反転ワールドカフェ「反転授業はどのような教育の未来を切り開くのか?」

教育の未来を考えるリアルとオンラインを結んだワールドカフェ

インターネット元年といわれた1995年から22年が経ち、世界は大きく変化してきました。

世界中がネットワークで繋がったことで、遠く離れた地域が、相互に強く関連しあうようになり、地球全体が、あたかも1つの生命体のようになりつつあります。インターネット上に知識が蓄積され、誰もが無料で様々な知識にアクセスできるようになってきました。人工知能の開発も進み、今後は、様々な分野で導入されることでしょう。

このような社会の大きな変化に直面し、教育も大きな変革の時期を迎えています。

これまでの成功マニュアルを子どもたちに伝えても、それらは、子どもたちの助けになるとは限らない状況の中、新しい教育が求められているのです。

反転授業は、未来の教育を担う手法の一つとして期待されています。

反転授業によって、どのような教育の未来が切り開かれるのか、ワールドカフェと呼ばれる対話手法を用いて、ともに探究していきます。

リアルとオンラインとを結ぶワールドカフェの進め方

ワールドカフェは、4-5名のグループに分かれて行う対話をメンバーを交代しながら数ラウンド行うものです。今回は、2名がインスピレーショントークを行った後、東京会場とオンラインとで、それぞれグループに分かれて、2ラウンドの対話を行います。

使用言語は英語と日本語です。会場には通訳がつきます。オンラインの対話には、世界中の教育関係者が参加する予定です。英語で対話するグループと、日本語で対話するグループに分かれ、どちらかを希望して参加することができます。

インスピレーショントークを行うのは、次の2人です。

ジョナサン・バーグマン(オンラインで参加)

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FLGI(Flipped Learning Global Initiative)代表。反転授業ムーブメントを牽引するリーダーの1人。24年間、シカゴの中学、高校で化学を教えた経験を持ち、その実践の中から反転授業が生まれた。著書『反転授業』は10カ国語に翻訳される。現在は、世界中を飛び回り、各国の政府や学校、企業、NPOなどと連携して反転授業の普及に尽力している。

田原真人(東京会場で参加)

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「反転授業の研究」代表。FLGI Ambassador。IAF Japan(国際ファシリテーターズ協会 日本支部)理事。2013年から物理の反転授業に取り組むと同時に、実践者のためのオンラインコミュニティの運営を始める。9月に『Zoomオンライン革命』を出版予定。

お申し込み

日時 2017年8月26日 AM10:00-12:00

場所 会場参加 武蔵野大学有明キャンパス 未来の先生展2017会場

会場参加のお申し込みはこちら

オンライン参加 Web会議室 Zoom

(ビデオ通話の準備が必要となります。スマホやタブレットからでも参加可能)

オンライン参加の申し込みはこちら(無料)

 

「世界と繋がりながら語り合うハイブリッド・ワークショップ」を終えて

「反転授業の研究」の田原真人です。

11月22日に、花巻北高校と世界をZoomで結ぶハイブリッド・ワークショップを行いました。

ハイブリッド・ワークショップというのは、リアルでグループ対話とオンラインのグループ対話を同時に行うものです。

参考記事:Zoomを使ったハイブリッドファシリテーションの可能性

3人の方のインスピレーショントークを聴き、リアル会場とオンライン会場とで同時に3ラウンドのワールドカフェを行いました。

このようなハイブリッドワークショップは、世界でも、まだ事例の少ない最新の取り組みです。その効果を記すことで、後に続く取り組みが出てくることを期待します。

ハイブリッド・ワークショップは3人のファシリテーターの連携が大切

ハイブリッド・ワークショップでは、リアル側のファシリテータ-と、Zoom側のファシリテーター、そして、リアルとオンラインとを繋ぐコネクターの3つの役割が必要となります。

今回は、

リアル側のファシリテーター : 筒井洋一さん

Zoom側のファシリテーター : 田原真人

コネクター : 松嶋渉さん

という役割分担で行いました。

リアル側のファシリテーターの筒井さんが、会場にたいへん和やかな雰囲気を作って下さり、対話が活発に起こっていました。

田原は、Zoom側のファシリテーターとして、音声のミュート管理や、グループワークの設定などを行いました。

3つの役割の中で最も難しい役割がコネクターです。リアルで起こっていることに気を配りながら、オンライン側で起こっていることをイメージし、音声の調整や、ビューの切り替えなどをやっていかなくてはならないため、リアルとオンラインの場創りの豊富な経験が必要となるからです。松嶋さんは、今回のワークショップに備えて、リモートワークジャーニー@萩でハイブリッド・ワークショップを開催し、そこで、リアル側のファシリテーター兼コネクターを体験した上で、万全の準備で今回のワークショップへ臨みました。

参考記事:リモートワークジャーニー@萩でハイブリッド・ワールドカフェ

花巻北高校の会場には60名、オンライン会場には25名が集まり、ハイブリッド・ワークショップとしては大規模なものになりましたが、非常にスムーズに運営することができました。

インスピレーショントークがスタート

主催者の下町壽男さん(花巻北高校校長)が挨拶を行い

このワークショップの軸は、「未来を切り開く子どもたちを創るために、我々は何ができるか」です。

今までは、社会のために、世界のために、子どもがあると考えられてきましたが、それを反転させて、子どものために、社会や世界はどうあるべきかという議論ができれば良いと思います。

と述べ、ワークショップがスタートしました。

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その後、リアル側のファシリテーターの筒井洋一さんが自己紹介を行い、

今日の隠れたテーマは、「●●を越えるということを一緒に体験する」ということです。

1つめは、年代や経験を越えるということ。

2つめは、組織や日頃の常識を越えるということ。

と述べました。

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最後に、Zoom側のファシリテーターの田原真人が自己紹介を行いました。

動画コンテンツが無料で見られる時代における教師の価値は何だろうか?

生徒が、お互いが異なる視点を持つことに気づき、それを共有することで理解の幅を広げていくことができることに気づけば、場に対する価値を感じることができます。

今日は、日本国内、国外からの多様な視点を共有し、学び会う場を共に体験していきましょう。

と、話をさせていただきました。
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その後、Zoomで参加されている方を会場に紹介しました。

ニューヨーク、ニュージーランド、シンガポール、韓国、福岡、長崎、島根、広島、大阪、兵庫、奈良、三重、東京、宮城・・・など、国内、国外から20名の方が参加して下さいました。

最初のインスピレーショントークは、サマンサさん。

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10年間、子どもを強烈にコントロールする毒親だったと言うサマンサさんが、「ありのままを完璧と受け入れる=あり完」へとマインドシフトした結果、子どもがアクティブマインドへ急激に変化していったという体験に、リアル会場もオンライン会場も引き込まれました。

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続いて、花巻北高校2年生のプレゼンが始まりました。遠野から花巻北高校まで1時間半かけて通っているという彼は、「魅力ある遠野の教育へ」というタイトルでお話をしてくれました。

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彼は、地域の魅力や課題を発見するためには自ら体験して学ぶことが重要だが、教師が地域の体験が少ないために十分な総合学習を行うことができないのではないかと述べました。そして考え出した解決策は、次のようなものでした。

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このアイディアについて遠野高校の中学校3校の教員に対してアンケートをとったところ、「斬新なアイディアである」という声が多かった一方で、「プログラムの内容が分からず回答できない」と、先行きの不透明さを指摘する声も多く聞こえたとのことでした。これを受けて、Zoom側のチャットボックスには、次のような意見が飛び交いました。

大人が今どのようなことを学んでいると言えるのでしょうか?そして、それが子供の教育とどう違うのでしょうか?
不透明だからおもしろいのに
先生が言いそうなことだわ
答えの有無もあるのかなぁ
不透明だからこそやろう!って先生を説き伏せて欲しい。
先生というのは、予定調和がすきなので
そうですよねー 不透明ほど尊いものないのに
失敗を恐れていますよね。それが教員のマインドセットであり、メンタルブロックになっているのかも。
ほんとうです。
岩手は県内でも広いから、中学高校だとその地域知らない、って新任の先生多いでしょうね~。
失敗させない 正解主義は 結構 日本で支配的なのです
先生が失敗を恐れてたら、子どもにもそれが感染します
どんな結果になっても、これが実現するだけですごいことなのに。。
まったく同感です。
考えさせられるプレゼンだなー

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予定では、この後、松嶋渉さんのインスピレーショントークの予定でしたが、松嶋さんの直感により、流れを切りたくないということで、ワールドカフェのラウンド1を先にやることになりました。

ハイブリッド・ワールドカフェ

リアル会場では4人組、オンライン会場では3-4人組に分かれ、ワールドカフェが始まりました。

リアル会場では、「えんたくん」という円形の段ボールに紙を貼ったものが用意され、4人の膝の上に載せてテーブル代わりに使いながらグループ対話を行いました。

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オンライン会場では、Zoomのブレークアウトセッション機能を用いて行いました。

ラウンド1の問いは、次のようなものでした。

問1)子どものアクティブさを引き出すために、あなたはどのような関わり方をしたいですか?

15分の対話の後、リアル会場から2名、オンライン会場から2名が感想を共有しました。

仙台の名越さん:「子どもたちのタイプを理解してから、コミュニケーションで後押しをするという意見と、そもそも何をやりたいかが分からないような子をアクティブにするにはどうしたらよいかという意見とが出て、話が噛み合いませんでした(笑)。そういう子たちと共に歩む方法を考えるためにはどうするかということで話がまとまりかけたところで終わりました。」

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2番目のグループ:「びびっときたという体験をどのようにさせるのか。そのために必要なのは「あり完」。体験させたことが花を開かせるのを待つことが大人には大切。だから、教師は、「びびっとくる」素材を提供することが大事だと思います。」

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ニューヨークの森田さん:「合気道や瞑想をやっている人から「あり完」になるためには、自分の感情をありのままに感じられるようになる必要があり、リラックスしていなければならないという話が出ました。子どもがロールモデルに出会う事も大事ですが、大人が自分自身と向き合って、自分自身を受け入れられるようになることが大事だという話でした。」

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ニュージーランドの荻野さん:「ニュージーランドの親は、デフォルトが「あり完」なので、教員がそれをコントロールしようとすると大変です。コントロールするのではなく、それぞれを伸ばしていくのが教員の役割になります。日本の教育の在り方、社会の在り方の枠が、大きな問題になるのかなと思います。どこにボーダーがあるのか、壁があるのかというのが、日本には分かりにくくて、その壁に穴を開けることが難しいことだと感じました。

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松嶋さんのインスピレーショントーク

その後、リアル会場とオンライン会場の両方とも、グループメンバーのシャッフルを行い、3人目のスピーカーである松嶋さんのトーク「地域×学校×ICT」が始まりました。

情報の授業を、ICTを活用して地域と結びつけていく松嶋さんの授業は、様々なところで注目されています。その一方で、「それは、松嶋先生だからできる授業ですね。」「その授業は、趣味ではないか」と言われているのだそうです。それに対して、「生徒のために・・」というのは、もしかしたら生徒依存であり、「趣味です」と言ってしまって良いのではないかと思っているとおっしゃっていました。

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ワールドカフェ第2、第3ラウンド

ワールドカフェの第2ラウンドの問いは、次のようなものでした。

問2)組織を超える学びをどのように可能にしていきますか?そこにオンラインはどのような役割を果たしますか?

15分程度のグループ対話を行い、次のような声が出てきました。

1グループ目:「子どもたちを見ているということが大事なのではないか。主役が子どもたちであるということを忘れずにいれば、私たち大人、組織がみんなで協力できるのではないか。学校だと、「子どもたち」というように複数になり、1人のときと見る目が変わるが、主役を忘れずにいれば、連携がうまくいくのではないかという話になりました。」

福岡の和田さん:「学校の先生って保守的で、組織を越えて繋がることに対して、最初はとても怖がっていると思います。でも、花巻北に集まっている先生方が、Zoomで簡単に繋がれるんだという体験をまずはやってみるということが大事なんじゃないか。オンラインに来てねというよりは、こうやって押しかける。あちこちにこうやって押しかけていけば、体験してくれた人たちの間にどんどん広がっていくのではないかな。そういう「オンライン黒船襲撃」というのを考えました。」

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再び、グループメンバーを交代し、最後の問いについて考えました。最後の問いは次の通りです。

問3)未来からの使者である生徒の将来をどのように創っていきますか?

13分間のグループ対話の後、リアルとオンラインからの声を共有しました。

1番目のグループ:「渦は自分たちで創っていくものであり、私たちは生き様を見せていけば良いのだ。」

ロナさん(高2):「私は、担任の先生が大嫌いです。その理由は、「仕事は思い通りにならない。仕事は楽しくないよ。楽しくないのが仕事なんだからしょうがない。」といつも言っているからです。私の周りには、その影響を受けている生徒もいます。そういう大人からガードしてくれる大人のサポートが子どもの未来に繋がっていくのかなと思っています。」

島根から八坂さん:「私が子どもだった頃は、突出して何かができているけど、ダメダメなところもあるという大人がたくさんいたんですが、今は、すべてができなくてはいけないという育て方になっている気がしています。1つでも得意なことがあれば見えてくるものがあると思うので、バランスの取れた大人に育てようとしなくても良いのではないかと思います。」

シンガポールから若林さん:「昔だったら誰もが分かるようなはっきりしたレールが敷かれていて、誰もが同じ方向に進んでいけば良い将来があったが、今はそんな時代ではない。私たちのグループでは、いろんな選択肢があって、しつけをしたり、背中を見せてガイドするのが大人の役割になるのではないか。全くの放任だとうまくいかないかもしれない。例えば、甘いものを食べすぎてはいけないというしつけがあって、食べたらどうなるという問いかけをして選択肢を示してガイドするというのが大人の役割になるのではないかという意見が出ていました。」

ハイブリッド・ワークショップを終えて

今回のような、多様な視点から、お互いに学び合っていくような場を約80名のみなさんが体験したということに大きな価値があると思いました。

このワークショップが実現できた背景には、ICT技術の進歩と同時に、この3年間でお互いに育んできた信頼関係のネットワークがあります。

ワークショップが終わってから、多くの縁のありがたさをしみじみと感じました。

同時に、今回のワークショップでの出会いから多くの創造のサイクルが回っていくはずだという確信を持ちました。

「オンライン黒船襲撃」を、今後もあちこちで展開し、組織を越えた繋がりによって、お互いのメンタルモデルに変容を起こしながら未来を創り出していければと思っています。

みなさん、楽しみながら、共にやっていきましょう!

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【CCC×反転G】50人のオンラインの学びの旅がスタート!

オンライン教育プロデューサーの田原真人です。

オンラインで簡単にグループワークができたら、世界はどんな風に変わるだろうか?

そんなことを2年前から妄想し、Webシステムの開発に取り組んだり、既存のツールを組み合わせてみたり、いろんなことを試してみました。

そうこうしているうちにテクノロジーが進歩し、ZoomというWeb会議室システムを使って、僕が思い描いていたワークを実現できるようになりました。

ちょっと大げさな言い方ですが、僕たちは、今、世界を変えることができる道具を手に入れました。

僕達は、2016年2月2日の夜に、住んでいる場所という制約を超えて、由佐美加子さんという日本有数のファシリテーターが創る場に集まり、グループに分かれてお互いに耳を傾け合いました。

Co-Creation Creators(CCC)と、反転授業の研究グループ(反転G)との間で、様々な縁が紡がれた結果、総勢50名がオンラインに集って学びあうという、前例のない学びの旅が始まりました。

全体性から生きるAuthentic Leadership 基礎特別編

ここに参画してくださったすべての方に感謝しつつ、今起こっていることを書き留めておきたいと思います。

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それは、1つのセミナー動画から始まった

2015年5月、反転Gでおなじみの福島毅さんからFacebookにメッセージが届きました。

「この動画、絶対に見て。これは、すごい動画だから。見たら感想を教えてください。」

送られてきたのはYoutubeにアップされている3時間ほどあるセミナー動画のURLでした。

この動画の中で、CCCの由佐美加子さんは、怖れに対する反応が、いかにして人々の間に分断を生み出すのかということを、鋭くえぐりだしています。

リーダーが「これが正しい」という情報を発信すると、「正しい/間違っている」という二項対立に陥り、多くの人に怖れの反応を引き起こし、分断が生まれていく。

これを回避するために、由佐さんは、「信じていることを純化させて、祈りとして発信する」「美に触れると元気になる」と語ります。

由佐さんの動画を見て、今までどうやって乗り越えていったらよいのか分からなかった溝を乗り越える道が見え、光が差したような感覚がありました。

そして、興奮して、感じたことをブログに書きました。

信じていることを純化させて祈りとして解き放つ

由佐さんの動画は、それ自体が、まさに”祈り”としてインターネット上に解き放たれ、反転授業の研究の人たちの心にも変化を引き起こしていきました。

2つの波がシンクロしてオンライン講座が生まれた

反転授業の研究では、主体的な学びをどのように起こしていくのかがテーマになっています。

教室では、教師は、生徒が自ら動きやすくなる環境を作り、生徒から出てきた主体的な動きにフィードバックをかけて増幅していき、主体的な活動を引き出していくことを目指します。

それじゃあ、教師同士の学び合いも、主体的な学びにしていこうということで、参加型のオンライン講座をやっています。

受講者で参加した人が、運営ボランティアになり、運営になり、講師になり・・というような循環が起こり、参加形式を様々に変化させながら学の場が、繰り返し創造されています。

その学び合いを通してオンライン講座運営の集合知が生まれ、オンラインでありながら、心が通い合う場が、毎回生まれるようになってきました。この運営ノウハウと運営スタッフを外に出していき、組織の枠組を超えた学びを創造しながら、更なる循環を起こしていきたいと考え始めたのが、2015年10月頃でした。

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ちょうどその頃、CCCの皆さんもオンラインワークショップの可能性に関心を向けはじめていて、お互いのタイミングが絶妙なタイミングでシンクロし、コラボレーションによってオンライン講座を開催することになりました。

受講生から運営ボランティア、運営という形で参画してくる文化を持つ反転授業の研究に対し、CCCもファシリテーター養成コースの修了生が活動に参画してくる文化を持っていて、それぞれのコミュニティが大事にしていることの間にもシンクロがありました。

CCCのファシリテーター養成コースの修了生が8名、反転Gの運営ボランティアが6名が運営チームに加わり、講師や運営と合わせて18名の運営チームが結成されました。

コラボレーションが決まってすぐ、CCCパートナーの藤本海さんが、僕に会いに来てくれて、その後、反転Gが主催するファシリテーション・コーチング講座を受講生として体験してくれました。

藤本さんが、CCCでやっている講座と、反転Gのオンライン講座のフレームとをすり合わせる役割を果たして下さり、いっしょに様々な部分の擦り合わせをしたり、検証をしたりしながら講座開催の日を迎えました。

Breakout Sessionを使ったグループワーク

今回、はじめて実現したのは、ZoomのBreakout Session機能を使ったグループワークです。

受講者32名を4人ずつの8チームに分け、各チームにメンターが一人ずつつき、5名からなる学習チームを作りました。

はじめに、それぞれがチームに分かれてチェックインを行いました。

ZoomのBreakout Sessionを使うと、これを1クリックで行うことができます。

ホストがBreakout Sessionをスタートすると、40名が各チームへと別れていきました。トラブルなくルームの移動が起こるために、何度も繰り返して検証作業をしていたので、全員が無事にルーム移動をしたときには、思わずガッツポーズをしていました。

 その後も、メインルームに50名全員が集まって話を共有し、また5人ずつ8チームに分かれるという動きを2度繰り返しました。すべてトラブルなくスムーズに移動でき、オンライングループワークの無限の可能性を感じました。

由佐さんの話が脳に直接響いてくる

セッションの途中で、由佐さんのレクチャーが1時間ほどありました。

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iPadからZoomにログインし、オンラインホワイトボードを共有し、そこに図や文字を書きながら、NVCの世界観について語ってくれました。

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今まで由佐さんのワークショップに出たことのある皆さんからは、

みーちゃん(由佐さん)の声が、脳に直接響いてくる。

一番近くの場所で聴いているみたいな臨場感がある。

という声が上がり、オンラインだからこそ話に集中しやすいという面もあるという気づきが生まれていました。

また、受講生が、話を聴きながら感じていることをチャットボックスに書き込み、由佐さんが、それを見ながら話をするというやり方を取ったのですが、話が相手にどんな風に響いているのかが分かり、話しやすかったというフィードバックが由佐さんからありました。

これだけの規模と内容のオンラインワーク講座は、前例のないものなので、みんなで未体験ゾーンに突入していますが、その第一歩を無事に通過することができ、ホッとしています。

そして、これからどんなことが起こっていくのかワクワクが止まりません。

次のレポートをお楽しみに!

『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』がついに発売!

田原です。こんにちは。
 
 
探究学舎代表の宝槻泰伸さんの書籍が、本日から発売になります。
 

「反転授業の研究」では、たくさんの出会いがあり、たくさんのコラボが生まれています。
 
 
この本にも、このグループでの出会いが関係しています。
 
 
反転授業の1つのテーマである「主体的な学び」を引き起こすために、生徒にどのようにして働きかければよいのか?
 
 
これを勉強会のテーマにしたいと思ったとき、真っ先に頭に浮かんだのが、探究学舎の宝槻さんのことでした。
 
 
宝槻さんがFacebookグループに参加され、自己紹介を投稿したときから、その活動に興味があり、HPを見て感想を送ったり、FBメッセージでやり取りしたりしていました。
 
 
それで、2014年4月23日に実施した第8回反転授業オンライン勉強会「探究型学習と学習意欲」で登壇していただくことにしました。

そのときのインタビュー記事はこちら

オンラインで交流しているうちに、一度、お会いしてみたくなり、東京、高円寺の喫茶店で会いました。
 
 
高円寺に現れた探究学舎の塾長、宝槻泰伸さんは、白いシャツを身にまとい、とても精悍な雰囲気の方でした。
 
 
早速、コーヒーを飲みながら、探究型学習について話し始めました。
 
 
僕が知りたかったのは、そもそもどうして宝槻さんが、探究型学習というものに目をつけたのかということでした。
 
 
宝槻さんが高校を中退して、NHKスペシャルや映画を見て勉強し、京都大学へ合格したという異色の経歴の持ち主だということを知っていたので、そこに探究型学習や学習意欲を理解するヒントがあると思ったのです。

一方、宝槻さんは、探究型学習のノウハウをどうやって広めていこうか試行錯誤している状態でした。
 
 
Webを使って10年以上ネット予備校を運営し、反転授業のFacebookグループを大きくしてきた経験が、もしかしたら宝槻さんに役立つかもしれないと思いました。
 

宝槻さんとの会話は、とてもエキサイティングで、コーヒーを飲むのを忘れるほど熱中しました。
 
 
僕の質問

「宝槻さんや、2人の弟さんが、高校へ行かずに、探究型の学習をして、3人とも京都大学に合格したというところに、大きなヒントがあると思うんですが、それは、どういうことだったんですか?」
 
宝槻さん

「実は、それには秘密があって・・・ウチには強烈なオヤジがいて・・」
 
 
それは、驚くべき内容でした。
 

宝槻さんが語ったのは、心に火をつけるための超具体的な方法でした。
 
 
宝槻さんのオヤジさんは、3人の息子をはじめ、たくさんの子供の心に火をつけ、知的感動体験をさせることを通して自ら学ぶ力をつけ、その結果として、難関大へ合格させていたのでした。
 
 
そのとき、宝槻さんは、探求学習に使用できる動画「TanQ Cinema」を、どのように広めていくのかということを考えていたのですが、僕から見ると、コンテンツよりも、宝槻さん自身が身を持って体験した探究型学習のノウハウのほうが、魅力的に見えました。

また、学校に任せっきりにせず、親が子供の教育に関わっていくという考え方にもとても共感しました。
 
 
それで、その感想を宝槻さんにフィードバックしました。

「宝槻さん、その話、本当にすごいですよ。それを、Webで物語として書きませんか?」

「探究型学習の重要性に気づいている人は、まだまだ少数派なので、地域限定でやるよりも、Webで日本全国を対象にしたほうがいいですよ。」

「日本全国に薄く広く分布している人たちにメッセージを送って、ネットワークを作りましょうよ!」
 
 
僕は、興奮して早口でしゃべりまくりました。

共感によるネットワークを作るために、「物語」が大きな力を発揮することを、「eboard物語」のクラウドファンディング企画で実感していたので、宝槻さんに物語を書くメリットについて熱弁をふるいました。

 
その後、「オヤジさんの果たした役割」について、二人で思考の抽象度を上げていきました。
 
 
特に重要だと思った要素は、次の4つ。

 
・「オヤジ」は、発達段階に合わせて「心に火をつけるコンテンツ」を配置する。

・子供は、「オヤジ」の勧めるものだから面白いはずだという信頼を担保にコンテンツに取り組む。

・「オヤジ」は、子供が楽しんでコンテンツに取り組めるような仕組み作りをする。

・知的感動体験を通して、子供は自分で学ぶ力をつける・

話しているうちに、情報発信をしていくターゲットが見えてきました。

田原「ターゲットは、」

宝槻さん「親ですね!」

対話の中で、二人のアイディアを混ぜ合わせて、化学反応がバチバチ起こった結果、解が見つかりました。
 
 
Teachingを親がするのは難しくても、Coachingなら十分にできます。
 

Webに魅力的なコンテンツが溢れている現在、家庭学習の可能性が、大きく広がっていることを、僕自身も実感していたので、時代を大きく先取りしている宝槻さんの学習体験とノウハウに、大きな価値があると感じました。
 
 
家庭学習に革命が起こるかもしれないという思いが生まれて、ワクワクしました。
 
 
子供と信頼関係にある親が、世界に存在するコンテンツを子供に紹介し、子供の心に火をつけ、知的感動体験を通して自ら学ぶ力を育てる。

ここでの、子供と親の役割は、反転授業における生徒と教師のやり方と重なります。

「壇上の賢人からガイド役へ」のガイド役になるためのノウハウを宝槻さんは、たっぷりと蓄えていたのです。

 
話しているうちに、2人とも、深い納得感に包まれました。
 
 
この後の、宝槻さんの行動は、ものすごかったです。

まさに、火がついたような行動力を見せました。

 
宝槻さんは、早速、Story.JPにオヤジさんの物語を書き始めました。
  
 
『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』

これが、あっという間にStory.JPで殿堂入りに。

さらに、東洋経済でインタビューされることに。

高校も塾も行かずに合格! 京大3兄弟の秘密

宝槻さんの勢いは止まりません。

「探究ダイアログ」をスタートし、各地を回って、保護者と探究型学習についての対話を始めました。

そして、ついに書籍化の話が・・・・。
 

喫茶店で会ったのが4月のはじめ。

Story.JPで話題になっていたのが5月。

その後、執筆をスタートして8月に出版。

宝槻さんの周りを、時間がものすごいスピードで流れ始めました。

反転授業やアクティブラーニングは、主体的な学びをどうやって導くのかが大きなテーマになると思います。

宝槻さんの物語は、どうやったら学習意欲に点火することができるのかを示す、非常に参考になる事例になっています。

本日から発売です。(僕も早速、購入しました!)

知識基盤型社会で必要なこと

先日、シンガポールに出張してきました。
そこで、二人の友人といっしょに食事をしました。
  
 
一人はコンサルタントで、一人はエンジニア。
 
 
社会のこと、教育のこと、テクノロジーのことなど、しゃべっていたら、あっという間に4時間が過ぎました。
 
 
その中で、エンジニアの友人から出た2つの言葉がとても印象に残りました。
 
 
印象の残った言葉(1)
 
「俺は、自分でベンチマークした結果しか、信じない」

 
 
これは、教えられたことや、情報を鵜呑みにするのではなく、自分で仮説と検証を行って、裏を取っていくということだと思います。
 
 
旧来の学校教育は、誤解を恐れずに言えば、教科書の内容という「正しいこと」を、一方的に教えることが中心だったと思います。
 
 
しかし、知識基盤型社会で生きていくためには、次々と生まれる玉石混合の最新情報を読み解き、自分の創造的な活動に生かしていく力が必要となります。
 
 
そのときに重要となってくるのは、どうやって「正しさ」を、自分で確かめるのかという方法論を持つことだと思います。
 
 
「これが正しい」と教えるのではなく、「こうやれば正しいことが確かめられるよ」という方法論を教えることが、これからは重要になってくると思います。
 
 
そんなことを考えていたときに、先ほどの言葉に出会いました。
 
 

印象の残った言葉(2)
 
「一人だと続けられないので、続けるためにフィードバックを利用している。」

 
 
これも、僕が最近、強く感じていることでした。
 
 
何かを思いついて、やろう!と思い立っても、2-3週間すると、熱が下がってきます。
 
 
でも、そこに仲間とかお客さんとかがいて、フィードバックがあると、モチベーションに薪がくべられて、燃やし続けることができます。
 
 
その仕組みに気づいて、最近は、とにかくグループを作ることにしています。
 
 
Facebookグループとか、「反転授業の森」の研究グループとかは、行動を継続するための駆動力になりえると思います。
 
 
グループからのフィードバックがあるおかげで、以前よりも、はるかに行動が持続するようになりました。
 
 
 
エンジニアとしての卓越したスキルを持ち、得意分野で他の人にはできない開発を行い、集中して仕事をするためにシンガポールに住んでいる友人は、少しだけ「未来」の生活をしています。 

彼は、知識基盤型社会の空気を吸って生活しています。
 
 
その彼から出てきた言葉が、

・自分で正しさを確かめる方法を持つこと
・継続するための仕組みとして仲間を作ること

 
であったことが、とても興味深かったです。

情報の自己組織がはどのようにして起こるのか

やりたいことをやるために、意を決して一歩を踏み出し、
行動を継続し、切磋琢磨するために仲間を作る。

 
 
僕が、今やっていることは、この2行に集約されるような気がします。
 
 
では、仲間を作るためにどうしたらよいか?
 
 
いろいろな方法があると思いますが、僕がいつもやっていることは、
 
「徹底的にアウトプットする」
 
ということです。
 
 
ちゃんとした形になってから・・・と考えていたら、「そのとき」は、なかなか訪れません。
 
 
今、アウトプットすることを決めて、それから、何をアウトプットするかを考える。
 
 
そういうスタイルも、必要なこともあると思います。
 
 
アウトプットしているうちに、いろいろなコメントをもらうことができ、考えが整理され、だんだんと形になってきます。
 
 
 
インターネットの世界は、情報が情報を呼ぶ世界です。

一番情報が集まっているところに人が集まってきて、さらに情報を追加していきます。

情報に正のフィードバックがかかるのです。
情報の自己組織化です。

僕は、何もないところに何かを作りたいとき、ひたすらアウトプットし続けていきます。

ある種の「相転移」が起こることを信じて、黙々とアウトプットし続けます。

「相転移」は、社会状況にもよりますので、起こることもあれば、起こらないこともあります。

すぐに起こることもあれば、ずいぶん時間がたってから起こることもあります。

ひたすらアウトプットし続け、「相転移」が起こると、「結晶核」になることができます。

同じようにアウトプットしている人たちが集結して意識の高いコアメンバーができ、その一員になることができます。

FacebookのようなSNSができ、Web会議システムなどで会えるようになり、「相転移」が以前よりもはるかに起こりやすくなりました。

反転授業の活動は、最初は、Facebookグループが小さな「結晶核」でしたが、メンバー数が2000名近くになり、グループ内グループを作る段階になりました。

Facebookグループで、自分の考えやプランをアウトプットし、同じようなビジョンを持っている人とつながってグループを作ることで、ビジョンを実現していってもらえれば、とてもうれしいです。

そのために、グループ内に

「多様性を認め、自由に意見を言える空気」

を、引き続き維持していきたいと思います。

そして、グループ活動の場として、「反転授業の森」を自由に使ってください。

グループ内にグループができるフラクタル構造ができ、小グループと大グループとがお互いに共鳴しあいながら発展していく姿こそ、生態系をイメージして活動している「反転授業の研究」の姿にぴったりだと思います。

AL型授業実践を続けていくために必要なこと

僕が、小林昭文さんのブログを見て、アクティブラーニングに興味を持ち、初めてやってみたのは、2013年の9月です。

アクティブラーニングについて知りたくて、とりあえず小林さんの
ブログや記事を片っ端から読みました。

その中でとても参考になったのがこちらの記事でした。

この記事の中に、小林さんが具体的にどのようにして授業をしているのかが詳しく説明されていました。

小林さんは物理が専門だったため、物理講師の僕にとっては、具体例や、演習に使っている問題の難易度を把握できたのは幸運でした。

まずは、見よう見まねでやってみようと思いました。

記事では、グループワークのときに、次のような2種類の目標を生徒に提示していました。

—*—*—*—

【態度目標】
しゃべる、質問する、説明する、動く、 チームで協力する、チームに貢献する

【内容目標】 理解すること

<用語を理解する>
熱、熱量、熱平衡、熱容量、比熱、熱量の保存

<イメージを描く>
熱(量)が移動して温度が変わることをイメージできるようにする

—*—*—*—

何のために、このような2種類の目標が必要なのかは、分からないまま、とりあえず、まったく同じ態度目標を設定し、波動分野について、同様の内容目標を設定しました。

そして、オンラインで問題演習型のグループワークを行いました。

基礎問題と応用問題の2種類を与え、4つのグループに分かれてグループで相談しながら解いてもらいました。

初めてのグループワークだったので、何が起こるのかが分からず、どきどきしながらの実践でした。

このとき、小林さんや横山さん、そして、勉強会で後にグループワークやキャリア教育について登壇してくださった鈴木映司さん、桑子研さんが見学に来てくださったり、グループワークに加わってくださったりしました。

彼らからのフィードバックがもらえたことで、自分では気づかなかったことに気づくことができました。

そして、何より、「面白い」と言ってもらって、ポジティブな反応をもらえたことが、モチベーションになり、そのあと、アクティブラーニング型の授業を続けていこうという気持ちが高まりました。

今から思うと、やりたい!と思って一歩を踏み出したときに、幸運にも仲間ができて、フィードバックをしてくれたり、エンカレッジしてくれたりしたことが、とても大きなポイントだったと思います。

7月20日からスタートする

「AL型授業実践のためのスキルアップ講座」

は、反転授業やアクティブラーニング型授業に対して一歩を踏み出した人が集まる講座です。

きっと、ここで、実践を継続していくために不可欠な仲間をることができると思います。

今回の講座は、「仲間作り」も重要な要素だと考えていて、そのための工夫も組み込んでいます。

講座の詳しい内容をこちらで確認する↓
http://flipped-class.net/al/

やりたいことを実現するために必要なもの

「反転授業の研究」の田原です。
こんにちは。

 

僕は、本を読んだり、講演を聞いたりして感動し、

「よし、自分もやるぞ!」

と思うことは、よくあります。

 

しかし、そのすべてを行動に移すことができるわけではないし、行動を継続して、何かの形にできるわけではありません。

 

30代半ばに差し掛かったころ、予備校講師の先輩から話をうかがう機会がありました。

その方がおっしゃっていたのは、

「こんなに長く予備校講師をやるとは思わなかった。」

「大学院生のときにアルバイトで初めて、あっという間に60歳になった。」

ということでした。

 

当時は、予備校講師としての仕事が、ある程度、軌道に乗っていたころで、徐々にルーチンワークに入っていたころだったので、その話には、本当にリアリティがありました。そして、ある種の恐怖を感じました。

やりたいと思っていることを先延ばしにすると、いつまでたってもやらないで終わってしまうのではないか。

意識して行動に移していかなければならないのではないか。

そのように決意し、1つ1つを後回しにせずに行動するように決めました。

 

しかし、第一歩を踏み出した後に、それを継続していくことは、別の難しさがありました。

 

始めてみたものの、目に見えた成果が上がらないうちに、モチベーションが下がりやめてしまうことが多いのです。

 

期間を決めて、結果が出ても出なくても3か月は続けるというルールを作ってみたり、いろいろとやってみたのですが、結局、意志の力だけでは、継続率を十分に上げることできず、多くのチャレンジは、尻すぼみで終わってしまいました。

 

やろうと思い、行動に移すだけではダメで、それを継続する仕組みが必要だと感じるようになりました。

 

最近、読んだ本に、ヒントがありました。

『アイディアの99%』という本です。

反転授業の勉強会で登壇してくださった鈴木利和さんが、推薦してくださいました。

 

この本は、

「ほとんどのアイディアは実現されずに消えてしまうのだから、 アイディアだけでなく、アイディア実現力が重要だ」

と主張しており、アイディアを実現するために必要な要素を具体的に説明していました。

 

この本では、

アイディア実現力=発想力+整理力+仲間力+統率力

というフレームワークが紹介されていました。

 

僕がアイディアを実現できなかったのは、仲間力と統率力の部分が欠けていたからだと思いました。

 

また、一方で、反転授業に関する活動では、幸運にも、多くの仲間と出会うことができ、それが、活動を継続するモチベーションにつながっていると思います。

行動を継続し、やりたいことを形にするために「仲間」の存在は不可欠だと思います。

 

「反転授業の研究」は、参加者がやりたいことを形にするために、仲間を募ることのできる場としての役割も果たしたいと思います。

「反転授業の森」の研究グループや、オンライン講座で仲間と出会い、チャンスがあればリアルでも会って関係を深め、一人ではなかなか
できないことを、グループの力を借りてやり遂げていく・・・・。

そのような動きをエンカレッジしていきたいです。

プロジェクトが自己組織化されるために必要なもの

「反転授業の研究」の田原です。
こんにちは。

何もないところから自然発生的に構造が産み出されるための仕組み。
それが、「正のフィードバック」です。

ちいさな揺らぎに正のフィードバックがかかり、どんどん増幅されていくことにより、無秩序から秩序が自己組織化されるのです。
これは、生命システムが構造化していく仕組みそのものです。

「反転授業の研究」は、「多様性のある森を育てる」ということをコンセプトにして運営しています。

その心は、グループ内に生まれた種に正のフィードバックをかけて大きく育て、様々な価値を生み出していこうということです。
グループ内には、

・このような課題があります。
・このようなスキルを身につけたいです。

という情報があり、その一方で、

・このような方法で課題解決ができます。
・このようにすればスキルを身につけられます。

という情報を持っている方もいます。

情報が、広く共有され、適切なマッチングがなされることで、問題解決やスキルアップのための一歩が踏み出され、さらに、一緒に高めあっていくためのコアチームが生まれることで、行動を継続することができ、価値を生み出すことができるのではないかと思います。

今、僕が主催者としてやっていることは、

FBグループ内の動きに注意を払い、小さな種を見逃さず、大きく育つための環境を整えることです。

最初の段階では、手作業で正のフィードバックをかけています。

しかし、グループが大きくなるにつれて、正のフィードバックがかかる仕組みを、システムとして内在する必要性を感じてきました。
そのためにできたのが「反転授業の森」です。

ここでは、誰もが「こういうことをやりたい」と手を挙げて、研究グループを立ち上げ、仲間を集めることができます。

すでに、動画講義作成や、授業設計の研究グループが立ち上がり、プロジェクトがスタートしています。

ここは、誰にでも開かれた場です。

ゴールも1つに決まっていません。

核になる人のパッションが、周りの人の共感を集め、グループが生まれ、行動が生まれるという動きが、多くの価値を生み出すのではないかと考えています。

 

「反転授業」は子どもの「教育を受ける権利」を脅かすのか?

尾木ママの「反転授業批判」について という記事を書いたので、他に尾木さんの意見についてどのようなことが言われているのかを検索してみたら、次の記事を見つけました。

弁護士ドットコムの

尾木ママが批判する武雄市の「反転授業」 子どもの「教育を受ける権利」は大丈夫?

という記事です。

教育を受ける権利とは、公教育においてはすべての生徒が十分な学習機会を得る権利があるという意味だと思います。

それを踏まえて、南山弁護士は次のように述べています。

—- ここから引用 —-

「公立の小学校は、多種多様な家庭環境・意欲・学力の生徒が集まる公教育の場ですから、なかには自宅予習をこなすのが難しい生徒もいます。また、今回の武雄市のケースでは市が無償でiPadを配るようですが、自宅学習用の端末の費用が家庭の負担になる場合は、端末を持つことができない児童も出てくる可能性もあります。

もし、教室での授業において、そうした児童への配慮が一切なされなければ、児童は応用的な授業に全くついていけず、結果的に学びの機会を奪われることになりかねません。

つまり、反転授業を取り入れるのであれば、予習していない児童にも配慮した授業の進め方、教室外予習の支援による家庭の負担軽減、魅力的でわかりやすい自宅予習用コンテンツと端末の提供、といった創意工夫が必要となります」

小学校における公教育という観点からすれば、様々な事情で「予習できない児童」の存在を無視するわけにはいかないだろう。

—- 引用ここまで —-

ネット接続環境が整っていない、端末がそろわないという問題は、別のテーマになりますので、「多種多様な家庭環境、意欲、学力の生徒が集まる公教育の場」で、どのようにすれば、すべての生徒の学習効果を上げていくことができるのかということを考えてみたいと思います。

南山弁護士の発言を読んで気になった点があります。

それは、現状の分析がなされていないという点です。

一斉授業が中心の現状における課題を分析し、その解決策に「反転授業」がなり得るのかどうか。

一斉授業中心の現状と、反転授業を導入したケースとを比較して、どちらが多くの生徒の学習を助けられるのか。

そのような比較をせずに、反転授業の問題点を論じても、問題点が明確にならないのではないかと思います。

 

僕自身は、中学、高校、予備校などで一斉型授業を15年間やってきました。授業を面白くして、効果を上げるためにいろいろな工夫をしてきましたし、成果も上げてきました。

しかし、「多種多様な家庭環境、意欲、学力の生徒が集まる公教育の場」で一斉型授業をするのは難しいと感じています。

この場合、教師はどこに照準を合わせて授業をやらなくてはならなくなるのかと考えると、おそらく、平均よりやや下のレベルに合わせて授業を行うことになるケースが多いと思います。

その結果、一斉型授業のペースと理解の速さがちょうど一致している少数の生徒以外には、効果的な学びが起こらないことになります。

半数以上の生徒にとっては「遅すぎて飽きてしまう」授業であり、何人かの生徒にとっては「速すぎて理解できない」授業になります。

このデメリットを補うために、反転授業などの非一斉型授業をミックスしていくことが考えられているのです。

一斉型授業、非一斉型授業のメリットとデメリットについては、福島毅さんのどんぐり教員セミナーが参考になります。

また、現状で、かなりの割合の生徒が授業から落ちこぼれているという報告があります。(分かりやすい資料が見つかれば、後で引用します)

現在、すでに学びの機会を失っている生徒がたくさんいるのです。

「物理的な意味で教室にいる」という点では、学びの機会を得ているように思えるかもしれませんが、授業がすっかり意味不明なものになってしまった生徒にとって、それは、学びの機会を得ているといえるでしょうか。

この問題を解決するために、とても重要な視点があります。

それが、キャロルの時間モデルです。

心理学者のジョン・B・キャロルは、以下のように述べています。

「すべての学習者は、その人にとって必要とされる時間をかければ、すべての学習課題を達成できる」

キャロルは、学習における生徒の個人差は、到達できる難易度の差ではなく、学び終えるのに必要な時間の差であると考えたのです。

キャロルの時間モデルに基づくと、一斉授業という制度が、

  ・授業時間内に学び終えることができる生徒=学力が高い生徒

  ・学び終えるのに時間がかかる生徒=学力が低い生徒

という差異を生み出している可能性があります。

しかし、これまでは学力が低いと見なされていた生徒であっても、十分な学習時間を与えることができれば、学習課題を達成できるかもしれません。

それを可能にするのが、何回でも繰り返し見て、理解できるまで反復することができる動画講義などの独学可能教材なのです。
現在の一斉講義型の学習は、「学習時間」を均等にすることによって、「学習効果」に差異を生み出してきました。

しかし、発想を逆転して、「学習時間」「学習方法」などを多様化すれば、「学習効果」を均等にすることが可能なのです。

どちらのほうが、多くの生徒に学習機会を与える方法だと言えるでしょうか?

反転授業は始まったばかりで、導入や実施に多くの課題があります。

しかし、現在の一斉講義型の学習にも、上記のような課題があるのです。

その課題を解決するためのヒントがある以上、具体的な実施方法を試行錯誤しながら改善し、多くの生徒に本当の意味で学習機会を与えられるような方法を見つけたいと思っています。

 

尾木ママの「反転授業批判」について

「反転授業の研究」の田原真人です。

反転授業の是非については、いろいろな方がいろいろな意見を出しています。

僕自身は、教育にITを利用すれば、教育実践の可能性が広がり、これまで解決できなかった課題を解決できるのではないかと期待しています。

最初からすばらしい実践が生まれるというのは難しいので、リスクを管理しながら、仮説と検証をくりかえし、その結果をシェアして発展していくとよいのではないかと思い、実践例を共有できる場の構築に取り組んでいます。

また、実践者の方にインタビューを行い、現場で生み出される知恵を共有するためのメディアになろうともしています。

そのような活動の中で感じることは、現段階では、「現場で生み出される知恵」のほうが、理論よりも先に行っているなということです。

そのため、反転授業に対する批判を読むときには、それが、現場の実情に即しているのかどうかということをポイントとして読むようにしています。

 

少し前に、尾木ママがブログで反転授業についてコメントをしたことが話題になりました。

Facebookグループ内でも紹介され、ディスカッションになりました。

尾木ママの記事はこちら→ 小学生の「反転授業」は間違いです!

 

反転授業を小学生に実施することができるのかどうかという意見は、これまでにもありました。

その多くは、「家庭学習が身についていない小学生が、予習してくるなんて無理じゃないのか」というものでした。

実際、eboardの中村さんの報告などでも、動画の魅力によって予習させるという方法は難しいという話でした。

→ 小学生に反転授業は可能か?実践例から学ぶ

一方、富谷町立東向陽台小学校の佐藤先生の授業では、小学5年生の児童がほぼ100%予習してくるという報告もありました。

→ 富谷町立東向陽台小学校の佐藤靖泰教諭にスカイプインタビューしました

これらから、映像だけで学習意欲を高めるのは難しいが、きちんと授業設計をして、「教室でのグループワークで活躍するために、動画を見て準備してくる」という形で誘導すれば、十分に機能するということが分かりました。

反転授業に対する否定的な意見をもとに、実践例を検討して、成功するための方向性を見つけることができたという点で、とてもポジティブな経験でした。

 

さて、今回、教育評論家の尾木ママこと、尾木直樹さんの記事についても、その意見を検討して、反転授業の理解を深めるための刺激として使わせていただきたいと思います。

タイトルを見ると、「無理だ」ではなく、「間違いだ」と書いてありますので、新たな視点からの批判だと思います。

そこで、何が間違いだとおっしゃっているのかを、ブログ記事から読み取ってみたいと思います。

尾木さんが批判しているのは、あきらかに佐賀県武雄市の取り組みについてです。

上記の記事だけでは、尾木さんの論点が分からなかったので、2014/3/13の次の記事を読むと、もう少し詳しく載っていました。

→ 学校と家庭の役割、予習と復習の特性の「反転」?

 

太字が尾木さんのコメントです。

 

・本当に効果あるのか国立の小学校か一部の小学校で実験してからというのが普通ではないでしょうか!?

武雄市では、武内小学校や山内東小学校で実験してから、全体に導入することになりました。検証が十分かどうかは分かりませんが、尾木さんがおっしゃっているような手順を踏んでの導入になっています。

 

・学校で先生から学び、友達の発表聞いたりしたことを定着させる復習、家庭学習の中に、実は次の予習のヒント・予習効果が潜んでいるのです

・だから、復習をしっかりやれば、学校での新しい学習がよく分かるように教科書は出来ているのです!!

・学校の教師ならこんなこと常識のはず

復習をすれば、それが、次の学習の予習効果を含むという意見で、確かにそのような効果はありそうです。

 

・タブレットを子どもたちが使うのはいいのですが、家で予習するツールとして使うためというのは、無茶苦茶ではないでしょうか?

なぜ、無茶苦茶なのかがよく分かりませんでした。これは、今後、補足していただける機会を待ちたいと思います。

 

尾木さんの記事を読んでいて、もしかしたら、尾木さんは、理科と算数の全時間で反転授業を実施するというように誤解されている可能性があると思いました。

実際には、教師や生徒の負担を考えて、単元を限定しての導入になるはずです。東向陽台小学校の佐藤先生の実践でも、算数の比例反比例の単元だけに反転授業を導入していました。

尾木さんが指摘されている「旧来の教育のよさ」を維持しつつ、一部の単元に対して、新しい試みを行うという取り組みをし、実際に教育効果を測定して比較することができれば、教育業界全体にとって有意義なことなのではないでしょうか。

また、東向陽台小学校の佐藤先生によると、一部の単元に反転授業を導入したことで、他の単元や科目への取り組みやコミュニケーションの取り方に変化が見られるようになったそうです。

同様のことが、武雄市でも起こるのかどうか注目です。

 

この件について、実際に武雄に入り、教師とディスカッションしながら教材を作っている古山竜司さんに話をうかがいました。

—–  古山さんの話 —–

TBSの報道、そして尾木ママのブログにより反転授業って結局何なの?みたいなものが曖昧になってきたので補足しておきます。

反転授業がいい、悪いという議論には私は興味がありません。先生方が必要だと思うものを使える環境にすることが、私のミッションです。

あくまで私の私見ですので、武雄市、ワオは関係ありません。

武雄市は市内全11小学校で、5月から反転授業を実施。
対象学年は3年〜6年の算数と理科
すべての授業を反転にするわけではなく、
各単元から2〜3コマ反転学習として実施。
イメージとしては、各科目週に1回、そして月に4回くらいです。
ですので、算数と理科なので、週に2回、月に8回くらいでしょうか。
動画の時間は5分〜10分

タブレットを長時間すると視力の影響があるんじゃないかと考えられる人もいると思います。ですが、これだと一日長くて10分程度の動画ですので、それほど問題はないと思います。

次に教材についてですが、これは塾や出版社に丸投げをしているわけではなく、
基本的には先生方の教案を元に動画をつくりこんでいくという共同作業です。
もちろん、完成するまでに先生方のチェックが入ります。

これまでの公開授業(11月、1月)では、子供たちの反応としては、

動画が分かりやすかった。
家で動画をみて学校にきて復習できるので楽しい。
など肯定的な意見です。

先生方も、子供たちが事前にどれくらい理解しているのかを把握しながら指導できるので役に立つなどの意見を頂きました。
一方で、やはりしんどい子にはタブレットの動画は難しいという意見もありました。

そして、反転授業の目的が小学校〜大学ではかなり異なるということです。
反転授業というと家で予習してきて、しておかないと授業についていけないというようなイメージがあるかと思います。

しかし、武雄では、予習をしてきた上で、分からなかったところや難しかったところを話し合いや学び合いで解決していく!というところに力をおいています。

動画をつくるときにはもちろんどんな生徒でも分かるように非常に丁寧につくります。ですが、そのときに、分からなかった子がいたとしても、その習熟度はチェックすることができ、理解度に応じて授業を組み立てることができます。

こればかりはやってみないと分からない部分もあります。生徒にとっても先生方にとっても初めての試みです。いろいろな問題がでてくるかもしれません。

でも、反転授業をすることによって、私は研究授業での子供たちのキラキラした目が忘れられません。すごいなぁ。ITの力で子供たちがどんどん発言し、いろいろな物事を考える力がつけばいいのになと思うのです。

反転授業じゃないと力はつけられないの?というとそうではないでしょう。しかし、この授業スタイルを使うことによって、子供たちの学力や教員の養成につながるのであれば積極的に利用していくといいと思います。

私は、反転授業を利用すれば、生徒も先生もハッピーになると思うのでコンテンツを一生懸命つくっています。

—– ここまで——

 

現場は、常に進化しています。

僕は、その現場の声を抽出して広める拡声器の役割をしたいと思っています。

その中から、お互いに参照しあって改善する流れが出てくればいいなと思っています。

 

 

 

FBグループ「反転授業の研究」の投稿が熱い!

Facebookグループ「反転授業の研究」では、日々、たくさんの投稿があり、その中からアイディアの他家受粉や、コラボレーションが生まれています。

先日、「第5回反転授業オンライン勉強会」の告知投稿に、登壇者の井上博樹さんが自己紹介コメントを投稿してくださったところから、話がどんどん発展していきました。

非常に「濃い」やりとりで、勉強になることがたくさんあったので、登場している皆さんに許可をとって引用させていただきます。

まずは、井上さんの自己紹介コメントから。

———–

(井上さん) 1月になりましたか、では空けておきます。90年代は国際大学・獨協大学でLMS開発や教材作成支援などをしていました。縁あってワシントンD.C.のBlackboard社に転職し、2000年位にBlackboardの多言語化をしていました。現在はMoodleを大学や病院・企業などに導入したり、反転授業の設計・制作、モバイルアプリ開発等をしています。放送大学やHONDAなど大きなクライアントから個人の先生まで、さまざまなMoodleユーザをサポートしています。また、2013年はCoursera(コーセラ)でスタンフォードのStartup Engineeringという授業を修了し、MOOCの威力に圧倒されました。Courseraがなければ、スタンフォードの授業など受ける機会もお金もありませんでした。Courseraの勉強会でスタートアップを目指す多くの学生や留学生と出会い、Node.jsやアプリ開発、リーンスタートアップの実践に取り組んでいます。

京都の貧しい山間部の出身で、情報格差・教育機会格差・経済的格差・義務教育の崩壊(先生がまともに授業をしない)で苦労してきましたが、カーン・アカデミーやMOOCによってそうした格差が縮められるのではないかと期待しています。パソコンも買えず、本屋もないので、図書室の本を全て読んだり、裕福なクラスメート宅でパソコンを借りてプログラミングを勉強したりしてきました。大学も当時は30万円程度の学費でしたので、アルバイトして払いました。研究室でMacに出逢い、科学計算の仕事に就いて社会人になってようやくMacを買えました。仕事ではSunやHPのUNIXワークステーションを使用していましたが、当時Linuxが登場し、自宅でも開発や勉強ができるようになり感動しました。

カーン・アカデミーやMOOCでは講義ビデオ配信やテスト実施、進捗把握のプラットフォームとしてLMSが開発・使用されています。彼らのように開発エンジニアを抱えていないところでも同様のことができるように、オープンソースのMoodleベースのサービスを開発しています。サインアップしたらすぐにMoodleインスタンスが使えるWebサービスを開発し、もうすぐリリースする予定です。

この機会にいろいろ知見をシェアし、日本における実践に貢献できればと思います。よろしくお願いします。

 

そこに、福島毅さんがコメントし、福島さんと井上さんのやり取りが始まりました。

(福島さん) 井上さん>こんにちは。すごい、日本における展開の明るい未来を感じることができました。ありがとうございます。

(井上さん) 福島さん、ありがとうございます。日本でもアメリカでも韓国でも教育格差・経済格差に問題意識を持っていました。

教育を受ける機会の差で給料が10倍以上違うアメリカ、有色人種は年収300万円もいかないのに、ボーディングスクール・アイビーリーグMBAは最初から年俸が2000万円。

日本より更に貧しく勤労学生が本当に多い韓国などでの体験。授業時間以外は1日中アルバイトをして夜中に勉強しているクラスメート。

こうした体験を通じて、やる気はあるがお金はない人のサポートをしたい、と考えています。以前と比べると飛躍的にコンピュータリソースや回線コストは安くなっていますので、日本でもいろいろやれると思います。実践にあたり、いろいろアドバイスいただけるとうれしいです。

いろいろできない理由を挙げ出したら何もできず、問題解決ができないので、できるところから少しづつでも実践していきたいと考えています。端末の問題についても企業から出るリース落ちのパソコンにUbuntuなどを入れてプログラミング学習をする端末にしてパソコンを買えない人が勉強する環境を作れないか、と考えています。アメリカにいた時にそうしたサポートをするNPOをスタンフォードの学生らがパロアルトの貧困地区で運用していました。スラム街に小屋を立てて、貧しい家庭の子どもにプログラミングやWebデザインを教え、就業支援をしていました。こうしたことが日本でもできないかと思います。今はまだ資金が足りないので、なんとか工夫してスペースを借りたりできるようになりたいと考えています。

また、英語の壁を下げて、より多くの日本人がMOOCで学べるようになる支援もしたいと考えています。既にインターナショナルスクールではカーン・アカデミーやCourseraで学んでStack Overflowで問題解決して、StanfordやCaltech、UCバークレーなどに入学する生徒が出てきています。そうしたことを学費の高い環境だけでなく、さまざまな環境の人に実践してほしい。社会人だって学びなおして、それぞれのゴールにチャレンジできればいいと思います。

(福島さん)ありがとうございます。なさろうとしている意図が伝わってきました。

翻訳技術の方はどんなトレンドですか?
翻訳革命前夜とか言われていますが・・・
言語の壁って、ほんと大きいかと思います。言語マスターするのに費やす時間で、他に多くのことを吸収できるはずですから。27日のオンライン勉強会が楽しみです。

(井上さん)翻訳技術についてもシンクタンク在籍時にマシンラーニングや音声認識・音声合成のプログラムを書いていましたが、機械翻訳だけで完全にコミュニケーションできる技術レベルには達していないと思います。論文などの概要を把握する程度なら実用的になってきました。

英語については悲惨な経験をしました。ワシントンD.C.の会社では相手の言っていることが聞き取れないのでバカ扱いされたり、相手にしてもらえなかったりしました。パーティで、言葉もわからないやつは会社に要らない、と断言されて、同期入社のオーストラリアから来たボブさんに相談しました。彼の勧めで、3ヶ月仕事が終わった後にオフィスの隣のボロいホテル(Lincoln Suites)で夜な夜なiPodに入れた音楽やオーディオブックをセリフを見ながら聞いて、わからない単語は調べて、シャドウイングして、というトレーニングを繰り返し、次の日は前の夜に覚えたセリフを使ってみる、ということを繰り返しました。すると、だんだん相手の言うことが聞き取れるようになり、応答ができるようになったため、クビにならずに済みました。また話せるようになったので、一緒に呑みにいったり、週末に野球を見に行ったりできるようになりました。

また開発で悩んで一緒に問題解決をしたり、週末に遊んだりする中で人間関係を構築し、仕事をする、という局面では言葉ができないとなかなか助けてもらえませんでした。

3ヶ月本気でやると英語は聞き取れるようになります。なので、やりたくない人はしょうがありませんが、英語をマスターして【英語で学ぶ】人を増やしたいと思います。そう思って、TOEICのリスニング対策をするアプリを開発し、大学などで使ってもらっています。

英語を学ぶことで1000種類位のMOOCの授業が受けられるようになるので、可能性を広げたい人は英語を学ぶほうが得策だと思います。学ばなくてはいけないとは思いませんが、学んだ方が得することがある、と考えています。

期待に添えない回答で申し訳ありません。

(福島さん)いえ・・・期待に十分応えていただいております。

個人的な体験のお話は、説得力ありますです。
おいそがしいところ、貴重な時間を割いて、コメントのリプライに恐縮しております。 ほんと、ありがとうございました。

(井上さん) 福島さん、英語や勉強ができないとどんな悲惨な目に遭うのか、でしたら色々な事例がご紹介できます。

小学校6年生の時の担任のN先生が時間割にある科目を教えないで「勉強なんかしても仕方がない」が口癖でいろいろ考えました。彼女は広大な茶畑を持つ大農家の娘なので食うには困らないのでいい加減なことが言えますが、アル中の父を抱え、働く以外に生きていくすべがない私には悪い冗談でしかありませんでした。

中学校に入るとまた同じような担任のA先生に出会い、教科書を取り上げられたり、制服を取り上げられたりと先生からのイジメに逢いました。とにかく結果の平等を目指しておられ、落ちこぼれにも勉強ができる子にもひどく当たっていました。「お前らみたいな田舎もんは勉強してもしょうがない」とおっしゃり、先日の同窓会でもそう断言されていて残念です。それを真に受けた同級生らは地元の工場に行き、最後は会社がなくなってしまいました。

地元の公立高校の校長先生が高校の説明会で同じようなことを言っておられ、「田舎もんのお前らは勉強なんかせんでええ、高校を出て、サンヨーやヤマザキパンの工場で働けばいいから部活をしっかりやっておけば勉強はしなくてええんじゃ」と言われ、これは本格的にヤバいと思って、受験勉強を開始し、私立高校に入りました。

そして、はじめて登校した日、校長先生の一言で泣いてしまいました。

「あなたの星はあなたの中にある」
“Your star is in your heart.”

つまり、自分の将来は自分で切り開ける、だから何でもやってみればいい、困ったらいつでも相談に乗ってあげるから私のところにいらっしゃい、とおっしゃったので、いろいろな話を聞いていただきました。その村田源次校長先生も奄美大島の出身で漁船で難破してカナダ人に拾われ、ケベックというフランス語圏の街の教会で育ったそうで、言葉も通じない土地で絶望しかけたが、なんとか言葉を覚え、教会で働き、戦後に学校を作るために京都に来られました。それから、一生懸命勉強しました。

あなたの未来は希望がない、と言われるのと、やったらなんとかなるからうまくいかないけれども一緒にやってみよう、と言われる方がよかったです。

続きはいろいろありますが、またの機会にしたいと思います。

(福島さん)いやぁ、井上さん、仕事そっちのけで、読んじゃいます。
井上さんの人生にとって、お二人の教師との出会いはいわば、反面教師、危機感や危うさを身を持って教えてくれた役割をしていたのかもしれませんね。
”あなたの星はあなたの中にある”
いい言葉を教えていただきました・・・

(井上さん)大学に行ってもっと悲惨な体験をします。東大にすれすれで入り、風呂無し4畳半から楽しみに大学行ってさあ勉強するぞ、と思ったのですが、解析入門著者の杉浦先生の講義でわからないところがあり、研究室に行ったら、教養課程の数学は昔の東大生は高校時代に独学してた、こんなことがわからないバカは授業に来ないで欲しい、と言われショックでした。そこで開成からきた可知君に相談したら可哀想だからと講義ノートを作り教えてくれました。確かに彼は高校2年生で教養課程の数学を終えていたそうです。先生はそういう生徒のレベルに合わせて講義を進める、と言われ、どうしようもありませんでした。

(福島さん)井上さん>いよいよ凄い・・・
ひととおり、全部聞いてしまいたい衝動が・・・

ここで、鈴木利和さんが1つの提案を。現在、クラウドファンディングに挑戦中のeboardの応援企画として、応援者が「eboard物語」を連載しているのですが、そこへの参加を呼びかけました。

 

これをきっかけに、井上さん、鈴木さん、中村さんのやりとりが始まりました。

(鈴木さん) eboardの応援記事に参戦というのはいかがでしょう?

これを受けて、eboardの中村孝一さんが参加。

(中村さん) >既にインターナショナルスクールではカーン・アカデミーやCourseraで学んでStack Overflowで問題解決して、StanfordやCaltech、UCバークレーなどに入学する生徒が出てきています。

すばらしい。何かご一緒できないでしょうか。

eboardという学習サイトを開発・運営しており、不登校や過疎地のお子さんに使って頂いています。
http://www.eboard.jp/
(井上さん)鈴木さん、そうしますね。やってみましょう。残念ながら素材はたくさんあります。日本では珍しくなってきましたが、韓国やフィリピンではよくある話で、そんな貧乏は当たり前だ!と、鼻で笑われました。もっと苦労してる人はいて、でもめげずにやってますよ。

(鈴木さん)矛盾ですよね。学ぶ環境がいくらでもあるのに、学ぼうとしない裕福な甘やかされた人が  貧困から抜けだそうと必死にもがく人をあざ笑う。

でも、試練が人を磨き、狭き門より入った人が報われる

そんな機会をつくりだしたいですね。

ベトナムから来た留学生も、結局、学ぶことなく、アルバイトをして小銭を稼いで国に戻るという人も少なくないです。

お金が無いことで、人間の尊厳が損なわれるような世の中を変えたいですね。

(井上さん)中村さん、ありがとうございます。僕も公開オンライン講座作ってみたいです。被らない分野でやれば選択肢が増えますよね。僕はタブレットが得意ではいので、ドットインストールの田口さんみたいにライブタイピングで仕事で使うビデオを作成してます。いろいろ教えてください。

とりあえずMOOCで学べる英語力をつける勉強法を紹介したい。僕は独学でTOEIC955点。リスニングは490点まできました。

関西人ならご存知かもしれませんが、私の田舎は京都府相楽郡精華町で、京阪奈の研究所がたくさんあるとこるです。原住民は教育環境が悲惨で大学に行く割合も少なく、非行に走ったり、ぐれてしまったり、キャバ嬢になったりする人が少なくありません。うちの弟も勉強することがカッコ悪いという風潮に流され本当に勉強せず、大学に行けずタクシーの運転手になりましたが、毎晩の仕事がたたり胃ガンになり、闘病生活をしています。学がないから仕事につけない、他人をうらむという悪循環です。

(中村さん)eboardについては、まず就業にも最低限必要な学力を出口にしています。具体的には、ドロップアウトした子の第1歩になる高卒認定試験です。

次の段階として、現在MITSloanにいる方と、海外でも使える英語を身につけるプログラムをつくっていこうと考えています。
http://www.habataku.co.jp/special/eng2014/

ちょうど明日から新潟に2人で行って、公立高校でプログラム・提案をやる予定です。その後来週1週間東京におりますので、よろしければお時間頂けると幸いです。

[MIT×English×Your Dream]世界に羽ばたくネイティブ脳を育てよう 2014新春 – ハバタクスペシャルサイト
www.habataku.co.jp
.世界へ羽ばたきたい学生におくる実践型英語ブートキャンプ、2014年1月にふたたび限定開催!..プログラム名:世界に羽ばたくネイティブ脳を育てよう 2014新春 ?MIT女子直伝、独力で英語力を高めるワークショップ?主催:ハバタク株式会社 企画協力:講談社Rikejo. …

(井上さん)鈴木さん、ベトナムからきた留学生ともスタートアップコンテストに参加しましたが、文科省の予算で東大に来て、月々お手当をもらい家賃もかからず過ごしているうちに努力することを忘れてしまったのか、応募作品に必要なプログラム開発では1行もコードをかかず、あげくの果てには「くそー、ジジイはだまって俺のために働けばいいんだよ。俺がファウンダーなんだよ!」と日本語で言われてしまいました。イコールパートナーになることは難しそうなので、それぞれでやることにしました。甘やかし過ぎもダメですね。それが日本政府の予算で行われているのもどうかと思います。Courseraで10個も修了証を持っていますが、それを実践して形にしたり、パートナーと働くといったソーシャルな能力は低いようです。だから、勉強して知識をつけることと同時に、それが社会的問題解決につながるようなサイクルが必要だと思いました。

なので、新興国で苦労したからいいという訳でもないようです。個人的にはその人が社会的使命感、ミッション、信念などがあって行動しているのか、それとも裕福になりたいだけなのか、で行動様式が違ってくるようにも思います。

韓国の嶺南大学では大学教授が生徒に賄賂を要求していました。私もパク先生に2億ウォン出したら修士論文みてやると言われましたが、おかしな話なのでお断りしました。年収が100万円程度の勤労学生にもそういうことをします。私の育った環境でも、貧乏な状況にある人ほど、お互いに奪い合ったり騙し合ったりしようという人が出現しやすいと思います。傷つけあうのです。だから、学力をつけて稼いでそういうサイクルから脱却することが必要だと思います。多くの若い人の心を潰しています。僕はそういう人に知力をつけて反旗を翻して欲しい。

韓国はオンライン教育については数々の取り組みをしていて、良い面も悪い面も参考になります。たとえば、大学のLMSでは講義アーカイブを見れるようになっているが長すぎてあまり使われなかったり、視聴記録を残すために学生は垂れ流しにして視聴しなかったり。政府機関が作成した電子教材は無償なのにあまり使われなくて、民間の塾が有償なのに効果が出るから人気が出たり。お金持ちは塾に行ったり、家庭教師を雇うが、貧乏な家庭では「ウチは金がないから、ネットで勉強しとけ」っていうお母さんがいたり。塾に行く方が金がかかるからパソコンでやれってのは新鮮でした。Windowsはよく壊れるので、貧乏な家庭の子どもは修理が得意でした。明洞あたりのゲストハウスに行くと、大学生が夜な夜なWindowsの再インストールをしているのが見られます。

(井上さん)中村さん、ご提案ありがとうございます。ぜひ先達の話を聞かせてください。とても楽しみです。いろいろな方の経験をマッシュアップして、遠回りをしなくても済む効果的なやり方を皆でシェアして実践者が増えるといいなと思います。メッセージで日程調整をお願いします。
————

このように、Facebookグループ「反転授業の研究」では、日々、熱い対話が行われています。

すごいメンバーが次々に終結しています。

何が起こるか目が離せません。

 

※Facebookグループの人数が800名を超えました。どなたでも参加することができます。参加希望の方はこちらからお願いします。

朝日新聞で「反転授業の研究」を紹介していただきました

朝日新聞では、1月2日から「教育2014 世界は日本は」という特集記事を組んでいます。第3弾の1月4日の記事で、反転授業が1面と2面で大きく扱われました。

記事は、朝日新聞デジタルでも読むことができます。(無料登録すると1日3記事まで読めるようです)→こちら

最初に紹介された事例は、米国ミシガン州デトロイトの郊外にある高校で2011年から「反転授業」に取り組み始めたというもの。この学校の特徴は、貧困層の生徒が多く、学力が高くないというところ。つまり、教師の個別サポートを必要とする生徒がたくさんいて、教師のマンパワーを有効利用するために反転授業を導入したということだと推測できます。

貧困層の生徒が多いこの地区では、家庭にネット環境がない、パソコンがないという生徒もいるようで、家でビデオ講義を見られない生徒は学校のパソコンが使えるそうです。子どものいる家庭のネット普及率が80パーセント程度の日本でも、これと同じ方法が導入しやすいかもしれません。日本の場合、先行して反転授業を導入した富谷町立東向陽台小学校の佐藤先生のクラスや、近大附属高校、佐賀・武雄市などですべてタブレット端末が導入されているため、

「反転授業を導入するためには、タブレット端末が必要という間違ったイメージ」

が定着しつつありますが、「動画講義を自宅で見る」ということであれば、端末は何でもよいので、タブレット端末は特に必要ではありません。タブレット端末を全員に配布するメリットは、一人一台が確保され、全員に同じアプリ、同じ設定を施すことによってセキュリティなどを含め管理しやすくなるという点、それと、教室でのグループワークに使うことができる点だと思います。そういう意味ではタブレット端末を導入するメリットはあると思いますが、反転授業実施のための必須条件ではないことを再度、強調しておきます。

次に紹介されたのは、テキサス州ダラスの高校で、こちらは成績優秀な生徒での反転授業の事例。こちらでどのような授業が行われているのか、記事中に記載されていなかったが、一般的に考えると、

・基礎を固めたい場合→動画講義を受けた後、教室で習熟度別に問題演習し、分からない生徒を教師がサポートする「補習型反転授業」

・応用力を伸ばしたい場合→動画講義で学んだ知識をベースにして、教室ではプロジェクトやグループワークなど創造的作業、協働作業を行い、21世紀型スキルの向上を目指す「創造的反転授業」

というように、異なるやり方、目的の反転授業が行われることになると思います。

「この学校のこのクラスはこの型!」というように決まるというよりも、あるテーマを学び始めたころは補習型で知識の定着を図り、ある程度学んだところで、創造的な取り組みをするというように、その場、そのときによって、やり方を変えていくということも必要だと思います。また、便宜的にこのように分類しましたが、はっきりと分けることができない場合、両方の要素が混じっている場合もあると思います。

オンライン勉強会でも何度か指摘していますが、動画講義や教室でのワークにはいろいろなやり方があるので、それらを組み合わせた反転授業のバリエーションはかなり多様になります。授業の到達目標に応じて反転授業を適切にデザインすれば、カバーできる範囲はかなり広くなると思います。

 

米国での事例の次は、日本の動きが紹介されました。

最初に紹介されたのは、現在、注目を集めている佐賀県・武雄市の事例。本格導入に先立って導入された竹内小学校の算数の授業が紹介されました。この事例は、Facebookグループにも参加してくださっている方が動画講義を作成していることもあり、オンライン勉強会でも扱いました。基本事項に限定した短い動画講義を作り、タブレット端末上で確認テストを行い、学校に投稿するとWifi経由で宿題を出せる仕組みになっています。教師は、授業前に宿題の提出状況と出来具合を確認することができ、それを踏まえた授業をすることができます。記事中にもありましたが、「台形の面積公式」などは、動画講義ではあえて教えず、グループで話し合いながら自分たちで発見するように授業をデザインするなどの工夫がされていました。

続いて講義を無料で提供するサービスである「最高の授業net」の紹介。藤原和博さんの呼びかけてスタートした計画で2015年のスタートを目指しているそうです。この計画の強みは、公教育とのパイプがあることだと思います。無料の動画講義配信サービスを作っても、それが、公教育に導入されるためには、さまざまな障壁がありますが、藤原和博さんなど行政と連携できる人がプロジェクトに加わることで、そのあたりの問題が解決できる可能性があるのだと思います。今後、どのようにプロジェクトが進むのか注目したいと思います。

次に紹介されたのは、このブログでも何度も登場している近大附属高校。一人一台のiPadを配布し、数学の芝池先生と英語の中西先生が反転授業を実施しています。芝池先生が会長となり、反転授業研究会を発足させて意見交換、情報交換をされています。先日、反転授業研究会のHPがリニューアルされ、オンラインで申し込み可能になったので、僕も早速申し込みました。

反転授業の意見交換するグループというつながりで、Facebookグループ「反転授業の研究」のことが紹介されました。

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記事を書いてくださった氏家さんは、オンライン勉強会や、デジハリで行ったイベントにも参加して下さり、とても丁寧に取材して下さいました。

ここから、協働学習にICTがどのように役立っているのかという話題に移ります。フューチャースクールの1つである三重県松坂市立三雲中学校では、一人一台のタブレット端末が貸与されています。グループワークでは、タブレット端末を使って作業を行い、その状況がスクリーンに映し出され、他のグループの作業内容を一目で見ることができます。これは、東向陽台小学校の佐藤先生のところでもやっている方法ですが、

「他の人のアイディアをうまく取り入れる」

という協働学習の目的が、タブレット端末を使ってサポートされているのです。アクティブラーニングの普及に努められている小林昭文先生の授業では、「立ち歩き」が奨励されています。これは、グループ以外からもアイディアを持ってくるための工夫だと思いますが、タブレット端末と電子黒板によって、言ってみれば、立ち歩かなくても、小林先生の「立ち歩き効果」が生まれているのです。これは、タブレット端末をグループワークに導入するメリットの1つだと思います。

最後に、フィンランドのヘルシンキ新共学高校の事例が紹介されました。Facebookグループにフィンランドで学んだ方がいて、フィンランドのICT環境について質問したところ、日本に比べてICTの環境がかなり整っていて、それらの活用も盛んに行われているということでした。記事中でも、グループやペアでディスカッションした内容をスクリーンで共有して、全体でのディスカッションに繋げるという使い方が紹介されていました。

氏家さんの記事は、全体を通して、「反転授業ありき」ではなく、教師の教育デザインが最初にあって、それを達成するための手段の1つとして反転授業があるというスタンスが貫かれています。僕も同じスタンスで反転授業を捉えているため、非常に共感できました。

●朝日新聞に紹介していただき、Facebookグループの人数がさらに増えました。現在、714名の方が参加されています。参加資格はありません。参加希望の方はこちらからお願いします。

近畿大学附属高校ICTオープンスクール

12月16日に近大付属高校でICTオープンスクールが行われました。

僕は、残念ながら行くことができませんでした。

第1回反転授業オンライン勉強会でお話してくださった芝池先生の数学の授業、見学したかったです!

中西先生の英語の授業が、どのように行われているのか、この目で見たかった!

Facebookグループのメンバーの方たちが多数参加して、レポートをブログなどにUPしてくださっているので、リンク先を紹介し、感想を書きたいと思います。

 

●古山さんのレポート

近畿大学附属高校 ICTオープンスクールに参加してきたってばよ!数学編

武雄市の反転授業用の算数の講義を作成しているワオ・コーポレーションの古山さんのブログで紹介されていました。

「先生が授業をしない公開授業」というところが、大きなインパクトを与えたようです。

実際には、予習動画の中で授業を行っているわけですが、教室を見に行くと、生徒が勝手に話し合ったり、問題を解いたりしている様子しか見えず、教壇にいるはずの先生がいない・・・・。

これは、長年、慣れ親しんだ授業光景とは大きく異なるものなので、驚いた方も多かったんじゃないかと思います。(僕も、驚きに行きたかった)

ジグソー法を取り入れて、協働学習をしている生徒に対する古山さんの分析の中で、とても鋭いなと思ったのは次の部分。

—– ここから引用 —–

一つ目は、人に説明するということの難しさを知る

二つ目は、その説明を聞いて、人に伝えるという難しさを知る
ということです。
これは今までの授業では絶対に経験できない
「みえない学力」だと思います。

社会に出たらこの二つの力はすごく必要ですよね。

自分の企画を相手に伝えるプレゼンテーション能力と
人の意見を聞いてそれを第三者に伝える能力
これは数学という領域を越えています。
だからこそ面白いし、もっともっと改良できる授業だと思いました。
—– 引用ここまで —–

以前、芝池先生からお話をうかがったときに、「生徒に社会人基礎力をつけさせる必要性を強く感じていて、それを授業の中でやりたい」とおっしゃってたことを思い出しました。その理念が実際の授業に確実に反映しているんですね。

古山さん、ありがとうございました!

●福島さんのレポート

iPadと反転授業の導入レポート ~12/16近畿大学付属高校ICTオープンスクール~

「反転授業の研究」のリーダー的な存在である福島さんも、ICTオープンスクールのレポートをUPしてくださいました。

このレポートを見ると、授業が具体的にどのように行われているのかがよく分かります。

これまで、芝池先生の授業では、授業中にどのようにiPadを使っているのか分からなかったのですが、福島さんのレポートでイメージできました。

—- ここから引用 —–
全員がiPadをつねにONにして、黒板の板書や配布プリントの問題を拡大したり、それに書き込みをするなどして教え合っていました。
iPadに書き込みながら問題のわからない点を指摘したり、他の生徒に教えるという活動ができる点が優れているように思えました。
改善点としては、他の生徒への「教え方」を丁寧に予め説明しておき、徹底すると良いと思いました。
あと、どれだけの理解ができたかを生徒がお互いに質問しあいながらチェックできるようになるとさらに効率的に学習が進むように思えました。
—– 引用ここまで ——

ジグソー法では、担当者が理解をグループに持ち帰って説明するので、その際に、黒板の板書を写真に撮ってきたりするんでしょうか。

教え方を指導する、互いに質問しながら理解度をチェックするというのも、非常に参考になるアイディアだと思いました。

また、中西先生の授業のやり方について、どのように進めているのかが少し分かりました。これは、まだイメージできない部分が多いので、引き続き、情報がほしいです。中西先生のブログにも、実践内容が書いてありました。

最後に、芝池先生と中西先生のブログを紹介します。

芝池先生のブログ「反転授業研究会」  近畿大学附属高校 ICTオープンスクール終了

中西先生のブログ「反転授業への道」  昨日はありがとうございました。

●Facebookグループ「反転授業の研究」では、591名のメンバーがアクティブに活動しており、様々なコラボレーションも生まれています。

参加希望の方は、こちらから追加申請してください。

シンガポールのトップ高を視察してきました

僕が、今回視察したDunman High Schoolは、シンガポールの東側にあり、シンガポールの公立トップ校の1つです。シンガポールでは、小学6年生のときに進路振り分けのテストがあり、そこでトップクラスの成績を取らないとDunman Schoolに入れません。ここは、中高一貫教育で、中学校から95%の生徒が、そのまま高校に進みます。基本的に高校からの入学は受け付けていません。

シンガポールでは、トップ高には様々な優遇措置があり、国から予算がたくさん下ります。通常は、中学卒業時にO-Levelというテストを受け、その点数によって高校が決まり、高校卒業時にA-Levelというテストを受けて、その点数によって大学が決まるのですが、この学校は、O-Levelのテストを免除されていて、6年間の一貫教育を行うことができます。

O-Levelのテストを受けなくてもよいため、国際バカロレアのような柔軟性のあるカリキュラムを組むことができ、科目横断的な学習も行うことができます。

 

学校に着くと、気さくな雰囲気の先生が立っていて、「Are you Masato-san?」と尋ねてきたので、それが、メールでやり取りしていたGi先生だとすぐに分かりました。

教師の労働環境のよさにびっくり

Gi先生に案内されて、職員室の前を通り、応接室のようなところへ入りました。

職員室の前を通ったのですが、一人ひとりに広いスペースが与えられていて、仕事をしやすそうな雰囲気でした。250人の教師がいるということでした。

 

各教師に十分な広さの机が与えられている。

各教師に十分な広さの机が与えられている。

 

応接室だと思ったのは、教師用の休憩室でした。そこには、冷蔵庫やコーヒーメーカー、さらには、マッサージチェアーが置いてあって、自由に使ってよいそうです。

教師用の休憩室

教師用の休憩室

マッサージチェアーで疲れを取ることもできる。

マッサージチェアーで疲れを取ることもできる。

Gi先生は冷蔵庫からジュースを取り出し、僕にくれました。情報と物理のヘッドティーチャーが加わり、ソファーに座って4人で話をすることになりました。

 

すべてをLMSで管理

まず、最初にIT環境について質問しました。

各教室にはプロジェクタータイプの電子ボードが設置されていて、教師のノートPCとつないでWebサイトなどを見せることができるようになっています。

シンガポールのほとんどの学校には、シンガポール大学で開発されたLMSが導入されていて、教師、生徒、親御さんがログインして情報を共有できるようになっているそうです。宿題などが出ると、内容をLMSで確認することができるので、どのようなことを学校で勉強しているのかを親御さんがLMSで確認できるようになっています。

LMSには、たくさんのeLearning教材がアップされていて、生徒が自由に学べるようになっています。また、新聞などの有料コンテンツを教材として使用できるように、学校の予算で購入し、LMSからアクセスできるようになっています。

新聞などの有料コンテンツにアクセスできる。

コンテンツメニューからは、新聞などの有料コンテンツにアクセスできる。

教師は教材をUPすることができる。

Createメニューでは、教師が教材をUPしたり、宿題を出したり、連絡事項を書いたりすることができる。

LMSにアップされているコンテンツを、どのように使用しているのかを質問してみました。

使い方は、大きく分けて2つです。普段の授業で使ったり、長期休みのときの家庭学習に使ったりするそうです。

普段の授業でどのように使うのかは、教師の裁量に任されているので、いろいろな使い方がされているそうです。たとえば、物理のシミュレーションを使った実験とワークを宿題に課して、次の日、それを元にペアワークやグループワークをやってディスカッションするというように使ったりといった使い方もしているそうです。

長期休暇では、Home Based Learningを、LMSを使ってできるようになっています。教師が自分で作成したパワーポイント資料を使って生徒が学び、分からないところをメールなどで質問します。教師は、グーグルドキュメントをクラスで共有して質問への解答をシェアしたり、グーグルハングアウトを使って、1対1でアドバイスしたりしています。

Home Based Learningの体制を確立することは、サーズなどの伝染病が流行って、学校が開けなくなったときのための備えとして、学校に来なくても学べる体制を整えておくという意味もあるのだそうです。

また、生徒に、Web上のコンテンツや、EdxやCourseraなどのMOOCsの講義を紹介して受講させることもあるのだそうです。このあたりは、英語教育をしているメリットだと感じました。

Web上の学習コンテンツが集めてあるサイト:Fast Track@School

eLearningのためのコンテンツは、学校を超えてシェアすることもできます。シンガポール政府が運営するOPALというウェブサイトがあり、そこでは、教師が様々な教材を作成してアップしてシェアしています。

 

Academy of Singapore TeachersのWebサイト

OPALの中はこのようになっている。

OPALの中はこのようになっている。

 

また、Biology Chapter, Chemistry Chapter・・のように、科目ごとに分かれたフォーラムがあり、定期的に集まって情報交換する場も設定されています。

History Chapterのミーティングの様子がUPされていました。

History Chapterのミーティングの様子がUPされていました。

学内には、Wifiが設置されていて、ほとんどの場所から誰もが自由にインターネットにアクセスできるようになっています。生徒は、スマートフォンからLMSにアクセスして、宿題を確認したり、Webコンテンツで勉強したりすることもできます。

 

教師は、雑用が少なく、授業準備に集中できる

次に、教師の仕事内容について聞いてみました。

日本では、教師の仕事が多すぎて、反転授業を導入する場合、講座作成の時間をどうやって確保するかということが問題になってきます。シンガポールではどうかと質問すると、ほとんどの仕事が電子化されているので、書類作成などの仕事は非常に少ないそうです。また、各教師にTeaching Asistantが付き、授業の資料の準備をしたり、コピーをとったりといった作業をやってくれるそうです。また、シンガポールのすべての学校に、マークシートシステムがあり、小テストなどの採点をマークシートで自動でできるようになっているそうです。僕が、私立高校で非常勤講師をしていたときは、小テストの採点が大変だったので、マークシートシステムは、労力を少なくするために非常に有効なものだと感じました。

日本の部活動と似たようなアクティビティがシンガポールの高校にもありますが、そこのコーチは、すべて専門のコーチで、教師がコーチを兼任することはありません。日本では、教師がバレーボール部や野球部の監督をやったりすると話すと、シンガポールではありえないと笑っていました。

部活の顧問などの仕事がなく、多くの雑用をTAがやってくれ、さらに、仕事がIT化されて効率化されているため、日本の教師よりも授業準備に使える時間がかなり多いと感じました。

充実した教師研修の仕組み

次に、教師のスキルアップについて質問しました。

シンガポールでは、プロジェクト型の授業や、ペアワーク、グループワークも日常的に取り入れられているし、パワーポイント資料を作ってLMSにアップするという仕事があるため、ITスキルも要求されます。

1年目から14年目までの教師には、年間400SGD(約33,000円)、15年目以上の教師には年間700SGD(約57,000円)の予算が与えられ、その範囲でスキルアップのための研修を受けることができます。研修には、さまざまな種類があります。いくつか例を挙げると、

・ITスキルアップ
・カウンセリングスキルアップ
・ファシリテーションスキルアップ
・親とどのように話したらよいかのスキルアップ

この他にもさまざまなスキルアップ講座があるそうです。教師は、これらの講座を利用しながら、必要なスキルを身につけていきます。

ノートPCやタブレット端末を持ちあるく生徒たち

次に、生徒のITデバイスについて質問してみました。

ほとんどの生徒は、スマートフォンを持っていて、学校に持ってきてもよいことになっています。また、ノートPCやタブレット端末などを授業で使うことが多いため、自分のものを学校に持ってきます。プロジェクト型の学習をするときには、ノートPCやタブレット端末でインターネットにアクセスして調査し、その結果を、Webサイトにまとめて学校のサーバーにFTPでアップロードしてシェアしたりするので、ノートPCやタブレット端末が必要なのです。教室にもいくつかノートPCが用意されていて、持っていない生徒に貸し出しています。

日本のように、同じデバイスを学校が配布するといった発想はなく、どんな端末でもよいから自分のものを持ってきてOKで、必要なら学校で貸すというスタンスです。

共通のアプリケーションがなければ、教えるときに不便じゃありませんかと質問すると、アプリケーションは、LMSに入れてあるので、端末によらずに同じものを使うことができるということでした。

インターナショナルスクールに視察に行ったときも、食堂や、公共スペースでノートPCを広げてWebにアクセスしている生徒をよく見かけました。プロジェクト型学習を取り入れている高校などでは、ノートPCを持ち歩くというのがグローバルスタンダードになっているように感じました。

 充実したインフラ

この後、学校の施設を見せていただきました。

最初に通ったのは、留学生ようの宿舎でした。

Dunman High Schoolにはインターナショナルスクールも併設されていて、300名が宿泊できる宿舎が学校内にあり、マレーシアやインドネシアなど海外からの学生がそこで生活しながら学んでいます。

インターナショナルスクールに通う生徒は、公立校の生徒と共通の授業もあり、別々の授業もあるのだそうです。どちらも英語で授業をしているので、共通でも授業ができるのですね。

学校内には、Wifiが飛んでいて、ほとんどの場所からインターネットにアクセスすることができます。学校がやっている時間に行けば、食堂や公用スペースでノートPCを広げてWebサイトを見ている生徒をたくさん見ることができるでしょう。

図書館は、1階は、中国語、人文、科学の3つのエリアに分かれていて、それぞれの分野の基本的な本がおいてあり、2階には専門的な本が置いてあります。図書館には、調べ学習やディスカッションを行うための小ルームがいくつもあり、そこに資料を持ち込み、ノートPCを開いてディスカッションできるようになっています。さらに、中国語用、人文用、科学用の3つの教室(講堂というくらい立派)があり、外部から先生を呼んで授業をするときなどに使うとのことでした。

中国語の本のスペース

中国語の本のスペース

生徒がデザインしたスペース

生徒がデザインしたスペース

2階のスペース

2階のスペース

校庭は、陸上用のトラックとサッカー場が一緒になっているもののほかに、ネットボール用のコートがあります。室内施設としては、バレーボールやバスケットボールをすることができる体育館と、多目的ホールがあります。多目的ホールには、今度、試験があるということで机が並べてありましたが、普段は、バドミントンコートになったり、演劇やダンスの発表をする場所になったりするそうです。

陸上トラックとサッカーコートが一緒になったグラウンド

陸上トラックとサッカーコートが一緒になったグラウンド

ネットボールのコート。朝礼などもここで行われる。

ネットボールのコート。朝礼などもここで行われる。

体育館。バスケットやバレーボールができる。

体育館。バスケットやバレーボールができる。

多目的ホール。この日は、試験会場のための準備がされていた。バドミントンコートにもなる。

多目的ホール。この日は、試験会場のための準備がされていた。バドミントンコートにもなる。

これらの施設を見ると、学校に大きな予算が下りているということが推測できます。

 

テキストを使わない授業

次に、授業のやり方、ICT環境について質問しました。

シンガポールでは、国が定めたシラバスはあるものの、学習指導要綱のような厳密なものはありません。教科書も一応購入していますが、使わない教師も多く、自分で作った教材などを使って教えているとのことです。

一斉授業で知識を導入し、その後、ペアワークや、グループワークで問題演習などを行い、適時、LMSを利用してWebコンテンツを使った宿題を出すという流れで普段の授業は進んでいるようです。

グループワークなどのノウハウは、前述の教員向けのスキルアップ講座によって身につけることができます。

プロジェクト型の学習も盛んで、図書館の資料やインターネットで検索したものを元にWebサイトを作成して、スクールサーバーにアップするといった試みもしているとのことでした。

プログラミング教育

僕にがっ今日を紹介してくれたGi先生は、情報の先生で、生徒にプログラミングを教えています。生徒が作ったものを見せてもらうと、惑星の運動のシミュレーションから、経済の価格決定のシミュレーションなど、様々なプログラムがありました。これらは、教科の学習と関連付けて、生徒が自由に選んで作成しているとのことでした。

Google App engine を利用したアプリケーションの開発も行っていました。ここで使用できる言語のうち、どのようなプログラミング言語を学んでいるのか聞いてみたところ、Pythonを使っているとのこと。以前は、JAVAを使っていたところ基本の習得に2ヶ月かかっていたが、Pythonに変えたところ、英語ベースの簡単な言語のため、2週間で基本の習得が終わり、プログラム作成へ入れるようになったとのことでした。

かなり複雑なゲームを作っている生徒もいて、創造力を大いに刺激される授業を展開していることが見て取れました。

 

最後に

3時間にわたる視察を終えて、「ノートPCなどを学校に持ってきて、プロジェクト型学習を行う」ということが最初にあって、それが効果的に行えるように、Wifi設備や、図書館のデザイン、スペースの設計などが行われているという印象を受けました。

また、LMSが、ICTを使った教育の中心にあり、大きな役割を果たしていることも印象的でした。

また、それらを使いこなすための研修制度も充実していて、教師が創造性を発揮する環境が整っているように感じました。

目からうろこだったのは、LMSにWebアプリケーションをインストールし、それらを使って学習することにより、端末は何でもよくなるということです。学習環境をそろえるために、タブレット端末などに同じソフトをインストールして配布するというのも一つの方法ですが、端末は生徒が自分自身のものを使い、もっていない生徒には学校側が貸し出し、Webアプリケーションで環境を統一するという方法であれば、反転授業などを行う環境構築のコストを下げられるのではないかと思いました。

最後に、快く視察に協力していただいたGi先生をはじめとする先生方、母校を紹介してくださったChiewさんに心から感謝いたします。

 

■参考リンク:Web上でシンガポールの教育について分析しているものを集めました。

「未来の学校」と子どもの未来:シンガポール発・ICT教育の最前線

シンガポールの学校教育現場でのICT利活用状況 調査報告

シンガポール教育省・国立教育研究所視察

シンガポールの徹底した国家戦略(教育)

世界に先駆けたシンガポールの国家戦略

 

 

 

●Facebookグループ「反転授業の研究」では、477名のメンバーがアクティブに活動しており、様々なコラボレーションも生まれています。

参加希望の方は、こちらから追加申請してください。

反転授業に変えて5%成績が上がった本当の理由

以前、「反転授業の効果は、試験の点で5%アップ」という記事についての分析記事を書きました。

「反転授業の効果は、試験の点で5%アップ」の分析

 

この記事は、Twitterなどでも非常に多くリツィートされ、やっぱり反転授業は効果的なんだ!という印象を世間に与えたと思います。

しかし、分析記事に書いたように、元記事を読む限りでは、5%アップという結果はすごいことなんだ!ということばかりが強調され、具体的にどのような授業が行われ、どのように比較したのかが分かりませんでした。

それで、とりあえず判断を保留し、さらなる情報が出てくるのを待つことにしました。

今回、非常に詳しい記事を見つけましたので、その記事を元に考えていきたいと思います。

その詳しい記事とはこちら↓

The Post-Lecture Classroom: How Will Students Fare?

 

この記事によると、研究対象になったのは、University of North Carolina’s Eshelman School of PharmacyのMumper教授の基礎調剤学のクラスです。

反転授業を行うときに「予習してこない生徒が多いと成立しない」という問題が指摘されることがありますが、この事例では、Pharm.D(米国で6年制薬学教育を終了すると与えられる称号)を取るという明確な目標があるため、学生の学習意欲が高く、予習率を高めるための工夫というものは、基本的にしなくてもよい状況のようです。

調査は、1年生を対象とした調剤学の授業に対して行われました。学生は週に2回、90分の授業を受け、中間試験と期末試験が課されます。

2011年は、参考文献を読んでくることを宿題とし、パワーポイントを使った普通の講義形式で行いました。

Mumper教授の悩みは、教えなくてはならない内容が多すぎることと、パワーポイントだと学生の気が散ってしまうことでした。

 

2012年は、Echo360というシステムを導入し、反転授業を実施しました。

学生は自宅で短い講義ビデオを見ることと、2011年と同じ参考文献を読んでくることを宿題として課しました。

教室では、まず、パワーポイントで選択式の問題を表示し、学生がクリッカーを使って回答します。

学生の正答率がリアルタイムで分かるので、Mumper教授は、生徒が何を理解していないかを理解することができ、そこを重点的に説明することができます。

次に、学生はペアになり、Mumper教授が、宿題で学んできた内容を応用しなくてはならないような質問をします。

ペアになった学生は質問内容に対して議論し、そこで分かったことは教室で共有されます。

タームが終わるまでに、Mumper教授は生徒の理解度が低そうな部分を、質問で網羅することができました。

最終タームには、学生はグループになり、宿題を通して理解したことを10分間で、他の学生に対してプレゼンテーションし、議論するという授業形式になりました。Mumper教授は、そのときには、問題を出します。

※10分間のプレゼンテーションは、学生が最も嫌がったもので、2013年には変更になりました。

 

2013年は、自宅で学生に短い講義ビデオを見てくることと、学習内容に関連した臨床研究を宿題として課しました。

※参考文献を読んでくること→学習内容に関連した臨床研究 と変更

授業で行われていたプレゼンテーションやクイズの代わりに、臨床研究について議論しました。クイズは、授業後にオンラインで確認のために行われるようになりました。

 

2011年と2012年とで成績を比較すると、成績が2.5%上昇し、2012年と2013年とを比較すると、成績が2.6%上昇し、3年間の間に5.1%の成績の上昇が見られたとのことです。

これをどのように捉えるかということですが、一斉講義型だった2011年から、講義部分を動画に置き換えてアクティブラーニングを導入したことによって2.5%の成績アップになったのは、学習時間が増えたことが原因というよりも、受動的な学習から能動的な学習へ変化したことのほうが原因として大きいと思います。単純に予習時間だけを比べると、確かに、「短い講義動画」を見る時間の分だけ長くなっていますが、それよりも、教室での活動の劇的な変化のほうが結果に及ぼす影響が大きいと考えるのが妥当でしょう。

 

注目すべきは、2012年から2013年にかけて2.6%の成績上昇が見られたということです。

これは、単なる科目として学ぶことと、「臨床研究」という実践的な内容で学ぶこととでは、効果が大きく異なってくるというように理解できるかもしれません。アクティブラーニングの内容を考える際に、非常に参考になる事例だと思います。

 

この調査は、生徒中心のアクティブラーニング型の授業にし、内容を実践的でエキサイティングなものにすると、学習効果が大幅に上がったということを示していると思います。

授業改善に向けて、非常に参考になる記事でした。

 

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「反転授業の効果は試験の点で5%アップ」について

2013年9月18日にTech ClunchにGregory Ferensteinが投稿した記事が、世界中の教育関係者に注目されている。

記事のタイトルは、

The Flipped Classroom Boosts Grades 5%. Why That’s As Big As We Can Expect.

(日本語版はこちら)

 

反転授業(Flipped Classroom)を使用した結果、テストの点数が5%上昇したという内容の記事で、ICTをに関わる人にとっては非常に勇気付けられる結果である。

しかし、記事を詳しく読んでみると、いくつか疑問がある。

まず、5%という数字が、どのような条件で比較研究された結果なのかが記事からはよく分からない。

原典をあたってみようとしたが、「Academic Medicine誌とThe American Journal of Pharmaceutical Educationに載る予定」ということで、Gregory Ferensteinが、発表前の研究を研究者から説明されてこの記事を書いたということのようだ。

記事には、研究論文の投稿先がAcademic Medicine誌とThe American Journal of Pharmaceutical Educationという薬学教育系の雑誌であることと、「薬学部の学生の場合、反転授業を受けた者の方が講義型の学生よりもやや結果が良かった。」とあるので、5%という数字は、薬学部の学生に対して行った調査ということのようだが、その後、高校生や大学生へのタブレットの普及率の話が続き、比較研究の条件がはっきりしない。大学生向けの授業ということであれば、教授が動画講義やパワーポイントを使ったスクリーンキャスト動画などを作り、予習としてあらかじめ受講させておき、教室での活動をディスかションや実習中心にしたということであろうか。

 

記事中で、Gregory Ferenstein氏は、しきりに「5%というのはすごい」と強調するのだが、その数字が出てきた背景が分からない以上、5%という数字だけを取り上げて評価することは、現段階では難しい。研究発表が公開されるのを待ち、改めて検討したいと思う。

 

さて、5%という数字を除けば、オンラインと対面教育を組み合わせたほうが、オンラインだけ、または、講義だけよりも学習効果があるということは、以前から言われていることである。

その根拠となったのが、2009年に出されたアメリカの教育省の研究結果である。

現在は、2010年に改定された報告書を見ることができる。

これは、アメリカ政府がオンライン教育に予算を使うべきかどうかを調べるために、オンライン教育の学習効果を調査したもので、K-12(幼稚園から高校生まで)を対象に、2002-2005年に行われた調査を中心に分析し、さらに、2007-2009年の調査を考慮したとある。

この報告書は、反転授業の推進をサポートする証拠のように扱われているのだが、この報告書では、「反転授業(Flipped Class)」という言葉は、一度も使われておらず、あくまでもオンライン学習の学習効果を調べているというものだということである。

この報告書についての東大の山内教授の記事を引用する。

—- ここから引用 —-

報告書のExecutive Summaryから主要な知見を引用します。

・対面状況よりも、一部または全てオンライン学習を受講した学生の方が成績が高い。
・オンラインと対面を組み合わせた教授は、対面だけ、オンラインだけよりも効果が高い。
・オンラインが対面よりも効果が高い理由は、学習時間が延びたからである。
・効果は内容や学習者の特性に依存しない。

—- 引用ここまで —-

注意すべきは、これらの研究報告の元になるデータは、Khan Academyなどの現在のEdTechを用いたものではなく、一時代前の「オンライン教育」を用いた結果だということだ。

現在のEdTechをフル活用した反転授業が、旧来の講義型の授業に比べてどれだけの学習効果を上げるのかを示した報告書を、僕はまだ見たことがない。

だからこそ、Gregory Ferenstein氏の記事にある研究の条件を正確に知りたいのであり、論文の公開を冷静に待ちたいと思う。