数学教室の浜武しんいちさんにインタビュー

僕が、浜武さんのことを知ったのは、Wikipediaがきっかけでした。

Wikipediaには、「反転授業」という概念がアメリカから輸入される以前の2010年から、反転授業的な取り組みをしていたという記述があり、興味を持ちました。

それで、ぜひ、お話をうかがってみたいと思い、Facebookで浜武さんにメッセージを送って、グループに招待しました。

そして、先日、スカイプでお話をうかがうことができました。

まずは、浜武さんが、これまでどのようなことをされてきたのかというお話からうかがいました。

 

(浜武さん) 昭和60年代は、塾講師をやっていて、多い時は4つの塾を掛け持ちしていました。教科は小中学生全教科、高校物理・化学・地学・数学・英語・現代文。 あまりの忙しさに、教材(問題)、定着手段の共用化を図り、前回の授業内容の中からしか出題しない「小テスト」群を制作、実施。回を増すごとに記述度が上がり、最終的には完全記述式となりました。これは、司法試験の答練を模倣したものです。

 

僕も30代のころは、4つの予備校を掛け持ちしていたので、浜武さんの忙しさがよく分かります。僕も、浜武さんと同じように教材を共有したり、解答プリントの使いまわしの仕組みを作ったりして、授業以外の準備にかかる時間を短くしながら効果を上げる工夫をしていたので、浜武さんの「小テスト群」も、忙しすぎるスケジュールから生まれてきたという話にとても共感しました。

浜武さんのやり方の特徴的なところは、

前回の授業内容の中からしか出題しない「小テスト」群

という部分だと思います。

最初は、授業のノートを修正液で消して小テストを作っていたんだそうです。

これは、

授業を聞いていれば、必ず点数が取れるんだぞ!

という強烈なメッセージを与えていることになります。

これによって、生徒は授業をよく聞くようになるし、授業を聞いて復習すれば、その分だけ点数が取れるので学習意欲もわいてくるのだと思います。

 

浜武さんは、その後、紆余曲折を経て、平成5年に、公民館で数学教室をスタートしました。

 

(浜武さん) 公民館で開いた数学教室には東大志望者から赤点防止まで、浪人生から小学生までが集いました。このすべてに対応するために「生徒が生徒を教える」仕組みが完成。そして「公民館の塾は生徒がおしえるらしい」が評判となり、高校、中学、塾の先生の子息が多く集まりました。そしてその親御さん、卒業生が、数学教室同様、公民館で教えるようになり、先生たちのネットワーク「FCS福岡チャータースクール」に拡大しました。経営形態の独自性が認められ、通産省主催〜当時〜のアントレセミナーで登壇しました。

 

浜武さんの教室では、生徒同士の教えあいがあるのですが、これも、必要に迫られてというところが興味深いです。結果的に、年齢の違う生徒たちが一つの場に集まって教えあい、オランダのイエナプランを思わせるような空間ができているような印象を受けました。

 

ところで、動画講義の利用は、どのようにして始まったのでしょうか?

 

(浜武さん) FCS福岡チャータースクールの仲間だった江口数学教室の江口先生は個別に細かく生徒を教えるために、自分の「分身」として授業をビデオに撮り、公民館(貸し教室)まで自転車でモニターとビデオを持っていき!生徒に見てもらっていた事を実践していましたが、私はモニターが重そうで難渋していた所「You Tube」が普及。これならモニターを運ばなくていい!と云う事で、資格試験の動画を参考に「福岡チャータースクール高等数学部・数学教室版電子教科書」を創刊しました。また、江口先生の紹介でマナビーに参加。花房君との交友関係が始まりました。

 

Youtubeが普及したから、動画をアップしたということなのですが、これは、塾の常識からするとありえないことなんですね。通常、塾は、「講義」は商品であり、その塾の秘伝であるという意識があると思います。それを、無料で公開するというのは、いったいどういうことなのでしょうか?

 

(浜武さん) 私は、司法試験予備校とかのやり方を見ていて、塾業界よりも進んでいると思ったんですよ。彼らは、合格するために必死だし、お金もたくさんかけているので、あっちの業界のほうが先を行っているはずだと思いました。だから、まずは、司法試験予備校のやっているところまで追いつかなくちゃいけないと思ったのです。司法試験予備校では、講義を無料で公開していたので、そういうものかと思ったんですよ。

 

「そういうものかと思った」という発言は、衝撃でした。

講義を無料で公開してしまえるということは、浜武さんの授業の価値は、講義以外のところにあるはずです。動画講義を公開するようになってからの授業形式についてうかがいました。

 

(浜武さん)もともと私にとって動画は、ノートの延長線上にあるんですよ。授業を聞いて、ノートをしっかり理解すれば、確認小テストで点数が取れるというように作っていたのが、「動画を見てくれば、確認小テストで点数が取れる」というように変わっただけなんです。

 

そのようにして、「反転授業形式」が誕生したんですね。でも、教室で講義をやっているときは、必ず全員が講義を受けることになりますが、動画講義になると、講義を見るかどうかは生徒の自主性に任せることになると思うのですが、浜武さんのクラスでは、予習をちゃんとしてくるということなんですよね。生徒が予習してくるために重要なポイントは何なんでしょうか?

 

(浜武さん)まず、講義の論理に飛躍がないということです。それから、動画で話した内容からしかテストに出さないようにする。そうすると、ちゃんと動画を見てくれば点数が取れるので、点数を取れるうれしさを感じるようになるんです。そして、テストを終えれば次のプリント、次のプリントと進むので、よい意味で競争が起こります。生徒が分かったっていっても嘘っぱちなんですよ。だから、しっかりテストで確認して定着させます。プリントは、ちょっとずつ難しくなるように作ってあって、プリントを進めていくと力が付くようになっています。その辺は、公文式をヒントにしました。

 

 

なるほど。そうするとだんだんと教室では授業をやらなくなってきたと思うのですが、浜武さんは教室で何をやっているのですか?

 

(浜武さん)数学教室には、いろんな学力、いろんな学年の生徒がいるので、20人以上を1つの教室に集めて、同時にいくつかの授業を平行して行っています。5つくらいなら並行してやることができます。

 

これは、すごいです。「動画講義」+「小テスト群」を使って、生徒をどんどん伸ばしていく仕組みをつくっているので、並行して進めることが可能なんですね。浜武さん一人で、5人分の役割を果たしているわけです。しかも、すべての生徒が必死で頭を使っているのがすばらしいです。

 

浜武さんの実践は、どれも現場の問題を解決するために生まれたものです。そして、実際に解決してきたという実績があります。

大変参考になりました。

 

浜武さんが主催する「数学教室」はこちら

 

浜武さんは、1月27日の反転授業オンライン勉強会でお話してくださいます。

反転授業オンライン勉強会のお申し込みはこちら

 

 

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ