登壇者紹介 鈴木利和さん

第7回 反転授業オンライン勉強会「対話と集合知、学習する組織」の2番目の登壇者は、組織コンサルタントの鈴木利和さんです。

鈴木さんのことは、Facebookグループ内での書き込みで知りました。

鈴木さんが取り組まれている、参加型のフラットな組織を作り、学びあいながら価値創造していくという考えは、かつて、複雑系の科学や自己組織化するシステムの解明にエネルギーのすべてを注いでいた僕にとって大きくうなづけるものでした。

それで、早速、スカイプでお話をうかがいました。

僕が鈴木さんに聞きたかったのは、Facebookグループにどのように運営したら集合知が生まれやすくなるのかということでした。

鈴木さんの回答は、

「学会みたいな組織にするといいんですよ」

「学会では、引用論文の数で民主的に論文の良し悪しが評価されるし、それぞれが仮説を立てて、みんなで検証していくじゃないですか。そういう仕組みがあるといいんですよ。」

グループでの学びあいの中から、実践例が自然に浮かび上がってくるための評価基準みたいなものは、どうするとよいのかと聞くと、

「直感に基づいたほうがいいです。適当にやったほうがいいんですよ。」

という返事でした。

そのときは、鈴木さんの言っていることが、正直言ってよく分からなかったのですが、鈴木さんのやっていることに大きなヒントがあると思い、活動をウォッチするようになりました。

鈴木さんの言っていたことの意味が少し分かったような気がしたのは、「TTPSとは何か」というブログ記事を読んだときでした。

TTPSとは何か

 

ちなみに、TTPSというのは、

T 徹底

T 的に

P パクって

S 進化する

の略だそうです。鈴木さんがかつて勤めていたリクルートでは、事例を参考にすることを「TTPSする」と呼ぶのだそうです。

日本で教育を受けていると、人のアイディアを参考にするのは、「カンニング!」と言われたりして、ネガティブな印象がありますが、それを、「TTPSする」というように、ちょっとユーモアのある表現に変えることで、急にポジティブな気持ちになるように感じました。

先日、実施した「神アプリExplain Everythingで超簡単に作る動画講義の作り方」というオンライン講座で、早速、TTPSのことを紹介したところ、学びあいが促進されて、

「TTPSまではいきませんでしたが、TTPくらいまではいけました!」

(進化するところまではできませんでしたが、真似をするところまではできました)

などと、早速、みんなでその言葉を使いながら、楽しく、一緒に進化することができました。うまく場が機能すると、すごい勢いで学びが進むということを実感することができました。

前出のブログ記事を見ると、次のように書いてあります。

「目指すところは、セムラーやトゥーワンのような、最小限の管理機構で自律自働の参加型で民主的な集合天才の組織を事例を使ったFlipped Learningで実現することです。」

このあたりに、鈴木さんの考え方が表れているように思いました。

今回、勉強会での登壇をお願いすることになり、改めて、現在の問題意識をうかがってみました。

「勉強について自分が問題だと思っているのは、生徒が自分で考えないということなんです。自分で問いを発して、問いに基づいて仮説を立てて、こういうやり方で検証できるということを学校で習わないので、いつまでたっても、知識を暗記し、A=Bであるという対応関係をやっている。こういうことを変えたいんです。」

「このときに、フラットな関係というのが大切。権威がいるとその意見を聞いてしまうんだけど、フラットな関係で権威がいないと、『えー本当?』となって、自分で調べてみようということが起こるんです。だから、その可能性に期待しているんです」

「フラットな関係という前提がないと、集合天才はおきないんです。」

この回答をうかがって、鈴木さんがなぜ反転授業に興味を持つようになったのかがよく分かりました。

現在の教育システムには、先生という権威がいることによって、自分で考えない生徒を量産してきたという側面があります。

講義を動画にすると、それは教材となり、権威から距離をとりやすくなります。さらに、フラットな関係に基づいたグループワークを教室で行うことで、自分で考え、仮説を立て、検証していく学問をする姿勢を学ぶチャンスが生まれます。

鈴木さんの感じている問題を解決する可能性が、反転授業にはあるのです。

ブログ記事にもあるように、鈴木さんはTTPS研究会というグループで、「集合天才」に到達するための事例の共有をされています。そこで、どうやったら「集合天才」に到達できるのか、そのための具体的な方法論があるのかどうかをうかがいました。

「『集合天才というものもあると言われています。』程度の仮説を出して、いっしょに検証しようという人を募集します!みたいな感じがいいと思います。」

「創発的な世界というのは、なるときもあるし、ならないかもしれないというものです。運営者に意図があると、意図が邪魔をしておきないとことがあります。だから、創発させようと思っていやるんだけど、思ったようにはならず、でも、違ったところに起きているみたいなことになるんです。」

僕も、かつて「創発システム」というものに取り組んでいたので、鈴木さんの言うことは、とてもよく分かります。

最初から、意図していたものが生み出されたのであれば、それは、創発じゃないじゃないか!という議論を、いやと言うほどしました。

鈴木さんの話は続きます。

「もう1つは、集合天才があるかどうかは分からないけど、あると希望になるということです。」

「もし、集合天才がないとすれば、ほとんどの人にとっては生きていて無駄ですみたいなことになる。でも、組み合わせによってギフトがありますということなら希望がある。」

鈴木さんの話をうかがうと、集合天才の存在を信じるということは、民主主義の可能性を信じるということと等価なのだと思いました。

そして、集合天才の存在証明をするためには、フラットな組織において生み出される集合天才が、一人の天才に率いられたピラミッド型の組織よりも優れた成果を生み出していくことが重要なのではないかと思いました。

最後に、集合天才を生み出すために、個々のメンバーに必要なことは何かという質問を投げかけてみました。

それに対する鈴木さんの答は、ちょっと意外なものでした。

「極論を言えば、祈りみたいなものですね。」

「『力に満ちてそこにいる』ということが大切なんです。」

「その場のエネルギーが閾値を越えないと沸騰しないんです。だから、分かんないけど信じれるという気持ちで参加するということが大切なんです。」

話をうかがっているうちに、だんだんと感覚的に納得できる感じになってきました。

鈴木さんと話をしていると、一定の間隔で、「刺さる言葉」というのが、鈴木さんの口から飛び出してきます。

きっと、3月26日の反転授業オンライン勉強会でも、そのような言葉を聞くことができると思います。

 

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