印刷のたびに新しい問題が作成されるように工夫しているので、さっと印刷して使えるようになっているんですね。
つくる手作り問題も、計算練習が中心ですから、小学校では高度な計算なんてするわけではなく、足し算、引き算、掛け算、割り算が主ですから、表計算ソフト(Excel)で、かんたんなものを作る程度なので、これも時間はかかりませんでした。

パパの手作り問題がすべてではないんですよ、市販の問題集から、学校で習っている単元の部分を抜いて1日の分をセットしてファイルにしておいておくんです。これは、10日分くらい休みの日なんかにまとめてやっています。

仕事で遅くなるときもあるし、娘が家庭学習をしている時間に間に合うときもあるんですけど、パパはその丸付けをするという感じでやっています。
早く帰れた時に、娘の横に座って学習する様子を見ると、娘は煙たがりますけどね(笑)

時間帯は、夕食後、だいたい7時から9時くらいの2時間くらいをやっていますね。

市販の問題集は、断裁してスキャナで電子化したものを印刷して使っています。
いわゆる自炊ってやつですが、理解が充分でない単元があれば、同じ問題を再度解かせるためにそうしています。

少しずつとはいえ、毎日家庭学習をしていますから、1つの単元で問題数が足りなくなることが多いので、アマゾンで何種類かの問題集を買っておいて、休みの日のときに自炊して、印刷して、単元ごとに分けておいて、そこから組み合わせて、1日分のパパしゅく、として娘には渡しています。

データ化するところが、ITの分野で働かれている方の発想の気がしますけどね。

娘の通っているのは私立の小学校なので、あまり教科書を使わず、学校独自のプリントを使っているんですけど、必ずしもシステム化が進んでいるわけではないようで、切り貼りしたものを原版にしているんでしょうね、それをコピーしているようなんですね。データ化しておけば楽なのにな、なんて思いますね。

家庭学習だと、弟や妹でもいないかぎり、1回しか使わないので、電子化するメリットはたまにもう一度学習させたいという場合のためだけなのですが、学校では毎年使うのですからそんな工夫をすれば先生の作業だった楽になるのになって思ったりしますね。
改廃だって楽でしょうにね。

予備校講師をやっていたとき、解答プリントをスキャナで読み込んでデータベース化することで、労力が大幅に減って、ようやくプラスアルファの仕事ができるようになったんですよ。

算数は単元ごとに準備していますが、国語の家庭学習は市販の問題集が中心ですね、長文読解を1日一題するようにしています。漢字練習は、ネットで無料の練習用のプリントがあるので、娘の学年用の漢字練習プリントダウンロードして使っています。

ミックスするのは必要かもしれませんね。

娘はいま小学生ですが、私立の学校に入学したので、受験をしているんですよね。いわゆる「お受験」というやつですね。お受験の準備というのは、3歳から4歳くらいから始めるんですよ。わたしはその頃仕事が忙しかったので、妻にまかせっきりでしたけどね、娘はそのころから、毎日、家庭学習をしていましたので、それが、娘の当たり前になっているんです。「パパとママは会社にいってお仕事をしているよね。君のお仕事はパパしゅくをすることだよ。」って言っているので、家庭学習をするのが当たり前になっているんですね。だから、病気で熱でも出さないかぎり、しないという日はないですね。
なんだか、こんな話をすると、もうれつに勉強していて、さぞや成績も優秀だろうなんて思われるかもしれませんけど、成績に関しては全然そんなことは無いですね。
学習の内容をきちんと理解していれば、かならずしも100点である必要はないよって思っていて、お友達でわからない子がいて、君がわかることがあれば、教えてあげてね、そんなことが最も大切な事だよって言っているから、成績はクラスで中の上って程度です。

小川さんのお話をうかがって、仕事を通して身につけた「効率的な作業手順を見つける」という思考が、随所に見受けられました。今は、Scansnapのような安価で便利なドキュメントスキャナがあるので、本1冊をまるごとデータ化してしまうことは簡単です。これを休日にやっておけば、空いている時間を使って問題を選んでプリントアウトしておくことができます。ちょっとしたことのように見えますが、データ化することで、モノを持ち歩かずに済み、空いた時間を子供のサポートに使えるようになるんですね。

習慣化すれば、勉強するの当たり前になる

毎日2時間の勉強時間というのは、お子さんにとってはずっと続けているから当たり前という感覚になっているんですよね。以外と子供にとっては負担感はないですよね。ご飯食べるのとかと同じ日常のルーチンに入っているので。

通学が電車で片道1時間くらいかかるので、4時半くらいに帰ってくるんですよ。それで、二世帯住宅なんですが、おばあちゃんのところに行って夕食を食べてすこしのかんのんびりして。そうこうしていると、学校の宿題とパパしゅくをやりはじめて、9時ころまでに終わる感じです。その他に、ピアノやスイミングスクール、なんかにも楽しそうに通ってます、それでも自宅学習の時間は毎日2時間くらいは取れますね。

小川さんが宿題の丸付けをするんですか?

帰宅が間に合えば、私が丸付けしています。そうでなければ、子どもに自分で丸付けをお願いしています。理解の程度によってはフォローが必要なものは私が丸つけするようにしています。たとえば、国語の長文読解とか、算数は、あっこれ理解していないな、なんていうのは、回答をみるとわかりますから、フォローのためにも、私がチェックをしています。

自分で丸付けしてね、と娘にお願いしているのは、計算問題とか、都道府県の形を見て名前を書く問題とか、すでに覚えていて、定着のために反復練習しているようなものですね。

最近は、わたしがこれは娘に見せると良いなと思う、動画授業があると、手書きで
たとえば、
「ふるやまん先生のxxx授業動画を見てね」

なんて書いて、「よく分かりました」というチェックボックスを作って、動画をみたら娘にチェックをさせるなんてことをしています。
帰宅後や、翌日、どうだった?よくわかった?なんて会話しながら理解を確かめたりしています。いま娘が学んでいる単元や、すでに学び終えた単元でも、なるほど、この説明はよく分かるななんて思ったもので、娘に観させるとよいな、ためになるなと思うような動画があれば、それを観させるという感じですね。

動画を選ぶときの基準は、長すぎないものにしています。10分を超えるものは娘には集中するのが難しいだろうなと思って、短いものを選ぶようにしていますね。

お子さんが、すごく興味を持つというような、食いつくものというのは何かありますか? 

性格でしょうか、あまりそういうのがないんですよね。自分専用のiPadを持たせているので、動画授業を見たついでに、なんだかお勉強には関係のないものを見ているようですけど、それは楽しいみたいですね。アニメ動画なんかも見ているみたいですけど、やることやっていればどうぞお好きにということにしています。

家内はネット動画ということを少し気になるみたいですね。何を見ているか分からないからコンテンツフィルターをかけたほうが良いと言ったりしているんですけど、いつまでも親が制限できるものでなないので、娘には危険性だけ教えて、あとは本人に任せています。

興味あるのは、Youtubeのアニメ動画のようですね。
ゲームはあまり興味がないみたいですね。

習慣になっているから勉強をするのが当たり前というのももちろんありますが、勉強の時間が、親子の交流の時間になっているというのが、子どものモチベーションを上げることに大きな役割を果たしていると思いました。

英語とプログラミングを学ばせたい

学校の勉強の外に、中学生になったら、こんなことを勉強してほしいなという見通しはありますか?

会社の同僚と、今の子供達が社会に出たそのときは、きっとそうなっているだろうねとよく話していることがありますね。

きっと、その頃は、日本人とだけで仕事をしているなんて事はなく、世界中の優秀な人達と一緒に仕事をしているだろうねって。仕事をする場所だって日本かどうかも分からないねなんて話をしています。たまたま私の会社は、インドのIT会社の資本が入って、最近はオフィスにインドの人がどんどん増えているんです。

娘が社会にでるときは、付加価値の高い仕事がますます重要になっている、まっていてもお仕事は何もない、自分で課題を見つけて、問題を解決してゆくことが大事になるだろうなって思います。
そんな環境には、英語はコミュニケーションの手段として必須だろうなということも強く感じています。

それと、私は、ITの仕事をしているということもありますが、子供たちには、プログラミングの勉強してほしいなと思いますね。

30年ほど前は汎用機と呼ばれる大きなコンピューターに端末がつながっていたものがコンピュータシステムだったのでとても単純だったのですが、今のコンピュータシステムってインターネットでコンピューターどうしがつながっている、そのインターネット全てがコンピューターシステムって言えるわけですね。そのような環境での技術ってはどんどん専門分化しているのですね。だから、コンピュータシステム全体が分かる人なんていない、とても複雑になったなって感じているんです。でも、そんな複雑なコンピュータシステムも突き詰めてゆくと、プログラムに行き着くんですね、だから、初等教育の一部としてプログラミングを学ばせたたらいいなと思っています。でも、学校の教育現場では、まだそんなレベルではないんですよね。「情報」という授業はあるようですけど、娘に聞いてみると、たとえば、ワープロでカレンダー作るといった程度なんですね。せっかく最新のコンピューターが整然と置いてある教室があるのに、教えられる先生がいないからなんでしょうかね、プログラミングを学ぶことに使われないのは、とてももったいないと思いますね。

イギリスでは、コードを小学校で全員学ぶことになったんですよね。でも、日本だとそういう状況ではないですよね。

eboardの代表の中村さんとお話したときに、eboardは外部に委託して開発しているんですか、それともITに詳しい方が担当しているんですか、と聞いたら、全部自分で作っていると話されていてびっくりしたことがあるんですね。

中村さんは、システム開発に携わるお仕事をされてたそうで、なるほどと思いました。

その話のなかで特に印象的だったのは、いろいろな社会貢献の取り組みをしている人達と会う機会があって、素晴らしいと思えるアイディアを持っている人にも会うけれど、そのアイディアはITを活用すれば実現できるのになと思うことがよくあるのですが、その方は実現の手段を知らないためにできない、ずいぶんともったいないことだなと思うことがよくあると。

私はシステム開発の仕事をしていたので、アイディアをITを使って実現する手段はよくわかります。それがお仕事でしたので当然のことなのですが、そのような話を聞くと、たしかに手段がわからなければ、いくら良いアイディアがあっても実現できないことがあるなと改めて思ったわけですね。
ITがあれば、アイディアすべてを実現できるということではありませんが、今はITって大きなポテンシャルがありますよね。

子どもたちがいずれ社会に出て、なにか新しいことを始めようとしたときに、それを実現するための手段の一つとして、プログラグラムの事は知っておいてほしいなと思うのです。

僕は理工学部出身なんですけど、大学院まで理論物理をやってきて、科学計算のプログラムをフォートランで組んだりはしていましたけど、実際にモノを作った経験をほとんどせずに来てしまったんですよね。

物理を勉強してきて、テストで点数は取れるし、点数を取らせる方法も分かるから予備校で物理を教えることもできるんですけど、でも、自宅の配電盤を開けていじれと言われたらいじれないし、勉強してきたサイエンスの知識と現実の世界とがもっとリンクしたほうがいいんじゃないかなと感じているんです。

だから、子どもには、もうちょっと現実とリンクさせた形で学ばせたいなと思っていて、Maker Spaceみたいなところに一緒に行って、はんだ付けしたり、電子工作とかを、親子でやろうと思っているんですよ。  

私は、たまたま、ソフトウェアですけど、ものを作る仕事をしてきたので、ソフトウェアによる実現手段とかはわかるのですけど、その次というのは、ハードウェアも含めてソフトウェアかなという気がしますね。ベンチャーで面白いことをやり始めているところって、ソフトウェアだけでなくハードウェアも一緒にやっていますよね。アップルのスティーブジョブスなんてハードウェアもソフトウェアも一緒にデザインしていましたしね。

娘には、自分ができることから仕事から選ぶのではなく、自分がしたいことを仕事にできるようにさせてあげたい、そうさせてあげるのが親のつとめかなと思っています。

この間、サイエンスフェアに行ったときに、3Dプリンターで部品をプリントアウトして、組み立てるプロジェクトを紹介していたんですね。面白いものがたくさん出てきていますよね。個人レベルで面白いものができるんだということが分かって、商品を見たときに、どうやって作ったらいいのかイメージできるのと、消費者マインドで見るのとでは違ってくると思うんですよね。世界の見え方、かかわり方が。自分で何かを作って解決していくという世界観を子供とシェアしたいですね。

ソフトウェアの仕事をしていた立場から、今の日本を見ると、もったいないなと思うのは、日本人ってハードウェアはとても上手に作るのに、ソフトウェアが上手じゃないなと思うんですよね。

ハードウェアを動かすためにプログラミングする。自分が意図したとおりに、自分が作ったハードウェアが動いてくれるという経験をするというのは、ハードウェアづくりが上手な日本人にとって、これからとっても大切なんじゃないかなと思いますね。

日本はモノづくりが強いと言われていますけど、理系に進んでも、高校までにモノづくりの経験を学校でしないし、大学でも工学部に行かない限りは、モノづくりに触れないまま、大学卒業してしまったりするんですよね。

確かに、ハードウェアを作るという経験は、高校までにないですよね。大学に行って専門になればあるのかもしれませんけど。プログラミングも体系化されたものはないですね。IT企業の研修なんかには結構体系化されて良いものがあるので、そういうものが学校に入ってってもいいんじゃないかなと思うんですけどね。

これも反転授業の研究で知ったのですが、

米系のIT企業の日本法人が、高校生にシステム開発の講座を反転授業形式で行うという取り組み。「ウチの会社もこういうのいいんじゃないの?」って、CSR(企業の社会的責任)の担当者に伝えたんですよ。

そういう取り組みからでもいいから、学校の中にコンピューターの教育が入っていくといいなと思いますね。

去年、奈良女子大付属高校のサイエンス研究会とシンガポールの高校の情報のクラスを試しに繋いでみたんです。一緒にPythonでgoogleのアプリを作るというプロジェクトをやっていたんです。プログラミング教育を学校として力を入れているのはシンガポールのほうが進んでいるんですが、サイエンス研究会の生徒たちはかなりマニアな人が揃っているので、レベルも揃っていたみたいで、よかったみたいなんです。英語でのコミュニケーションも、間にプログラミングが入ることでスムーズになるみたいなんですよね。これは、いろいろ可能性がありそうだと思いました。

そうですか、まさに、私がいま置かれている環境も、そんな感じなんですよね。

インドの技術者たちといっしょになって1つのことを実現しなくちゃいけないということになると、英語は共通語としてとても重要ではありますが、いろいろあるコミュニケーションの手段のひとつなんだなって感じます。

目的が共有できれば、重要なのは、それを実現する新しいアイディアだったり、課題解決の力だったりします。

たとえば学校教育の英語って、どうしてもそれが目的になってしまうのは仕方がないことかもしれませんが、英語って目的でなく、手段なんだよねっていうことが伝えられる良い試みですね。

そんな風にえらそうに言ってますけど、不自由な英語が自由に操れるようになりたいってただいま必死にお勉強中なんですけどね(笑)。

その場合でいうと、プログラムができるということがゴールだから、英語は手段に過ぎなくて、いろんなことをあれこれしゃべってプログラムができればいいんですよね。そういう体験があると、語学に対するとらえ方が変わってきそうですよね。

最初に経験があって、あとで文法とかが分かってもいい気がします。最初は、どうしてもそれに縛られて萎縮しちゃいますよね。

ある共通の目的のために一緒にやるということがあって、言語の壁があるときには、それは、壁ではなくなるのかもしれないですね。いい経験ですよね。

あと、そういう経験ができるのはITがあるからだと思うんですよね。

うちの会社もオフィスツールを新しいものに変えたんですよ。そうすると、1つの文書を複数の人で作成することができる環境になったんですね。

今までだったら、バージョン管理しながら、ある程度の品質までつくりあげた文書を人に渡す、という仕事のしかただったのですが、、環境がわかることによって仕事のしかたも変わってくるんですね。

関係者がバソコンを持参して集まって、ああでもないこうでもないと言いながら1つの文書に皆が書き込んでゆく、1つのものを話をしながら作っていくco-workのスタイルになってくるんですよね。

ITを介して人と人がリアルタイムにつながってゆく、田原さんがシンガポールと日本をつないでプログラムをつくりあげたように、物理的な距離も超えて、海外の人とも co-workできるんですよね。

そういうことは、どんどんできてくるかなと感じていますね。

最近古山さんが動画授業を作って公開されると、それに合わせた問題を作って公開したりしているんです。

古山さんは大阪で、私は東京と、距離を超えてコラボレーションできるのは楽しいなと思います。今までだったら、大阪の古山先生の授業を受けるなどということは、うちの娘からすると生涯経験できなかったことだなって思ったりしますね。ITの良さですね。

仕事をバリバリしている親が家庭学習に関わるメリットの一つは、仕事を通して感じている時代感覚を、家庭学習に反映できる点なのではないかと思います。小川さんがインド資本のIT系の会社でされているような仕事の形態は、今後、どんどん広がっていくようなものだと思います。それを肌で感じながら、子どもの将来を考えて、必要なスキルを身につけさせていくということは、工夫次第でできることなんですね。その可能性を、小川さんがまさに切り開いているのだと思います。

インターネットを使って学ぶメリット

旧来の学び方に比べて、インターネットを使うメリットをどのようなときに感じますか?

同僚とよく話をするのは、インターネットができてから、知的なレベルはすごく上がったね、ということです。

今まで知りえなかった情報にリーチできたり、知らなかった価値観に触れられたりとか、知的なレベルがそれ以前に比べて圧倒的に上がっている気がします。

一時流行りましたよね、娘には調べた言葉を書き込んだ付箋を貼る「辞書引き学習」をさせているんですけど、最近は、少し躊躇しているんです。紙の辞書を引くことの意味とネットでの検索との違いはどうなのかということを考え始めて、答えが出せていないんです。

いままでは、娘が持っている小学生向けの辞書引いて、載っていなかったら、パパの辞書(広辞苑)をパパが引いてあげて説明するということをしていたのですが、最近はGoogle先生に聞きなさいって言っています。

インターネットの中にある情報って、質の高いものも低いもの玉石混淆ですよね、子どもって意外と賢くて、これは胡散臭いとか、これは信頼してよさそう、というのをちゃんと見極めるんですね、正しくない情報を真に受けるのではと心配するほど子供って愚かではないなって娘の様子をみて感じています。

実践を通して、情報リタラシーの力もついてきますよね。

娘が小学校2年生くらいのときに、学校の国語の宿題プリントに「雲海」という言葉が出てきたのですが、娘はわからず「これ何?」って聞いてきたものだから、例のごとくまずは辞書で調べなさいって言おうとしたんですけど、雲海を辞書調べて説明を読んでも見たこともない雲海は理解できないだろうなと思ったんですよ。

iPadで画像検索をしてごらんと言ったら、山の上から雲を見下ろしている写真が出てきたんですね。

それで、下からみると山に雲がかかっている時があるよね、でも頂上は顔をのぞかせている山ね。もしも、その頂上から下を見たら曇ってこういう風に見えるよね。これって、海みたいに見えない?

と言ったら、「あー!」と言って、言葉とイメージがつながったみたいなんですね。
いっぺんに漢字も覚えちゃいましたね。

そんなことをきっかけに、動画検索もするようになったんですよ。

やはり国語の宿題プリントに「こけし」の話が出てきたんですけど「どうやって作るか知ってる」なんて話になって「回っているろくろにつなげたこけしに、筆で書くんだよ」と説明してもピンと来ないので、youtubeで見たんですね、百聞は一見にしかずってやつですね、もちろんよくわかって面白いねーなんて話をしたんですね。
経験にまさるものは無いって言いますけど、それはそうだって思いますけど、そう簡単に山の頂上に行けるわけでもないし、そのとき幸運にも雲がかかるかなんてわからない、こけし作りの工房をちょっとお邪魔しますというわけにもいかない、インターネットがあっから理解ができたことだと思いますね。

インターネットの発展により、今までは不可能だったことが、いつの間にか可能になって来ています。その中の一つが、「フルタイムで働く親による家庭学習サポート」だということを、小川さんの事例は体現しています。

親子でいっしょに学ぶメリットはとても大きいです。

親が一生懸命学ぶ姿を見て、子どもは主体的に学ぶ姿勢を身につけるのです。

困ったら、助けてもらえる安心感があるから、頑張れるのです。

さらに、それは、親の社会経験を、子どもに伝える貴重な場でもあります。

小川さんの挑戦は、子どもの勉強をサポートしたいけれど、忙しいから無理だとあきらめていたお父さん、お母さんに、希望を与えるものかもしれません。

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