アクティブラーニングが、「クラウドの時代」を生きる若者を育てる
「反転授業の研究」の田原真人です。
Bob Stilgerさんは、
「お互いに耳を傾け合うことで、未来は創られる」
と言います。
これは、直感に基づいて動いた人たちが集まり、それぞれの体験を傾聴し合うことによって、ぼんやりしていた「今起こっていること」のBig Pictureを共有し、さらにそこからインスパイアされた直観によって次の行動が生まれていくというサイクルが回るからではないかと思います。
震災後の4年間、新しい未来を模索して、様々な試行錯誤をしてきました。そして、その実践から得た気づきをアウトプットしていきました。
アウトプットしていくと、様々な反応があり、多くの人と縁がつながり、そこからたくさんの気づきを得て、さらに試行錯誤とアウトプットを重ねていきました。
そこから、未来へ繋がる道が少しずつですが見え始めています。
そして、同じPictureを描いている人たちとも巡り会うようになってきました。
僕の中では、新しい世界(new world)のリアリティは増す一方です。
しかし、それを、高校生や大学生にどうやって伝えたらいいのかというところで悩んでいました。
高校生や大学生の現実と、僕が感じているリアリティの間には距離がありすぎて、僕の言葉が彼らに届かないように感じていたのです。
でも、「どうせ言っても通じないんじゃないか」という思いを抱いて足を止めるよりも、実際に言って通じるか通じないか試したほうがいいですよね。
その中から、どのようにしたら通じるのかという方法も見えてきます。
先日、自分が運営しているフィズヨビで「未来を創る人~出会い・発見・創造」というオンラインダイアログを行いました。
話をしてくれたのは、桑原恭祐さん。
桑原さんは、大学4年生のときに、「クラウドの時代になる」と直感し、大手企業やベンチャー企業などからもらっていた内定をすべて断ってフリーターになり、情報の受信力、編集力、発信力を高めながら自分自身の価値を高めることを選択した人です。
桑原さんは、京都精華大学の筒井洋一さんの「グループワーク概論」でCT(授業協力者)を務めたり、近大附属の江藤由布さんのOrganic Learningでは共同代表になるなど、未来を創る動きを鋭くキャッチして、立ち上げに関わりながら経験を積み、ネットワークを広げ、価値創造する力をぐんぐん伸ばしています。
24歳の桑原さんが語る「クラウドの世界」は、自分自身の根っこの思いを語ることによって、共感する人とクラウドで緩くつながっていく世界であり、その中で、多くの出会いが生まれ、そこから気づきを得て、協力し合いながら創造できるようになる世界です。
この話を友達にしても、ほとんど分かってもらえなかったそうですが、今の僕たちなら、桑原さんの話をうなづきながら聴くことができます。
なぜなら、それは、「反転授業の研究」が実現している世界そのものだからです。
桑原さんの話は、高校生や大学生の心にも響いたようでした。
参加者のみなさんの声から、僕も多くの気づきをいただきました。
クラウドの世界は、パラレルワールドだ
自分の価値に、自分で気づくことは難しいです。
自分にとっては当たり前だと思っていることが、別の人にとっては役立つことだったりします。
コミュニケーションを取ることで、はじめてそれが明らかになり、自分が役に立てることが見つかり、価値を生み出せるようになるのです。
僕は、桑原さんのように決断したわけではなかったのですが、結果的に、他の人よりも早く「クラウドの世界」へ突入しました。
クラウドの住人になったことで、リアルの世界だけで生きていたころの常識を手放し、クラウドの世界の常識を身につけていきました。
そこについては、あまり話をしたことがなかったので、先日のダイアログで、参加者の方のコメントをうかがっているうちに、暗黙知だった部分が引っ張り出されてきました。
それは、「リアルの世界」と「クラウドの世界」とには、決定的な違いがあることです。
「リアルの世界」には、唯一のリアルな身体を持つ「私」が存在し、その「私」が同時にいくつものグループに所属することはできません。
だから、どのグループに所属するのかを選択しなければならないのです。
しかし、「クラウドの世界」では身体がありません。
それは、同時にいくつものグループに所属できることを意味します。
だから、どれか1つを選択する必要はないわけです。1つに選択するというのは「リアルの世界」の制約であり、「クラウドの世界」は、その制約から自由なのです。
1つに選択する必要がないということは、大きな意味を持ちます。
予測が難しい未来ルーレットに対して、何か1つに賭けなければならないのであれば、どうしても慎重になります。
でも、いくつも賭けていいのであれば気が楽ですよね。たくさん賭けておけば、必ずどれかは当たるはずです。
たくさん賭けるほど当たる確率は上がり、生き残る可能性が高まるのです。
そのことに気づいてから、自分の中の多様性に目を向け、その中の1つに絞り込むことなく、多様な自分をそのままアウトプットしていくようになりました。
とにかくたくさんの種を撒くようにしています。
「クラウドの世界」では、1つの種を撒くコストは非常に低いのにも関わらず、それによって増加する未来の可能性は大きいので、種はできるだけたくさん撒いたほうがよいのです。
どの種が発芽して成長していくのかを決めるのは僕ではありません。
宇宙に選ばれた種が発芽して成長していきます。
「反転授業の研究」も、かつては気軽な気持ちで撒いた種の1つでした。
発芽した芽が成長していくと、多くの人に発見してもらえるようになり、出会いが生まれ、そこから気づきを得て、価値創造できるようになっていきます。
この4年間で撒いた他の種のいくつかも発芽していますので、今後、そこからも価値創造できるようになっていくと思います。
クラウドの世界で必要なスキル
クラウドの世界で必要になってくるスキルとは、どのようなものなのでしょうか?
それは、あなたが、どんな人とコラボしたいのか?って考えてみると見えてきます。
「リアルの世界」では、あなたに職をくれるのは、例えば会社で採用を担当する人事の人だったりします。
だから、人事がどのような評価基準で選ぶのかが大事になってきて、その評価基準が社会の序列を生み出します。
でも「クラウドの世界」では、あなたをコラボレーションの相手として選ぶのは、あなた以外のすべての人です。
あなたがアウトプットしているものから、あなたの価値観、志、感性などを読み取り、あなたと一緒に価値創造したいと思った人が、あなたをチームに誘うのです。
「クラウドの世界」には、多様な価値観に溢れているので、あなたの潜在的な「仲間」が、あなたを見つけてくれるためには、あなたの根っこの思いから出てくる尖ったアウトプットが重要になってきます。
どこかで聞いたことのあるような受け売りのアウトプットは、心に響きません。
あなたが自分の心と体で体験し、あなたが時間と労力をかけて暗黙知から引っ張り出してきた言葉だけが、あなたの未来を創るのです。
今は、まだ、「クラウドの世界」の価値に気づいている人は少数ですが、今後、急激に増えてくるでしょう。
「リアルの世界」と「クラウドの世界」とを行き来しながら、それぞれの世界の強みと弱みを理解し、それらを上手に組み合わせることで、価値を生み出していく人も増えてくるはずです。
僕達は、今後、そのようなパラレルワールドへ突入していきます。
そして、今の子どもたちが活躍する時代は、まさに、リアルとクラウドが混在するパラレルワールドなのです。
そのような世界で、よりよく生きるための力とは、どのようなものになるのでしょうか?
受信・編集・発信のサイクルを回しながら、自分の枠組を広げていく
僕が重要だなと感じているのは、自分が学ばざるを得ない状況に自分を投げ込んでいくこと。
そして、周りのすべてから学び、そこに散らばっている情報を自分の視点で編集し、ストーリーとして発信していくこと。
このような力を学校教育の中で伸ばしていくことができればいいなと思っています。
そして、アクティブラーニングや反転授業には、その可能性があると感じています。
一人では達成できない課題を、チームで協力して解決していくためには、お互いの個性を理解して組み合わせ、その和集合を大きくしていくことが必要になってきます。
それは、リアルとクラウドが混在するパラレルワールドを生き抜く力を育てる第一歩になるのではないかと思います。
まずは、「クラウドの世界」での学びを体験してみませんか?
近未来を体験し、それを、アクティブラーニング実践に役立ててみませんか?
申し込み締め切り(8月30日)
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