アクティブラーニングによって自己効力感を増した生徒が未来を切り開く
2年前、反転授業に興味を持ったとき、
これからは工業型社会から知識基盤型社会に移行し、21世紀型スキルが必要になる
という言葉を聞きましたが、まったくピンと来ませんでした。
自分の中に対応する問題意識や体験がなかったため、言葉が僕の内側の何かと結びくことができなかったのです。
言葉だけが体の周りをふわふわと漂っていました。
自分たちが分からないものを、果たして子どもたちに伝えられるのだろうか?
体験の裏打ちのないことを口から出しても、薄っぺらいメッセージは生徒の心には届かないのではないか?
そんなことを感じたのを覚えています。
それで、「反転授業の研究」を、「未来のグループ」にしてみたらどうだろうかと考えました。
これから来るだろうと言われている全員参加型の共生社会をオンラインで実現して、みんなで体験してみようと思ったのです。
21世紀型のグループを作って、そこでの体験をもとに、確信を持って教室で語れるようになればいいんじゃないかと思ったのです。
「多様性のある森を作り、そこで収穫される多様な果実を共有する」という言葉を合言葉に、「反転授業の研究」は生長していきました。
「反転授業の研究」ではオープンでフラットな関係がグランドルールに設定されています。
現実社会での多くの関係性は、まだ必ずしもオープンではないし、フラットでもないですが、僕たちが望む未来はそのような社会だろうと思ったからです。
そして、オープンでフラットだからこそ、権威に頼ることなく、自分たちの力を信じて活動し、誰もがリーダーシップを取ることが可能になり、多くのボトムアップの活動が生まれ、自由にコラボレーションが起こると思ったのです。
コラボレーションによる価値創造の体験を共有したときに、僕たちははじめて知識基盤型社会や21世紀スキルというものを体で理解することができ、確信を持って子どもたちに語れるようになるのではないかと思ったのです。
集合知を発生させるための取組み
2年前に「反転授業の研究」で頻繁に飛び交っていたのは、「集合知」という言葉でした。
この言葉は、僕にとって、とても新鮮でした。
毎日、どうすれば集合知が生まれるのかを考えていました。
なんとなく大事だと感じていたのは、「コミュニケーション量を増やす」ということでした。
コミュニケーション量が増えることで、あるところで量から質への転換が生まれるのではないかとなんとなく思ったのです。
それで、毎日、毎日、グループ内の投稿に質問をしていったり、コメントをしていったりしました。
そうすると、グループのメンバーがどんなことに困っているか、その解決策を誰が持っているかが、自然と浮かび上がってきました。
困っている人と、支援できる人とをコミュニティ内でマッチングできれば、価値創造ができるんじゃないかと思いました。
オンラインで講座をやるときに難しいのは受講者を集めることと、講師をブランディングすること。
でも、「反転授業の研究」には、すでにたくさんの人がいて、その人たちが困っていることが何だかが分かっているし、誰ならその解決策を教えられるということを皆が知っているわけです。
あとは、「学び場」をどうやって創るのかということだけでした。
オンラインの学び場をチームで運営
でも、オンラインでどうやって学び場を創ればいいのか?
そのヒントは、意外なところからやってきました。
『ワールドカフェをやろう!』という本を読んだときに、その中に集合知の話が出てきたので、著者の香取一昭さんにメールを送ってスカイプでお話をうかがえないかお願いしました。香取さんは、この分野の第一人者だということを当時は分かっておらず、結構、気楽にメールを送ってしまったんですね。(汗)
香取さんは、初心者の僕にいろいろ教えてくださり、アメリカでワールドカフェホストのためのオンライン講座をやっているAmy Lenzoさんを紹介してくれました。
ワールドカフェのホスティングと、オンライン講座のやり方を同時に学べる!と思い、8週間のオンライン講座に挑戦しました。
英語力の弱さと、初めてのオンライン講座だということで勝手が分からずに泣きそうになりましたが、これを乗り越えればいろんな可能性が生まれると信じて8週間を何とかやり通しました。
この経験は、本当に大きかったですね。
自信もつきましたし、オンライン講座の運営方法も分かりました。
そして、Amyさんのやり方を参考に、「反転授業の研究」で最初のオンライン講座、「神アプリExplain Everythingで超簡単に動画講義を作る方法」をやりました。
古山竜司さん、桑子研さん、横山淳さんと僕の4人でコラボレーションをして講座内容やコンテンツを作っていきました。
Facebookのグループチャットを立ち上げ、そこで相談しながら進めていったんですが、4人がそれぞれの視点で意見を重ねていくことで、すごい勢いでアイディアがブラッシュアップされていきました。
ちょっと席をはずして戻ってくると、チャットに30個とか40個とかのメッセージが溜まっていました。
自由に発言できる雰囲気があり、そこで4人が頭をフル回転させると、どんどん仕事が進んでいく。
誰からともなく、この4人で仕事をするのは楽しい!という声が上がっていました。
次々とアイディアが形になっていくのを体験して、一人じゃ絶対にできないことがチームだとできるということを初めて心の底から実感することができました。
その後、オンライン講座は回を重ね、運営ボランティアを巻き込んだ10-20名の運営チームで運営するようになりました。
それぞれがチームをメタ認知して、自分で自分のやりたいことや貢献できることを見つけて行動していくことで大きな成果を達成できるということを繰り返し繰り返し体験しました。
共創はマインドセットを変化させる
一人じゃできない価値を、協力すると創造できる。
この経験は、僕たちのマインドセットを大きく変化させました。
「反転授業の研究」のメンバーの中には、
2年前の自分が思い出せないほど自分が変わった。
と発言する人がたくさんいます。僕もその一人です。
考えてみれば、今までは、自分の能力の限界というものを常に外から突きつけられてきたんだなと思います。
一人で何かをやらなければならないときは、自分の苦手なことが足を引っ張ります。
1つの苦手なことがボトルネックになって目標を達成できず、それを自分の限界だと感じてしまいます。
しかし、チームで価値創造するときは、自分の得意なことで貢献し、苦手なことを周りから学ぶことができます。
自分の苦手なことが行動のボトルネックにならないのです。
これを体験すると、未来の見え方が大きく変わります。
仲間が助けてくれるから、自分はやりたいことを思いっきりやって、周りに貢献できる。
そのように心の底から感じられると、自己効力感が増し、行動変容が起こります。
「反転授業の研究」の中で、仲間の行動変容は、周りの行動変容を促し、次々とマインドセットが変化していきました。
21世紀型社会へのシフトというのは、テクノロジーや社会の変化ではなく、それをきっかけとして、各個人の意識がシフトすることなのだということを、僕たちは2年間の活動を通して、体験的に理解したのです。
教室内で共創を引き起こして、生徒のマインドセットを変えていく
共創によりマインドセットが大きく変容させた教師たちが、同じメカニズムによって生徒のマインドセットも変容させることができるのではないかと考えたのは自然なことでした。
生徒が、一人じゃ解決できない問題・課題をチームで協力して解決できたとき、生徒の自己認識の焦点が「苦手」な部分から、「得意」な部分へと移行し、自己効力感が増していくはずです。
自己効力感が増すと、世界の見え方が変わり、自分を世界にポジティブな影響を与えることができる有能な存在であるということに気づくことができます。
チームへの貢献の仕方には様々な方法があり、自分の個性に合った活躍の仕方というものがあるのだということに気づくことができます。
そして、テストの結果とは異なる指標で、自分の価値や強みを知ることができるようになります。このことは、将来、生きがいを持って働くことができる天職を見つけることに役立つはずです。
教師自身が、協力し合いながらアクティブに学びマインドセットを変えていき、その経験を生かして、教室でアクティブラーニング型授業を行い、生徒のマインドセットも変えていく。
これが、僕たちが考えていることで、僕の周りでは、すでに起こっていることです。
オンラインでの学びの渦に巻き込まれてみませんか?
9月1日から、アクティブラーニングの伝道師、小林昭文さん(産能大教授)を講師に迎え、アクティブラーニングスキルアップ講座を実施します。
9名の運営チームと、最大30名からなる受講者とが混然一体となり、お互いに実践を振り返って気づきを深めながら、経験学習のサイクルを回していきます。
自分だけでは気づけなかったことが、チームで学ぶことによって気づくことができます。
そのことを経験したときに、チームで学ぶ価値を実感することができると思います。
そして、その実感を、生徒たちにも体験させてあげたいという気持ちが生まれてくると思います。
オンライン講座でつながった人たちとは、講座が終わってからも様々なコラボレーションが起こることでしょう。
その体験は、21世紀を先取りするものであり、その体験をもとに確信を持って生徒に自分の言葉で21世紀を語れるようになるはずです。
そして、みなさんのアクティブラーニング型授業によって、マインドセットを変え、自己効力感を増した生徒たちが、協力し合って未来を創っていってくれるのではないかと思います。
僕たちは、そのようなポジティブな循環を作りたいと思っています。
皆さんの参加を心からお待ちしています。
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