反転授業は、教師を成長させる

田原です。
こんにちは。
 
 
子供のころには、身の回りにたくさんの「未体験ゾーン」がありました。
 
・一人で駄菓子屋で買い食いすること
・一人でバスに乗ること 
・裏山の山道がどこへつながっているのか確かめること
 
などなど。
  
 
それらの「未体験ゾーン」に足を踏み入れるときは、本当にどきどきしたものです。
 
そして、「未体験ゾーン」を制覇するたびに世界が広がるのを実感していました。
 
 
大人になるにつれて、「未体験ゾーン」は減っていきます。
  
そして、なじみのある世界の内部で同じことを繰り返す生活になりがちです。
 
 
同じことを繰り返していると、スキルはどんどん上がっていきますが、その一方で生活はどんどんルーチンワークになっていき、行動が無意識化に沈んでいきます。
 
僕が予備校講師として物理の授業をやっていたときは、大教室でマイクをつけて、多いときは50人~70人の前で授業をしていました。
 
予備校講師になりたてで授業が下手だったころ、つまり、職場という未体験ゾーンに入りたてのころは、何とかうまくなろうと必死で、いろんなことを吸収していました。
 
しかし、5年もすると授業改善も一段落し、同じ授業を繰り返すようになってきました。
 
教室に入ってテキストを開くと、自動的に口から言葉が出てくるようになりました。
 
本当に録音された音声を再生するように、出てくるんです。
 
ちょっとこれはまずいんじゃないかと思い、危機感を感じて、他のことにも挑戦しようと思いました。
  
 
その後、

授業のネット配信を始めたり、
河合塾マナビスのDVD授業作成をしたり、
 
別のことに挑戦して、授業に対する視点を変えることで、興味を維持しつつ、少しずつさらに授業を改善することができました。
 
しかし、それも、さらに5年が過ぎるころには飽和し、再びルーチンワークに・・・。

 
ところが、反転授業のことを知り、AL型に変えたことで、授業に対する意欲が、再び燃え上がってきました。
 
受講者が中心となる授業なので、同じテーマで授業をしても、そこで起こることは、毎回、違ったものになります。
 
まさに、「ライブ」なんですね。
 
だから、AL型だと授業をする側も楽しいし、もっと改善してみようと意欲がわいてきます。
 
これは、一斉講義をやっていたときとの大きな違いです。
 
 
ルーチンワークから抜け出して、好奇心の扉を開くためには、意識的に自分に刺激を与えて、日常に亀裂を入れて「未体験ゾーン」に踏み込んでいく必要があると感じています。
 
自分とは別世界の人と交流するのも良いかもしれませんし、今までとは違うやり方に挑戦することでもよいかもしれません。
 
 
8/26の勉強会でお話しくださる藤本かおるさんは、10年以上、二足のわらじを履く生活を送っていたそうです。

日本語教師として働きながら、放送大学で学んだり、
日本語教師として働きながら、大学院で研究したり、
 
このように複数のことを同時にやっていると、活動が相互に影響しあって気づきが生まれやすくなり、ルーチンワークに陥りにくくなるのではないかと思いました。
  
 
先日、藤本さんにインタビューしたときに、とても面白い話がありました。
 
藤本さんは、日本語教師として授業をしているときに、生徒の私語を止めさせるのがすごく上手だったのだそうです。
 
授業力があって、クラスをコントロールする力がある先生の特徴だと思います。
 
その頃、藤本さんは日本語教師と大学院生の二束のわらじを履いていて、大学院ではeLearningとビデオ会議システムを使った遠隔のBlended Learningの研究をしていました。
 
それで、対面の授業と同じ授業を遠隔でインドと台湾の学生に行ったのです。
 
  
そこで、何が起こったか?
 
ビデオ会議で授業を行うことで、藤本さんのコントロール力が弱まり、生徒の私語が増えたのだそうです。
 
しゃべっている内容は遠隔授業では聞き取ることができず、また、聞き取れたとしても、藤本さんには理解できない母語でしゃべっていたりするので、内容は分からないのですが、となり同士でしゃべっていることが多かったのだそうです。
 
対面の授業であれば、藤本さんは巧みにクラスをコントロールしてそれをやめさせたことでしょう。
 
しかし、それをよくよく観察してみると、いわゆる「私語」ではなく、分からないことを相談して、教えあっているようで、となりとしゃべった後、回答が出てくることが多かったのだそうです。
 
 
遠隔授業によって、教師のコントロール力が弱まったことで、生徒の自律的な学習が生まれたことに気づいた藤本さんは、対面授業でも、「私語」への対応を変えていったのだそうです。
 
大学院での研究で生まれた気づきを、日本語教師としての授業に生かしたんですね。
 
現在、反転授業に取り組まれている藤本さんは、反転授業実践を通して、自分のルーチン化した教え方を振り返り、改善できるという感覚を得ているそうです。
 

「反転授業は、教師を成長させる」というのは、これまで、あまり論じられてこなかった視点ですね。
 
遠隔教育についての藤本さんの研究は、こちらで読むことができます。
  
藤本さんのインタビューも合わせてお読みください。
 
 
藤本さんがお話しくださる第12回反転授業オンライン勉強会は、8/26日の21:45からです。
 
詳しくはこちら

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