バーチャル空間を活用したオンライン反転授業

「反転授業の研究」の田原真人です。
 
『ワールドカフェをやろう』の著者、香取一昭さんからの依頼で、ラーニング・ファシリテーション研究会に参加しました。
 
テーマが「バーチャル・ファシリテーション」ということで、僕がやっている「バーチャル空間を活用した反転授業」の実践を発表させていただき、その後、研究会のみなさんにZoomを使ったオンラインワールドカフェを体験していただきました。
 
企業研修などで活躍されている皆さんに、オンラインワールドカフェを体験していただき、その活用方法について考えていただいたことは、僕にとっても大変刺激的な体験でした。
 
実践発表では、

・物理ネット予備校のオンライン反転授業
・「反転授業の研究」のオンライン講座
 
の2つについて、主にお話しさせていただきました。

実践発表の動画をこちらで公開しますので、感想などを教えていただけるとうれしいです。
 

オンライン反転授業でグループワークを行いました

昨日、とうとうオンラインでグループワークをやることができました。

 

僕のオンライン反転講義は、

・動画講義で知識をインプットする。

・オンラインルームでアウトプット中心の活動を行い、「強い体験」を通して学ぶ。

ということを目指しています。

 

参加者の人数が増えても、効果的にアウトプット型の学習ができるのはグループワークです。

ですから、どうしてもオンラインでグループワークをやりたかったのです。

 

しかし、これを行うためには乗り越えなくてはならない壁がいくつかありました。

まず、どのようなシステムを使えば、オンラインでグループワークが可能になるのかということです。

グループワークを可能にするためには、Breakout Roomという機能がついたWeb会議システムを使う必要があります。

まずは、その調査を行いました。→ BreakOut Room機能が使えるWeb会議システム

 

その中で、導入コストが安く、クオリティがそこそこ高いWizIQというWeb教室を使うことにしました。

WizIQには、BreakOut Roomという機能が有り、教室内に小グループをいくつでも作ることができます。

オンライン反転授業を実施するにあたって、4名の方に協力してもらい、BreakOut Roomの機能テストを行いました。その結果を元に、グループワークをどのようにすれば実施できるか計画しました。

 

さて、いよいよ本番です。

授業のテーマは、「水面波の干渉」

前もってYoutubeに予習動画をUPしておき、参加者は動画を見てから参加するようにしてもらいました。

予習動画(23分)はこちら

 

 

授業では、基本的なことが分かっているかどうかを確認することからはじめました。

教師の僕が解くのではなく、参加者に答えてもらうようにしました。

そして、ときどき、

「じゃあ、●●さん、ホワイトボードに書いてみてください。」

というように、受講者を指名して、書いてもらいました。

これは、今回、はじめてやってみたのですが、おおむねうまくいきました。

他の人の解答に対して、チャットボックスに頻繁に書き込みが行われ、かなり活発にやりとりが生まれました。

他の人のコメントに、さらに、コメントがされるといった受講者間のやりとりもありました。

基本事項の確認が終わった後は、シミュレーション動画でイメージを確認しました。

スクリーンシェア機能を使って動きを見せようとしたのですが、動きがカクカクしてよく見えないということだったので、スナップショットをとり、画像をホワイトボードにUPして、そのスナップショットを見ながら説明しました。

シミュレーション動画は、後ほどYoutubeにUPして、受講者が見れるようにしました。

次に、いよいよグループワークです。

前もって、グループワークをするという話は、メールマガジンで伝えてあったので、

「楽しみです!」

といったコメントがチャットボックスに流れました。

 

グループワークを始める前に、態度目標と理解目標をホワイトボードに出しました。

————-

●態度目標

しゃべる(チャットに書き込む)
書く
説明する
質問する
チームで協力する
チームに貢献する
●内容目標(理解すること)

水面波の干渉の腹線と節線を自由に書けるようになること
反射板があるときの扱い方を理解すること
※最後にグループの解答を発表してもらいますので、
がんばってください!

———

グループワークにはセッティングが重要だということを、何人もの先生がおっしゃっていたので、小林先生の実践例を参考にして、目標を定めました。

また、最後に発表があるということを示すことで、作業を進めるモチベーションを高めることにしました。

 

今回は、参加者が36名だったので、6名ずつ6つのグループに分けることにしました。

受講者リストの上から6人をRoom1、次の6人をRoom2というように機械的に振り分けていき、その中の一人を適当に選択してRoom Leaderとしました。Room Leaderは、その部屋の人にマイク、ビデオ、ホワイトボードに使用許可を与えることができます。

BreakOut Roomをスタートすると、僕だけがMain Roomに残り、他の参加者は各ルームに振り分けられました。

受講者は、ルーム内の人としかチャットボックスを共有できないため、他のルームで何が起こっているか全くわかりません。これは、WizIQのBreakOut Roomの改善してほしい点です。

教師アカウントからは、全ルームにチャットを通してメッセージを送ることができます。そこで、Room Leaderにグループメンバーにホワイトボードの使用許可を与えるように指示しました。

誰もがはじめてだったので、どうやったらよいかわからずに戸惑うのではないかと思い、ルームを順番に確認しに回りました。2つのルームではホワイトボードの許可がうまくいっていなかったので、こちらで許可しました。

グループワークでは、あらかじめ用意していた問題に挑戦してもらいました。難易度は(1)(2)がやや難、(3)が難というレベルで、その前の解説を理解していれば、(1)(2)はなんとか解けるといった設定でした。

ルームを回っていると、チャットボックスでのやりとりが始まり、ホワイトボードへの書き込みが少しずつ始まりました。

問題の図をホワイトボードに出すのに苦労しているところもあり、次回は、こちらで画面に出せるように工夫しようと思いました。

グループワークは20分ほど行い、初めての環境に戸惑いながらも、何とかやりとりをして進めていこうという意欲が感じられました。

最後に、全員をMain Roomに戻して、簡単に解説して終了としました。

参加者には、振り返りとしてアンケートを書いてもらい、

【分かったこと・分からなかったこと】:

【どんな風に話し合えましたか。】:

【ライブ講義への感想】:

の3つを書いてもらいました。

参加者からのフィードバックはこちらで見ることができます。

 

オンラインでグループワークをやるということで、実際にグループワークを実践していらっしゃる先生方に声をかけて見学・参加していただきました。

早速、講義についての感想をブログに書いてくださいました。

小林先生のブログ

桑子先生のブログ

また、他の先生も、メッセージで講義への感想をフィードバックしてくださいました。

実際にグループワークをされている先生方のコメントは、グループワークをはじめてやった僕にとっては参考になるヒントがたくさん含まれていて、とても助かりました。

実践すると、その中で気づくことがたくさんあります。また、それを記録しておくことで、次に続く人がやりやすくなると思います。実際、今回のグループワークは、小林先生の実践例を参考にして、アレンジを加えたものです。

 

今回は、進行がスムーズに行かなかったところがありましたが、これは、すぐに改善できると思います。

それよりも、参加者の「熱」がすごかった。

これが、僕にとって、一番大きな気づきでした。

 

 

反転授業形式のオンラインライブ講義「電気振動・交流ゼミ」

田原です。

2013年8月23日22:00-23:30で、反転授業形式のオンラインライブ講義を行いましたので、ご報告します。

僕の運営している物理ネット予備校では、受講者が全国に分散しているため、リアルの教室に集まることができないため、反転授業を従来の方法で導入することができません。

そこで、リアルの教室の代わりに、WizIQなどのオンラインルームでアクティビティをやっています。

オンライン反転授業を行うための準備としては、次のことを行いました。

(1)受講者は、ThinkBoardで作成した予習動画80分を事前に受講する。

Macやスマホでも見れるように、ThinkBoardファイルをmp4動画に変換し、Youtubeにもアップしておく。

(2)オンラインルームWizIQのライブクラスを作成し、URLを参加者にメールで送り、決められた時間にログインしてもらう。

(3)WizIQのオンラインホワイトボードは、少し書きにくいので、解答などはあらかじめ作っておいて、アップロードしておく。

(4)物理現象の動きを示すシミュレーション動画も作成し、Youtubeにアップしておく。

今回は、物理ネット予備校の有料会員約500名の中から、希望者のみが参加しました。

予習動画のダウンロード数は70ほど。ライブ講義への参加は40名ほどでした。

授業の最初にWizIQのリアルタイムアンケートで「予習動画について」の質問をしたところ、

1)簡単だった 25%

2)難しかった 40%

3)見ていない 35%

という結果になりました。

「難しかった」と「見ていない」とをあわせて75%ほどだったので、アンケートを見て、基本を確認しながら授業を進めていくことにしました。

また、アンケートの結果を全員で共有したことにより、難しいと感じたのが自分以外にもたくさんいたことで安心感を感じたという効果もあったと思います。

WizIQのアンケート機能は、授業中に選択式の問題を出して、理解度を確かめるのにも使え、非常に便利です。

授業では、アイコンを頻繁に使用しました。

分かった : 親指を立てたアイコン

問題を解き終わった : 顔のアイコン

といった感じに決め、説明した後、

「分かりましたか?分かったら、親指のアイコンをお願いします。」

というように言うと、理解度が、その都度、確かめられます。

また、問題出して、

「解き終わったら、顔のアイコンを出してください」

というと、ほとんどの人が解き終わったタイミングで、解答を言うことが出きます。

このようなアイコンの使い方は、やっているうちに自然とルール化されてきたものです。

今回のライブ講義で、試してみたことがあります。

それは、受講者からの質問に私が解答するのではなく、みんなで考えるという試みです。

これは、非常に盛り上がりましたし、講義の後のアンケートでも、このことに言及しているものが多かったので、強い印象を与えたのだと思います。

オンラインでは、なかなかグループワークというものが難しいのですが、部分的にであってもそのような要素を入れていくことは大切だと思いました。

ライブ講義に関する受講者の感想はこちら

 

最後には、YoutubeにUPしておいた電気回路のシミュレーション動画を 、ルーム内に読み込んでみんなで視聴し、計算とイメージとが一致しているのかどうかを確認しました。

最後に映像で見るというのは、ライブ講義を始めてから実践しているものですが、理解を深めるために非常に効果があると思います。

教育に使える物理シミュレーションの情報はこちらにまとめてあります。

 

今回の授業は、予習をしてきていない受講者が35%おり、ある程度レベルを下げて授業をすることになりました。

そのため、予習を完璧にしてきている生徒にとってはもの足りない授業になったという側面もありました。

予習講義の受講率を上げること、受講者のレベルのばらつきに対して配慮することが、今回見つかった課題です。

反転授業とアクティブラーニング

先日、インターネットで検索をしていて、能動的学習(アクティブラーニング)というものの存在を知りました。

これは、生徒が一方的に受身になって授業を受けるのではなく、グループワークなどを中心にして、生徒が積極的に取り組むように授業を行うというものです。

調べているうちに、7年前から物理のアクティブラーニングを実践されてきた小林昭文先生のブログにぶつかりました。

私と同じ物理をどのようにして、アクティブラーニングという方法で教えてきたのか非常に興味がわき、メールを送り、スカイプでお話をうかがいました。

小林先生のお話や、紹介していただいた資料などを読むと、アクティブラーニングと反転授業は、知識の伝達をどのように行うかということのバリエーションの違いに過ぎず、生徒の活動、アウトプットを中心に据えるというコアの部分では同じであることが分かりました。

ですので、小林先生をはじめ、アクティブラーニングを実践されてきた方々の経験は、オンラインで反転授業の実践をはじめたばかりの私にとって、非常に参考になります。

小林先生からいただいた資料の中に、「ほんの数分でもアクティブラーニングの要素を授業に入れると大きな違いが生まれる」というような部分があり、早速、オンライン反転授業に取り入れました。(その結果は次の記事で)

予備校講師として「物理の講義」というものを追及してきた私にとって、アクティブラーニングや反転授業の運営方法は180度、考え方を転換する必要があります。

それは、とてもエキサイティングであり、毎回、さまざまな気づきがあります。

アクティブラーニングについては、引き続き、勉強していきたいと思います。