反転授業の予習動画は10分~15分が適切?
反転授業のための予習用動画を作るときに、何分くらいのものを作ったらよいのでしょうか。
実際に作られている動画講義の時間を元に考察してみましょう。
Khan Academy や Courseraなどの動画を見ると、15分以下ののものがほとんどで、20分を超えるものはほとんど見かけません。学習者が集中できる時間はせいぜい15分までというように考えているのだと思います。
15分で説明できるのは1トピックなので、1動画で1トピックを説明する形式になっています。
Khan Academy の場合は、その後に、練習問題がついていて、動画で説明した内容を理解しているかどうかを問題演習で確認し、5問連続で正解したら先に進むことができる仕組みになっています。
このようにスモールステップで進む形式の場合は、1動画1トピックで簡潔に説明するものがよいようです。
アクティブラーニングなどのグループワークを中心に据える場合、説明を詳しくしすぎないのが重要だそうです。実際、小林昭文先生の授業では、最初の10分ほどでパワーポイントなどを使って完結に内容を説明しています。横山北斗先生にお話を聞くと、重要なことは教えるのではなく、グループワークの中で生徒が自分で発見してほしいとおっしゃっていました。この観点からすると、動画講義を作る場合は15分以内になるでしょう。
このような観点からすると、「やっぱり、動画は10~15分が適切だ!」という結論になりそうですが、これとは全く違い、長時間の予習動画を作っているケースもあります。古文の反転授業をされている甲斐資子先生の動画講義は、20分~45分です。上記の観点からすると、「長すぎて、受講者の集中力が持たないんじゃないのか」と思われるかもしれません。
しかし、ある程度の長さを持たせることによって、全体像を把握させたり、ストーリーをつかませたりさせることもできます。甲斐先生は、動画講義を「予習」と位置づけずに「配信授業」と読んでいます。動画講義の中で重要なことはすべて伝えて、動画でしっかり学ばせるという位置づけになっています。
●スモールステップ形式 → 1動画1トピックに区切り、分かりやすく説明する。
●アクティブラーニングを元にした予習動画 → できるだけ簡潔に短くする。説明は意図的に不十分にすることもある。重要なことはグループワークで自分で発見させる。
●甲斐先生の「配信授業」 → 重要な内容を伝えている特別な「授業」という位置づけなので、授業と同じくらいの長さになり、授業と同じクオリティを目指す。
というように、反転授業のための予習動画といっても、やり方が違えば、役割が違ってきて、最適な時間も変わってきます。
でも、多くの方は、「45分の動画講義を受けるのはつらい」と思うのではないでしょうか?
実は、ここには、秘密があるのです。
甲斐先生の使っているThinkBoardには、2倍速再生、4倍速再生が機能としてついています。2倍速で聞けば、45分の講義といっても、実際には23分くらいで聞き終えることができます。
2倍速で聞いて、ちゃんと理解できるの?と思うかもしれませんね。
MITの学生にMOOCsの授業を倍速再生で受けさせて、理解度が下がるかどうかをテストした研究があります。
(第6回【識者インタビュー】 デジタル家庭学習の最先端 ~世界の論文調査から~ より引用)
—- ここから引用 —-
MOOCsの中には、授業を倍速で視聴できる機能を持つものがあり、MITの学生がMOOCs方式の授業を倍速で視聴した場合、授業の理解度は落ちなかったとMITの研究で明らかになっています。つまり、オンライン授業を倍速で視聴すれば授業時間が短縮され、学習者はより多くのことを学ぶことができます。
—- 引用ここまで —-
実は、僕も甲斐先生が使っているのと同じThinkBoardを9年前から使用しています。
9年間の間に、数千人の生徒が2倍速・4倍速再生をどう使ったらよいかという試行錯誤をしてきました。
倍速再生の使い方、ノートの取り方など、e-Learningの効果的な使い方についてのノウハウを9年かけて蓄積してきました。
その結果、もっとも効果的だと思われる動画講義の受け方は、
「分かるところは、2倍速で進み、分からないところが出てきたら、等速に戻してその部分だけを反復し、理解できたら先へ進む」
というものです。
どうして、このやり方がよいのか、ずっと考えていて、気づいたことがあります。
それは、「インタラクティブ性があると飽きない」ということです。
ビデオを見ながら寝てしまうことはあっても、ビデオゲームをしながら寝てしまうことはありませんよね。
インタラクティブ性があると、頭が活性化して、学びやすい状況になるのだと思います。
この場合は、自分の理解度に合わせて、最適な速度を選択したり、分からないところを反復したりする行為をすることで、受身にならずに動画講義に取り組むことができます。これが、インタラクティブ性と似た効果を生み出しているのだと思います。
実は、僕の講義ファイルは、甲斐先生のよりもさらに長く、60分~120分です。
しかし、受講者からは、講義が長すぎるという声は上がってきません。
「2倍速で何回も何回も繰り返して聞いています」という声が届きます。
オフ会で会ったときに、「田原先生が、等速で話しているのが違和感があります(笑)」と言われるほどです。
このように、動画講義だけをとっても、まだまだ掘り下げていくと、いろいろな可能性が出てくると思います。
今後も、実践例を中心に紹介していきたいと思います。
■10月7日のオンライン勉強会では、反転授業やアクティブラーニングを実践されている先生が、実践例を紹介してくださいます。
■実践されている方、実践を検討されている方、ぜひ、つながりましょう。
※グループに参加希望の方は、田原までメッセージ下さい。
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