たとえ話で分かる!「ID理論を使って授業改善をしてみよう」

田原です。
 
2/23日から4週間で実施するオンライン講座「インストラクショナルデザイン(ID)の理論を使って授業改善をしてみよう」
 
ワークショップ型のオンライン講座は、日本でもまだまだ珍しいものなので、インストラクショナルデザインをオンラインで学び合いすると、どんなことができるようになるのか?
 
ちょっとイメージするが難しいという方もいらっしゃると思います。

そこで、「インストラクショナルデザイン(ID)の理論を使って授業改善をしてみよう」の講座のイメージを、たとえ話で伝えてみたいと思います。
 
それでは、たとえ話スタート!

★ID星からきたヨネシマンとアサダマン★
 
ユフさんは高校教師。
 
反転授業を導入して英語を教えています。
 
「今年の授業も終わり。来年、どうしよー。」
 
「アクティブラーニングに乗ってきた生徒と、そうでない生徒がいたんだよなー。どうすればいいのかな。」
 
ヨネシマン「IDの理論にヒントがあるかも。じぇじぇ!」
 
「あ!ヨネシマン」
 
「生徒にもっとやる気を出してもらいたいだよね。どうしたらいいのかなー。」 
 
ーーヨネシマンは、口からARCSモデルを取り出したーー
 
「なるほど。私の授業には、R(関連性)の部分が欠けていたのかもしれない。」
 
「でも、どうしたら、私の授業にRを組み込めるだろう??」
 
  
  
仲間たち「私はこうやってる。私はこうやってる。私はこうやってる・・・・・・・・・・・・・」
 
へぇーーー。いろんなやり方があるのね。仲間たちのやり方を見ていたら、自分のやり方を思いついちゃった。
 
でも、問題はそれだけじゃないのよね。
 
授業がうまくいったかどうか、いつも何となく、直感で判断していたんだけど、もっとちゃんと判断できないのかなー。
 
 
アサダマン「目標記述をやるといいよ。シュワ!」
  
「あ、アサダマンだ!」
 
「確かにそうね。目標がはっきりしていなかったから、うまくいったかどうかの判断もできなかったのね。だから改善もしにくいのね。」
 
ーーアサダマンは、ADDIEモデルをテレパシーで送ってきたーー
 
なるほど。改善していくための仕組みを作っておくわけね。
 
でも、実際に目標を記述しようと思ったら、どう書いていいかわからないんだけど。。
 
仲間たち「私はこうやってる。私はこうやってる。私はこうやってる・・・・・・・・・・・・・」
 
そうか。そうやればいいのか。やり方が分かってきた。
 
「じぇじぇ!」「シュワ!」
 
 
このようにして、ヨネシマン&アサダマン&仲間たちとの学びは4週間続き、ユフさんの授業は、どんどんブラッシュアップされていったのであった。
 
★たとえ話終了★

このたとえ話を作ったら、江藤由布さんが、これをビデオにしてくださいました。
 
とりあえず、これを見てください!!

ID講座一人芝居(2015-02-09 10.16) from eigotokka on Vimeo.

 

オンライン講座では、運営ボランティアも合わせて30-40名での学び合いを行います。
 
IDの理論を学び、専門家の米島さん、淺田さんが考えた問いを手掛かりに、自分の授業を振り返ります。
 
そのときに、一緒に学んでいる仲間の取り組みをMoodleのフォーラムですべて見ることができます。
 
5-6人のグループを作り、ワールドカフェ形式でメンバーを入れ替えながら、多くの人の考えを参考にしつつ、学んでいくことができます。
 
この「仲間たち」の存在が、あなたの学びを促進してくれると思います。
 
つまづいたときには、米島さん、淺田さんから適切なアドバイスをもらうことができます。
 
4週間で、授業を様々な角度から見直すことができ、いろんなアイディアが湧き、希望に溢れて新年度に向かうことができると思います。
 
詳しい内容はこちらをご覧ください。

場の力を信じてコントロールを手放していくとドラマが起こる

田原です。こんにちは。

アウトプットを繰り返していくことのメリットの1つは、自分の中の整合性が高まっていくということだと思います。

バラバラだった考えが、アウトプットするたびにお互いにつながっていき、自分自身に対する説得力が増してきます。

ときには、考えがつながっていった結果として、内在していた矛盾が表面化してくるときもあります。

突き詰めて考えていった結果、こっちの発言と、あっちの発言は矛盾しているということに気づくのです。

矛盾を抱えた状態は苦しいので、矛盾を解消しようとして、考えや行動を変えることになります。

前回の「ファシリテーションスキル入門」のときに僕の心の中に生まれたは、まさにそういう矛盾であり、矛盾を解消するために「集客」という手法を手放すことになりました。

「ファシリテーションスキル入門」での気づき

もう少し詳しく説明します。

ファシリテーションについて学んでいくうちに、あることに気づきました。

ファシリテーションスキルとは、グループ間にフラットな関係を築き、メンバーが生き生きと活動できるようにして、そこから様々な価値を創発させるためのスキルだということに気づいたのです。

グループ内に権力関係があり、少数の人が他の人をコントロールしてしまうと自由な活動は抑制され、自己組織化は起こらなくなります。

ファシリテーションについて学び、アウトプットしていくうちに、自己組織化が起こるような場を作るためには、運営者が場の力を信じてコントロールを手放し、関係をフラットにしていくことが必要だということについて、本当の意味で腹落ちしました。

しかし、それは、僕の中に大きな矛盾を引き起こしました。

「ファシリテーションスキル入門」というオンライン講座を、いわゆるWebマーケティングの手法を使い、講座のメリットを書きたてて、販売していたからです。このような枠組みは、運営者側と受講者側の間に、教える側と教わる側という明確な区別を生み出してしまい、フラットな関係を築くことの妨げになっているのではないかと思ったのです。

ファシリテーションに対する理解が深まったことで、講座販売の手法との間の矛盾が生じ、身動きが取れなくなりました。

それで、そのことを正直に書き、申し込みページをすべて書き直しました。

それが、こちらです。 → 「ファシリテーションスキル入門」(講座は終了しています)

コントロールを手放したらドラマが生まれた

その結果、いろんな人からメッセージが届きました。

たくさんのアドバイスをもらいました。

江藤由布さんは、受講者なのに、講座紹介のビデオを作ってくれました。

講座は、過去最高の盛り上がりを見せ、脱落者ゼロを達成し、週末の雑談ルームは毎回大盛況。講座が終わってからは、OG・OBのFBグループが自発的に生まれました。
 
これは、僕にとって、全く予想を超えた出来事でした。そして、すべてが予定通りに進めようとして管理するよりも、コントロールを手放して、場を信じて、予定外の素敵なことが起こるほうが何倍も楽しく、学びが多いのだということを理解しました。

この経験を通して、これまでは、運営者である僕が、メンバーの主体的な活動を抑制していたのかもしれないと思い、これからやる講座は、できるだけ場の力を信じて運営していこうと決意しました。

教室との相似関係

講座の運営は、教室の運営と相似関係にあります。

教師が場の力を信じてコントロールを手放すことで、生徒が主体的に活動する余地が生まれるのです。

これが、反転授業やアクティブラーニングが成立するための非常に重要なポイントだと思います。

壇上の賢人から寄り添うガイド役へ

というキャッチフレーズは、壇上で生徒をコントロールしていた役割を手放し、生徒の主体的な活動を支援していくという役割の変化を表すものだと思います。

しかし、自分自身も感じていることですが、コントロールを手放すということは、なかなか難しいことです。

よい結果になるという保証がないからです。ついつい保証を求めてしまいたくなると、管理を強める誘惑に駆られます。

そんなときに役立つのは、体験をシェアすることではないでしょうか。

コントロールを手放しても、「いきあたりばっちり」で素敵な結末がやってくるということを信じられるようになれば、場の力を信じて任せることができるようになってくると思います。

「反転授業の研究」は、主体的な学びを実現するための方法を学び合う場です。

ですから、「反転授業の研究」が運営するオンライン講座は、場の力を信じてコントロールを手放し、ドラマを生み出していくようなものにしたいです。

そこでの体験をシェアすることが、教室で悪戦苦闘している教師に対するエールになると思います。

ドラマが始まった~運営ボランティアの導入

ファシリテーションスキル入門での素敵な体験を経て、「インストラクショナルデザイン(ID)の理論を使って授業改善してみよう」では、さらにもう一歩進める決意をしました。

それが、運営ボランティアの導入です。

運営者と受講者という関係を崩していくための切り札になると思っています。

運営ボランティアの導入については、京都精華大学の筒井洋一さんの情報メディア論で導入されている授業協力者(CT)を参考にしました。どのようにして授業をやっているのかを知りたくて、京都精華大学まで見学に行きました。

内発的動機に基づいて行動する人が加わることで、学生の主体的な行動が促進されていく様子を見て、これこそが僕たちの未来を切り開くものなのではないかと思いました。

それで、4-5人の運営ボランティアを募集しようと思い、これまでにオンライン講座を受講したことのある人のリストに一括メールを送りました。

誰か、手を挙げてくれるといいなーと思いながら、恐る恐る送信ボタンを押しました。

するとメールを送った後、1時間くらいのうちに、次々と「やります!」というメールが届き、あっという間に5人になり、募集を締め切るメールを送ることになりました。

しかし、その後、

「もう運営ボランティアは、締め切ってしまったのですね。」

「やりたかったけど、仕方がないですね。」

というような、残念そうなメッセージが何通も届き・・・・。

結局、人数を増やすことになり、9名のモチベーションがものすごく高い運営ボランティアと一緒に講座の企画をすることになりました。
 
運営ボランティアの方は、テーマによっては講師の役割を担うことができる実力を持った方たちで、こちらからお願いしようと思っても、これだけ力のある人たちを9人もボランティアで集めるのは不可能です。本当に貴重なことだと思います。

申し込みページを見ていただけると分かるのですが、講師と運営ボランティアを合わせると、

・高校教師
・日本語教師
・塾講師
・大学教員
・医療教育
・企業研修

など、様々な属性をカバーすることができています。これは、講座内容を決めていくときに、各属性の方のニーズを把握することができ、とても役立ちました。

「印刷できるチラシがあればいいのではないか」

というアイディアは、運営ボランティアの倉本龍さんから出てきたものです。職員室で同僚に紹介するときには、印刷したチラシがあったほうがよいという経験に根差したアイディアで、早速、採用することになりました。

(印刷用のチラシのダウンロードはこちら :自由に印刷して配布してください。)
  

ドラマは広がる~受講者が熱心に講座を広めてくれる

 
講座の告知をしてすぐに申し込んでくださったうちの一人が、薬剤師の松本梓さん。
 
好奇心と行動力に溢れた方で、ファシリテーションスキル入門に続いての受講となりました。
 
Facebookを眺めていたら、講座のことを熱心に紹介して下さっている投稿を発見。松本さんの投稿でした。
 

教えることは学ぶこと。
 
2014年、緩和ケア科ローテーター向けのレクチャーを担当するという幸運を頂きました。

初めは、
「私が医師に教える事なんて…(>人<;)」
と尻込みしていました。

けれど、毎回毎回ポジティブなフィードバックを頂き、改良を加えてより効果的に、より深い学びを、と探索していった結果、とても大きな成長を得られたことに気づきました。

びっくりです。

そして、私自身が何を提供したいと思っているかも、少しずつですが、見えてきたような気がします。

今年はさらにたくさんの医師が緩和ケア科をローテーションしてくださるそうで、私もレベルアップのためにこちらの講座に参加します(*^^*)

私の、オンライン講座との出会いは去年の「ファシリテーション入門講座」。

初めての本格的なファシリテーションの学びでしたが、素晴らしいサポート体制のお陰で、最大の学びを得る事ができました。

さらに、一緒に受講していた教育に情熱を燃やす素敵な先生方と繋がる事ができました。

自宅でも受講可能なオンライン講座。

今回は、医療教育にシュミレーション教育を導入されている先生も講師に立たれるということで、とても楽しみです☆

 
受講者の方が、自発的に講座を熱心に勧めてくれるというのは、素敵なことです。
 
講座の温度が、確実に上がってきました。

さらにドラマは続く~推薦文を書きたいという依頼が来た

昨年実施した「反転授業やりたい教師のための授業設計入門」の受講者である(有)ふぁいん代表の加藤久美子さんから、次のようなメッセージが届きました。

「IDの講座に受講生の声(推薦文)を書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」

推薦文というのは、一般的には、運営側がお願いして、場合によっては報酬を支払って書いてもらうものですよね。

加藤さん:「推薦文を書きたいけどよろしいですか。」

田原:「はい。お願いします。」

このやり取りは、まったく一般的ではありません。ファシリテーション入門のときの江藤さんのように、ここでは、とても素敵なことが起こっています。

今回の講座でも、すでにドラマは始まっています。

どんな結果になるのかは分かりませんが、「いきあたりばっちり」をだいぶ信じられるようになってきました。

きっと素敵な結末が待っていると思います。

加藤さんの推薦文を追加しました。講座紹介はこちら↓

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インストラクショナルデザイン(ID)の理論を使って授業改善してみよう

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なぜ、今、インストラクショナルデザインを学ぶのか?

こんにちは。Facebookグループ「反転授業の研究」を主宰しています田原真人(たはらまさと)です。

2012年にFacebookグループを立ち上げてから、教育分野における劇的な変化を肌で感じてきました。昨年1年間だけでも、次のような変化がありました。

  • 2014年、佐賀県の武雄市で、すべての小学校にタブレット端末を配布し、反転授業を実施。
  • 文科省が初等中等教育において「アクティブラーニング」を重視する方針を打ち出した。→中教審答申
  • わずか1年半で、「反転授業の研究」が2600人以上のグループになった。

今後、多くの学校で反転授業やアクティブラーニングの導入が進んでいくのではないかと思います。

でも、教師にはそれぞれ、今まで工夫を重ねてきた授業スタイルがあります。そこには、あなたの教育に対する思いが込められているはずです。それを変えることは簡単なことではないと思います。

だから、ゆっくり考えていきたいです。

キーワードは、「社会構造の変化」「本当に生徒の役に立つ教育」です。

この2つのキーワードが重要だということは、多くの方が納得して下さると思います。

社会構造の変化を踏まえて、これからの世界を生きる生徒にとって本当に役立つ授業とはどんなものなのかを、一緒に考えていきませんか?

この文を最後までお読みいただくと、私が、なぜ、反転授業を実践しているのか、なぜ、インストラクショナルデザインを学んでいるのかが分かっていただけると思います。

21世紀に羽ばたく子供たちに求められるスキルとは

まずは、社会構造の変化から考えていきましょう。

21世紀は変化の激しい社会だと言われています。急激にグローバル化が進み、それに伴い、社会構造が変化しています。

日本の社会構造は、工業化社会から知識基盤型社会へ移行しつつあり、「反復的な作業」「基礎知識のみが必要な作業」「肉体労働系の作業」といった仕事は、開発途上国へアウトソースされる割合が高まり低コスト化しています。

経済学者は、今の大学生が退職するまでの約50年間、「15種類以上」の仕事に就くだろうが、それらの仕事は「現在存在しない職種」であると述べています。現在、先進国で需要のある職種のうちトップ10に入っているものの多くは、2004年には存在しなかった仕事です。

仕事の内容や職種が常に変化し、今後、どのような種類の仕事が生まれるのか、そしてどのようなスキルが必要とされるのかを予測するのは難しくなっています。

このような社会構造の変化により、教育は、どのように変わることが求められているのでしょうか?

 

20世紀の日本は、終身雇用を土台とした工業化社会でした。このような社会で必要なのは、マニュアルに従って素早く正確に作業を行うスキルでした。

社会的要請と一致する形で、ほとんどの教室では一斉講義型の授業が行われ、教科書の内容を理解したり暗記し、正確にアウトプットできるように習得することに重点がおかれていました。

 

しかし、知識基盤型社会では、答が分からない問題に対して取り組む力が必要になります。

そのために必要なのは、批判的思考力をはたらかせて仮説を立て、それを検証すること。つまり、試行錯誤を繰り返しながら、問題解決していく力です。

多くの問題は個人では解決できないので、コミュニケーションを図りながらコラボレーションしていくことも必要になってきます。

このような知識基盤型社会で必要となってくるスキルは、21世紀型スキルとしてまとめられています。

21世紀型スキル

  • 批判的思考力(批評精神を持って考える力)と問題解決能力
  • コミュニケーションとコラボレーションの能力
  • 自立的に学習する力
  • ICT(情報通信テクノロジー)を確実に扱うことのできる能力・スキル
  • グローバルな認識と社会市民としての意識
  • 金融・経済に対する教養
  • 数学、科学、工学、言語や芸術といった分野への理解を深めること
  • 創造性

21世紀の授業が目指すもの

社会構造の変化を踏まえると、21世紀に生きる生徒に役立つ授業には、

「物事を批判的に捉えて仮説を立てて検証し、試行錯誤を通して問題解決方法を見つけていくスキルの養成」

「生徒が仲間とコミュニケ―ションをとり、協力していくスキルの養成」

などが入ってくると思います。

これらは、生徒が主体的に学んでこそ、身につけることができるスキルです。

でも、どうしたら、生徒は主体的に学ぶのでしょうか?

これは、なかなか難しい問題です。

教師が教壇から、「主体的になれ!」「失敗を恐れるな!」と声高に叫んだり、成績などの「アメとムチ」を使って教師がコントロールを強めたりしても、多くの場合、失敗します。逆に、生徒の主体性は抑圧されていき、失敗を恐れるようになってしまいます。

しかし、一方で、コントロールを弱めて放任すれば、一人で学ぶ力が十分に育っていない学習者は、学びそのものをあきらめてしまうでしょう。

教師の中には、この「管理と放任のジレンマ」に陥っている方も多いと思います。

私は、21世紀の授業は、管理と放任の中間領域に存在すると考えています。つまり、

生徒が主体的に学べるような学習環境を作り、生徒に適切な自由を与えて試行錯誤させる

ということなのではないかと思います。

  • インストラクショナルデザイン(ID)
    → 生徒が学べるような学習環境を作るのに役立つ理論
  • ファシリテーションスキル
    → 生徒に適切な自由を与えて試行錯誤させるのに役立つスキル

この2つは、21世紀の授業を支える土台なのです。

そして、この土台の上で、生徒の試行錯誤を支援していく授業スタイルが、アクティブラーニング型授業や反転授業です。

インストラクショナルデザインの知識は、21世紀へ羽ばたく子供たちを育成したいと願う教師の心強い味方なのです。

だから、私は、反転授業を実践し、インストラクショナルデザインやファシリテーションを学んでいるのです。

インストラクショナルデザイン(ID)の理論を使って授業改善する

「社会構造の変化」と「本当に生徒に役立つ授業」という2つのキーワードで考えたときに、生徒が主体的に学べるような環境作りが必要だという結論を得ました。

そのような学習環境を作るために、インストラクショナルデザインの知識を利用することができます。

このオンライン講座では、授業設計に役立つ7つのID理論を学びます。

  • ガニエ9教授事象
  • メーガー三つの質問
  • メリルの画面構成理論
  • メリル インストラクションの第一原理
  • ケラー ARCSモデル
  • ガニエ 学習成果の5分類
  • ADDIEモデル

1週間に、1つ、または、2つのID理論を学びます。そして、それらの理論をもとに、メイン講師の米島さんの出す問いを手掛かりにして、授業設計について考えていきます。

あなたの授業は、このうちのいくつに「Yes」と答えられますか?

  • 「あなたの単元、授業は構造化されていますか?」
  • 「あなたの単元、授業では到達目標が明示されていますか?」
  • 「学習者一人一人が目標に到達したかどうか判定するテストはありますか?」
  • 「学習内容は課題分析されていますか?」
  • 「あなたの単元、授業、教材など、それぞれの階層の教授単位ではフレームを用いていますか?」
  • 「あなたの単元、授業は現実の世界に応用できますか?」
  • 「あなたの授業、教材は学習の動機付けが考慮されていますか?」
  • 「あなたの授業では学習内容に応じた最適な学習形態、学習提供手段が選択されていますか?」
  • 「あなたの単元、授業はISDに準拠してデザインされていますか?」
  • 「またデザインプロセスにおける形成的評価はされていますか?」

もし、「No」がたくさんある場合は、この講座で授業を大きく改善できると思います。

これまでになかった新しいオンラインの学び方

本講座では、受講者と授業協力者の5-6名の混成グループをいくつか作ります。

問いに対応する課題をMoodleのフォーラムに提出し、グループ内で相互にコメントし合うことで、各理論についての理解を深め、さらに自分の授業との関連性への気づきを深めていきます。

Moodleのフォーラムを使った非同期のグループワークは、毎週メンバーをチェンジするワールドカフェ形式で行います。

また、週に1度、GoToMeetingのオンラインルームに集まってリアルタイムセッションを行い、それぞれが1週間で学んだことを共有します。

このときは、受講者が一人ずつビデオチャットで登場し、2分程度、その週に学んだことについてコメントしたり、講師に質問したりします。

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※写真は「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」のときのものです。

その他に、週に1度、オンラインの雑談部屋を開きます。まじめなリアルタイムセッションとは違って、雑談部屋は本音トークが飛び交います。授業実践に取り組む中で生まれる悩みを雑談部屋でシェアすることで、意外な解決策が見つかることもあります。

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※写真は「AL型授業実践者のためのスキルアップ講座」のときのものです。

様々な運営上の工夫を重ね、「反転授業の研究」が主催するオンライン講座は、2回連続で脱落者ゼロを達成しています。

オンラインであっても、「会っている」「参加している」という実感を感じることができるからかもしれません。

これまでの講座では、講座終了後も受講者同士の関係性が継続し、多くのコラボレーションや、オンラインの学習コミュニティが生まれています。

教師の主体的な学びが、生徒の主体的な学びを促す

私たち教師の多くは、20世紀型の授業を受けて育ってきました。

21世紀に対応できる子どもを育てるような授業をしたいと思えば、私たちは、体験したことのない授業スタイルを、試行錯誤しながら見つけていかなければならないのです。

しかし、視点を変えると、ここには大きな希望があります。

それは、「管理と放任のジレンマ」を乗り越えるための切り札でもあります。

「反転授業の研究」で多くの実践者に触れる中で見つかった重要な知見があります。

それは、

教師の主体的な学びが、生徒の主体的な学びを促す

ということです。

 

私たちは、教師が学ぶことのできる環境をFacebookに作り、2600人の多様な属性を持った仲間と日常的に学び合いを行っています。

そして、今回は、Facebookグループの有志により、21世紀の授業の土台となる知識であるインストラクショナルデザイン(ID)を学ぶ場を作りました。

 

せひ、あなた自身が、21世紀型スキルを発揮し、インストラクショナルデザインについて主体的に学んでください。

教師のあなたが、失敗を恐れずに新しい授業スタイルに取り組み、試行錯誤する姿こそが、あなたの生徒の主体的な学びを促すのです。

 

私たちがオンラインに構築する学習環境と、ファシリテーションのやり方について知ることも、あなたにとって役立つと思います。

講座が終わった後も、授業改善についての学びは続きます。

4週間の講座の後、あなたは、授業設計について気軽に相談し合える仲間とオンラインでつながっているはずです。

講座が終わった後は、ぜひ、あなたが中心になって、あなたの周りに「教師の学習コミュニティ」を作ってください。

オンラインでつながった仲間が、あなたをサポートしてくれると思います。

まとめ

  • 21世紀に生きる生徒にとって役立つ授業には、21世紀型スキルの養成が含まれる
  • 生徒の主体的な学びを支援するための授業としてアクティブラーニングや反転授業がある
  • アクティブラーニングや反転授業を実施するためには、生徒が主体的に学べる学習環境を作り、生徒に適切な自由を与えて試行錯誤させることが必要
  • 学習環境を作るのにインストラクショナルデザイン(ID)が役立つ
  • 教師の主体的な学びが、生徒の主体的な学びを促す
  • 教師の主体的な学びを促す学習コミュニティをオンライン上に作る
  • 教師が同僚と学習コミュニティを作ることを支援する

 

講師紹介

日本にISDを紹介し、数多くのISDデザイナーを育成!

yoneshima

パフォーマンス・インプルーブメント・アソシエイツ代表

米島博司

(プロフィール)

富山県出身。千葉県在住。 日本電気通信システム㈱入社後、海外向け電子交換機の保守運用、ソフトウェアに関するお客様向けトレーニングの開発、インストラクターを担当。1990年代初頭、NECインターナショナルトレーニング在職中にニュージーランドテレコム(当時)のお客様からISD(Instructional Systems Design)の存在を知る。 以降米国CEP社とライセンス契約により、CRI(Criterion-Referenced Instruction)、IMD(Instructional Module Development)のワークショップの教材の日本語化、ワークショップの開催などにより、国内の企業(本田技研工業、JR東日本、日立、ユニシス、リコー、他)にISDを紹介、技術指導を行い、 数多くのインストラクショナル・システムズ・デザイナーを育成してきた。 2012年9月にNECネッツエスアイ㈱退職後、フリーランスで教育システムの設計・開発アドヴァイザー、ISDの指導・ワークショップを行っている。 Certified Course Manager of CRI/IMD Workshop ソフトウェア技術者協会 幹事 教育分科会 世話人

(講師からのメッセージ)

ISDは教授システムデザインの基盤技術です。家を建てる時にまず設計図を描く、ソフトウェアシステムを作る時まず要求定義を明確にして基本設計書を書くという風に、何かを作る時には、その上流工程であるデザインがとても重要です。学習者という人間と、教材、教師、学習空間・時間などからなるこの学習システムは「もの」を作る以上に複雑な要素が絡み合っていますから、なおさらのこと設計、デザインが重要になるのです。従ってみなさんの授業をより魅力的で素敵な授業にしようとするならば、単に授業形態や学習の方法だけを考えるだけではなく、授業全体を俯瞰した上で色んな工夫や仕組みを活用するとより一層効果が上がるのです。

また、ISDは意外に奥が深く、学習しただけですぐにマスターできるものではありませんが、今回のワークショップは皆さんの授業をより一層魅力的で素敵なものにするためにそのとっかかり、糸口を掴んでもらうために、各方面の授業デザインの実践者の皆さんが学習支援者として加わり、受講者の皆さんとディスカッションを通じてより現実的なヒントを得てもらえるようみなさんをサポートしてくださいます。

医療者へのシミュレーション教育をIDで設計!

asada

自治医科大学 助教 淺田義和

(プロフィール)

東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻博士課程修了後、自治医科大学のメディカルシミュレーションセンターに勤務(現在に至る)。この頃の研究テーマは医療安全、ヒューマンエラー。 シミュレーションセンターでは、マネキン等を利用した医療者のシミュレーション教育に関して、その運用サポートや教育の改善・評価などに取り組む。この中で「いかにシミュレーション教育を効果的・効率的・魅力的に運用していくか」という点からISD(Instructional Systems Design)に惹かれ、熊本大学大学院教授システム学専攻の門を叩く。教育に興味を持ち始めたのはここから。 現在はシミュレーション教育の運営に加え、医学部を中心に、授業に対するeラーニングやeポートフォリオの導入についても携わっており、moodle等のシステム運用やFDを通じて、反転授業形式の教育実践にも取り組みはじめている。

大学院時代から興味を持ったマインドマップやワールドカフェなどの手法を授業に取り入れるなどの活動も行っている。著書に「ストレスフリーで効率アップ! EVERNOTEを便利に使う48の技(共著、技術評論社、2013年)」。

(メッセージ)

大きなリビングルームを想像してください。この中にはテーブルやソファ、テレビなど、様々な家具が置いてあります。今のままでも普通に生活することはできますが、より高機能なテレビ、座り心地の良いソファなどに入れ替えることで、より快適な生活ができるようになります。また、むやみやたらに家具を入れるのではなく、部屋全体のデザインを想像して、統一感のある物を揃えることで、住みやすさは倍増します。場合によっては、全体のデザインを見落としてしまうと、入れ替えた家具によって住みづらくなってしまうかもしれません。

この「リビングルーム」を「授業全体の枠組み」、「家具」を「教え方・使うテキスト・学習環境」と置き換えながら、もう一度読んで見てください。IDは、授業全体(リビングルーム)をいかに効果的・効率的・魅力的に(使いやすく、住みやすく、ずっと使い続けたく)デザインするか、というための方法論です。

今回のワークショップでは、ガニェの9教授事象やメーガーの三つの質問など、いわばIDにおける「パーツ」を1つずつ学んでいきます。個別のパーツだけでも知れば知るほど奥が深く、また使ってみることで効果を実感できるものとなっています。ですが、単に1つ1つのパーツを個別に利用するだけでなく、インストラクショナルデザインという大きな視点を持ってパーツを使うと、よりその効果は高まってきます。

各回の課題は少々濃密なものもありますが、講師側でも全力でサポートいたします。ぜひ、今回のワークショップを通じてIDの基本を学び、ご自身の授業・研修等に応用できるようにしてみてください!

オンラインでの学習コミュニティ創りに挑戦中!

tahara

オンライン教育プロデューサー 田原真人

(プロフィール)

早稲田大学理工学研究科物理学及び応用物理学専攻博士課程中退後、物理の予備校講師に。河合塾などで10年以上教える。『微積で楽しく高校物理が分かる本』など著書9冊。2004年から物理ネット予備校を立ち上げ、オンライン教育に取り組む。オンラインでの反転授業、ワールドカフェ、ワークショップなど、オンラインでの場創りに取り組んでいる。

(運営者からのメッセージ)

Facebookグループ「反転授業の研究」を主催し、反転授業の多くの実践者にインタビューをしてきました。その中で授業設計やファシリテーションを学ぶ重要性に気づき、オンラインのワークショップを実施してきました。学習コミュニティを広げていくために、オンラインワークショップの運営ノウハウも積極的に受講生の皆さんにシェアしていきたいと思います。この講座では、運営を担当していますので、ご不明な点があれば、田原までお問い合わせください。

授業協力者のみなさん

今回の講座では、はじめて、授業に協力してくれるボランティアを募集しました。この講座は、講師陣と授業協力者とが意見交換しながら作っています。授業協力者が入ることで、「教える側」「教わる側」という固定化した枠組が崩れ、講座にダイナミズムが生まれるのではないかと期待しています。

授業協力者の皆さんは、自らの成長を大切にするマインドセットを持っている方ばかりです。授業協力者の皆さんとの交流も、この講座の価値の1つだと思います。

江藤由布(近大附属高・教諭)
kuramoto
LEAFモデルで英語教育を変える、江藤由布です。LEAFとは、教科書に依存しない、生教材、オールイングリッシュ、アクティブラーニング、反転学習の頭文字をとったものです。こうした授業を運用するために、絶えず工夫を重ねています。単元などはありません。学習者が今、何のために学習していて、その結果どうした力が得られるのか。授業中は高度に活気ある状態を保ちつつ、いかに新しい事項を導入するか。さらに、他己評価を含め、どのように振り返りをするのか。全体をメタ認知して、それを次の学習や、生涯学習へどう接続させるか。常に走りながら考え、生徒に随時投げかけます。現在は、高校三年生受け持ちのため、卒業生もふくめたオンライン講座を平行して作っています。オンライン講座の場合は、相手の顔が見えにくいため、コンテンツの提示方法や、学びやすい順番、声かけなど、日々試行錯誤を重ねています。今回は、ボランティアスタッフとして関わっていますが、自分が壁に打ち当たりながら学んで来た事を、体系立てて学べるということで、ワクワクしています。みなさんとお会いするのを楽しみにしています。Let’s learn together!

LEAFモデルで英語教育を変える

小川靖子(日本語教師)
ogawa
運営ボランティアとして参加させていただく小川靖子です。現在、ソウルで日本語教師をしています。
オンライン講座ってどんな感じなんだろう、続けていけるかな・・・と不安や疑問を持っている方もいるかもしれません。実は、私も前回の「ファシリテーションスキル入門」を初めて受講するまではそんな思いを持っていました。講座の回数を重ねる中で、受講者のみなさんとつながり、響きあい、学びあうことに、PCの前でワクワクしながら座っている自分がいました。ISDやオンライン講座については、全くの初心者ですが、みなさんとともに学び、体温を感じることができる講座のために少しでもお手伝いができればと思っています。よろしくお願いします。

倉本龍(立命館守山中高・教諭)
kuramoto
ボランティアとして運営に参加させていただきます倉本です。
私は講師の方々とは違い、学習モデルによる授業の振り返りや授業設計などを最近始めた駆け出しの状態で、悩みながら分析・評価をしています。
みなさんと一緒にいっぱい悩んで、いっぱい学びたいと考えています。
よろしくお願いします。

ブログ キューリ.com 〜物理教育を通して自然哲学者を育成するための記録〜

近藤裕美子(日本語教師)
kondo
運営ボランティアとして参加させいたただく近藤裕美子です。
よろしくお願いいたします。

これまで日本語教育に関わってきましたが、学習者の主体的な学びをサポートし、コースや授業が学習者にとって充実した学びの場、時間になるよう日々試行錯誤しています。そのためには、全体像を見据えたコースや・授業のプランニングや設計図作りをしっかり行い、そして実施後は改善のための分析や振り返りが必要。教師研修を担当させていただく機会もありますが、それは研修でも同じです。

とわかっていても、一人で実践、一人で勉強していくのはなかなか難しく、日々の雑務につい流されがち…..。
しかしながら、前回参加した「ファシリテーション入門講座」では、オンライン上ですが、まるで対面で会っているような雰囲気の中、他の参加者のみなさんと一緒に学ぶ楽しみを味わいました。これまでの知識を整理したり、他の参加者とのやり取りの中で新しい視点やアイディアを得たりするとてもいい機会でした。

今回のISDをテーマにした講座でも、受講者の皆さんに、これを機会に体系的に学ぶ機会や、オンラインでの学習コミュニティーに参加する楽しみを味わう機会を持っていただきたいと思いますし、そのためのお手伝いができればと思っています。数週間ISDについて一緒にしっかり取り組んでみませんか。

福島毅(Link and Create 代表)
fukushima
授業デザインというと、シラバスや各授業での学習指導案を連想する方が多いかと思います。

しかし、授業デザインは、それらの基礎・基盤となる建物の設計図や工事の工程表にあたるものです。生徒の伸ばしたい学力や能力を想定し、生徒の実情を分析しながら、達成目的や目標から逆算して、何のために、何をどのようにやるかということをしっかりデザインしていきます。このことが多様で豊かな学びをもたらすと思います。

動画「どんぐり教員セミナー」でも授業デザインについて触れていますが、このオンライン講座は受講者がインタラクティブに学んでいける点で、魅力ある講座だと思っています。

松嶋渉(山口県立萩商工高等学校 情報デザイン科長)
matsushima01
運営ボランティアとして参加します松嶋渉です。
よろしくお願いいたします。
山口県で高校の教員をしています。
教科は商業で主に情報系(プログラミングやWebデザイン)を教えています。
AL型授業や反転授業に取り組んでおり、現在はキャリア教育とICTの活用、人的ネットワークを活かした授業も行っています。
昨年4月にIDのオンライン講座を受講しました。そこで学んだ多くのことは教材開発など今の教育実践にも活かされています。
今回はIDのオンライン講座を受講した経験を生かして運営側と受講者の橋渡しができるようにしていきたいと考えています。

横川淳(コムタス進学セミナー 物理・化学講師)
yokogawa
運営ボランティアとして参加させていただきます。ISDには全く明るくないので、知識の面では受講生の皆さんと同等(いやもっと低いかも)だと思います。これまでオンラインの「動画作成講座」でアシスタントを務めた経験や、「アクティブラーニング講座」「ファシリテーション講座」で受講生として積んだ経験を活かして、皆様との相互の学び合いが促進するようなアクションを心がけていきたいと思います。

ちなみに私が「授業設計」というものに興味を持った理由は、行き当たりばったりでの授業「改善」の効力に限界を感じ始めたからです。お陰様で、いわゆる「分かりやすい説明をしてくれる先生だ」という評価は一定数いただいているようなのですが、それは「その場での満足感を与えている」だけに過ぎないのではないか、だってその証拠に・・・(あれやこれや)・・・という悩みが特にここ2年ほど大きくなってきました。

それで、いろいろ模索をする過程で「そもそも、全くのあてずっぽうで模索すること自体がおかしいのではないか。模索する方法論があるのでは」という疑問を感じ、そんなとき知ったのがISDとか「授業デザイン」という考え方でした。今回のボランティア参加をきっかけとして、受講される皆さんと一緒に勉強していきたいです。よろしくお願いいたします。

ブログ: カガクのじかん

その他に2名の方が加わっています。

前回の受講者の方から推薦文をいただきました

2014年に実施した「反転授業をやりたい教師のための授業設計入門」の受講者の方から、推薦文をいただきました。

加藤久美子さん((有)ふぁいん代表)
katou

ID講座には、去年受講させていただきました。

以前は暇さえあれば毎日教材を作っていました。

学習者には学習者ごとの『学習における癖』があります。たとえば、Aさんに向いているものがBさんに喜んで使ってもらえるとは限りません。また、同じ効果があるとも限りません。ですから、大量に作らざるを得ないのでした。

その頃、自分は教材を作るということをだれにも教わってきていないのではないか・・・と気づきました。ただ、既存の教材を真似して、または、授業で必要になったものを『経験と勘』で作っていたにすぎません。

体系化され、理論的に納得がいき、もちろん効果があるものをさがし、IDにたどり着きました。現在は、ラーニングデザイナーになるべく、学習を続けています。
このID講座の良いところは、実習まで含むところ、そして、オンラインセッションでお互いにサポートしながら続けられるところです。実習が無ければただの座学に終わってしまいます。何事もアウトプットが大切です。

また、オンライン学習には『黙々と一人で孤独な学習』をイメージされる方が多いと思いますが、セッションや実習を通して講師と受講生だけでなく、受講生間のやり取りがあり、通常のセミナーより良い関係が築けました。

これは、大きな発見でした。

毎日コメントがついているか、わくわくしながらパソコンを起動させていたのを覚えています。

ID講座終了後は教材を作り替え、より効果的な授業を設計することができています。今年のID講座でも、同じようなわくわくする体験をされる方をお待ちしています。

倉本文子さん(日本語教師)
日本語教師という仕事を始めてかれこれ20年。
最近の外国からの若者達も様子がどんどん変わってきました。

電子辞書も使わずスマホ。板書せずに写真。文化の違う国に住み始めたのにとくに大きな感動も見せることがなく、でも、アニメやフィギアや村上春樹、ゲームで扱われる歴史上の人物にはものすごく詳しかったりもして、

今現在私が教室でしていることは、彼らにどう受け止められているのか。
ざわざわと不安を感じていたのかもしれません。

そこで、出会ったのが、インストラクショナルデザイン。
反転授業の研究主催でオンライン講座が始まると聞いて直感的に申し込みました。

必要なときに必要なものに出会うものだなと思います。

講師の先生方が根気強く、何度も、丁寧に説明してくださったこと。
夜のオンライン自習室で他の受講者とチャットでおしゃべりしながら宿題をしたこと。
オンラインでなければ出会うはずもなかった分野の方々とやりとりできたこと。

自分が授業で大切にしたいと思っていることや目指している成果を言葉や形にすることが、こんなにも難しいことだったのかと実感できたこと。

七転八倒の末それらがシステムになって現れてきたときの興奮。
自分の現場に具体的に落とし込んでいけると感じた喜びと新しい授業デザインで学生を迎える楽しみ。

このオンライン講座が提供してくれたインストラクショナルデザインの世界と未来型の学びは、私に多くの気づきとワクワク感と、自分の授業の新しい可能性を
見せてくれたと思っています。

お申込みいただいた皆さんの声

保坂敏子さん
IDの理論の知識だけでなく、実践的に「やってみる」ところに魅力を感じています。よろしくお願いします。

名越幸生さん
丁度4月からの新年度に、録りためた授業&講習の動画を活用した新しいタイプの授業&講習づくりを始めたいと考えていたので、闇雲に始めるのではなく、インストラクショナルデザインを学んで、必要なポイントを抑えた授業づくりをするためのスキルを身につけることができればと思い、申し込みしました。
どうぞ宜しくお願いします。

遠藤良仁さん
看護学部の教員をしています。
IDについては少し学習していましたが、
今回を機会に、もう一度しっかり学んでみたいと思っています。

塚原大輔さん
看護師の卒後教育(半年間)を担当しています。昨年までは当たり前のように講義を行っておりましたが、反転授業を知り衝撃を受けました。是非来年度の教育に導入したく参加を希望しました。また、IDを学び教育基盤を整えたいと思います。よろしくお願いいたします。

豊永亨輔さん
熊本の高校で生物を担当しています。物理の小林昭文先生の実践に触発されて6年ほど前からアクティブラーニング型授業に取り組んできました。悪戦苦闘の結果,何とか形にはなってきつつあります。しかし「もっと生徒に考えさせる要素を組み入れたい」という課題を感じています。IDの理論は学んだことがなく,今回のセッションで自分自身の今の課題を解決するヒントを得ることを期待しています。また,全国のAL型授業に取り組んでおられる先生方との交流も楽しみです。よろしくお願いします。

鈴木望さん
IDは公開セミナーで学んだ程度ですが、自身の授業にも応用したいと強く思っております。みなさまとのディスカッションを通して、その応用力をつけるためのヒントが得られればと思っております。

坂井裕紀さん
本講座からIDを学ぶと同時にe-learning におけるIDの可能性を考察するヒントを得たいと考えています。

松本一見さん
次の授業に活かせるように勉強したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

早瀬郁子さん
インストラクショナルデザインの理論は、是非学習したいものだったので、とても楽しみにしています。

石野 祥子さん
4月から日本語学校に勤務することになったので申し込みました。学んだことを生かして、学習者第一の授業を作っていくことができればと思います。

安田明雄さん
こんにちは。神奈川県で高校の生物教員をしています。生徒が能動的に学習に取り組む授業を目指していますが、「管理と放任のジレ
ンマ」を感じています。不勉強のため、IDの理論のことを今回初めて伺いました。新年度に向けて新たな一歩にしたいと思います。

パソコンは不慣れですが、オンライン講座には初めての参加なので、とても楽しみにしています(同じくらい緊張もしています)。
宜しくお願い致します。

飯田路佳さん
こんにちは。自己流のことしかしてきませんでしたが、理論的な部分をきちんとしたいこと、この時期2,3月が最も時間的には余裕
があることで、決心しました。実は他の仕事量との配分でかなり不安もあります。けれども4月から新しく始まる科目もあるため、学生にイキイキとした学びを提供したいと考えており、「エイヤッ」と飛び込ませていただきました。まじめに取り組むつもりですが、かなり落ちこぼれになりそうな予感もしております。どうぞお手柔らかにお願い致します。

ワークショップ形式で学ぶオンライン講座

この講座は、動画講義、フォーラムセッション、Gotomeetingによるリアルタイムセッションを組み合わせて、4週間のオンライン・ワークショップ形式で行います。毎週、IDの理論を1-2つ学び、それをフレームワークとして各自の授業を見直していきます。

【事前準備】

「メーガー 三つの質問」「ケラー ARCSモデル」「ガニエ 9教授事象」について指定の資料を読み、
●わからない点
●自分の授業に役立ちそうな点と、それをどのように役立たせることができそうか
の二点について簡単なレポートを提出

【第1週】授業の構造化と目標明示

<チェック項目>

  • 授業(科目、単元)は構造化(課題分析)されているか?
  • 各学習単位の節目節目で、到達目標が明示され、到達したかどうかの判定があるか?

(1)教授・教材構造

「あなたの単元、授業は構造化されていますか?」

<ID理論>ガニエ 9教授事象

導  入 1.学習者の注意を喚起する
2.学習者に目標を知らせる
3.前提条件を思い出させる
情報提示 4.新しい事項を提示する
5.学習の指針を与える
学習活動 6.練習の機会をつくる
7.フィードバックを与える
まとめ 8.学習の成果を評価する
9.保持と転移を高める

(2)入り口と出口

「あなたの単元、授業では到達目標が明示されていますか?」
「学習者一人一人が目標に到達したかどうか判定するテストはありますか?」
「学習内容は課題分析されていますか?」

<ID理論>メーガー三つの質問

Where am I going? (どこへ行くのか?)到達目標の明示
How do I know when I get there?(たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)判定テスト
How do I get there?(どうやってそこへ行くのか?)入り口から出口への学習プロセス

【第2週】学習単位の構成と題材の現実性

<チェック項目>

  • 授業の中の部分は、TASD構成になっているか?
  • 授業の内容、例示は現実の世界に関連をもっているか?

(1)教授のフレーム

「あなたの単元、授業、教材など、それぞれの階層の教授単位ではフレームを用いていますか?」

<ID理論>メリルの画面構成理論

Tell  一般原理、理論を解説する
Ask   一般原理、理論に関する知識を問う
Show  例示する
Do   やってみさせる

(2)学習と現実の接近

「あなたの単元、授業は現実の世界に応用できますか?」

<ID理論>メリル インストラクションの第一原理

1.現実に起こりそうな問題に挑戦する(Problem)
2.すでに知っている知識を動員する(Activation)
3.例示がある(Tell me でなく Show me)
4.応用するチャンスがある(Let me)
5.現場で活用し、振り返るチャンスがある(Integration)

【第3週】学習の動機付けと学習の提供手段・方法

<チェック項目>

  • 授業の各部分で動機付けの配慮がデザインされているか?
  • 授業の学習内容に応じた最適な学習形態、学習提供手段が選択されているか?

(1)学習の動機付け

「あなたの授業、教材は学習の動機付けが考慮されていますか?」

<ID理論>ケラー ARCSモデル
①注意(Attention)―学習者に興味を持たせる。
②関連性(Relevance)―学習者に「やりがい」を感じさせ、積極的に取り組めるようにする。
③自信(Confidence)―学習者に成功の機会を与え、自力で成功できるように思わせる。
④満足感(Satisfaction)―目標を達成した学習者を正当に評価し、満足感を与える。

(2)学習提供手段の選択

「あなたの授業では学習内容に応じた最適な学習形態、学習提供手段が選択されていますか?」

<ID理論>ガニエ 学習成果の5分類

1.知的技能(手続き的知識)
(弁別、概念分類、法則適用、問題解決)
2.言語情報(宣言的知識)
3.認知的方略(学習技能)
4.態度
5.運動技能

【第4週】ADDIE/ISDの重要性とまとめ

<チェック項目>

  • ISDを意識して授業がデザインされているか?

(1)授業デザインの標準化

「あなたの単元、授業はISDに準拠してデザインされていますか?」
「またデザインプロセスにおける形成的評価はされていますか?」

<ID理論>ADDIEモデル

Analyze(分析)
Design(設計)
Develop(開発)
Implement(実施)
Evaluate(評価)

(2)まとめ、これまでの振り返り

この講座を受講すると

  • インストラクショナルデザインの7つの理論を学ぶことができます。
  • インストラクショナルデザインのフレームを使って授業改善のヒントを見つけられます。
  • 講師、他の受講者、授業協力者から授業のヒントを得られます。
  • オンラインでの学び合いを体験することができます。
  • 授業設計について相談し合える仲間を作ることができます。

Q&A

Q Gotomeetingのリアルタイムセッションに参加できない日があるのですが大丈夫ですか?

A リアルタイムセッションは、翌日以降、録画動画が見れるようになりますので、そちらで確認していただくことができます。

Q パソコンが苦手ですが、サポートはしてくれますか?

A 運営の田原がテクニカルサポートを担当します。Moodleの使い方や、Gotomeetingの使い方の説明が分からないときは、いつでも相談してください。接続トラブルについても対応します。

Q 授業設計を学ぶのが初めてなのですが、申し込むことはできますか?

A この講座は、初心者を対象としていますので、大丈夫です。

Qリアルタイムセッションには、iPadから参加できますか?

A Gotomeetingは、iPadやiPhoneから参加可能です。あらかじめアプリをダウンロードしておく必要があります。詳しくは、こちらをご覧ください。

受講者へのプレゼント

toku1 「ISDの基礎」(米島博司著)


メイン講師の米島博司が執筆したISD(Instructional Systems Design)に基づき、授業設計を行うための手順を分かりやすく解説しているテキスト(PDFファイル)をダウンロードできるようになります。

toku2 オンラインワークショップをするためのノウハウ


ビデオチャットとLMSを連携させて、オンラインで勉強会やワークショップをやっている田原真人が、運営のノウハウを資料にまとめてプレゼントいたします。
様々なツールを実際に試した結果、分かったことや、リアルのワークショップとは違ったオンラインの難しさを解消するコツなど、あなたの活動を広げるのに役立つノウハウです。

お申込み

講座名:インストラクショナルデザインの理論を使って授業改善してみよう

申し込み締め切り:2015年2月20日(金)

定員:30名 (定員に達し次第、締め切ります)

開講期間:2月23日~3月24日

※約4週間の講座期間中にGoToMeetingによるリアルタイムセッションを5回行います。

リアルタイムセッションの日程:
2/23(月) オープニング
3/3(火)21:30-23:00 第1週振り返り
3/10(火)21:30-23:00 第2週振り返り
3/17(火)21:30-23:00 第3週振り返り
3/24(火)21:30-23:00 第4週振り返り&クロージング

受講料:30,240円(税込)

 

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東京国際大学教授 河村一樹さんにインタビュー

6月27日(金)に実施される第10回反転授業オンライン勉強会でお話いただく東京国際大学商学部教授の河村一樹さんにお話をうかがいました。

河村さんは、2013年12月から1年生を対象としたアカデミックスキルの授業に反転授業を導入し、その様子は朝日新聞でも紹介されました。

朝日新聞の記事はこちら

 

勉強会では、反転授業を体験した学生のインタビューやアンケートを紹介していただきますが、それに先立って、どのような経緯で河村さんが反転授業を導入するに至ったのかをうかがいました。

教育を仕事にしようと思った理由

河村さんの専門は情報教育工学です。コンピュータサイエンスをベースにした情報処理教育のカリキュラム編成および教授法の研究、e-Learningを含む教育(学習)支援システムの開発と評価などを行っています。

教育とコンピューターサイエンスの境界領域であるこの分野に進まれたきっかけをうかがいました。

 

河村さん:私は父が中学校の数学教員で、教育へ進むきっかけになったのは、父の影響があると思います。でも、ストレートに教育分野へ進んだのではなく、最初は、コンピューターの会社に就職しました。でも、やはり、教育が好きだと思い、今の仕事へ移りました。

 

お話をうかがって、教育への情熱と、コンピューター会社で培った知識と技術とが、結びつく場が情報教育工学という分野であったのではないかと思いました。

さらに、教育のどこが好きなのか、質問してみました。

 

河村さん:学生との関係性ですね。人間対人間というか、利害損得を超えた関係というか、そういう関係を学生と築くことができるのが一番の魅力です。企業だと、なかなかそういう関係を築くのは難しいです。

父の仕事を見ていて、毎年同じことをやっていて、何が面白いのかなと思っていたんですよ。でも、実際に教育に関わってみると、学生は毎年違っているので、いろいろな学生と関係性が築けるのはすごいことだと思うようになりました。

 

IT技術を教育に利用するというと、効率やデータのことが最初にイメージされますが、河村さんから出てきた言葉が、「人間くさい関係性」の話であったのが、とても印象的でした。

 

河村ゼミの学習サイクルがすごい!

次に、河村さんに研究テーマについてうかがいました。

 

河村さん:以前から、特に講義中心の科目がうまくいっていないと感じていました。黒板に字を書きまくって説明したり、しゃべりまくって説明しても、教員が満足しているだけで学生が効果的に学んでいないと思ったんです。それで、うまくいかないのはやり方が悪いからだと思い、板書をせずにスライドを用いたり、ネット上で情報提供をしてから話をしたりしたらどうかとか、いろいろやってきました。

 

河村さんの研究室では、どのような研究をしているのかと、河村ゼミのホームページをチェックしてみました。

河村ゼミホームページ
http://www.tiu.ac.jp/seminar/kawamurk/kkzemi/

河村ゼミは、1学年10数名、全体で学生が40名ほどもいます。

河村ゼミでは、教材設計を学ぶための非常に合理的なサイクルができ上がっています。

大学2年生になると、大学の授業でインストラクショナルデザイン(ID)を学び、大学3・4年になると、学生の一部に1年生向けの教材開発がテーマとして与えられ、IDを実際に使ってeLearningの教材開発をします。そして、開発された教材の被験者に大学1年生がなります。

つまり、1年生でeLearning教材を体験し、2年生でeLearning教材の理論を学び、3・4年生で実際に教材開発するというサイクルが出来上がっていて、教材設計を多面的に学ぶことができるように考えられています。

学生が多いため、1年生向けの教材開発を担当する4人以外にも、3・4年生には、様々な研究テーマが割り振られています。これだけの人数に研究テーマを与え、指導をするのは大変なことだと思いました。

僕自身は、大学生時代、指導教官が教育に熱心ではなく、教授との関係性が希薄だったので、指導教官が教育に情熱を持っている河村ゼミの学生さんがうらやましくなりました。

反転授業を取り巻く状況

情報教育工学と授業設計(ID)を専門的に学び、長年、研究されてきた河村さんの目に、現在の反転授業に対する加熱ぶりはどのように映っているのか、興味がわいたので、質問しました。

 

河村さん:文部科学省の大学教育に対する方針が大きく変わり、アクティブラーニングを重視するようになってきました。学習評価の仕方の変化や、大学がポータルサイトを持つことが推奨され、大学教育を変えていかなければならないというトレンドになっています。

従来のやり方では何を教えるのかが中心でしたが、いかに学ぶのかというところが中心になってきています。

また、大学全入時代に突入し、ゆとり世代も大学に入ってきて、一部のブランド大学を除けば、今までの授業では学生がついてこないという危機感があります。その中で、反転授業に注目が集まってきていると思います。

 

なるほど。僕も予備校講師としてずっと壇上でパフォーマンスをやる授業をやってきたんですが、1年ほど前からアクティブラーニング型の授業に挑戦し始めて、「ずいぶん違うなー。難しいなー」と思いながらやっているんですよ。大学の教員は、その変化に対応できるんですか?

 

河村さん:ICTを使う必要はないという教員もいますから、なかなか変わるのは難しいですね。トップダウン式にやらないと実現不可能でしょうね。大学がLMSなどのリソースを提供し、ポータルサイトを作り、全教員がやると決めれば、動き始めると思います。FDでアクティブラーニングを体験してもらうプログラムもあります。

 

なるほど。河村さんのゼミでも、アクティブラーニングに取り組んでいるのですか?

 

河村さん:学生の研究で、スマホのクリッカーアプリであるClicaを使った研究があります。

「Clica を用いたアクティブラーニングの試み 」三澤勇太(河村ゼミナール)
http://www.tiu.ac.jp/seminar/kawamurk/kkzemi/

 

Clicaは、第2回の勉強会で鈴木映司さんが地理の授業でのアクティブラーニングに使用していました。

河村さんもおっしゃっていましたが、みんなの前で手を挙げて発言しなくてはならないという状況では出てこないいろいろなレスポンスが出てきます。僕のWizIQを使った講義でもチャットボックスがとても賑やかになり、受講者の考えていることが、これまでよりも分かるようになりました。また、一緒に参加している人が何を感じているのかを共有しやすくなるという効果も感じています。河村ゼミでの研究にも、引き続き注目したいです。

河村ゼミで反転授業を導入したきっかけ

時代の流れや文科省のアクティブラーニング重視の方針など、反転授業を導入するための下地はできていたのだと思いますが、直接的に、河村ゼミで反転授業を導入するきっかけとなったのは、どのようなものだったのですか?

 

河村さん:2013年から、大学の方針で全学部の1年生全員に同じ教科書、同じシラバスで、アカデミックスキルの授業をやることになったんです。どうせやるなら電子化して、学習履歴をとって実証実験できる形でやろうと思いました。それで、研究室の学生とeLearningの教材開発を始め、4月から11月までで開発し、12月にスタートしました。

 

反転授業というと、「動画で予習し、授業でアウトプット」というように、動画を使うイメージが強いですが、河村さんのところでは「eLearningで予習」ということなのですね。

 

河村さん:はい。動画を視聴しただけだと学習履歴が残りませんが、eLearningだと学習履歴がすべてLMS残るので、パワーポイントをベースにした教材とEXCELベースで作成するテストでeLearning教材を作成しました。

 

予習でやる部分と、授業でやる部分との振り分けはどのようになっているのですか?

 

河村さん:アカデミックスキルというのは、ノートテイキング、リーディング、ライティング、プレゼンテーションなどからなります。知識部分はドリルで評価しやすいのですが、スキルの評価をeLearningに取り込めないので、教室で評価するようにしています。知識部分をeLearningであらかじめ学んでおいて、教室でスキルを使ってみるという反転授業になっています。スキルを評価するためには、ルーブリックやポートフォリオなどが重要だと考えています。

[参考:ポートフォリオとルーブリック]

 

学生が予習をやってくるための動機付けは、どのようにしているのですか?

 

河村さん:大学生にとっての一番の動機付けは、「単位を出す」、「成績をつける」ということなので、授業でやったことに対する成績を次の時間に公開しています。また、学生からは、「予習してこなくてもできてしまう内容なら予習しなくなる」という声が上がってきているので、予習してこざるを得ない内容、予習してきた学生が活躍できる内容をを授業でやることも、動機付けとして重要かなと思っています。

 

実際にやってみていかがでしたか?

 

河村さん:生徒の学習状況で目に付いたのは、半数以上がスマホでeLearningをやっているということです。隙間時間を使ってやってきているようでした。PCだと起動して、ブラウザを立ち上げて、IDとpasswordを入力して・・というようにステップが多いじゃないですか。でも、スマホなら紙の教材と同じくらいのステップで作業に取りかかれるので、そっちのほうが手軽でいいみたいなんですよね。

 

学生のほとんどは、PCも持っていると思いますが、PCとスマホの使い分けって、どのようにしているんですか?

 

河村さん:資料を調べたり、レポートを書いたりといったことはスマホじゃできないのでPCでやることにしているようです。彼らなりに使い分けの基準があるようですね。

最後に

河村さんのお話から、河村ゼミのよい雰囲気が伝わってきました。学生としっかり人間関係を築き、学生のリアルな状況を把握しながら実践に取り組んでいる河村ゼミのようなところから、多くの実践者のヒントになるような知見が生まれてくるのかもしれません。

河村ゼミの今後に目が離せません。

 

第10回反転授業オンライン勉強会

テーマ 「生徒が語る反転授業(2)」

日時 : 6月27日(金) 21:45-23:30

場所 : Web教室 WizIQ

参加費 : 無料

第1部 登壇者の発表 21:45-22:45

「アカデミックスキル習得を目的とした反転授業の実践」

東京国際大学 商学部経営学科教授・博士(工学) 河村 一樹さん

株式会社ハンテンシャ代表取締役 加藤大さん

「JMOOC「日本中世の自由と平等」へ参加した生徒の声」

奈良女子大学附属中等教育学校 二田貴広さん

第2部 オンライングループワーク 22:45-23:30

 

詳しくはこちら

 

ID/ISD にはとても感謝していて,一人でも多くの教師に広げたい-山崎進さん

「反転授業の研究」の田原です。

もうすぐオンライン講座「反転授業をやりたい教師のための授業設計入門」が開講します。

僕は、教育に20年ほど関わってきたのにも関わらず、インストラクショナルデザイン(ID)の存在を全く知りませんでした。

ずっと自己流で授業改善をしてきました。

昨年、Facebookグループでのやり取りを通してIDのことを知り、『授業設計マニュアル』や『教材設計マニュアル』を読みました。

そこには、授業をどのように改善していったらよいか、独学可能な教材をどのように作成したらよいかが、具体的な方法論として示されていて、10年前にこの本を読んでいたら、今の授業は全く違ったものになっていただろうと思いました。

それほど大きなインパクトがありました。

反転授業をやるようになって、生徒中心の学習を引き起こすためには、今までのやり方、考え方だけでは不十分で、様々な仕掛けを考える必要があります。

そのときに、どのようにして考えていけばよいのかというガイドラインにIDはとても役立つように感じています。

そして、IDの有効性を感じれば感じるほど、

「こんなに役立つのだから、IDを、もっと広めたほうがよいのではないか!」

という気持ちが強まってきました。

IDという道具を手にすることによって、多くの教師が、効果的に授業改善に取り組めると思うからです。

オンライン講座の講師陣の一人、北九州市立大学の山崎進さんも、IDによって劇的に授業を改善することができた一人です。

 

ID/ISD にはとても感謝していて,一人でも多くの教師に広げたい-山崎進さん

ID / ISD に基づいて授業づくりをしたおかげで,平凡な教師だった私,山崎は人気教師と言っても過言ではないくらいになれました。

講師紹介にあたり,私の体験を離したいと思います。

大学教師になりたての私は,授業が上手とは言えない感じでした。教壇に立って90分の講義で熱弁を振るうものの,力みすぎてヘトヘトになるし,それでも学生はわかってくれないし,なかなか散々でした。

その後,札幌の某シンポジウムに参加した時に,何となく教育の分科会を覗いたところ出会ったのが,熊本大学の鈴木克明先生の講演でした。これがとても面白い。講演が終わった後,鈴木先生に「何から勉強したら良いでしょうか?」と伺った答えが,かの教材設計マニュアルです。

教材設計マニュアルに書かれた ID / ISD の教えは至ってシンプルで,しかしながら理にかなって納得感があります。平凡な私でもこれをバイブルにしたらわかりやすい授業ができるのではないかと期待が膨らみました。

教材設計マニュアルを一読して気に入り,さっそく直後に開講せねばならなかった授業の教材を教材設計マニュアルに基づいて,講義無しの自習可能な教材のみの授業にするという暴挙をやってしまいました。

学生たちは戸惑ったものの,けっこう多くの学生が支持してくれて,とても良い手応えを感じたものです。

それから無我夢中でいろいろ試行錯誤していくうちに,いつの間にか人気教師になったと自慢して過言ではない程度に学生からの支持を得るようになりました。

これは元は平凡だった私が自己流でやっていたのではけっして到達できなかった領域だと思います。

教育を一生の仕事にしようという誓いもしました。

そういうわけで,ID/ISD にはとても感謝していて,一人でも多くの教師に広げたいという思いがあります。

 

 

申し込み締め切りまであと6日!

「反転授業をやりたい教師のための授業設計入門」の申し込みはこちら