熊本県立高校で生物を教える溝上広樹さんにインタビュー

熊本県立高校で生物を教えていらっしゃる溝上広樹さんは、授業をアクティブラーニング形式で実践されています。

溝上さんが、なぜ、アクティブラーニングを導入するようになったのか、背景を探ってみました。

子どものころから「先生になること」が、ずっと頭の中にあった

溝上さんは、子どものころは、何になりたかったのですか?

小、中くらいまでは先生になりたいと思っていました。高校に入ってからは柔道に打ち込んでいて勉強から離れていたんですが、ずっと先生というのは頭にありました。

大学に入ってからは、生物の研究を続けたいという気持ちも生まれてすごく迷いました。でも、いつか先生になりたいという気持ちがあって、結局、研究者にはならずに先生になりました。

溝上さんは、生物で博士号をお持ちじゃないですか。博士号とってから教師を選ぶ人って珍しいですよね。それは、研究者になろうか、教師になろうかと迷っていて、そこまで行ったという感じなんですか?

好きなことに出会ったんですよ。大学生になったときには、生物に幻滅したんです。生物を学べば自分が疑問に思っていたことが解けるのかと思っていたのですが、分子生物学が主流で、イメージしていたものと全然違いました。それで、文学部に転部しようかと思っていたりした時期もありました。ところが、大学3年生のときの授業で化学生態学というものに出会いました。これは、化学物質を使って植物や昆虫の関係を記述するものです。こういう学問があることを知って、とても興味を持ちました。でも、熊本大学には化学生態学を専門にしている先生がいなかったんです。それで、植物生理学の先生に相談したところ、「ウチは分析はできるから、やりたいならやってもいいよ」と言われたので、自分で勉強しながら研究しました。昆虫を専門にしている先生のところに行ったりとか、学会とかに行って勉強して、自分で主体的に勉強していたので楽しかったです。

自分のテーマで分からないところがあったので、それを形にするまでは研究したいなと思い、納得する形まで続けたらドクターまでやることになりました。

指導教官の指導なしで、自分で研究して、博士号を取ったんですね。すごい!研究は、納得できるところまでやることができたんですね。

そうですね。1つクリアできたかなという感じです。

中学の教員免許も取っていたし、そのときも塾の先生をバイトで続けていて、教員というのはずっと頭の中にありました。

僕の場合は、大学3年生のときにカオス理論に心打たれて、これを研究したいと思い、指導教官が提示したテーマを断って形態形成とか自己組織化というテーマへ進みました。それで、指導教官の指導を受けられなくなって(笑)、ドクターを中退するまでほとんど指導なしで続けたんです。その一方で、大学院のとき、中学と高校で数学の非常勤講師をやって、生活費と学費を稼いでいました。教育と関わりを持ちながら生物を研究していた点が同じで、とても親近感を持ちました。

そうですね。近いですね。

僕も経験したのでよく分かるのですが、大学院で指導を受けずに一人で研究して博士号を取るということは、自分のやりたいことと、アカデミックの世界で起こっていることの両方について考えたり調べたりしながら、制限時間内に成果を出さなくてはならないので、とても大変なことです。かなり主体的に動かないと不可能です。その主体性がどのように育まれたのかを知ることが、溝上さんを理解する鍵になると思いました。

小学3,4年生のときに受けたアクティブラーニング型授業

お話をうかがうと、溝上さんの場合は、先生という職業がずっと心の中にあり続けたと思うんですよね。それだけ、先生になりたいと思うようになったきっかけは何だったのですか?

小学校3,4年生のときの担任の先生の授業がとても印象的で、それが原点になっています。

当時そんな言葉があったかどうか分かりませんが、アクティブラーニングをやっていました。社会が専門の先生で、グループで話し合ったりして、みんなが一生懸命発言しながら授業が進んでいくというものでした。毎日、学校がすごく楽しかったですね。

すごいですね。2年間アクティブラーニング型の授業を受けたという経験が、ずっと溝上さんに影響を与えているんですね。主体的に学ぶのが楽しいという経験は、大学院時代に自分でどんどん学んでいったということにも影響しているんですか?

間違いなく影響していますね。

そうなんですね。アクティブラーニング型の授業を受けるという経験が、人生に与える影響って、すごく大きいんだということを溝上さんの例から感じて、やっぱり、AL型授業をやることは重要だと、改めて思いました。

確かにそうですね。その小学校の先生とは、今も交流があるので、当時、何を下敷きにしてあのような授業をされていたのか聞いてみたいですね。

当時、AL型授業をされていた先生は、他にもいたんですか?

いなかったと思います。自分でどんどん研究授業を組んで、他の先生が見学に来ていました。

実際にAL型授業をやるようになると分かりますが、背景知識とか、思想とかがないとできないですよね。

自分がやるようになって、改めて、あの先生は、相当研究されていたんだろうなと思いますね。

今、溝上さんの授業を受けている生徒も、溝上さんのAL型授業から衝撃を受けて、それが将来につながっていくということも出てくるんじゃないですか。

そうなるとうれしいですね。

溝上さんの話は、AL型授業をされている方に大きな希望を与えるものだと思います。小学生の時に受けた2年間のAL型授業が、溝上さんの学ぶ態度に影響を与え、それが、主体的に学び、主体的に働くという生き方につながっているのですね。今、私たちが取り組んでいるAL型授業が、生徒の将来にどのように役立つのか、溝上さんの例からはっきりとイメージすることができました。

アクティブラーニングを始めたきっかけ

溝上さんは、高校の教員になって何年目ですか?

6年目になります。

最初に先生になったころは、どんな授業をされていたんですか?

普通のone wayの授業をしていました。結構、クラスを鎮めるのが大事という感じで、静かに、でも、寝せないように、いかに授業をするか。それを目指して頑張っていました。

ただ、一番最初の研究授業では、班別学習をして、発表し、クラスのフィードバックをもらって自己効力感を向上させようというようなことをやりました。

今から考えると、下敷きにしたものがなく、自己流だったので、いろいろ問題があるんですけど、そういうのがやりたかったという気持ちは当時もありました。

一斉講義型の授業をしていて、どんなことが課題だと感じていましたか?

そのときは、本当に力がついているのかなということを心配していました。進級しなくちゃいけない子とかは、最後はクラスに残らせて、一緒に覚えさせて、点数を取らせて進級させていたんですが、卒業後は、そういうのは全部忘れているんだろうし、
その子も、形だけで卒業したんじゃないかということを思っているんじゃないかと思うんですよ。それが、本当に良かったんだろうかと思うことがあります。

あとは、はじめて1年から3年まで担任を持ったときの経験がきっかけになりました。その学校が閉校する学校だったので、広いところからいろいろなレベルの子が集まっていて、進級ギリギリの子もいれば、国公立大学に入りたいという子もいて、その子たちをうまく授業内で交流させられなかったという後悔が残りました。それが、自分の中に引っかかっていたんです。

アクティブラーニングに授業スタイルを切り替えたのはいつからですか?

去年の2学期からです。

何がきっかけでアクティブラーニングに取り組むことになったのですか?

キャリアガイダンスに載っていた小林昭文先生の記事を読んで、これはすごいなと思ったことです。ちょうど夏休みだったので勉強しました。アクティブラーニングというキーワードでは情報があまり出てこなかったんですが、協同学習だとやっている方がいらっしゃったので、調べて勉強しました。それから、小林先生のブログをチェックするようになり、秋に小林先生が熊本で知り合いの先生に会うという情報をブログから得て、小林先生にメールを送りました。

「どなたが実践されているのですか?私に教えてください」

とお願いしました。そしたら、小林先生から学校の職員室に電話がかかってきて、夜の食事会に同席してお話をさせていただきました。そこからが本格的なスタートです。

僕も小林先生にメールしたのが、アクティブラーニングのスタートだったんですよ(笑)。

小林先生は、すごいですね。

日本全国を回って、いろんな人を繋いでいますからね。すごいですよね。

キャリアガイダンスの小林先生の記事を読んだ教師というのはたくさんいたと思うんですけど、実際に小林先生にメールしたり、行動を起こしたり、AL型授業を始めたりという方は、全体からするとほんのわずかだと思います。行動を起こそうと思ったのは、どんな気持ちだったんですか?

これは、大変そうだけど、実践してみたいなという気持ちがありました。あと、面識がない方にコンタクトを取ることは、大学院生のときによくやっていたので、行動を起こしやすかったというのはあったと思います。

One Wayの授業をしながら感じていた課題を、アクティブラーニングが解決できそうだと思った後の溝上さんの行動の速さに感動しました。そして、そのような積極的に動いて学ぶという態度は、大学院生のときに主体的に学んだ経験によって養われていたということが、非常に重要な意味を持つように思いました。

小林先生の記事を読んで、ここからスタートすればいいと思った

お話をうかがって、溝上さんにとっては、教師のイメージの原型みたいなものって、小学校3,4年生のときの担任の先生なんじゃないかと思うんですが、小林先生の授業は、それと近いと感じましたか?

そうですね。それと近かったんだと思いますね。

とうことは、そういうイメージの原型はあったけど、最初のころの溝上さんの授業は、そのイメージとダイレクトに繋がっていなかったわけですよね。でも、小林先生の授業のことを知ったときに、「これだ!」と思ったというのは面白いですね。

たぶん生徒主体型の授業をしたかったんですけど、何をとっかかりにしたらいいのか分からない状況だったんです。でも、小林先生の記事を読んだときに、ここからスタートすればいいんだと思いました。

それで、アクティブラーニングとか協同学習とかを勉強し始めて、いろんな先生方とつながって、今に至ります。

研究をしているときには、うまく言葉や形にはできないモヤモヤしたものを頭の中にいつも置いておくと、あるとき、それにピッタリのものが見つかって、「これだ!!」と思うことが何度かありました。そういう経験を持っていると、時間をかけてアイディアを熟成していくことができるのではないかと思います。溝上さんがアクティブラーニングと出会うことができたのも、モヤモヤとしたイメージをずっと持ち続けていたからではないでしょうか。

溝上さんの授業の枠組み

授業の枠組みは、小林先生の枠組みを下敷きにして始めたのですか?

下敷きにしたんですが、生物と物理とでは教科の特性が違って、完全に下敷きにすることはできませんでした。小林先生のように、問題をいきなり与えてやらせるスタイルというのは難しいと思いました。それで、ずっとあえいでいました。

それで、とりあえず探求型に近い授業をやっていました。記述をさせたり、考えさせる問題をだしたりしていました。そういう形で迷いながらやっていたんですが、今年の4月に学校が代わり、悩んでいたところを夏休みにAL型授業のオンライン講座で勉強することができたという感じです。

アクティブラーニングをやってみて、生徒の反応はいかがですか?

クラス40人いて、その中で一人二人は、今までのやり方がいいとか、話したくないとかいう子もいますけど、全般的に悪くはないです。多くの子は、ただ聞くだけじゃなくて、友達と話したり、学び合いしたりというのをしたいと思っているようです。

新任校では、知識も入れなくちゃならないし、アクティブラーニングもやりたいということで、1学期は、知識を入れるところは一斉講義型にして、探求型の学習をアクティブラーニングでやっていたということですか?

そうですね。あとは、問題演習をさせるときに、確認で話し合いをさせたりしていました。

夏休みに、小林先生がメイン講師でAL型授業実践者のためのスキルアップ講座をオンラインでやりましたよね。あのときに、溝上さんが、「授業のやり方が分かった!」という感じになって、感謝の気持ちを表すためということで、みんなにコメントして回っていたじゃないですか。あのとき、何が「分かった」のですか?

生物の授業の中で、小林先生のように問題を解かせて話し合わせるようなことをやるのは難しかったので、理解が深まっていくような活動をどこでさせるかなというところで、すごく悩んでいたんですけど、教科書の内容理解を話し合わせればいいんだなというところがつかめたんです。

どうして教科書の内容理解に着目したのですか?

生物の問題を解くのは、一度勉強しておけば、一問一答式でどんどん答えられるのがほとんどなんですが、教科書の内容理解は、子どもたちが考えたりとか、内容を理解できない子がいたりとかしていたので、ここに学び合いが起こるなとひらめきました。授業の一番中身になる部分のアイディアが湧いたので、うれしかったです。

新しい授業の枠組みで、もう何度か授業を行っているのですか?

1週間やったところです。

感触はどうですか?

やってみて気がついたのは、学年によって任せることができる量が変わってくるということです。3年生は、こちらが解説をしなくても子どもたちだけで結構やれるんですが、2年生に同じようにやると、「先生の解説がほしい」とかいう言葉が出てきます。
安心安全の場を作るということもあるので、不安にさせないように、もうちょっとこちらで説明するようにしました。1年生の場合は、任せられる量がさらに少なくて、そういう調整が必要だなと思いました。

夏にひらめいたことは、うまくいきそうなんですね。

そうですね。

溝上さんの授業についての姿勢は、すごく「研究」と近いように感じました。ある仮説を立てて授業を行い、その結果を分析、考察して、課題を洗い出して、それを解決するための方法を、粘り強く考えていくわけです。そして、他の人の話をたくさん聞いている中でひらめいたんですね。こういう瞬間は、授業を実践する者にとって、一番快感を感じるところだと思います。

「科学者になる」について

小林先生は、「科学者になる」ということを大目標においていますが、溝上さんの場合は、目標をどのように設定しているんですか?

夏休みに講座を受けて、学習目標をちゃんと立てないといけないなと思って、協同学習の中で、「メンバーの力と心を合わせて、自分とチームのために一生懸命頑張る」というような目標を与えています。もう1つは、小林先生の「科学者になる」という目標に対応するものなんですが、自分の中で反芻していて、これは、どういう意味なんだろうかって思っていたんです。本当に科学者になるわけじゃないんだけど、どういうことなんだろうと考えていました。それで、「科学者の視点とスキルを手に入れる」ということだと解釈しました。それで、たとえば、「自分は子どもを病院に連れて行ったときにこんなことがあって、よかったよ。」という話をしたりしています。

あれは、どういう意味なんでしょうね。

科学者になるというのは、考えてみると深いなと思います。答が決まっていないのを、みんなで話し合いながら探求していくのも科学かなと思ったりして。この部分は、自分でもうまく説明できないので伝えていないんですけど。

最近、キャリア教育についての本を読んだりして勉強していたんですよ。小林先生が、「教科の中のキャリア教育」ということをブログに書かれていたのを読んで、「キャリア教育」について考えたいと思ったんです。将来なりたいものを見つけて、それを目指して学習意欲を高めるというのはイメージしやすいけど、そんなに単純なものかなと思っていたら、児美川孝一郎さんの『キャリア教育のウソ』を読んで、変動が激しい社会においては、なりたいもののために学ぶというのはリスクが大きいので、好奇心を持って、いろいろチャレンジする態度を育てるほうがよいのではないかと思い始めました。自分自身の働き方を考えてみても、予定通りに行ったというよりは、いつも種を5-10個くらい撒いておいて、芽が出たものにリソースをつぎ込むという感じです。これは、研究をやっていたときにやっていたことと似ているんですよ。研究をしていたときも、テーマになりそうなものをいつも探していて、自分なりの仮説を立てて、行けそうだと思ったら時間と労力を注ぎ込むという感じでしたから。それで、もしかしたら、知識基盤型社会に適応するためには、科学者としての態度が必要なのかもしれないと、つい最近、ひらめいたんです。

それ、授業で使えそうです(笑)。

溝上さんの場合は、小学生のときにAL型授業を経験したことをきっかけに、自分から主体的に学ぶ楽しさに目覚めたことが大きかったのだと思います。そして、大学院のときに仮説と検証を繰り返し、積極的に動き回って情報を集めて、自分で突破していくスキルと自信を身に付けたのではないでしょうか。まさに、溝上さん自身が、「科学者としての態度」を身に付けたのだと思います。その結果、博士号も取得し、教師になってからも積極的に新しい授業に取り組んで、小林先生にアクセスしたり、オンライン講座に参加したりというように積極的に動き、そこからの刺激を取り入れてどんどん授業を進化させています。僕は、溝上さんのような方は、研究者になっても成功しただろうし、他の仕事をしても成功できると思います。また、この先、時代が変化して、教師の役割が変わっても、そこで新しいやり方を見つけていけると思います。小林先生の「科学者になる」という禅問答のお題の答が、溝上さんという具体例を通して、理解できてきたように思いました。

ファシリテーションについて

ファシリテーションについてもうかがっていいですか?アクティブラーニングをやっている授業中は、どんなことを考えているんですか?

チームで解決する力とか、自分で解決する力をつけさせたいなと思っているので、必要以上に介入しないようにしています。できるだけ内容には介入しないようにしています。学習に参加していないような子に対しては、個別に介入していますが、できるだけ、話が終わった後に全体にフィードバックするようにしています。

今は、グランドルールを確認させるような介入をしようと思っています。

小林先生のやり方だと、質問による介入によって主体性を引き出すような感じじゃないですか。溝上さんは、質問による介入についてはどのように考えていますか?

難しいですよね。迷っています。最初は、質問による介入をしまくっていたんですが、できれば、それも含めてチームの中でどうにかしてほしいなという気持ちが生まれてきました。高校の授業は週に3-4回あるので、生徒と結構関われるんですね。それを考えると、長いスパンで見て、チームでどうにか解決できるようになっていってほしいなと思って、介入の量を減らしています。ただ、必要に応じて質問による介入はしていかなくちゃなとも思っていて、全然介入していないわけではないです。

僕も、同じところで迷っていますね。質問を出すことによって、理解を深めたいという気持ちもあるんですよね。でも、独立した学習者ということを考えると、そういう疑問も自分で出してほしいという部分もあるじゃないですか。長いスパンで見られるのであれば、そういうところも見守っていくというのもあるかもしれませんね。

話し合いをするときに、押さえてほしい内容というのをプリントにまとめているんですが、疑問形式で与えているんですよ。「恒常性とは何ですか?」みたいな感じで。

ある意味、プリントが質問による介入の役割を果たしているんですね。

それをイメージして作っているんですが、今のところは、子どもたちが、自分が説明するのにいっぱいいっぱいで、うまく活用できていないですね。

ただ、段階を踏んで、最終的にはジグソー法も外したいと思っているんです。自分たちで自由にやれるようになってほしいなと思っているんです。

子どもたちの話し合いのスキルが上がってきて、ジグソー法を外しても、うまく話し合えるようになってきてほしいということですね。

そういうイメージです。最初はかっちり形を決めてやらせて、その中で力をつけていって、最終的には、その方法を取らなくてもできるようになってほしいなという思いがあります。

AL型授業の枠組みというものがきっちり決まっているのではなく、生徒の発達段階によって、強い枠組みから弱い枠組みへとだんだん枠組みを減らして自由を与えていくという考え方は、とても参考になりました。「学年によって任せることができる量が変わってくる」という話も少し前に出ていましたが、これも同じ考えに則っていると思いました。生徒の状況をよく観察しているという印象を受けました。

教室環境について

ブログで、理科室の机の位置を2時間かけて移動したと書いていましたが、配置を変えるとずいぶん変わるんですか?

はい。変わりましたね。グループにしたときの距離が近いので、話し合いがしやすくなりました。心理的な距離と物理的な距離は相関があるという話を聞いて、そうかもしれないなと思って机を動かしました。あと、あの形にすると個人で活動するときに周りと離れて視界に入らないんですよ。個人活動も集中してやれるんですよ。だから、個人でやるときとグループでやるときの切り替えが、あの形だとすごくしやすくて、予想以上に効果あるなと思っています。

ファシリテーションってグループ活動を行う上の支援一般じゃないですか。プリントとか机の配置とか、いろいろ含まれると思うんですよ。他に何かきをつけていることはありますか?

温度管理ですね。理科室はクーラーが入っていないので、準備室のドアを開けて、冷気をあらかじめ入れておくんですよ。学びやすい環境を作ってあげたいなと思っています。

あとは、教科通信です。リフレクションカードであがってきたコメントや疑問、気づきを全体で共有したり、グラウンドルールの意味などを説明したりするためのツールとして毎週1回発行しています。

今、『教育研修ファシリテーター』という本を読んでいて、ファシリテーターは、照明やカーテンの開閉、空調、BGMなどにも注意を払わなくてはならないというところが出てきて、目からうろこだったのですが、溝上さんからも温度調節の話が出てきたので、印象が強まりました。

溝上さんが興味を持っていること

溝上さんが、今、興味を持って学んでいることは何ですか?

実は、反転授業ですね。

動画とかは?

実は、作ってQRコードで上げたりしています。反転授業の研究で一緒の横山北斗さんと松嶋渉さんにやり方を教えてもらいました。

その動画は、どのように使っているんですか?

全員がスマホを持っているわけではないので、授業の進行で必要なところには使えないのですが、理解が難しいところを解説してあげています。

サプリメント的に、使っているんですね。

そうですね。今のところは、授業でガッツリ使うというわけにはいかないんです。

教えた生徒が、将来、こうなってほしいというのは?

生物を受けている子たちは、ニュースとか情報とかを自分で判断できるようになってほしいです。ちゃんと考えられるような子になってほしいです。

好奇心が強く、いろいろなことにチャレンジする溝上さんが、反転授業に興味を持たれたのは、必然的なことだったかもしれません。新しいツールが手に入ることによって、可能性が広がり、アイディアも膨らむはずです。溝上さんから、今後、どのようなアイディアが生まれてくるのか、とても楽しみです。

9月23日21:30から実施する反転授業オンライン勉強会「ファシリテーションスキル」で、溝上さんが登壇します。

詳しい内容はこちら

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