小学生に反転授業は可能か?実践例から学ぶ
佐賀・武雄市で小学生・中学生にタブレット端末を配布して反転授業を行うということが決まり、それをめぐって様々な意見が飛び交っています。
Twitterでつぶやかれていることを見てみると、期待している、楽しみだという声もある一方で、反転授業を小学校で行うなんて言語道断という声もありました。
賛否両論あるのは当たり前ですから、議論が活発に行われて、理解が深まったり、よいアイディアが出てくればよいと思いますが、気になったのは、現場の声とか、実践例とかが圧倒的に少ないということでした。
頭で考えて「こうだ!」と言っても、多くの場合、実践してみると、考えもしなかったことが次々と出てきます。これは、僕がオンライン教育をはじめてから9年間で嫌というほど味わってきたことです。
予想通りにいったことなどほとんどなく、予想外のことが次々と起こって、そこから考えてもいなかった方向へ発展していく・・・この繰り返しでした。
ですから、小学生への反転授業の導入がどうなるかを考えるときに、実際にやってみたらどうだったのかという実践例を知りたいと思ったのです。
そんなとき、小学生・中学生・高校生を対象とした無料動画学習サイトeboardを運営している中村孝一さんに意見を伺う機会がありました。
eboardは、まさに日本語版カーンアカデミーとでも言えるようなサイトで、反転授業をやりたいと考えている皆さんには、とても有効なサイトです。
eboardの中村さんは、
「反転授業は、個別対応を可能にする可能性は持っていると思いますが、小学校から試験的にというのは、やり方がまずいと思います。」
「まず家で動画は見ないですね。うまくいかせられるかもしれないのに、やり方と前提が間違ってる気がします。」
とおっしゃっていたので、そのような意見を持つにいたったベースになる経験があるのかどうかをうかがったところ、次のようにお答えいただきました。
非常に示唆に富むコメントですので、こちらで紹介させていただきます。
—— 以下、中村さんのコメント ———–
2か月弱学校現場に入って、eboard導入を進めたので、そこでの経験が大きいですね。これが学習塾やNPOなら問題ないと思います。また反転授業そのものに、異を唱えているわけではないです。
①まず、海外事例と日本の公立校でやる場合との一番大きな違いは、学習指導要領だと思います。
いい悪いは別にして、日本の公立校では、学習指導要領をもとに、みんなが同じ授業を同じように受けます。それを前提にあらゆる仕組みが作られています。
たしかカーンのビデオであったようなやりとりですが、「ガブリエル、あなた2学年分は進み過ぎよ。他の子にも教えてあげて」的なことは日本の反転授業では起きないはずです、法律として。また現場の先生は、それを好ましく思いません。
反転授業の、特に学校・学級でやる場合のメリットは、学習の個別化だと、個人的には思っています。個別化することで、理解度や習熟度に合わせて学習ができる。ところが、現行制度はそれを許容してないんです。
さらに学習指導要領、特に学校の先生方の目標は、基礎・基本の力をつけることで、「動画で基礎をやって、応用を…」は求めていません。「なんとか卒業するまでに、中1くらいの英語は全員身につけていってほしい」が現状です。
②上記とも関連して、これは体験的なことですが、現場に行くと子どもの学習意欲は総じて低く、さらに意欲・学力にばらつきがあります。残念ながら宿題で動画を課しても、動画の質に関わらず見てこないと思います(半沢直樹を見てこいでも、実際難しいと思います)。反転授業を大阪で実施されている私立高校でも(偏差値は悪くないです)、半数見ればいいほうというのが現状だそうです。
見てこない子が一定数いた場合、結局同じことを授業でやるはめになります。結局反転しようにも、反転できない。学級や実施回によって見てくる子の割合が違う、理解度も違う。さらにこれが先生によっても、学校によっても違う。
そうなるなら、デジタル教材と映像授業はもっと別の形で効果的に使えます。家で動画を見て、学校で応用を…ではなく、補習として最初から最後まで動画とドリルをひたすら繰り返す時間がもうけられれば、基礎的な学力の強化を図るとか(これを今はeboardは放課後学習支援として進めています)。
—— ここまで ——-
eboardの中村さんは、現段階では数少ない「実際にやってみた人」です。
僕は、まずその声をよく聞いて、それをベースにして、何とかよい方法はないかということを考えたいと思います。
僕と同じように、実践例、現場の声を聞いてから考えたいという人には、中村さんの声は、非常に参考になると思います。
中村さん、貴重なコメントをありがとうございました。
■実践されている方、実践を検討されている方、ぜひ、つながりましょう。
※グループに参加希望の方は、田原までメッセージ下さい。
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