小学校で反転授業を実施!~東向陽台小学校 佐藤靖泰先生の実践例

佐賀・武雄市で小・中学校に反転授業を導入するという衝撃的なニュースが流れて以来、

「小学生に予習を課すのは難しいのではないか」

という声が、あちこちで聞かれました。

例を挙げると、

予習は授業の動画で? 「反転授業」の課題 渡辺敦司 という記事の中で、渡辺氏は、次のように述べています。(太字は、田原がつけました)

—- ここから引用 —–

小学校で反転授業が実現すれば、児童はあらかじめ家で授業の動画を見て基礎的な知識などを身に付けておき、学校での「対面授業」では話し合い活動などに十分な時間を割いて「活用」の力を伸ばす……といったことができます。ただ、学生の自主性が期待できる大学とは違って、まず子どもに十分な予習の習慣や勉強への意欲などをつけさせることが大前提になります。先生の指導はもとより、家庭での協力も不可欠になります。それでも予習をしてこない子どもは少なくないでしょうから、学校での授業にも臨機応変な対応など相当な工夫が必要になるでしょう。実証実験の取り組みと今後の研究が注目されます。

—– 引用ここまで —-

また、本ブログでも、以前、小学生に反転授業は可能か?実践例から学ぶ という記事を書いた。

この記事の中で、eboardの小学校への導入を目指して取り組まれた経験がある中村氏のコメントを引用します。(太字は田原がつけました)

—- ここから引用 —

現場に行くと子どもの学習意欲は総じて低く、さらに意欲・学力にばらつきがあります。残念ながら宿題で動画を課しても、動画の質に関わらず見てこないと思います(半沢直樹を見てこいでも、実際難しいと思います)。反転授業を大阪で実施されている私立高校でも(偏差値は悪くないです)、半数見ればいいほうというのが現状だそうです。

見てこない子が一定数いた場合、結局同じことを授業でやるはめになります。結局反転しようにも、反転できない。学級や実施回によって見てくる子の割合が違う、理解度も違う。さらにこれが先生によっても、学校によっても違う。

—- 引用ここまで —

中村氏のコメントを見ると、小学生に宿題を動画で課して、反転授業をやるのは難しいことのように感じられます。特に、動画コンテンツの魅力によって「予習問題」を解決するのは難しそうです。

この「予習問題」を解決するヒントになりそうなのが、近大付属高校の芝池先生の実践例です。芝池先生は、数週間分前倒しで数学の予習をさせ、ノートを作らせます。そして、教室では演習中心の協働学習を行います。生徒が演習をしている間にノートをチェックして回り、予習が遅れている生徒には声かけするという方法を取っています。この方法で、ほぼ100%の予習率を達成しています。

芝池先生に動画講義についてのお話をうかがうと、

「私の動画講義なんてそんなにすばらしいもんじゃないです。動画講義の質が高いにこしたことはないとは思いますが、それは、あまり関係ないと思います。」

という返事が返ってきました。

もちろん、これは、高校生の話なので、このやり方をそのまま小学生に適応できるとは限りませんが、大きなヒントになる事例だと思います。

 

先日、株式会社ゼッタリンクスの山田さんから、宮城県富谷町立 東向陽台小学校の佐藤靖泰先生が、どのようにして小学生に反転授業を実践しているのかが分かる非常に詳しい資料をいただきました。

許可をいただいて公開します。 ダウンロードはこちら

佐藤先生の授業の流れは、次の図のようになります。

sato01

佐藤先生の実践例では、

・5分から8分程度の動画講義を見て、予習してノートを作り、分かったことと、分からなかったことを書いてくる。

・動画の視聴ログと予習したノートを確認し、予習状況を把握する。

・教室では協働学習(自力解決、ペア解決、グループ解決)を行い、電子黒板で共有して討論する。

というような流れで授業が進みます。佐藤先生が使っているThinkBoardクラスルームというスクリーンキャスト型の講座作成ソフトには、動画の視聴ログを取れる機能があり、児童が動画講義を見たかどうかをチェックできます。

 

佐藤先生が力を入れているのは、「ノート作りの指導」だそうです。

「この問題に取り組むには、こんな武器が必要だ。だから、必要な武器を予習で手に入れておこう」

というような声がけを行い、予習してくるモチベーションを高めます。

そして、授業中にも、家庭学習用映像に登場した言葉を使って小さな発問を繰り返すそうです。すると、児童それぞれの学習状況が把握でき、同時に、学ぶ姿勢が整ってくるそうです。

 

佐藤先生の予習動画は、ThinkBoardクラスルームを使って、自分で手作りしたもので、手書き文字と音声からなるものです。いわゆる業者が作ったような立派なコンテンツではありませんが、授業内での意識付け、授業との連動によって、効果を上げているようです。その点は、近大付属の芝池先生の考え方と共通しています。

 

また、佐藤先生の授業の根底にあるのは、「協働学習を有効な形でやりたい」ということであり、反転授業は、それを実現するための一つの方法です。協働学習を行う教師スキルも、小学校で反転授業を成功させるために重要になってくると思います。

佐藤先生の実践例は、小学校に反転授業を導入する際に、非常に参考になる事例になると思います。

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