第9回反転授業オンライン勉強会「生徒が語る反転授業」を終えて

反転授業については、今までの教育の枠組みを大きく変えていく可能性のある試みなので、賛否両論あり、様々なことが言われています。

このような状況で大切なことは、できるだけ一次情報にあたり、自分の頭で考えるということではないかと思います。

反転授業の一次情報を得るためには、

(1)自分で実践してみる。
(2)反転授業を実践している教師の声を聞く。
(3)反転授業を受けている生徒の声を聞く。 

という方法があります。

ということで、これまで、反転授業の実践者、アクティブラーニングの実践者、動画授業を利用している方などの話を聞いてきました。

Facebookグループの中で、「生徒が語る反転授業」というテーマが提案され、今回、はじめて生徒から見て反転授業とはどのように受け止められているのかをレポートしていただきました。

発表していただいたのは、山口県立萩商工高校の松嶋渉さん。

商業科のビジネス基礎という科目の「売買に関する計算」という単元で5回にわたり反転授業を実践されました。

反転授業というと「iPad」などのタブレット端末が必要なのではないかと思う方が多いと思いますが、松嶋さんは生徒のネット接続状況をあらかじめ調査し、全員が何かしらの方法でネットに接続できる状況にあることから、生徒が自分の端末で予習動画を見るという方法をとっています。

自分の端末で視聴するというのは、海外の実践では主流です。日本では、東向陽台小や近大付属、武雄市などの反転授業の実践がすべてタブレット端末を配布して行うものだったため、「反転授業を実践するためにはタブレット端末が必要」というイメージがついています。でも、松嶋さんのやり方であれば、導入できる高校は多いのではないかと思います。

タブレット端末を配布しないで行う場合、生徒がどのような端末で視聴するのかに興味があったのですが、松嶋さんの報告によると、ほとんどの生徒がスマートフォンで視聴していました。

PCを持っている生徒であっても、わざわざPCを立ち上げるのが面倒だという理由でスマートフォンで視聴していました。

これは、予想以上でした。(詳しい統計資料は、「反転授業の森」で公開します。)

そして生徒から上がってきた感想として

・声が小さい
・字が小さすぎて見にくい
・画質が悪い
・3G接続だと、よく止まるので動画を軽くしてほしい。
・URLやQRコードの書いてあるプリントをなくすとアクセスできないからWebサイトを作ってほしい

といったものがありました。

これを聞いて、今後は、「スマホで見る」ということを前提としたコンテンツ作成をする必要があると痛感しました。

また、参加者の感想で、「Youtubeやニコニコ動画を見て育っている世代は、動画のクオリティに対する要求が高い」という声も上がっていました。それは、僕も強く感じました。

それにしても、「授業動画に画質を求めるのか~」というのは驚きでした。

松嶋先生のお人柄ゆえだと思いますが、生徒は、かなり正直に率直な意見を出していると思いました。そして、厳しい意見を言う一方で、動画を非常によく見てきているというのが印象的でした。30数名のクラスで、動画の視聴回数が200回以上を超えているということですので、2回以上見ている生徒が多数いるということで、よく利用されていると思いました。

・一人で予習するよりも分かりやすく効率の良い勉強ができた

・わからないところを何回も繰り返し再生することができて良かった

・今までは、予習の時に教科書をノートに書き写すだけだったけど、先生の説明を聞いてからノートに書けるので内容を理解して予習できた

というような声も多数あり、これまで一人で予習してきた経験を持っている生徒が、それに比べて分かりやすいという感想を持っているというのがとても参考になりました。

授業の最初に、口頭テストがあり、動画を見てきたかどうかをチェックするということになっているため、外発的動機が与えられているということもありますが、動画を見てくると教室で行う問題演習のときに問題が解けるという喜びが生まれ、内発的動機にも移行しているのではないかと思いました。義務的に動画を見てくるのであれば、1回見て終わりということになりやすいと思います。

また、印象的だった感想として、

「いつもではなく、分かりにくいところだけ動画にしてほしい」

というものがありました。

この感想は、真意がよくわからなかったのですが、印象に強く残りました。

反転授業について実践していない方がよく心配されるのが、「生徒はちゃんと予習をしてくるのか」という点なのですが、実践者にお話を聞くと、たいていの場合、問題になっていないことが多いです。松嶋さんの場合は、3年前からアクティブラーニングを導入していて、反転授業を実践する前から予習中心の学習というものを行っていたそうです。その延長線上に反転授業があるため、生徒は当たり前のように予習してくるという状況だったようです。松嶋さんのクラス運営能力の高さが土台にあり、その上にアクティブラーニングや反転授業が乗っているのだと思いました。

改めて、反転授業の実践には、普段からの生徒との関係性や、授業設計、習慣づけが重要だと感じました。

 

第2部では、はじめてオンライングループワークを行いました。グループワークには20名ほどの方が参加してくださいました。

5つのグループに分かれ、ビデオチャット、ボイスチャット、テキストチャットなどが混じり合った形でグループワークを行いました。

グループで話し合っていただいたのは、

(1)自分が生徒なら、どんな反転授業を受けたいか
(2)自分の身近な学習者の現状
(3)現実を理想に近づけるためにできることは何か

の3つです。

各グループでどんなことが話し合われたのかは、後ほどレポートにまとめていただき、「反転授業の森」でシェアしたいと思います。

各ルームを覗いて回った限りでは、はじめてのオンライングループワークであったのにも関わらず、思ったよりも話が深まっているように見えました。

どんなレポートが上がってくるのか、とても楽しみです。

初めての試みであったため、課題もいくつか見つかりました。それらは、今後の改善点としてポジティブに受け止めていきたいと思います。

第1部で登壇者にプレゼンをしてもらい、第2部でグループワークを行うというやり方は、しばらく続けてみたいと思います。

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ