無料で使えるLMS「edulio」のCEO、松野広志さんにインタビュー

反転授業を実践する場合、動画をどのようにして受講者に配布するのかという問題が出てきます。

簡単に行うのであれば、Youtubeに限定公開でアップし、URLを受講者に配布するということで実現できます。

Basic認証などをかけたホームページにYoutubeの動画を張っておけば、複数の動画を順番に見て学ぶこともできます。

しかし、このやり方だと、授業の数、受講者の数が増えてくると、会員管理の手間が増えてきます。このような場合に、LMS(Learning Management System)が必要になってきます。

実際、僕の運営する物理ネット予備校では、会員数が200名を超えたあたりから、LMSの導入を真剣に考えるようになり、2011年にシステム会社のサポートを受けながらMoodleというオープンソースのLMSを導入し、大幅にカスタマイズして使用しています。

2011年当時は、LMSの選択肢は少なかったですが、現在は、いろいろなサービスが出てきました。その中の1つであるedulioを提供している株式会社マイデスク社長の松野広志さんにお話をうかがいました。

ナガセでの経験がeLearningの可能性に目を向けるきっかけに

はじめに、松野さんが教育事業に取り組むきっかけについてうかがいました。

松野さんは、大学を卒業後、東進グループの母体である株式会社ナガセに入社。そのときの経験が教育事業に取り組むきっかけになったのだそうです。

松野さんが当時、東進ハイスクール長野校で目にしたのは、

「ブースに来て、倍速再生でDVD講義を見て、さっさと帰る受験生たち」

その学習効率の高さに驚き、同時に、これが、これからの勉強の主流になってくるはずだと感じたのだそうです。

2000年頃のナガセは、直営の東進ハイスクールを減らし、フランチャイズの東進衛星予備校を増やしていました。

そこには、

有名講師の動画講義+現場でサポートするフランチャイズの塾長

という組み合わせがありました。

これは、反転授業にもつながる組み合わせです。この組み合わせの有効性が、2000年当時に、ナガセにおいて強く認識されていたというのは非常に興味深いです。

そこで、どんな塾長だとうまくいきやすかったのかということを質問してみました。

すると、面白い回答が返って来ました。

「自分で科目を教えられる塾長よりも、むしろ教えることのできない塾長のほうがうまくいく場合が多いと本部から聞いています。」

え??? それは、なぜですか?

「売上げ上位の衛生予備校の塾長は、教えたことがない人が多かったそうです。生徒はカリスマ講師の授業を受けに来ているのに、教えられる人は自分で教えようとしてしまう。すると、そこがボトルネックになってしまって生徒数の上限が決まってしまうんです。一方、教えたことのない人は、本部の言うとおりに教材の力を信じてやるんで、うまくいくんですよ。」

なるほど。

「ナガセの社長が、社員やフランチャイズの前で話すことがあるんですけど、そのときに、『せっかく予備校に来てくれているんだから、とにかく生徒を褒めなさい』と言っていました。」

この話を聞いたときに、思わず、ポンと膝をたたきたくなるような気持ちになりました。

ナガセが躍進した秘密の1つを見たような気がしました。

一流講師の動画講義を倍速再生で見る受験生。彼らをほめてモチベーションを上げるフランチャイズの塾長

これが、ナガセが見つけた形だったのか・・・・。

僕の経験でも、動画講義だけでは勉強が続けられない人がたくさん出てきます。

でも、encourageしてくれる人が身近にいると、勉強が続けられるようになるのです。

「身近でengourageしてくれる人」の重要性は、いろいろな人が言及しています。

スガタ・ミトラ氏の自己学習環境 SOLE でも、「Webを使った探求型の学習+スカイプでengourageしてくれるボランティア」が必要条件として入ってきます。 eboardの中村さんのビジョンにも、「eboard+はげましてくれるおばちゃん」で学びの環境を作ろうという話が出てきました。

ナガセも「身近でengourageしてくれる人」の重要性に着目していたという話は、とても興味深かったです。 松野さんの話は、さらに続きました。

「だから、今、eLearningのモチベーションの問題とか、孤独感とか、いろいろ言われているじゃないですか?そういうのを聞くと、一瞬、すでに議論しつくされたことのように感じてしまうんですよ。でも、よく聞いてみると、少し違うんですよ。古くて新しいというか。今は、Webが使われているから面白い。だから、一瞬、「わかっているよ、そんなこと」と思いそうになるのを自制して、いやいや、ちゃんと聞こうと思うようにしているんですよ。」

これは、ナガセで当時のeLearningの最先端を見てきた松野さんの実感なのだと思います。

現在は、ナガセで議論されてきたようなことに、Webというツールが加わり、らせんを描いて1ピッチ上の位置に来ているのではないかと思います。

当時、課題となっていたことを明確にして、それをWebで何かできないのかと考えていくようなことも有効かもしれないと思いました。

松野さんは、ナガセを退社後、IT会社に転職し法人の人事システムや給与システムの開発に関わり、その後、株式会社マイディスクを起業し、教育系のWebサービスを始めました。

教育系のサービスを始めたベースにあったのは、ナガセでの経験から得た、「いずれ、これが当たり前の時代が来る」という確信だったそうです。

edulioの特徴

edulioのHPに行くと、

「無料で使えるオンラインスクールシステム」

という文字が真っ先に目に入ります。

いったいどんなビジネスモデルになっているんだ???

ということが気になり、その疑問を率直にぶつけてみました。

(松野さん)edulioは、無料プランと有料プランとがあり、無料プランには広告が入りますが、有料プランには広告が入らないなどの違いがあります。

その他、無料プランには、HDディスクの容量が1GBまで、ユーザー数が100名までという制限や、一斉メール配信、一括データ更新、サポートなどに違いがあります。サーバーへの負荷が大きくなるものについては、有料にしています。

有料プランも、僕の感覚では、この機能でこの価格は安いと思うんですが、いかがですか?

(松野さん)新しい技術に挑戦することで、もっと安くできると思っています。値段を下げるだけでなく、同じ値段のままでも質を上げていくことで、より多くの付加価値を提供できることになると思います。

なるほど。これは、どういった人がターゲットになっているのですか?

(松野さん)edulioは、ITリテラシーが低くても使えるシステムを目指しています。ターゲットは、ITに自信がないけどオンラインスクールをやりたい人ということになります。

そのために、eラーニングの標準規格であるSCORMに準拠するのをやめています。SCORMに準拠しようとすると、Flashで作らなければならないなどの制約が出てきて、作りたいシステムが作りにくいので、準拠するのをやめました。

edulioでは、会員管理ができて、ビデオなどをUPできて、テストが作れて、進捗が見れてということで、基本的な機能が揃っていますよね。ビデオの形式はmp4ですか?

(松野さん)はい。mp4ですね。違う形式のファイルをUPしてeduliioのサーバーが変換することもできます。でも、実際には、そういう使い方をしている人はほとんどいなくて、PCで変換してからアップしている人が多いです。そのほかにYoutube連携などもできます。

どんな方たちがサービスを使っていますか?

(松野さん)大学のゼミとか、資格試験系とか、会社の研修とか、いろいろです。大学のゼミとかだと、広告が入っても問題ないので、Youtube連携をうまく利用して、無料プランのまま使っていたりしますね。

あとは、研修会社とかでも、本当に肝心なところの動画だけシステム内に入れて、あとは、YoutubeにUPされている外部のコンテンツを利用しながら運営しているところもあります。

なるほど。これからの教員や講師は、授業力よりも、学習を設計する力が重要になってくるといわれていますが、まさに、そういうことが行われているんですね。世界中に、本当に様々なコンテンツが無料で溢れているので、それらを学習者に合わせて配置して、学びの場を創って、学習者のモチベーションを上げていくことで、それで簡単にオンラインスクールを作ることも可能なわけですね。

テストシステムもありますが、これは、どのような使い方をされているんですか?

(松野さん)面白い使い方をしている方がいて、資格試験対策をしている方なんですが、同じ時間に時間を決めてテストをやるんです。そうすると、リアルタイムで各問題ごとの正答率が分かりますから、テストが終わってからオンライン解説をするときに、全員正解の問題は飛ばして、正答率が悪かったものを中心に解説していくから、効率の良い解説授業ができるんです。

edulioは、今後、どのように進化していく予定ですか?

(松野さん)コミュニケーションツールが重要だと思っています。講師と生徒、生徒と生徒のコミュニケーションが取れるような仕組みを入れていきたいと思います。

最後に、ちょっと意地悪な質問をしてみました。

オンラインスクールを運営している経験からすると、オンラインスクールで収益を上げていくための重要度としては、マーケティングや集客が7割で、講座やインフラが3割というイメージを持っているのですが、いかがですか?

(松野さん)それは、本当にその通りなんですよ。コンテンツだけアップしても運営はうまくいかないので、集客に力を入れる必要があると思います。だからこそ、システム部分にはできるだけ簡単にしてパワーを使わずに、集客にパワーを使えるようにしてもらいたいです。

edulioは、無料プランでも実用に耐えるレベルで使えるし、インターフェースが分かりやすく、直感的で簡単に使えます。

アプリやスクリーンキャストソフトで講義をつくって、Youtubeに限定公開でアップして、そのリンクをedulioに貼ってコースを作り、内容に合わせたテストを作っていくというやり方なら、ITが苦手な人でも簡単に講座配信ができるシステムだと思いました。

インタビューに回答してくださった松野さん、ありがとうございました。

無料のオンラインスクールシステム-エデュリオ

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