学びのパラダイムの転換をコミュニティ・ラーニングへ拡張する

オンライン教育プロデューサーの田原真人です。

教える仕事をしている皆さんは、授業をつくるときに、どのような生徒像を想い描いていますか?

今、プロデューサーとして関わっている「YOU∞理論」の講座で、情報を発信していくペルソナを考えるワークをしているときに、ある気づきがありました。

それは、

僕は、かつて物理ができなかった頃の自分自身に対して授業をしている。

ということでした。

自分が乗り越えるのに苦労した「物理を学ぶ」という壁を、予備校の先生に手助けしてもらって超えることができ、そこに大きな感謝の気持ちがあるので、今度は、自分が手助けする側に回ろうということで予備校の講師になったんだなと気づきました。

そして、教える側になり、教え方を工夫しているうちに、自分の思考がどんどん体系化していって、効率よく教えられるようになりました。

学びの原理

ラーニング・ピラミッドで考えると、教えることが一番学習定着率が高いわけですから、毎日、大勢の前で授業をしている予備校講師が、教室の中で一番学習定着率が高い存在なわけです。(ラーニング・ピラミッドの正当性については、様々な考えがありますが、ここでは立ち入りません)

learning-pyramid

 

これを、抽象化すると、このように言うことができます。

自分がかつて超えた壁の手前に立ち止まっている人に対して、自分の経験をもとに手助けしていくと、自分の思考が体系化されていく

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学びの原理からアクティブラーニングを考える

アクティブ・ラーニングというのは、「自分が超えた壁の上から、壁の手前の人が超えるのを手助けすることによって、自分が壁を超えたプロセスを振り返ってメタ化することができ、思考が体系化される」ということを学びの原理に置いているのではないかと思います。

教壇に立って教えている予備校講師の自分が、教室の中で一番学んでいたのであれば、そのような組み合わせを教室の中にたくさん作れば、生徒の頭が活性化し、生徒の思考が体系化されていくのではないでしょうか。

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このとき、教師の役割は、ファシリテーターとして教室全体に目を配り、生徒のマインドを整えたり、学び合いが起こる組み合わせを作ったり、学び合いがうまくいっていないところを支援したり・・・ということになるでしょう。

このやり方には、とても良いところがあります。

アクティブラーニングを実践するとすぐに気づくのは、生徒の思考の癖は様々であり、自分にも生徒と同様に思考の癖があるということです。

自分と似た思考の癖を持つ生徒には、うまくアドバイスできても、自分とタイプが違う生徒にはうまくアドバイスできないこともあります。そのときに、様々な「壁を超えるためのアドバイス」を生徒同士で共有することで、様々な思考の癖を持つ生徒が、壁を超えやすくなるのです。

学びの原理をコミュニティラーニングへ拡張する

アクティブラーニングを通して、学習コミュニティの中に学びの原理が共有されていくと、ファシリテーターなしで自発的に学び合いが進んでいくようになります。

メンバーそれぞれが、自分が助けられそうな機会を見つけ、他の人を手助けすることで、自分の思考を体系化して学んでいくわけです。

壁の前で立ち止まると、あちこちから支援の手が伸びてきて、壁を超えると、支援した側から「学びの機会を与えてくれてありがとう。あなたのおかげで思考を体系化できました」という感謝の言葉が返ってくるという文化が定着すると、コミュニティ全体が学びに溢れて加速していきます。

これが、僕の考えるコミュニティ・ラーニングです。

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コミュニティ・ラーニングが起こっている空間では、できないことがあることは、「恥」ではなく、「他人に学びのチャンスを与える機会」となります。
 
この空間は、Give and Giveが成り立つ空間です。

Give and Giveが成り立つと、学びが泉のように湧き出し、学びは加速していくはずです。

このようなことは、単なる夢でしょうか?

僕は、そう思いません。

「反転授業の研究」では、すでに、コミュニティ・ラーニングが起こり始めています。

それを体験した教師の皆さんが、教室を変えていったとき、世界のあちらこちらでコミュニティ・ラーニングが起こり始めるはずです。
 
プロジェクトや組織の中でコミュニティ・ラーニングが生まれれば、その結果として価値創造が起こりやすくなるでしょう。

そうなれば、もっと自由に、もっと楽に、もっと豊かに生きられる社会が現れるのではないでしょうか。

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