反転授業と単なる予習との違いは何か

反転授業とは、「動画講義を宿題にし、教室では学びあいやグループワークなどの発展的な活動をやる」というものです。

これを見ると、

「結局、予習して授業に臨むということじゃないか」

という感想を持たれる方がいらっしゃいます。

何か違うんだよな~と思いつつ、その違いをはっきりと言葉にできていなかったのですが、Facebookグループでやり取りをしているうちに、頭の中が整理され、単なる予習と反転授業との違いを言語化することができました。

思考の土台になったのは、東向陽台小学校の佐藤先生の事例と、近大付属高校の芝池先生の事例です。

お二人とも、反転授業を導入する前から、学びあいや協働学習に取り組まれていました。

そして、学びあいや協働学習の時間を確保したいということで、反転授業に取り組まれたのです。

佐藤先生のクラスでも、芝池先生のクラスでも、生徒は基本的に100%予習して授業に臨みます。

つまり、基本的に全員が動画講義を見てくるのです。

予習100%を実現している秘訣は、「動画講義の魅力」とかではなく、クラス運営能力です。

教師と生徒との信頼関係をベースにして、学ぶ姿勢を整えているから100%予習してくるのです。

 

ここまで考えて、疑問がわきました。

佐藤先生や、芝池先生は、反転授業を導入する以前から、「教科書を読んでくる予習」を生徒に課すことは可能だったのです。

彼らのクラス運営能力なら、全員に教科書を読んでノートにまとめてくることを予習として課すことができたはずです。

しかし、それをやらずに、タブレット端末が導入されて、はじめて「予習が宿題」になったのはなぜだろうかと思ったのです。

 

ポイントは、「教科書を読んでもわからないけど、先生に説明されると分かる」という点にあると思います。

佐藤先生の言語活動を重視した学びあいや、芝池先生の問題演習を中心とした協働学習を行うためには、内容について70%くらいの理解がベースになると思います。

ところが、教科書を読んでノートにまとめてくるやりかただと、たとえば、30%程度の理解しかできないのではないでしょうか。(一部の、優秀な生徒は、教科書を読んだだけで十分な理解をすることができると思いますが・・・)

そうすると、結局、教室で、もう一度、講義をしなくてはならなくなり、学びあいや協働学習の時間を作ることができなくなるのだと思います。

 

ところが、動画講義の場合は、「先生が説明している」わけなので、教室での講義と同じように理解度を70%程度まで上げることが可能です。

すると、教室では、5分程度の確認の時間を取るだけでよく、学びあいや協働学習に入ることができるのです。

学びあいや協働学習の時間を確保するという目標は、「教科書を読んでくる予習」では達成できず、「動画講義による予習」によってはじめて達成できるのです。

つまり、これまで教室で教えるしか方法がなかった「理解度を70%に上げる」ということが、動画講義によって教室外に置くことができるようになった。それによって生まれた教育のイノベーションが、反転授業なのだと思います。

 

「結局、予習して授業に臨むということじゃないか」

という意見には、今後は、

「従来の予習では、理解度が低いため、教室で結局、授業をやらなくてはならず、グループワークの時間を確保できなかったが、動画講義で予習させることによって理解度を上げることができるようになり、教室で最初からグループワークをできるようになったという点が、大きな違いです。」

と回答しようと思います。

 

 

●Facebookグループ「反転授業の研究」では、514名のメンバーがアクティブに活動しており、様々なコラボレーションも生まれています。

参加希望の方は、こちらから追加申請してください。

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ