『教材設計マニュアル』から得た気づき
「反転授業の研究」の田原です。
今、インストラクショナルデザインを学ぶために『教材設計マニュアル』を読んでいます。
第3章を読んでいて、ある言葉に出会いました。
その瞬間、これまで頭の中に漂っていたいくつかのピースが結びつき、
目からうろこが何枚も落ちました。
その言葉とは、心理学者のジョン・B・キャロルの言葉で、
「すべての学習者は、その人にとって必要とされる時間をかければ、すべての学習課題を達成できる」
というものです。
多くの場合、生まれつき能力の差によってできる子とできない子がいるから、学校で成績に差がつくと考えられていると思います。
しかし、キャロルは、これを否定して、次のように述べます。
「能力差があるということは、学習できることの限界レベルが違うということではない。みんな学ぶことはできる。しかし、そのために必要な時間が一人一人違うのだ。時間をかければできる。それなのに、みんな同じ授業を受けて、同じ時間しか与えられなければ成績に差がつく。それは、それぞれの子どもにとって十分な学習時間が与えられていないからに他ならない。」
これを読んで、Khan Academyが目指しているものが腑に落ちました。
Khan Academyは、練習問題をクリアするまでにどれだけ時間をかけても良いシステムになっています。
自分のペースで、何回でも繰り返せるわけです。
eboard物語の中村さんの話の意味が、よく理解できるようになりました。
中村さんが言っていた
「時間をかければできるようになる」
「それなのに、そのチャンスがないばかりに学べないのはもったいない」
という言葉の意味が、キャロルを通して深いところに入ってきました。
キャロルの考えに基づくと、
「理解の速さの異なる生徒集団に、どうやって十分な学習時間を与えるのか」
という問いを立てることができると思います。
前回の勉強会でお話くださった数学教室の浜武さんは、この問いに対して、ある種の解を提示していたと思います。
浜武さんは、2つの意味で「分身」を作ることによって解決していました。
1つ目の意味は、「動画講義」という分身です。
講義部分を動画にすることで、浜武さんの体が空くわけです。
空いた体で何をするかというと、生徒の理解の速度に合わせて小テストをやらせるわけです。
理解の速い生徒はどんどん進み、遅い生徒は分かるまで繰り返す。
どの生徒にとっても、適切な速度で学ぶことができる仕組みだと思いました。
2つ目の意味は、「生徒」という分身です。
動画講義だけでは理解できない生徒を、別の生徒が教えます。
浜武さんの知識が、動画講義にコピーされ、そこから、理解の速い生徒の頭にコピーされ、さらに、理解の遅い生徒の頭に
コピーされていくのです。
このような仕組みを作ると、分身の術によって、教師の力が何倍にも増大し、これまでにはできなかったことができるようになります。
工夫次第で、いろんな解決方法が生み出されると思います。
僕は、中学・高校で数学の非常勤講師として教えた経験が5年間。
予備校で物理や数学を教えた経験が15年間ありますが、その中で、どうしても対応できずに見捨ててきてしまった生徒たちがいます。
そのうちの何人かは、今でも、顔と名前を覚えています。
とても苦い思い出です。
授業をされている先生方も、同じような経験はありませんか?
そのときは、限られた時間でやらなくちゃならないのだから仕方がないと自分に言い聞かせて、あきらめました。
教育にITを利用し、何かしらの問題解決できるのなら、まず最初に、あの見捨ててきた生徒たちを何とかしたいです。
第4回の勉強会で、名越さんが、
「これまでにごめんなさいしてきてしまった生徒たちに対して、動画講義を使えば対応できるかもしれない」
とおっしゃっていました。
僕は、この言葉にとても共感します。
「動画講義」や「学びあい」を使えば、理解のスピードが異なる生徒に対して、対応できるかもしれないのです。
ここには、大きな可能性があると思います。
eboardの中村さんが、なぜ、動画講義を作り始めたのか。
浜武さんが、なぜ、授業をビデオで取り始めたのか。
僕たちが、なぜ、今回、動画講義作成講座をやるのか。
うまく伝える言葉が見つからずにもどかしい思いをしていたのですが、『教材設計マニュアル』を読んで、ようやくその言葉を見つけられた気がします。
理解速度が異なる生徒集団に、一人で対応するのは難しいのです。
でも、「自分の分身=動画講義」を作って、パワーを増大させれば、
それぞれの生徒に十分な学習時間を与えられるです。
見捨てざるを得なかった生徒を、サポートできるかもしれないのです。
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