動画を作ると人生が変わる(2)~理解速度にシンクロさせる

田原です。

10年前に動画を作り始めたことで、人生がどのように変わってきたのかを連載しています。

動画を作ると人生が変わる(1)はこちら

予備校講師だった僕にとって、講義は、ノウハウのすべてを詰め込んだ「商品」でした。

生徒の関心を惹きつけ、笑わせ、楽しませ、理解させ、問題を解けるようにし、成績を上げるという物理の講義。

その商品を売ることによって対価を得ていたのです。

講義のすべてを動画にしたときに、実は、半信半疑でした。

生の空間だからこそ、自分の講義は光を放つことができるのではないか。

動画にすると、講義のパワーが半減してしまうのではないか。

そんなことを思ったのです。

しかし、PCレターの開発者の三上さんとのやり取りから、今まで考えたこともなかった新しい可能性を感じることができ、動画にすることに対して気持ちがポジティブになりました。

リアルの代替じゃないバーチャルを目指す

PCレター(現在のThinkBoard)を開発したのは、北海道の浦河町という小さい街に住み、電気屋を営む三上博正さん。

不便な田舎に住んでいても、都会に負けない教育を受けられるようにしたいということでPCレターを開発したのです。

その三上さんがこだわっていたのが、

リアルの代替じゃないバーチャル

という言葉でした。

三上さんは、「リアルが一番いいのだけど、仕方がないからバーチャルで!」という扱いが、たぶん我慢ならなかったのだと思います。

リアルとバーチャルは別物。

臨場感ではリアルには叶わないかもしれないが、別の部分でリアルよりも優れた部分を作れば、リアルの代替じゃないバーチャルを作れる。

それが、三上さんの信念でした。

そして、それを象徴する機能が、倍速再生でした。

僕は、倍速再生には、最初は懐疑的でした。

自分の講義は、話す速さとか、間合いとか、そういうものも考えて作っていると思っていたので、それが、ピヨピヨと倍速再生されるのが嫌だったのです。

だから、最初は、倍速再生可能に設定していませんでした。

でも、三上さんの信念に押されて、渋々、倍速再生可能な講義ファイルを作りました。

受講者の反応は、僕の予想を裏切るものでした。

ほぼすべての受講者が、倍速再生で講義を視聴し始めたのです。

受講者は、次のような動画視聴法を編み出しました。

1)最初から2倍速で通して見て、全体像を把握する。

2)2度目も2倍速で視聴し、分からないところは等速に戻し、一時停止したり、繰り返して再生したりする。

3)3度目は、4倍速で視聴し、例題などの前で止めて、紙に書いてやってみる。

こんな感じで勉強すると、90分の動画講義であっても集中力が途切れずに、どんどん学べるというのです。

「リアルの代替でないバーチャル」は、確かに存在するということを実感しました。

その年、受講者とのオフ会に出席すると、参加者から「田原先生のしゃべりが遅く感じる。2倍速じゃない田原先生には違和感がある」と言われました。それほど、倍速再生が与えたインパクトは大きいものでした。

理解の速度と再生速度をシンクロさせる

僕の動画講義は、予備校の90分の授業をそのまま動画にしたので、90分~120分と長いです。

その後、「長い動画は集中力が持たないから、長くても15分までにしたほうがよい」ということが言われるようになりました。

それも一理ありますが、知識が細切れになってしまうデメリットもあります。

90分間で、部分と全体とが響きあって理解が深まる構成というものもあったりするので、長い動画には、長い動画なりのメリットもあります。

そもそも、なぜ、集中力が15分しか持たないのでしょうか?

面白い本なら1時間でも2時間でも読みふけることができるのに、動画だと15分で集中力が切れるのはなぜなんでしょうか?

ということを考えていて気がついたことがあります。

動画の速度が、理解の速度よりも早い → ついていけないのでストレスを感じる。

動画の速度が、理解の速度よりも遅い → まどろっこしくなって飽きてしまう。

対面だと、話している速度と、理解の速度にずれがあっても、結構、耐えられるんだと思います。

でも、動画だと、耐えられる幅が小さくなるので、15分くらいが限界・・・・・。

ということなんじゃないかなと考えています。

しかし、もし、動画の再生速度を自分で自由に変更できて、自分の理解の速度に合わせることができたら、ストレスを感じることなく動画講義を受講できるようになります。これが、フィズヨビ生に起こっていることです。

動画の再生速度と、理解速度とをシンクロさせることが、とても重要なのです。

そして、そのようにして学ぶことができる動画講義は、リアルの講義の代替ではなく、新しい価値を生み出しているのです。

 

 

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